G7/G8

令和3年12月13日
G7外務・開発大臣会合の出席者
地域情勢をテーマとしたセッション

 12月11日から12日にかけて、リバプールにおいて本年2回目のG7外務・開発大臣会合が開催されたところ、概要以下のとおり。会合には、林外務大臣を含むG7各国の外相及びEU外務・安全保障上級代表が出席し、開発関連セッションには、一部のG7メンバーの開発担当大臣が参加した。また、一部のセッションには、アウトリーチとして豪州、韓国及びASEAN各国の外相等が参加した。 会合終了後、以下の文書が発出された。

(1)ロシア及びウクライナに関するG7外相声明(仮訳 別ウィンドウで開く英文 別ウィンドウで開く
(2)会合全体に関する議長声明(仮訳(PDF) 別ウィンドウで開く英文(PDF) 別ウィンドウで開く
(3)ASEANとの協力に関する議長声明(仮訳(PDF) 別ウィンドウで開く英文(PDF) 別ウィンドウで開く

1 地域情勢

(1)中国

 林大臣から、東シナ海・南シナ海における一方的な現状変更の試みの継続・強化への深刻な懸念と反対、香港情勢及び新疆の人権状況の深刻な懸念、台湾海峡の平和と安定の重要性、経済的威圧などについて提起し、日本として、中国とは、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、対話を続け、共通の課題については協力するという、建設的かつ安定的な関係の構築を目指している旨発言した。
 G7各国からも、様々な論点について、懸念の表明を含む発言があった。

(2)ウクライナ

 各国から、ウクライナ国境付近におけるロシア軍の動向への深い懸念が表明され、G7として、ウクライナの主権及び領土一体性を支持するとの立場を再確認した。
 会合終了後、ロシア及びウクライナに関する議論を踏まえ、ロシア及びウクライナに関するG7外相声明を発出した。G7として、ロシアの軍事力増強及びウクライナに対する攻撃的なレトリックを一致して非難し、ロシアに対して、緊張を緩和し、外交チャネルでの対話を追求し、軍事活動の透明性に関する自らの国際的なコミットメントを遵守するよう求めた。

(3)アフガニスタン

 国連やNGOといった非国家のチャネルを通じて基本的サービスを支援することを含め、人道危機の悪化についての対応を更に強化する必要性について一致。また、包摂的かつ代表性のある政治や、特に女性、女児及び少数派の人権の尊重、テロ対策、アフガニスタンからの出国を希望する者の安全な移動を可能とすることの重要性を強調し、タリバーンとの関与においても、G7としてこれらの優先課題を中核に置くことで一致した。

(4)イラン

 G7として、核合意に関するウィーンでの交渉の再開を歓迎し、イランは核活動の拡大をやめ、迅速に交渉をまとめるべきであるとの立場で一致した。
 林大臣から、核合意をめぐる動向は、中東地域の安定や、核不拡散をめぐる国際的取組に大きな影響を与えるものであり、状況を注視している旨述べた上で、12月2日の日イラン外相電話会談を紹介しつつ、日本は一貫して核合意を支持してきており、引き続き、イランに対する働きかけ等の面で貢献していく考えである旨発言した。

(5)北朝鮮

 林大臣から、北朝鮮が弾道ミサイル実験を継続し、核・ミサイル活動を活発化させていることを指摘した上で、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルのCVIDという目標を堅持することが重要であり、安保理決議の完全な履行が不可欠である旨強調した。また、安保理決議履行確保のためのG7各国の東シナ海へのアセット派遣への感謝を表明しつつ、G7の緊密な連携を呼びかけた。G7各国からも、北朝鮮の核・ミサイル開発への懸念の声が示され、G7として、北朝鮮に対し、挑発的な行動を控え、CVIDという明確な目標を持って外交プロセスに関与するよう求めることで一致した。
 林大臣から、拉致問題について、G7各国の全面的な理解と協力を呼びかけ、G7各国から賛同を得た。

2 経済パートナーシップ

 G7として、12月3日発出した首脳声明における持続可能で強靭な質の高いインフラ投資及び開発金融に関する共通の原則を再確認した。
 林大臣からは、開発金融の透明性・公正性を高めていく必要がある旨指摘し、G20において、関連する既存の国際ルールの重要性を訴えていくべきである旨発言した。また、新型コロナを契機に、G20でDSSI(債務支払猶予イニシアティブ)及びその後継である「共通枠組」に合意したのは大きな一歩であり、その実施を確保するための連携も深めていきたい旨発言した。

3 開かれた社会

 「開かれた社会」とのテーマの下、主に、メディアの自由、恣意的拘束、サイバーガバナンスについて議論した。
 G7として、ジャーナリストの保護等を通じてメディアの自由を守ることの重要性について一致した。また、外交的レバレッジを得るための恣意的拘束を抑止し、終わらせる決意を改めて表明した。さらに、サイバー空間における責任ある国家の行動のための国連枠組みの重要性を強調しつつ、悪意あるサイバー活動の脅威への対処において協力することを再確認した。

4 ASEANとの協力

 ASEAN各国から、G7とASEANの初めての会合開催に歓迎の意が示されるとともに、新型コロナからの回復を始め、様々な分野においてG7とASEANが協力を進めていくことに対する期待が表明された。
 林大臣からは、ASEANはG7がその重要性について一致している「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた要であることを強調した。その上で、日本として、昨年ASEANとの間で発出した「AOIP協力に関する首脳共同声明」に基づき、2023年の日ASEAN友好協力50周年も見据え、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」の優先協力分野である(1)海洋、(2)連結性、(3)SDGs、(4)経済等において既に実質的な協力を進めていることを紹介しつつ、G7各国の外相に対して、ASEANの中心性を支持しつつ、AOIPに沿った実質的協力を推進していくことを呼びかけた。

5 インド太平洋 

(注:林大臣は日程の都合上欠席。外務審議官が代理対応)
 G7に加え、アウトリーチ国として豪州、韓国及びASEAN各国の外相が参加したセッションにおいて、インド太平洋における協力及び共通の課題について議論した。
 ミャンマーについて、G7として、最近のミャンマー情勢について懸念を表明するとともに、ASEANの5つのコンセンサスへの支持を強調した。ASEAN各国外相は、5つのコンセンサスの実施の重要性を強調し、ミャンマー情勢の改善に向け連携して取り組んでいく考えを表明した。
 南シナ海情勢について、緊張を高め、また、平和、安全及び安定を損ない得る、埋め立てや深刻な事案等についての懸念が表明された。また、ASEANと中国の間で交渉されている南シナ海における行動規範(COC)が効果的、実質的かつ国連海洋法条約(UNCLOS)と整合的となることの重要性について一致した。
 その他、インフラ開発、デジタル・技術・サイバー、海洋等に関するG7とASEANの協力について議論された。

6 ワクチン、グローバル・ヘルス・セキュリティ 

(注:林大臣は日程の都合上欠席。外務審議官が代理対応)
 新型コロナウイルスのオミクロン株による新たな、懸念すべき脅威について議論した。
 G7として、2022年の世界中でのワクチン接種に向けたコミットメントを再確認するとともに、G7として地域のワクチン製造・規制能力を拡大し、保健システムを強化し、質の高いワクチン等の提供のために協力することにコミットした。
 ワクチンの共有、サプライチェーンの強化、自発的なライセンス供与を通じたワクチン製造能力の拡大、技術移転、ASEAN諸国への新型コロナのワクチンの透明性ある展開等を通じて、ASEAN主導のメカニズムを通じたものを含め、いかにG7のASEANとの協力が地域のパンデミックへの対応を強化できるか議論した。


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