3 各国との連携・協力
新型コロナの世界的感染拡大により対面での外交活動が引き続き制約される中、2021年においても、日本は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け外交活動を積極的に推進した。
(1)米国(78ページ 第3節参照)
10月、岸田総理大臣は、バイデン大統領と首脳電話会談を行い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現を通じて、地域及び国際社会の平和と安定に取り組んでいくことで一致した。また、11月、気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)出席のため英国を訪問した岸田総理大臣は、バイデン大統領と懇談を行い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米で引き続き緊密に連携していくことを確認した。さらに、同月、林外務大臣は、ブリンケン国務長官と外相電話会談を行い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現において、緊密に連携していくことを確認した。そして、12月、G7外務・開発大臣会合出席のため英国を訪問した林外務大臣は、ブリンケン国務長官と対面での外相会談を行い、林外務大臣から、バイデン大統領の東アジア首脳会議(EAS)やアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議出席、ブリンケン国務長官の東南アジア訪問など、米国のインド太平洋地域へのコミットメントを歓迎すると述べた。その上で、両外相は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、ASEANなどとの協力やオーストラリアやインドを始めとする同志国間の連携を引き続き深化させていくことを確認した。
(2)ASEAN(72ページ 第2節7参照)
日本とASEANの間では、2020年11月に「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)協力についての第23回日ASEAN首脳会議共同声明」を発出し、AOIPと日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」が本質的な原則を共有していることを確認した。2021年10月、日・ASEAN首脳会議でも、岸田総理大臣からASEANと連携してFOIPの実現に向けた取組を力強く推進する意向を述べたほか、2020年の首脳会議に際して発表した49件のAOIP協力案件の進捗とともに、24件の追加案件を掲載した合計73件のAOIP協力プログレス・レポートを発出した。さらに12月には、初めてASEAN各国外相が招待され参加したG7外務・開発大臣会合で、林外務大臣から日本のAOIP協力を紹介するとともに、G7各国の外相に対して、ASEANの中心性を支持しつつ、AOIPに沿った実質的協力を推進していくことを呼びかけた。今後も、「AOIP協力に関する日・ASEAN首脳共同声明」に基づき、海洋協力、連結性、持続可能な開発目標(SDGs)、経済というAOIPの四つの重点分野に沿って具体的な協力案件を着実に進め、「自由で開かれたインド太平洋」実現に資する協力を深化させていく。
(3)オーストラリア(67ページ 第2節6参照)
岸田総理大臣就任直後の10月、モリソン首相との間で行われた首脳テレビ会談では、両首脳は両国間の「特別な戦略的パートナーシップ」を一層発展させ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために連携していくことで一致した。また、2022年1月には日豪円滑化協定に署名するとともに、日豪首脳テレビ会談では、両首脳は、「特別な戦略的パートナー」である日豪関係の更なる強化、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた両国のコミットメントを一層具体化させていくことで一致した。さらに、2021年12月に林外務大臣がペイン外相と行った日豪外相会談でも、両国の「特別な戦略的パートナーシップ」を更なる高みに引き上げるとともに、結束して「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために連携していくことを確認した。
(4)インド(64ページ 第2節5参照)
9月、菅総理大臣は、ワシントンDC訪問の際、モディ首相と対面での首脳会談を実施し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、海洋安全保障の重要性につき一致するとともに、地域における連結性強化や法の支配に基づく国際秩序の形成のために緊密に連携していくことを確認した。10月、岸田総理大臣就任後初のモディ首相との電話会談でも、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日印や日米豪印で緊密に連携していくことを確認した。11月、林外務大臣就任後初の日印外相電話会談では、ジャイシャンカル外相との間で「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を更に発展させ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け協力することで一致し、引き続き連携していくことを確認した。
(5)日米豪印(28ページ 特集参照)
日米豪印4か国は、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を強化していくとの目標を共有している。「自由で開かれたインド太平洋」を具体的に推進していくため、質の高いインフラ、海洋安全保障を始め様々な分野で実践的な協力を進めていくとともに、同ビジョンの実現に向け、より多くの国々へ連携を広げていくことの重要性を共有している。また、4か国は、「インド太平洋に関するASEANアウトルック」を全面的に支持しており、「自由で開かれたインド太平洋」に関する欧州を始めとする各国の前向きな取組を歓迎している。こうした考えの下、米国のバイデン政権発足後の2月には、日米豪印外相電話会談を行い、4か国が、引き続き、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、ASEAN、大洋州島嶼国、欧州などの国々と一層の連携・協力を深めていくことで一致した。また、3月には、米国の呼びかけにより、初となる日米豪印首脳テレビ会議を開催し、首脳レベルでも「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、様々なパートナーと協力していくことで一致した。さらに、9月、米国において日米豪印首脳会合が初めて対面で開催され、ワクチン、重要・新興技術、気候変動、インフラ、宇宙、サイバーなどの分野での協力推進で一致した。そして、今後、首脳会合及び外相会合を毎年開催すること、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、様々なパートナーとの連携を広げ、具体的協力を積み上げていくことで一致した。
(6)欧州
ア EU(102ページ 第5節2(1)及び117ページ特集参照)
