核軍縮・不拡散
原子力供給国グループ(NSG)ブリュッセル総会
2021年6月24日及び25日、ベルギー・ブリュッセルにおいて原子力供給国グループ(NSG)第30回総会が開催されました。
総会後、パブリック・ステートメント(PDF)が発出されたところ、その仮訳は以下のとおりです。
パブリック・ステートメント
原子力供給国グループ総会
2021年6月24~25日、ベルギー・ブリュッセル
2021年6月24日及び25日、ベルギー・ブリュッセルにおいて第30回原子力供給国グループ(NSG)総会が、ウェルナー・バウエンス・ベルギー特使が議長を務め開催された。当初2020年6月に予定されていたNSG総会は、新型コロナウイルス感染症の影響により、開催されなかった。参加国政府は、NSGの継続性を担保するスムーズな移行を歓迎し、今後は議長国としての任期の最後に総会を開催する新たな形式に従うことに合意した。
NSGは48の参加国政府から構成され、欧州委員会及びザンガー委員会が常任オブザーバーとして参加している。NSGの目的は、原子力の平和利用に係る国際協力を損なうことなく、原子力及び関連資材、汎用資材、機材、ソフトフェア及び技術の輸出管理の国内における履行を通じて核兵器の拡散を防止することである。
総会の歓迎挨拶において、ソフィー・ウィルメス・ベルギー副首相兼外相は、NSGをグローバルな不拡散体制を構成する強力な要素と称した。同副首相兼外相は、第30回NSG総会が、NPT運用検討会議を見据え、多国間での建設的な関与に活力を与えるきっかけとなることを祈念した。同副首相兼外相は、全ての国連安保理決議の完全な履行及び移転の継続的な監視を通じ、北朝鮮の問題に対処するための国際的な決意を呼びかけた。同副首相兼外相は、JCPOAにおける義務と相容れないイランの行動への懸念を表明し、NSGに対し警戒を続けるよう求めた。同副首相兼外相は、新型コロナウイルス感染症による厳しい活動状況においても、NSGの一貫性、継続性及び活力を強化することについて、議長国ベルギーとしての決意を強調した。
NSGは、2019年のヌルスルタン総会以降の進展を評価し、2020年6月25日に正式にベルギーに引き継がれるまでの間、輸出管理へのコミットメントのしるしとしてNSGを主導し、他のトロイカのメンバーと協力してきたカザフスタンへの感謝を表明した。
参加国政府は、新型コロナウイルス感染症により活動が制限された状況においても、緊密な協力を継続することにより、NSGの継続性を守り、その活力を高める強い決意を強調した。
特に、参加国政府は、グローバルな不拡散上の課題に関する情報交換を行った。参加国政府は、グローバルな不拡散体制の礎石としてのNPTの十分、完全かつ効果的な履行に対する確固たる支持を改めて強調した。参加国政府は、効果的な輸出管理の重要性を強調し、延期されたNPT運用検討会議への具体的な貢献として、合意された最新のNSGガイドライン及び了解事項を推進することに期待を表明した。
参加国政府は、朝鮮半島の完全な非核化及び恒久的な平和を達成するために進行中の外交プロセス及び努力を支持し、特に、全ての核兵器及び既存の核計画を完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で直ちに放棄し、関連するあらゆる活動を中止しなければならないことを再確認した国連安保理決議第2371号(2017年)、同第2375号(2017年)、同第2397号(2017年)及び過去の関連安保理決議の完全かつ包括的な履行に対するコミットメントを再確認した。NSGの権限の枠内で、参加国政府は、全てのNSG規制対象品目の北朝鮮向け輸出が上記決議により禁止されていることに留意した。
参加国政府は、国連安保理決議第2231号(2015年)により承認された包括的共同作業計画(JCPOA)の完全かつ効果的な履行の確保並びに米国及びイランがJCPOAにおけるコミットメントに復帰することを容易とするための、中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国、米国、欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表及びイランによる継続的な外交努力に対する支持を表明した。参加国政府は、当該履行に係る懸念を表明し、国連安保理決議第2231号(2015年)の遵守を促した。前回の総会以降、NSGは、JCPOAの調達ワーキンググループのコーディネーターから、調達チャネルの作業について継続して報告を受けた。参加国政府は、更なる報告を受けることに対する関心を表明した。
NSGは、これまで提出された参加申請についての議論が継続されていることに留意した。
NSGは、「NPT非締約国によるNSG参加の技術的、法的及び政治的側面」についての議論に留意した。
また、総会において、NSGは、
- NSG規制リストの明確化及び改訂のための複数の提案に関する意見交換を行い、規制リストの履行にとって重要な技術的な問題を集中的に取り扱った。
- 国際的な不拡散環境の発展並びに原子力及び関連産業の急速なペースに遅れをとらないようNSGガイドラインを改訂することの重要性について議論し、再確認した。
- NSGガイドラインの履行する上での国内の経験や、通過及び積替えに係る課題など審査及び執行に関する情報や国内のベストプラクティスに留意した。
アウトリーチ
- 多くのNSG非参加国が自国の輸出管理制度をNSGガイドライン及び規制リストと整合させたことを引き続き歓迎した。
- NSG非参加国へのアウトリーチ活動の価値について合意し、状況が許せば、NSGによるアウトリーチ活動が近く再開できることに期待を表明した。
- NSGの規制対象品目に関する産業界及び学術・研究機関の意識向上並びに交流に関する国内の実践例について継続して意見交換を行った。
- 参加国政府を代表してNSG議長が行った、国連安保理決議第1540号(2004年)の履行状況に関する包括的レビューへの貢献に留意した。
- 延期された2020年NPT運用検討会議への出席者の利益となるようコミュニケーション文書を改定することで一致した。
- 2019年ヌルスルタン総会議長の招待により、2019年11月12日に参加国政府の産業界代表の参加を得て行われた非公式なNSGアウトリーチ・イベントに留意した。NSGは、2017年のベルン総会以降、原子力産業界との非公式な対話を行ってきた。
- 2008年のインドに対する民生用原子力協力に関する声明の履行に関するあらゆる論点について継続して検討し、インドとNSGとの関係について議論した。
- 2021年のNSG総会期間中にNSGウェブサイトロシア語版が開始されたことをロシアに感謝しつつ、留意した。
NSG参加国政府は、全ての原子力供給国に対して、NSGガイドラインを遵守することにより、原子力の輸出に関する責任ある姿勢を表明することを招請した。また、NSG総会は、全ての国に対し、NSGの活動及び目的に関係する全ての国連安保理決議を完全に履行し、いかなる品目や技術の輸出も核兵器計画に寄与しないよう、最大限の警戒とあらゆる努力を払うことを求めた。
NSG総会は、協議グループ(CG)議長として、ドイツのミリアム・コーヘンドゥーファー女史を再任し、メキシコのディエゴ・カンダノ氏の次の職務での成功を祈念しつつ、同氏の貴重な支援に感謝した。NSG総会は、スウェーデンのパー・アンダーソン氏の次の職務での成功を祈念しつつ、同氏の技術専門家グループ(TEG)議長としての長期かつ貴重な支援に感謝した上、米国のブレント・ハイルマン氏を新たなTEG議長に任命した。
NSG総会は、ポーランドが2021~22年のNSG議長国を務めることを確認した。ポーランドは、トーマス・レカルスキ特使を新たなNSG議長に指名した。
2021年6月25日