中華人民共和国
安倍総理の訪中(全体概要)

(写真提供:内閣広報室)

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安倍総理は,10月25日から27日にかけて,中国・北京を訪問したところ,概要は以下のとおりです。なお,今次訪問は,多数国間会議への出席を除き,日本の総理大臣として約7年ぶりの訪中となりました。
1 主な日程
- 歓迎式典
(写真提供:内閣広報室) - 歓迎式典
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25日 | 午後 | 日中平和友好条約締結40周年レセプション等 |
夜 | 李克強総理主催少人数夕食会 | |
26日 | 午前 | 栗戦書・全国人民代表大会常務委員長との会談 |
歓迎式典 | ||
李克強総理との日中首脳会談 | ||
署名式・共同記者発表 | ||
第三国市場協力フォーラム | ||
昼 | 李克強総理主催昼食会 | |
午後 | 北京大学における学生との交流 | |
習近平国家主席との日中首脳会談 | ||
習近平国家主席夫妻主催夕食会 |
2 日中首脳会談等の概要
(1)栗戦書全人代常務委員長との会談(26日午前)

(写真提供:内閣広報室)

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ア 冒頭,栗委員長から,今年は日中平和友好条約締結40周年であり,過去を引き継ぎ将来に繋げる節目である,双方の努力の下,日中関係は正常な軌道に戻り,良い方向へ向かう状況にあり,この得がたい流れを大切にすべきとの発言があった。
イ また,日中関係の改善を更に進める観点から,平和共存・恒久の友好という日中平和友好条約の原則を堅持すべきこと,民間交流の基礎である映画や音楽を含めた文化交流を推進すべきこと等について発言があった。
ウ これを受けて,安倍総理からは,先般日本で行われた日中与党交流協議会を取り上げ,日中両国の議会間・政党間交流は現在の日中関係の改善・発展の流れを支える重要な柱であり,今後も栗委員長の協力を得ながら,日中関係を更に発展させていきたい旨述べた。
エ また,安倍総理からは,7月に訪中し栗委員長と面会した大島衆議院議長からの挨拶を伝えつつ,栗委員長の訪日を改めて招請した。これに対して,栗委員長から,立法府の交流は日中関係の重要な一部である,大島議長との会談では,交流を全方位で拡大していくことで合意している,機会があれば訪日したいと考えており,大島議長の御招待に感謝したい旨の反応があった。
(2)李克強総理との会談(26日午前)

