中華人民共和国
日中首脳会談


7月8日9時頃(日本時間16時頃)から約40分間(同時通訳),G20サミット出席のためドイツ・ハンブルクを訪問中の安倍総理は,ハンブルク市内のホテルにおいて,習近平・中国国家主席との間で日中首脳会談を行ったところ,概要は以下のとおり(日本側:野上内閣官房副長官,谷内国家安全保障局長,長谷川総理補佐官,秋葉外務審議官ほか,中国側:楊潔篪国務委員,王毅外交部長ほか同席。)。
1 冒頭
(1)冒頭,習主席から,日中は互いに重要な隣国である,日中関係の健全な発展は,両国国民の福祉に関わり,アジアと世界にとっても重要な影響を持つ,G20杭州サミットの際にも会談を行った,本年は日中国交正常化45周年,来年は日中平和友好条約締結40周年である,双方は,責任感と使命感を持って,日中関係が正しい方向に改善・発展していくよう推進していくべきである旨述べた。
(2)これに対し,安倍総理から,習主席と共に国交正常化45周年を祝したい,先月上野動物園で生まれたパンダも元気に育っている,来年の日中平和友好条約締結40周年,更にその先も見据え,関係改善の勢いを更に大きく育てていきたい,日中両国は,世界第二・第三の経済大国であり,地域や世界の安定と繁栄に貢献する大きな責任を共有している,とりわけ北朝鮮の核・ミサイル開発は新たな段階の脅威であり,喫緊の課題である,連携を強化していきたい旨述べた。
2 日中関係
(1)総論
ア 習主席から,以下の旨を述べた。
(ア)日中国交正常化から45年間の経験と啓発に基づき,日中双方は,大局的・長期的観点に立脚し,平和・友好・協力の大きな方向性を正しくつかみ,行動面でも着実な努力をすべきである。日中間の4つの政治文書等の政治的基礎を大切にしながら,実際の行動をもって関係改善を進めていきたい。
(イ)国交正常化以来,日中双方が合意した4つの基本文書等は,台湾問題を含め,日中関係の政治的基礎である。
(ウ)経済・貿易協力は日中関係の推進力であり,実務協力を推進するべきである。
(エ)文化,教育,メディア,地方,青少年等の分野で広範な交流を進め,両国関係の社会と民意の基礎を打ち固めることが可能である。
イ 安倍総理から,以下の旨を述べた。
(ア)45年前,両国は,日中共同声明を発出して国交正常化を果たし,日中平和友好条約においても,平和友好関係の発展を確認した。2006年に自分が訪中した際には,「戦略的互恵関係」の考えを提唱。2008年の共同声明では,「互いに協力のパートナーであり,互いに脅威とならない」との原則を確認した。これらは日中関係の基礎である。
(イ)日中の新しい関係の構築に向けて進めていきたい。アジアは世界の経済成長の源泉。同時に,様々な課題もある。こうした中,日中両国が連携し,グローバルな課題も含めた様々な課題を克服していきたい。
(ウ)両国首脳の頻繁な意思疎通は,両国の経済活動の活発化や両国の国民感情改善にも大いに寄与する。
(エ)日中韓サミットを早期に開催し,首脳の相互訪問実現も念頭に,共に道を切り開いていきたい。
(オ)台湾に関する日本の立場は,1972年の日中共同声明で表明されているとおり。台湾海峡の平和と安定は,地域・世界にとって極めて重要。当事者間の対話を通じて平和的に解決されることを期待。
ウ その上で,両首脳は,以下の点について一致した。
(ア)両国は,日中共同声明や日中平和友好条約を始めとするこれまでの日中間の合意を基礎としながら,引き続き,日中関係の改善を進め,安定的な関係構築を進めていくこと。
(イ)特に,両国首脳同士がリーダーシップを持って関係改善を進め,直接対話を行っていくことが重要であり,今後の様々な国際会議の機会や将来的な二国間訪問も念頭に置き,首脳間の対話を強化していくこと。
(ウ)「45周年」と「40周年」は,国民交流を進める絶好の機会であり,互いに関連の取組を強化し,こうした流れを,2020年と2022年の東京及び北京におけるオリンピック・パラリンピックの機会も活用して,更に拡充していくこと。
(エ)両国国民の利益のためにも,経済面の協力を更に発展させ,金融,観光,貿易,環境・省エネ等,各分野の協力を一層深化させていくこと。特に,日中の金融協力について,関係当局間で積極的に意思疎通を進めていくこと。
(オ)「一帯一路」を含め,日中両国が,地域や世界の安定と繁栄にどのように貢献していくか議論していくこと。
(カ)日中間には様々な課題もあるが,経済は経済,民間交流は民間交流として,発展させていくことが重要であること。
(2)懸案の適切な処理
ア 安倍総理から,東シナ海の状況を改善するよう,中国側に求めた。また,いかなる地域でも,法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が重要である旨を指摘した。
イ これに対し,習主席からは,東シナ海の平和と安定を維持していく旨述べた。
ウ 両首脳は,日中防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向けて共に努力していくことで一致した。また,日本側から,東シナ海における日中協力に関する「2008年合意」の実施について働きかけた。
エ 安倍総理から,邦人拘束事案について提起し,前向きな対応を求めた。