軍縮・不拡散

原子力供給国グループ(NSG)
濃縮及び再処理の施設,設備及び技術の移転規制の強化について

 2011年6月23~24日,オランダのノールドヴェイクにおいて開催された原子力供給国グループ(NSG)第21回総会において,濃縮及び再処理の施設,設備及び技術の移転規制の強化に関するNSGガイドライン(パート1第6項及び第7項)の改訂が合意された(注)。同改訂部分の仮訳は以下のとおり。

(仮訳:NSGガイドライン・パート1改訂第6項及び第7項)

機微な輸出に関する特別の管理

第6項

 供給国は,核兵器又はその他の核爆発装置に使用することが可能な機微な施設,設備,技術及び物質の移転に関し,特に2以上のNSG参加国政府が発出した現に有効なNSGガイドライン・パート2の拒否通報の対象となっている団体を自国内に有する国への移転の場合には,抑制的な方針をとるべきである。

  1. (a)この方針に関し,供給国は,受領国が少なくとも以下のすべての基準を満たさなければ,濃縮及び再処理に係る施設,設備及び技術の移転を許可すべきではない。
    1. (i)核兵器不拡散条約の締約国であり,かつ,同条約に基づく義務を完全に遵守していること。
    2. (ii)IAEA事務局の報告(IAEA理事会により検討されているもの)において保障措置協定を遵守する義務に違反していると認定されておらず,保障措置の義務を遵守する又は原子力計画の平和的性質に係る信頼を醸成するための追加的な措置をとることをIAEA理事会の決定により要請されておらず,かつ,IAEAとして現在保障措置協定を実施できない国であるとIAEA事務局によって報告されていないこと。この基準は,IAEA理事会又は国際連合安全保障理事会が,受領国の原子力計画の平和的目的及び保障措置に係る義務の遵守に関する適切な保証が存在すると事後に決定する場合には,適用されない。この項において,「違反」とは,拡散懸念のある深刻な違反のみをいう。
    3. (iii)NSGガイドラインを遵守しており,かつ,安全保障理事会決議第1540号で特定された効果的な輸出管理を実施していることを国際連合安全保障理事会に対して報告していること。
    4. (iv)非爆発使用,効果的かつ永続的な保障措置及び再移転に関する保証を含む政府間合意が供給国との間にあること。
    5. (v)現行の国際的ガイドラインに基づく相互に合意された防護に関する基準を適用するとの約束を供給国に対して行っていること。
    6. (vi)IAEAの安全基準によることを約束し,かつ,国際的に受け入れられた安全条約を遵守していること。
  2. (b)そのような移転を許可すべきかを検討するに当たり,供給国は,第4項(e),第6項(a)及び第10項を考慮しつつ,また,各国の判断により適用可能な関連の要素について考慮しつつ,濃縮及び再処理に係る施設,設備及び技術が平和的目的のみに利用されることを確保するため,潜在的な受領国と協議すべきである。
  3. (c)供給国は,濃縮及び再処理に係る施設,設備又は技術について効果的にIAEA保障措置が実施されることを支援するために格別の努力を払うものとし,このガイドラインの第4項及び第13項に従い,当該施設,設備又は技術の平和的性質を確保すべきである。この点に関し,供給国は,受領国が,包括的保障措置協定を発効させており,かつ,モデル追加議定書に基づいた追加議定書を発効させている(又は,それまでの間,IAEA理事会により承認された適切な保障措置協定(地域計量・管理取極を含む。)を,IAEAと協力して実施している)場合にのみ,この項に従って,移転を許可すべきである。
  4. (d)このガイドラインの第16項(b)に従って,供給国は,濃縮又は再処理に係る施設,設備又は技術の移転を開始する前に,当該移転に適用される不拡散関連の条件について他のNSG参加国政府と協議すべきである。
  5. (e)濃縮又は再処理に係る施設,設備又は技術が移転される場合,供給国は受領国に対し,これにより設置される施設を受領国独自の施設とすることに代えて,当該施設への供給国の関与又は他の適切な多数国の参加を受け入れるよう奨励すべきである。また,供給国は,多国間の地域的な燃料サイクル・センターに関連する国際的な活動(IAEAの活動を含む。)を促進すべきである。

