中華人民共和国
日中首脳会談・夕食会



6月27日午後7時36分から、安倍総理は、G20大阪サミットに出席するため日本を訪問中の習近平国家主席との間で日中首脳会談(約60分、同時通訳)及び夕食会(約70分、逐次通訳)を実施したところ、概要以下のとおり。
- 先方:丁薛祥(てい・せつしょう)党中央弁公庁主任、劉鶴(りゅう・かく)副総理、楊潔篪(よう・けつち)党中央外事工作委員会弁公室主任、王毅(おう・き)国務委員兼外交部長、何立峰(か・りつほう)国家発展改革委員会主任、劉昆(りゅう・こん)財政部部長、鐘山(しょう・ざん)商務部部長、易綱(い・こう)中国人民銀行行長、孔鉉佑(こう・げんゆう)駐日大使ほか同席。
- 当方:安倍総理、麻生副総理兼財務大臣、河野外務大臣(夕食会のみ)、世耕経済産業大臣、西村内閣官房副長官(会談のみ)、谷内国家安全保障局長、和泉内閣総理大臣補佐官、長谷川内閣総理大臣補佐官兼内閣広報官、横井駐中国大使ほか同席。
1 日中関係
両首脳は、昨年の首脳相互往来を通じて日中関係が正常な軌道に戻り、新たな発展を得つつあることを確認するとともに、「日中新時代」を切り開いていくとの決意を共有した。また、この機会を確実にとらえ、いわゆる「四つの文書」を含む両国間のこれまでの基礎の上に、双方の共通利益を拡大させつつ、長期的に安定した日中関係を構築することで一致した。
(1)ハイレベル往来
両首脳は、永遠の隣国として、恒常的かつ緊密な意思疎通を行うため、首脳を含むハイレベルの相互往来・対話を強化していくこと。そのための次の重要なステップとして、安倍総理は、日本政府を代表して来年春の習近平国家主席の国賓としての訪日を招請し、習主席は原則としてこれを受け入れた。
(2)海洋・安全保障
両首脳は、「互いを協力のパートナーとし、互いに脅威とならない」、「東シナ海の安定なくして、真の日中関係の改善なし」との認識に基づき、海洋・安全保障分野における建設的な関係の構築を目指すことを確認した。特に、資源開発に関する「2008年合意」を推進・実施し、東シナ海を「平和・協力・友好」の海とするとの目標を実現すること、また、外交・安全保障分野の対話を更に強化していくことで一致した。
- 防衛当局間の海空連絡メカニズムや日中海上捜索救助(SAR)協定等、昨年の首脳相互往来を通じて得られた具体的成果を歓迎。
- 本年4月の「中国人民解放軍海軍成立70周年」への海上幕僚長及び海上自衛隊艦艇の参加をはじめとする防衛交流や多国間の場における海上法執行機関の交流の進展を歓迎。防衛大臣・国防部長の相互訪問の早期実現及び海空連絡メカニズムに基づくホットラインの早期開設に期待。
- 安倍総理から、日中関係及び地域・国際社会の平和と安定という大局に立って、東シナ海、特に尖閣諸島周辺海域における中国の活動の自制を要請。また、国際社会共通の関心事項である南シナ海問題について、係争中の地形の非軍事化の重要性を指摘。
(3)経済・実務協力
両首脳は、国際スタンダードの下、「競争から協調へ」との精神に則って、第三国市場、イノベーション及び知的財産保護、食品・農産品を含む貿易・投資、金融・証券、医療・介護、省エネ・環境、観光交流等、潜在力のある分野における互恵的な実務協力を強化するとともに、自由で公正な貿易体制を発展させていくことで一致した。また、互いの企業に対して、公平、非差別的かつ予測可能性のあるビジネス環境を提供することを確認した。
- 上場投資信託(ETF)相互上場の実現(本年6月)、邦銀の人民元クリアリング銀行指定(本年6月)等の日中金融協力の進展、日中イノベーション協力対話(本年4月)及び日中開発協力政策局長級協議(本年5月)の実施、第三国民間経済協力の進捗等、昨年の首脳相互往来の成果が着実に実施に移されていることを歓迎。
- 安倍総理から、日中経済関係の更なる深化及び中国経済の持続的発展の観点から、知的財産保護の強化、強制技術移転や市場歪曲的な産業補助金等の是正を始めとする、中国市場の開放や公平、公正なビジネス環境の構築のための実効的措置を要請。
- 日本産食品の輸入規制について、安倍総理から科学的根拠に基づく早期解除を改めて要請。また、動物衛生検疫協定につき署名の準備が整ったことを確認。早期に署名し、日本産牛肉の対中輸出再開につながることへの期待を表明。
- 海洋プラスチックごみ問題に関する実効的な取組と共に進めていくことを確認。
(4)国民交流・領事
両首脳は、国民交流、特に両国の将来を担う若い世代の双方向の交流(PDF)を通じて相互理解を増進していくことを確認するとともに、本年の「日中青少年交流推進年」を通じ、修学旅行の相互誘致を積極的に進めていくことで一致した。また、人的交流・文化交流に関するハイレベルの対話枠組みを年内に立ち上げることで一致した。
(5)地域・国際社会への貢献
(6)その他
