3 東部アフリカ地域
(1)ウガンダ
ウガンダは、ムセベニ大統領による長期政権の下、安定した内政を背景に経済成長を維持している。周辺国からアフリカ最大となる約170万人の難民受入れを行っており、7月にはAUアフリカ人道庁(AfHA)のホスト国に選出された。また、アフリカ連合ソマリア移行ミッション(ATMIS)に国軍を派遣するなど、アフリカの角地域の安定に向けて貢献している。8月のTICAD閣僚会合ではオケロ国際問題担当国務相と辻󠄀清人外務副大臣との会談、11月にはカイネルガバ・ウガンダ国防軍司令官と藤井比早之外務副大臣との会談がそれぞれ行われ、二国間関係の一層の強化及び国際場裡での協力を確認した。
(2)エチオピア
エチオピアは、アフリカ第2位の人口(1.3億人)を背景に、高い経済的潜在力を有するとともに、7月から国際通貨基金(IMF)と世界銀行の支援を受けて、為替自由化や財政改革などのマクロ経済改革を実施している。また、アムハラ州などでは引き続き戦闘が散発している一方、北部紛争の終結から2年が経過し、全般的には状況は落ち着いている。4月に実施された日・エチオピア政策協議や8月のTICAD閣僚会合出席のため訪日したメスガヌ国務相と辻󠄀外務副大臣の会談などを通じ、アフリカの角地域の平和と安定や日本企業の投資拡大に向けた取組など多岐にわたる分野で二国間関係を更に発展させることで一致した。
(3)エリトリア
エリトリアは、インド洋とスエズ運河・欧州を結ぶ国際航路に位置し、同国領海は多数の日本関係船舶が航行する安全保障上の要衝である。アフリカの角地域の平和と安定に同国が果たす役割の重要性を踏まえ、2025年1月に在エリトリア兼勤駐在官事務所を大使館へ格上げした。
(4)ケニア
ケニアは、「法の支配」を始め、基本的価値や原則を共有する重要な同志国であるとともに、東アフリカの経済的ハブであり、アフリカ有数の日系企業拠点の一つとなっている。2月、岸田総理大臣は、公式実務賓客として訪日したルト大統領と首脳会談を行い、両首脳は、経済関係の一層の強化、FOIPの推進、国際場裡における協力の強化などで一致した。また、8月のTICAD閣僚会合出席のため訪日したムダバディ内閣筆頭長官兼外務・ディアスポラ担当長官と上川外務大臣が会談を実施し、日・ケニア政策対話の立ち上げが合意された。さらに、2025年1月には、藤井外務副大臣を団長するアフリカ貿易・投資促進官民合同ミッションがケニアを訪問し、両国の政府関係者及び企業の代表者との間で、両国間の経済交流の促進に向けた幅広い議論が交わされた。

(5)コモロ連合
コモロは、日本と同じ海洋国としてFOIPを支持しているパートナーである。1月の大統領選挙で再選したアザリ大統領の下、2030年までに新興国入りを目標とする「コモロ新興計画2030」を掲げ、湾港などのインフラ整備、持続可能な漁業などのブルーエコノミー(7)を推進している。8月、上川外務大臣は、TICAD閣僚会合出席のため訪日したムバエ外務・国際協力相と会談を行い、FOIP推進に向けて緊密に連携していくことで一致した。
(6)ジブチ
ジブチは、欧州とアジアを結ぶ主要な交易路に面する戦略的要衝に位置し、FOIP実現のための重要なパートナーである。2009年から、日本の自衛隊がアデン湾・ソマリア沖で海賊対処行動に従事しており、2011年にジブチに設置された自衛隊拠点は在外邦人などの保護及び輸送にも活用されている。さらに2024年12月には、ジブチに対して初めての政府安全保障能力強化支援(OSA)案件(沿岸監視レーダーシステムなどの供与)に関する書簡の署名・交換が行われた。8月のTICAD閣僚会合出席のため訪日したハッサン外務・国際協力省次官と深澤外務大臣政務官が会談を実施し、TICAD 9を見据え、日・ジブチ関係を更に発展させることで一致した。
(7)スーダン
スーダンでは、2023年4月以降、同国の国軍と即応支援部隊との武力衝突が継続しており、国内外の避難民が1,100万人以上に及ぶなど深刻な人道危機が発生している。日本は、スーダン及び周辺国の人道状況改善に向けた人道支援を実施するとともに、アフリカの角担当大使による働きかけなどを通じて地域の平和と安定に向け取り組んでいる。7月には、辻󠄀外務副大臣が、第5回日本・アラブ経済フォーラム出席のため訪日したジブリール財務・計画相と会談し、地域の平和と安定の実現に向けて両国間で緊密に連携していくことで一致した。
(8)セーシェル
