核軍縮・不拡散
原子力供給国グループ(NSG)の概要
令和5年7月28日
1 NSGの概要
- (1)原子力供給国グループ(Nuclear Suppliers Group:NSG)は、1974年のインドの核実験(カナダ製研究用原子炉から得た使用済燃料を再処理して得たプルトニウムを使用)を契機に創設され、1978年にNSGガイドラインを制定した。
- (2)NSG参加国は、2012年9月にメキシコ、2013年4月にセルビア が新たに加わり、以下の48か国となった。現在の議長国はブラジル(2023年7月より1年間)。
- 【参加国】
- アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、カナダ、中国、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、カザフスタン、韓国、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国、米国
- (3)NSG参加国の中では、「NSGガイドライン」と呼ばれる原子力関連資機材・技術の輸出国(Suppliers)が守るべき指針(法的拘束力のないいわゆる「紳士協定」:IAEA公開文書)に基づいて輸出管理が実施される。この指針は、原子力専用品・技術の移転に係る「NSGガイドライン・パート1」と、原子力関連汎用品・技術の移転に係る「NSGガイドライン・パート2」に分かれている。
- パート1
- リスト(「トリガーリスト」)に列挙された品目及びその関連技術の非核兵器国への移転は、原則として、当該非核兵器国(受領国)政府がIAEAとの間で包括的保障措置協定を発効させていることを条件に行われることとされている。また、移転の際には、受領国から、以下の4条件を確認することとなっている。
-
- (a)IAEA包括的保障措置の適用(ガイドライン・パラ4)
- (b)移転資機材等の核爆発装置への不使用(同パラ2)
- (c)移転資機材等への実効的な防護措置の実施(同パラ3)
- (d)第三国に再移転する場合には受領国は原供給国に与えたのと同様の保証を当該第三国からとりつけること(同パラ9)
- パート2
- 附属書に列挙された品目及びその関連技術の移転に関しては、輸出許可手続を作成し、輸出を許可する際には、(a)移転の用途及び最終需要場所を記した最終需要者の宣言及び(b)当該移転又はその複製物がいかなる核爆発活動又は保障措置の適用のない核燃料サイクル活動にも使用されないことを明示的に述べた保証を取得すべきとされている。
2 NSGガイドラインの規制品目
NSGガイドラインによって輸出が規制される原子力関連資機材・技術の概要は以下のとおり。
- (1)パート1品目(原子力専用品・技術)(Nuclear Material、Equipment and Technology)
- (ア)資材及び機材
- (a)核物質(プルトニウム、天然ウラン、濃縮ウラン、劣化ウラン、トリウム等)
- (b)原子炉とその付属装置(圧力容器、燃料交換装置、制御棒、圧力管、ジルコニウム管、一次冷却材用ポンプ)
- (c)重水、原子炉級黒鉛等
- (d)ウラン濃縮(ガス拡散法、ガス遠心分離法、レーザー濃縮)、再処理、燃料加工、重水製造、転換等に係るプラントとその関連資機材
- (イ)技術:
- 規制されている品目に直接関連する技術(ただし、「公知の技術」または「基礎科学研究」には適用しない。)
なお、ガイドライン・パート1上、特にウラン濃縮及び使用済み燃料の再処理については、核不拡散上機微な(sensitive)分野の資機材・技術として、その輸出は特別に厳格な規制の対象となっている(パラ6及び7)。
- (2)パート2品目(原子力関連汎用品・技術)(Nuclear-Related Dual-Use Equipment、 Materials、 Software and Related Technology)
- (ア)資材及び機材
- (a)産業用機械(数値制御装置、測定装置等)
- (b)材料(アルミニウム合金、ベリリウム、マレージング鋼等)
- (c)ウラン同位元素分離装置及び部分品(周波数変換器、直流電源装置、遠心分離機回転胴制御装置等)
- (d)重水製造プラント関連装置
- (e)核爆発装置開発のための試験及び計測装置
- (f)核爆発装置用部分品
- (イ)技術:
- 規制されている品目に直接関連する技術(ただし、「公知の技術」または「基礎科学研究」には適用しない。)
3 我が国国内法によるガイドライン履行
- (1)NSGガイドラインに沿った輸出管理は、我が国国内法上、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」)及びその関連政省令等により履行されている。
- (2)具体的な根拠規定は外為法第48条1項(貨物)及び第25条(技術)、輸出貿易管理令(以下「貿管令」)第1条(貨物)及び外国為替管理令(以下「外為令」)第17条(技術)である。貿管令別表1(1-16項まである)に列挙される貨物のうち2項に示される貨物、及び外為令別表(1-16項まである)に列挙される技術のうち2項に示される技術が原子力関連資機材・技術として輸出管理の対象となっている。
4 我が国の取組
我が国は、核不拡散体制の強化の観点から、原子力関連資機材・技術の輸出管理を重視しており、NSGにおける議論に積極的に参画している。また、我が国の在ウィーン国際機関日本政府代表部がNSGの事務局機能としてのポイント・オブ・コンタクト(Point of Contact:POC)役割を担っている。(ポイント・オブ・コンタクトは、NSG関連資料の受領、配布及び管理、各会合の開催予定等の通知及び開催、各議長への実務的な支援などを行っている。)
- 原子力供給国グループ(NSG)ブエノスアイレス総会(令和5年7月)
- 原子力供給国グループ(NSG)ワルシャワ総会(令和4年6月)
- 原子力供給国グループ(NSG)ブリュッセル総会(令和3年6月)
- 原子力供給国グループ(NSG)ヌルスルタン総会(令和元年6月)
- 原子力供給国グループ(NSG)ユールマラ総会(平成30年6月)
- 原子力供給国グループ(NSG)ベルン総会(平成29年6月)
- 原子力供給国グループ(NSG)ソウル総会(平成28年6月)
- 原子力供給国グループ(NSG)バリロチェ総会(平成27年6月)
- 原子力供給国グループ(NSG)ブエノス・アイレス総会(概要)(平成26年6月)
- 原子力供給国グループ(NSG)プラハ総会(概要)(平成25年6月)
- 原子力供給国グループ(NSG)シアトル総会(概要)(平成24年6月21~22日)
- 原子力供給国グループ(NSG)ノールドヴェイク総会(概要)(平成23年6月23日~24日)
- 原子力供給国グループ(NSG)クライストチャーチ総会(概要)(平成22年6月24日~25日)
- 原子力供給国グループ(NSG)ブダペスト総会(概要)(平成21年6月11日~12日)
- 原子力供給国グループ(NSG)2008年臨時総会(概要)(平成20年9月4日~6日)