- 香港の最近の状況に関し、安倍総理から、引き続き「一国二制度」の下、自由で開かれた香港が繁栄していくことの重要性を指摘。
- 安倍総理から、いかなる国であっても、自由、人権の尊重や法の支配といった国際社会の普遍的価値が保障されることの重要性を指摘。
2 北朝鮮情勢
3 米中関係
習主席から米中関係の現状について説明があり、安倍総理から、29日に予定される米中首脳会談をはじめ、対話を通じた問題解決の重要性を指摘。
【参考1:日中防衛当局間の海空連絡メカニズム】
日中防衛当局の間で、(1)日中両国の相互理解及び相互信頼を増進し、防衛協力を強化するとともに、(2)不測の衝突を回避し、(3)海空域における不測の事態が軍事衝突又は政治外交問題に発展することを防止することを目的として作成されたもの。2018年5月に東京で開かれた日中首脳会談に際し、安倍内閣総理大臣と李克強中国国務院総理の立ち会いのもと、日中防衛当局間で覚書の署名が行われ、同年6月、本メカニズムの運用が開始。主な内容は、(1)防衛当局間の年次会合及び専門会合の開催、(2)日中防衛当局間のホットライン開設、(3)自衛隊と人民解放軍の艦船・航空機間の連絡方法から成る。
【参考2:日中海上捜索救助(SAR)協定】
2018年10月26日署名、2019年2月14日発効。この協定により、海上捜索救助分野における日中協力に関する法的枠組みが構築され、関係当局(海上保安庁と中国海上捜索救助センター)による一層円滑・効率的な捜索救助活動が可能となる。
【参考3:防衛交流・海上法執行機関の交流】
2018年11月 | 中国人民解放軍東部戦区代表団の訪日 |
2018年12月 | 第10回日中高級事務レベル海洋協議(於:中国浙江省烏鎮) |
2018年12月 | 第1回「海空連絡メカニズム」年次会合・専門会合(於:北京) |
2019年1月 | 第16回日中安保対話(於:北京) |
2019年4月 | 日中佐官級交流(日本側代表団訪中) |
2019年4月 | 第20回北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)専門家会合における日中実務者級会談(於:ロシア・ユジノサハリンスク) |
2019年4月 | 自衛隊艦艇及び海上幕僚長訪中(中国人民解放軍海軍成立70周年(於:中国山東省青島)) |
2019年5月 | 第11回日中高級事務レベル海洋協議(於:小樽) |
2019年5月 | シャングリラ・ダイアローグにおける日中防衛相会談(於:シンガポール) |
【参考4:ETF相互上場】
昨年10月の安倍総理大臣訪中の際に日中の金融当局間で署名された日中証券市場協力に関する覚書及び本年4月に開催された「第1回日中資本市場フォーラム」の際に調印された日本取引所グループと上海証券取引所との間の文書に基づき、日本株ETFの上海株式市場への上場及び中国株ETFの東京株式市場への上場を行うもの。日中両国の投資家の投資機会の拡大につながることが期待される。
【参考5:人民元クリアリング銀行】
人民元クリアリング銀行は、オフショア市場における人民元決済を行うため、中国が各国・地域に設置する決済銀行。東京オフショア市場の発展、中国国内への投資の活性化に寄与。東京のクリアリングバンクは中国の店舗から一定の人民元流動性供給を受けることが可能であり、オフショア人民元市場の流動性拡大にも資する。2018年10月26日に、中国銀行東京支店が日本における人民元クリアリング銀行に指定されている。2019月6月27日、三菱UFJ銀行が指定を受けた。
【参考6:日中イノベーション協力対話】
昨年10月の安倍総理大臣訪中の際、日中両首脳間で、イノベーション及び知的財産分野に関する新たな日中間の対話を創設することで一致し、日中イノベーション協力対話の立ち上げに関する覚書を署名(PDF)。本年4月2日に北京において第1回となる対話を開催し、主に以下について議論。
- 両国のイノベーション政策の紹介とともに、マーケット創造につながる標準の整備(電気自動車の次期充電規格の統一、水素に関する標準や規制のハーモナイゼーション等)、ベンチャー等の企業間交流等に関して意見交換。
- 日中双方で、イノベーション協力の環境整備として知的財産分野における取組が重要であるとの認識を共有し、両国の知的財産分野の政策の紹介とともに、営業秘密の保護、強制技術移転の懸念排除(中国技術輸出入条例(TIER)や外商投資法を巡る最近の動向等)、海賊版対策などの課題について意見交換。
- 既存の枠組みを通じた大学・研究機関間の交流・協力につき意見交換。
【参考7:日中開発協力政策局長級協議】
- 昨年10月の安倍総理大臣訪中の際、日中間の新たな協力として、開発分野における対話の実施に向けた調整を進めていくこととなり、本年5月に日中開発協力政策局長級協議を開催。