セーシェルは、インド洋有数の経済水域を有する、FOIP実現のための重要なパートナーである。6月には海上自衛隊練習艦隊が、7月には護衛艦が同国に寄港し、両国間で親善訓練が実施された。8月にはTICAD閣僚会合出席のため訪日したラデゴン外務・観光相と上川外務大臣が会談を行い、二国間関係の一層の発展及び国際場裡において引き続き連携することで一致した。
(9)ソマリア
ソマリアでは、2022年5月に就任したハッサン大統領の下、平和構築や国造りの努力が続けられており、日本はソマリア政府の取組を後押ししている。2024年には、イスラム過激派アル・シャバーブによるテロ活動や気候変動の影響を受けた人々に対する人道支援に加え、警察組織の能力強化などを支援した。8月のTICAD閣僚会合出席のため訪日したフィキ外務国際協力相と上川外務大臣が会談し、二国間関係の一層の発展及び2025年から国連安全保障理事会(安保理)非常任理事国に就任するソマリアと国際場裡において協力していくことを確認した。
(10)タンザニア
タンザニアは、アフリカの東部と南部を結ぶ要衝に位置し、安定した内政を背景に経済成長を続けている。5月には辻󠄀外務副大臣がタンザニアを訪問し、マカンバ外務・東アフリカ協力相などとの会談や日本企業関係者との意見交換を行った。さらに、8月のTICAD閣僚会合では、辻󠄀外務副大臣がチュミ外務・東アフリカ協力副相と会談を実施し、経済関係強化に向け緊密に連携していくことで一致した。また、在タンザニア日本大使館は、日本企業進出支援とビジネス環境改善に向けて、7月に日・タンザニア・ビジネスフォーラム、8月に日・タンザニア・ビジネス対話を現地関係機関と共催した。
(11)ブルンジ
ブルンジは、アフリカ大陸中央部に位置する内陸国であり、日本は1970年代以降、ブジュンブラ港などのインフラ整備や基礎的社会サービス向上などの開発協力を行っている。8月のTICAD閣僚会合出席のため訪日したシンギロ外務・開発協力相と上川外務大臣が会談を行い、東アフリカ地域の連結性強化に向けて協力していくことで一致した。
(12)マダガスカル
マダガスカルは、アフリカ東南部沖のインド洋に位置する島国でFOIPを支持しており、鉱物資源供給元としても重要な国である。4月には上川外務大臣が日本の外務大臣として初めて同国を訪問し、ラジョリナ大統領への表敬及びラサタ外相との会談を行い、新たな開発協力大綱で打ち出したオファー型協力を活用して、都市圏の広域開発などの協力に取り組むことで経済強靭(じん)化を共に進めていくことで一致した。さらに、8月のTICAD閣僚会合の際、上川外務大臣はラサタ外相と会談を行った。

(13)南スーダン
南スーダンは、2013年12月の衝突以降混乱が続いたが、2018年9月には「再活性化された衝突解決合意」が署名された。同合意に基づいた総選挙の実施が2024年12月に迫っていたが、選挙に向けた準備の遅れを理由に、同合意の履行期限の2年間延長が決定された。日本は、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた開発協力や国連平和維持活動(PKO)への支援を通じて、同国の平和と安定を継続的に支援しており、8月のTICAD閣僚会合出席のため訪日したゴッチ外相と上川外務大臣との会談において、南スーダンの安定に向けた努力を引き続き後押ししていくことを表明した。
(14)モーリシャス
モーリシャスは、基本的価値と原則を共有するFOIP実現のための重要なパートナーである。8月のTICAD閣僚会合出席のため訪日したゴビン外務・地域統合・国際貿易相と上川外務大臣が会談し、海洋安全保障やブルーエコノミー分野における連携、投資拡大に向けた協力推進で一致した。10月には英国との間でチャゴス諸島の領有権問題に関する合意が成立し、最終的に条約と付随する法的文書を締結することを条件に、英国がモーリシャスのチャゴス諸島に対する主権を認めることなどが確認された。11月には国民議会選挙が実施され、ラングーラム党首が率いる野党連合が勝利し、政権交代が行われた。
(15)ルワンダ
ジェノサイドの発生から30年の節目を迎えたルワンダでは、カガメ大統領の下、国民融和及び経済成長に向けた努力が続けられている。7月には大統領選挙が実施され、カガメ大統領が再選を果たした。
5月には、辻󠄀外務副大臣がルワンダを訪問し、ビルタ外務・国際協力相と会談するとともに、8月には、TICAD閣僚会合出席のために訪日したカバレベ外務・国際協力国務相と会談し、二国間関係の更なる発展に向けて協力することで一致した。
(7) 海洋資源などの活用により、持続可能な経済成長を推進するコンセプト