1月、茂木外務大臣は、日本の外務大臣として初めてEU外務理事会にオンライン形式で出席し、「自由で開かれたインド太平洋」についてEU及びEU加盟国外相に対し説明を行った。4月、EUは「インド太平洋における協力のためのEU戦略に関する理事会結論文書」を発表、9月には4月の文書をより具体化した「インド太平洋における協力のためのEU戦略に関する共同コミュニケーション」を発表し、茂木外務大臣は、これをEUがインド太平洋に関与していくとの強い意思の表明として歓迎し、9月には外務大臣談話を発表した。5月、菅総理大臣は、ミシェル欧州理事会議長及びフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との日・EU定期首脳協議において、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた日・EU協力について議論し、岸田総理大臣は、11月にミシェル欧州理事会議長と、12月にフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とそれぞれ電話会談を行い、同地域における日・EU協力を更に進めることで一致した。林外務大臣は、12月にボレル上級代表との電話会談でこうした方向性を改めて確認した。
イ 英国(105ページ 第5節2(2)参照)
3月、英国は、「安全保障、防衛、開発及び外交政策の統合的見直し」を公表し、インド太平洋地域への関与強化を表明した。同地域へのコミットメントを示すものとして、9月には空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群が日本に寄港し、複雑な共同訓練が実施された。また、日英円滑化協定の交渉が10月に開始されるなど、日英間の安保・防衛協力は近年飛躍的に深化している。11月には、岸田総理大臣はジョンソン首相と会談を行い、かつてなく強固な日英関係を、新たなステージに引き上げ、「自由で開かれたインド太平洋」を強力に推進すべく引き続き連携していくことを確認した。また12月には、日英外相間で両国がインド太平洋地域の平和と繁栄に向け更に協力を深めていくことで一致した。
ウ フランス(105ページ 第5節2(3)参照)
フランスは、EUのインド太平洋戦略の策定を主導するなど、インド太平洋への関与を促進している。日本との間でも、5月の練習艦隊「ジャンヌ・ダルク」の日本寄港時に日本国内における日仏の陸軍種間の初めての共同訓練が行われるなど、インド太平洋における安保・防衛協力が一層強化されている。7月、菅総理大臣は、2020年東京オリンピック競技大会開会式に出席するため訪日したマクロン大統領と会談及び昼食会を行い、インド太平洋における二国間協力の推進を確認した。11月、岸田総理大臣はマクロン大統領と初めて電話会談を行い、両国間の安全保障・防衛協力が飛躍的に深化していることを歓迎し、緊密に連携していくことで一致した。また、林外務大臣はル・ドリアン欧州・外務相と11月に電話会談、12月に対面での会談を行い、インド太平洋における日仏の連携を一層強化することで一致した。
エ ドイツ(106ページ 第5節2(4)参照)
2020年9月、ドイツは、インド太平洋における航行の自由、法の支配、連結性といった理念の重要性を強調する「インド太平洋ガイドライン」を閣議決定した。2021年12月、林外務大臣はベアボック外相と会談を行い、両大臣は、「2+2」の初開催やフリゲート艦「バイエルン」の日本寄港など、日独間の安全保障協力が大いに深まったことを歓迎した上で、インド太平洋での協力を含む日独間連携の強化で一致した。
オ オランダ(112ページ 第5節 その他の欧州地域参照)
6月、茂木外務大臣はカーフ外相兼外国貿易・開発協力相と会談し、オランダ独自の「インド太平洋ガイドライン」の発表など、オランダのインド太平洋への関与強化を心強く思うと述べ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携を強化していくことで一致した。
日本は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)(注1)」のビジョンの下、地域の平和と繁栄を実現するため、考え方を共有する国々と様々な協力を行っています。その一つの取組として、基本的価値を共有する地域のパートナーである日米豪印4か国は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、幅広い議論を行い、実践的な協力を進めています。
日米豪印の4か国の間では、これまでに、2017年11月から計8回の局長級協議、4回の外相会合を行ってきています。2021年には、3月に史上初となる首脳テレビ会議が行われ、9月には初めて4か国の首脳が一堂に会した日米豪印首脳会合の開催が実現しました。2022年2月には、第4回日米豪印外相会合も開催され、日米豪印の協力は大きな進展を遂げています。
これまで、日米豪印の4か国は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、質の高いインフラ、海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティ、人道支援・災害救援などの様々な分野で実践的な協力を推進してきました。2021年3月の首脳テレビ会議では、ワクチン、重要・新興技術、気候変動の作業部会を立ち上げることで一致し、同年9月の首脳会合では、これらの分野での成果を確認しつつ、インフラ、宇宙、サイバーの分野で作業部会などを立ち上げるとともに、クリーン・エネルギー、人的交流といった分野でも協力を強化することでも一致しました。
4か国での実践的な協力の一例が、インド太平洋地域におけるワクチン支援です。2021年9月の首脳会合では、国際社会が直面する喫緊の課題である新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)対策に関し、日米豪印がワクチン供与や資金拠出を通じて、インド太平洋地域における、安全性、有効性、品質が保証されたワクチンへの公平なアクセスの確保に向けて大きな役割を果たしていることを確認するとともに、ワクチンの生産拡大、インド太平洋地域への供給を含め、新型コロナの感染対策において引き続き協力していくことで一致しました。
4か国は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、引き続き様々なパートナーとの連携を広げ、具体的協力を積み上げていくこととしています。これまで、ASEANの主体的な取組である「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)(注2)」や、ASEANの一体性及び中心性に対する強い支持を確認してきており、また、EUの「インド太平洋における協力のための戦略」も歓迎しています。
岸田総理大臣は、総理就任後、いち早く米国、オーストラリア、インドの首脳と電話会談を行い、日米豪印での連携を更に進めていくことを確認しました。4か国の間では、今後、日米豪印首脳会合・外相会合を毎年実施することで一致しており、引き続き、各国と緊密に連携して、様々な実践的分野での協力を一層進め、「自由で開かれたインド太平洋」を共に力強く推進していく考えです。

(2022年2月、メルボルン)

(9月、ワシントンDC 写真提供:内閣広報室)
(注1) FOIP:Free and Open Indo-Pacific
(注2) AOIP:ASEAN Outlook on the Indo-Pacific