- 第1回協議は、日本側は梨田和也・外務省国際協力局長、中国側は、田林(でん・りん)・国家国際発展合作署国際合作司長との間で実施(於:北京)。同協議は、国家国際発展合作署にとり、同署設立(2018年4月)後、先進国ドナーと実施した初の包括的な政策協議。
【参考8:第三国における民間経済協力】
- 2018年5月の李克強・国務院総理訪日の際に、日中双方の関係閣僚間で「第三国における日中民間経済協力に関する覚書」に署名。第三国における日中民間経済協力について、日中ハイレベル経済対話の下、省庁横断・官民合同で議論する新たな「委員会」を設け、具体的な案件を議論していくこと、また、民間企業間の交流の場として「フォーラム」を安倍総理の訪中の際に開催することで一致。
- 同年9月に、「日中民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会」を開催し、第三国における日中民間経済協力に関し、今後、「委員会」や「フォーラム」での議論を通じて、日中企業間で国際スタンダードに合致し、第三国の利益となるプロジェクトが形成されていくよう、政府としても後押しをしていくこと等で一致。
- 同年10月の安倍総理訪中の際に、日中企業・政府関係機関約1,500人が参加する形で「日中第三国市場協力フォーラム」を開催し、日本からは中西経団連会長をはじめ50人以上の財界トップが参加。同フォーラムの開催にあわせて、日中の政府関係機関・企業・経済団体の間で52件の協力覚書(分野:インフラ、物流、IT、ヘルスケア、金融等)が交換された。
【参考9:動物衛生検疫協定】
国境を越えた動物疾病の管理における両国の協力強化を通じて、動物及び動物由来の製品の安全な取引を促進することを目的とするもの。本協定の締結により、日本産牛肉などの畜産物の対中輸出解禁に向けた両国間の調整の加速化が期待される。
【参考10:5年間3万人交流及び「日中青少年交流推進年」】
2018年10月、訪中した安倍総理は、李克強総理との間で、両国国民の相互信頼・理解を醸成する観点から、2019年を「日中青少年交流推進年」と銘打って、今後5年間で3万人規模の青少年交流を実施していくことで一致。この首脳間の合意に沿って、総理訪中に同行した河野外務大臣と王毅国務委員兼外交部長との間で「日本国政府と中華人民共和国政府との間の青少年交流の強化に関する覚書(PDF)」が署名された。
【参考11:日中間の人的往来–直近5年間の人の往来–】
訪中日本人 | 訪日中国人 | 合計 | |
---|---|---|---|
2014年 | 272万人 | 241万人 | 513万人 |
2015年 | 250万人 | 499万人 | 749万人 |
2016年 | 259万人 | 637万人 | 896万人 |
2017年 | 268万人 | 736万人 | 1,004万人 |
2018年 | 269万人 | 838万人 | 1,107万人 |
(注:2018年10月に開催された日中観光大臣会合において、バランス良く増加することにより相互交流人口1,500万人を新たに目指すことを合意。)
【参考12:日中受刑者移送条約】
我が国で刑に服する中国人受刑者及び中国で刑に服する邦人受刑者をその本国に移送し、本国で刑の執行を行うことにより、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰並びに日中間における刑事司法分野の一層の二国間協力を図ろうとするもの。
2010年6月 | 締結交渉第1回会合(東京) |
2011年10月 | 締結交渉第2回会合(北京) |
2015年7月 | 締結交渉第3回会合(東京) |
2018年4月 | 締結交渉第4回会合(北京) |
2018年11月 | 締結交渉第5回会合(東京) |
【参考13:日中犯罪人引渡条約】
中国との間において相互に一定の要件の下で犯罪人を引き渡すことを義務化するとともに、引渡手続を明確化することにより、犯罪人の引渡しの円滑な実施、国外犯罪者の処罰、犯罪の抑圧等に寄与するほか、中国との間での刑事司法分野における協力の一層の進展を図ろうとするもの。
2010年2月 | 締結交渉第1回会合(東京) |
2015年6月 | 締結交渉第2回会合(北京) |
2016年1月 | 締結交渉第3回会合(東京) |
2017年12月 | 締結交渉第4回会合(北京) |
2018年3月 | 締結交渉第5回会合(東京) |
2018年11月 | 締結交渉第6回会合(西安) |
2019年6月 | 締結交渉第7回会合(神戸) |
【参考14:特定技能人材の受入れに係る了解覚書】
在留資格「特定技能」による中国からの人材の受入れに関し、保証金を徴収する等悪質な仲介事業者を排除するため、日中当局間の情報共有と問題解決のための協議の枠組みの構築等を内容とするもの。