濃縮に係る施設,設備及び技術の輸出に関する特別な取決め

第7項

 第6項の基準を満たすすべての国は,濃縮に係る施設,設備及び技術の移転について資格を有する。供給国は,次の特別な取決めの適用は,核兵器不拡散条約の原則,特に第4条と整合的でなければならないことを認識する。供給国による次の特別な取決めのいかなる適用も,第6項の基準を満たす国の権利を失わせることはない。

  1. (a)濃縮に係る施設,設備又は技術の移転について,供給国は,移転される施設,及び移転される設備を組み込む又は移転される技術に基づく施設が20%を超える濃縮ウランの生産のために改良又は運転されないという法的拘束力のある約束を行うことを受領国に求めるべきである。供給国は,実行可能な範囲内で,20%を超える濃縮ウランの生産の可能性が排除されるように濃縮に係る施設又は設備を設計し,及び建設するよう努めるべきである。
  2. (b)2008年12月31日の時点で相当の規模で濃縮ウランを生産したことが実証されている特定の濃縮技術に基づく濃縮に係る施設又は設備の移転について,供給国は,
    • 実行可能な限り,当該施設又は設備の製造を可能にする設計及び製造技術の移転を避けるべきであり,かつ,
    • 受領国に対し,施設の複製を許可しない又は可能にしないとの条件の下で,濃縮に係る機微な設備及び可能にする技術又は運転可能な濃縮施設を受け入れることについて,適当な合意を求めるべきである。
    規制を行うため又は施設の安全な設置及び運転を確保するために必要な情報は,可能にする技術を漏らすことなく,必要な範囲内で共有されるべきである。
  3. (c)2008年12月31日の時点で相当の規模で濃縮ウランを生産したことが明らかになっていない特定の濃縮技術に基づく協同濃縮事業については,参加者は,個別に又は共同で,これを進めることができる。そのような事業から生じるいかなる施設及び設備の移転も,原型の設置の前までに第7項(b)の対象となる。このガイドラインの第7項(c)の適用上,原型とは,大規模なウラン同位体分離のプロセスの技術的能力又は実現可能性を確認するための技術情報を得ることを目的として運転されるシステム又は施設をいう。

    供給国は,濃縮技術に関する協力を促進するため,新たな濃縮技術の移転の規制に関する代替の取決めを提案することができる。このような取決めは,第7項(b)における取決めと同等のものであるべきであり,これらの取決めについてNSGは協議を受けるべきである。参加国政府は,濃縮技術及び商慣行の変化に対応することを目的として,2013年に及びその後は5年ごとに,濃縮に係る施設,設備及び技術の輸出に関する取決めを見直す。
  4. (d)供給国は,既存の及び新たな協同濃縮事業に関連して第7項で想定されている取決めを実施するに当たり,協力者が確立した意思決定プロセスに基づいて合意する場合には,当該事業の協力者は,可能にする技術を保有し並びに相互に共有し及び移転することができるものと認識する。供給国は,ウラン濃縮は,濃縮施設の設備の生産及び移転のためのサプライ・チェーンを含むことができ,かつ,当該移転はこのガイドラインの関連の規定に従うことを条件として実施できるものと認識する。
  5. (e)供給国は,このガイドラインの第13項及び第14項に従い,供給される濃縮施設におけるIAEA保障措置の効果的な実施を確保するために格別の努力を払うべきである。濃縮施設が移転される場合,供給国及び受領国は,移転される施設の設計及び建設がIAEA保障措置を容易にするような方法で実施されることを確保するために協力すべきである。供給国及び受領国は,そのような設計及び建設の特性について,施設の設計段階の可能な限り早い時期において,かつ,いかなる場合にも濃縮施設の建設が開始される前にIAEAと協議すべきである。また,供給国及び受領国は,このガイドラインの第12項及び第14項に従い,核物質及び施設の効果的な防護措置を策定するに当たって,受領国を支援するため協力すべきである。
  6. (f)供給国は,受領国において,施設及び技術が同国の国内法に適合しない形で利用又は移転されることを防止するため,供給国と同等又はそれ以上のセキュリティの確保に係る措置がとられているとの確信を得るべきである。 

定義の部:

 このガイドラインの第7項の実施上,「協同濃縮事業」とは,複数の国又は複数の企業(当該複数の企業のうち少なくとも2が異なる国において設立されている場合に限る。)による共同開発又は共同生産の取組をいい,国若しくは企業の共同事業又は多国籍事業の形態をとることができる。

(注)NSGガイドライン・パート1改訂版(第10版)(PDF)(他のサイトヘ)はIAEAのサイトに掲載されている。


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