外交青書・白書
第2章 地域別に見た外交

第8節 アフリカ

1 概観

アフリカは、54か国に約14億人を擁し、2050年には世界人口の4分の1を抱えるようになるといわれるなど、若く、エネルギッシュで、潜在力にあふれた地域である。豊富な鉱物資源や高い経済成長率を誇ることから、日本の経済安全保障やバリューチェーンの確保の観点から重要な地域であり、更に開拓すべき投資先として世界の関心も集めている。一方、紛争やテロ、政治的混乱が平和と安定を脅かしている地域も存在し、貧困や飢餓といった深刻な開発課題も抱えている。

これまで米国、フランス、ドイツ、欧州連合(EU)、ロシア、中国、韓国、インド、トルコやサウジアラビアなど、多くの国・地域がアフリカとのフォーラムを開催してきた。2024年は、1月にイタリア、5月に北欧諸国、6月に韓国、9月に中国とインドネシア、11月にトルコとロシアが、それぞれアフリカとの首脳級や閣僚級のフォーラムを開催した。イタリアは、6月のG7プーリア・サミットで「アフリカ、気候変動、開発」のセッションを設けるなど、議長国としてアフリカに重点を置いたアジェンダ(議題)設定を行った。12月からは南アフリカがG20議長国を務め、連帯、平等、持続可能性といったアフリカの開発課題を念頭に置いたアジェンダを提示するなど、国際社会におけるアフリカの役割はますます高まっている。

リベリア、セネガル、チャド、ルワンダ、南アフリカ、モーリシャス、ボツワナ、モザンビーク、ナミビア、ガーナなどでは、民主的プロセスの定着・強化に資する大統領選挙や議会選挙が行われた。一方、西アフリカでは、サヘル地域(1)で引き続きテロ・暴力的過激主義の問題が深刻である。「アフリカの角」(2)地域では、国軍と準軍事組織の即応支援部隊(RSF)(3)との武力衝突が継続しているスーダンを始め、紛争などの影響で多数の避難民が発生し、人道危機が拡大している。大湖地域、特にコンゴ民主共和国東部地域では、武装勢力が引き続き活発な活動を継続し、人権・人道状況が深刻化している。

2月、岸田総理大臣は、訪日したルト・ケニア大統領と会談し、経済関係を含む二国間関係の強化、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の推進や国際場裡(り)における協力強化で一致した。4月のG7外相会合の際には、上川外務大臣は、アフリカ連合(AU)(4)議長国でありアフリカ開発会議(TICAD)(5)閣僚会合の共同議長でもあるメルズーグ・モーリタニア外務・アフリカ協力・在外モーリタニア人相と会談を実施した。

4月、上川外務大臣はマダガスカル、コートジボワール及びナイジェリアを訪問し、各国で外相会談などを行った。マダガスカルでは経済安全保障や人材育成などの分野で二国間協力を強化することを確認した。また、コートジボワールでは現地女性リーダーとの意見交換会などを実施したほか、ナイジェリアでは国内避難民女性らとの対話などを行った。

8月、東京でTICAD閣僚会合が開催され(8ページ 巻頭特集参照)、アフリカ47か国の代表のほか、国際機関、民間企業、国会議員、市民団体などが参加した。2025年8月に開催予定の第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)に向け、社会、平和と安定、経済の3分野で議論を行い、経済セッションでは、初めての試みとして、日本企業、アフリカ企業と参加閣僚によるパネル・ディスカッションとネットワーキング・セッションが行われた。また、女性閣僚との会談(ワーキング・ランチ形式)や歓迎レセプションが開催されたほか、成果文書として、TICAD閣僚会合では初めてとなる「TICAD閣僚会合共同コミュニケ」が採択された。

TICAD閣僚会合で共同議長を務める上川外務大臣とメルズーグ・モーリタニア外務・アフリカ協力・在外モーリタニア人相(8月24日から25日まで、東京)
TICAD閣僚会合で共同議長を務める上川外務大臣とメルズーグ・モーリタニア外務・アフリカ協力・在外モーリタニア人相(8月24日から25日まで、東京)

2025年8月には横浜でTICAD 9を開催予定である。分断と対立の様相が一層深まる国際社会を協調に導くため、アフリカ諸国の「オーナーシップ」と国際社会による「パートナーシップ」を重視しながら、アフリカ及びグローバルな課題の革新的な解決策を共創するため、日本は引き続きアフリカ諸国と緊密に連携していく。

(1) 「サヘル」とはサハラ砂漠の南に位置する広範囲な地域のことで、厳密な定義はないが、一般にモーリタニア、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、チャドなどが位置する地域を指す。

(2) 「アフリカの角(Horn of Africa)」とは、アフリカ大陸の北東部のインド洋と紅海に向かって「角」のように突き出た地域の呼称で、エチオピア、エリトリア、ジブチ、ソマリア、ケニアの各国が含まれる地域のこと

(3) RSF:Rapid Support Forces

(4) AU:African Union

(5) TICAD:Tokyo International Conference on African Development

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