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(ハイレベル往来等)
ア 安倍総理からは,今回の訪中を次のステップである習主席の訪日につなげていきたい旨述べ,李総理からもこれに対して肯定的な反応があった。また,李総理からは,来年中国で行われる日中韓サミットへの参加招請があり,安倍総理は同サミットの機会に改めて訪中する意向を示した。
イ 両首脳は,日中関係を新たな段階に進めていくために,戦略的意思疎通の強化が重要との認識で一致し,外交当局間で幅広い分野における対話や交流を深めていくこととなった。
ウ 両首脳は,第三国民間経済協力について,本年5月の李総理訪日の際の合意に基づき,先月の民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会及び今回の第三国市場協力フォーラムが開催され,52本の協力覚書が交換されたことを歓迎した。 また,両首脳は,イノベーション及び知的財産分野の協力を議論するため,日中イノベーション協力対話を新たに創設することで一致した。
エ 両首脳は,金融分野で,(ア)人民元クリアリング銀行の指定,(イ)通貨スワップ協定(注:互いの通貨が不足した日中の金融機関に対して,同通貨を供給するためのもの)の締結・発効,(ウ)日中証券市場協力の強化等の成果があったことを歓迎した。
オ 日本産食品の輸入規制問題については,安倍総理から改めて早期の規制解除を求めたのに対し,中国側からは,科学的評価の基礎の上に,輸入規制を緩和することを積極的に考えたい旨の表明があった。日本側としてもこれを評価し,残された課題についても,引き続き早期の解決を図ることで一致した。また,安倍総理から,コメの輸出拡大に対する期待を表明した。
カ 両首脳は,パンダについては,新たなパンダの供与に向けた環境を整えるための政府間覚書の交渉を進めていくことで一致した。
キ 両首脳は,日中社保協定の早期発効に向け協力していくことを確認したほか,介護や通関円滑化等の分野での協力の進展を歓迎した。
ク 両首脳は,RCEPの早期妥結及び日中韓FTAの交渉加速化を目指すことでも一致した。また,WTO改革を進めていくことでも一致した。
(対中ODAに代わる協力)
ケ 安倍総理からは,本年が中国の改革開放40周年にあたることを踏まえ,改革開放は日中両国にとって大きな役割を果たした旨を述べつつ,その更なる深化に期待を表明した。その上で,日本政府として,今年度を以て全ての対中ODAの新規供与を終了することを決定した旨を伝達した。同時に,両首脳は,今後,新たな次元の日中協力として,開発協力分野における対話や人材交流の実施に向けた調整を進めていくことで一致した。
コ また,両首脳は,来年の大阪G20サミットの機会も捉え,SDGs,気候変動,保健,海洋プラスチックごみ等,地球規模課題に関する協力も深めていくことで一致した。この文脈で,李総理からは,大阪G20の開催成功に向けて,中国としても協力したい旨の発言があった。
(国民交流・領事分野の協力)
サ 両首脳は,両国国民の相互信頼・理解を醸成する観点から,双方向の国民交流,特に若い世代や地方都市間の交流を更に拡大する必要があるとの認識で一致した。
シ このため,両国は,来年を「日中青少年交流推進年」と銘打つとともに,日中両国合わせて,今後5年間で3万人の青少年交流を進めていくことで一致した(注:日本側では,日中緑化交流基金等,既存の枠組みを活用することを検討。)。また,2020年及び2022年にそれぞれ東京及び北京でオリンピック・パラリンピックを開催する機会も十分に活用していくべきとの認識でも一致した。
ス 安倍総理から,邦人拘束事案の問題を提起し前向きな対応を求めた。これに対し,李総理から,中国の法令に基づき適切に対処するとの説明があった。
(海洋・安全保障)
セ 東シナ海の問題については,東シナ海の安定なくして真の関係改善なしとの認識の下,安倍総理から日本側の問題意識を改めて伝えた。
ソ その上で,両首脳は,両国民の間の相互不信を解消し,建設的な関係を築いていく上でも,海洋・安全保障分野における具体的な進展が重要であるとの認識で一致した。この観点から,本年5月に合意した防衛当局間の海空連絡メカニズムの初の年次会合の年内開催で一致した。また,日中海上捜索・救助(SAR)協定の署名も歓迎した。
タ また,今後,防衛大臣・国防部長の相互訪問や,艦艇の相互訪問を含む防衛当局間の交流・対話,さらには,海上法執行機関間の交流を進めていくこととなった。
チ 資源開発に関する「2008年合意」については,完全な堅持を確認しつつ,その実施に向けた交渉の早期再開をめざし,意思疎通を一層強化していくことで一致した。
(地域・国際情勢)
ツ 北朝鮮については,日中両国の共通の目標である朝鮮半島の非核化に向けて,関連安保理決議の完全な履行の重要性を改めて確認した。安倍総理からは,拉致問題に関する日本の立場を改めて説明し,李総理からは,これを理解し,支持するとの反応があった。
テ 李総理から,最近の米中経済関係について説明があり,これに対して安倍総理からは,WTOをはじめとする多角的自由貿易体制を一貫して重視する日本の立場を説明すると同時に,補助金や知的財産権を含む問題について中国側が更なる改善を図っていくことが重要である旨指摘した。
ト 安倍総理から,ウイグルの情勢も念頭に,中国国内の人権状況について注視しており,意思疎通を強化したい旨述べた。
(夕食会・昼食会)
ナ 両首脳は,25日夜及び26日昼,食事を挟みつつ,和やかな雰囲気の中で,日中関係及び地域・国際情勢について,率直に意見交換を行った。特に,両首脳の間では,日中両国の共通の課題である高齢化社会への対応について話が弾む場面があった。
- 李克強国務院総理との懇談(10月25日)
(写真提供:内閣広報室) - 李克強国務院総理との懇談(10月25日)
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(3)習近平国家主席との会談(26日午後)

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(ハイレベル往来)
ア 安倍総理から,来年の習主席の訪日を改めて歓迎する旨を述べ,習主席からは謝意を表しつつ,真剣に検討したいとの反応があった。また,安倍総理からは,来年,中国で行われる日中韓サミットの際に再度訪中することを楽しみにしている旨を述べた。
イ 両首脳は,国民交流について,近年の訪日観光客の増加が中国国民の対日観の多様化に役立っているとの認識で一致した。その上で,両首脳は,2020年及び2022年に東京及び北京がそれぞれオリンピック・パラリンピックを開催する機会も生かしつつ,若い世代を中心とする国民交流を後押ししていくことで一致した。
(経済分野の協力)
ウ 両首脳は,本年5月の李総理の訪日及び今回の安倍総理の訪中を通じ,第三国民間経済協力,イノベーション及び知的財産に関する新たな日中対話,金融協力の深化等について多くの成果が得られたことを歓迎した。
エ 日本産食品の輸入規制解除については,安倍総理から早期実現を改めて要請した。
(ODAに代わる協力)
オ 安倍総理からは,対中ODAの新規供与終了を踏まえ,今後は,開発分野における対話・人材交流や地球規模課題における協力を通じ,両国が肩を並べて地域・世界の安定と繁栄に貢献する時代を築いていきたい旨を述べた。これに対して,習主席からは,日本のODAによる貢献を高く評価する旨述べた上で,こうした協力について前向きな発言があった。この文脈の中で,双方は,来年の大阪G20の成功のために協力していくことで一致した。
(海洋・安全保障)
カ 東シナ海の問題については,安倍総理から日本側の問題意識を改めて伝えた上で,現場の状況の改善を求めた。また,引き続き意思疎通を強化し,不測の事態の回避に努めることで一致した。
(領事分野の協力)
キ 安倍総理から,邦人拘束事案の問題を提起し前向きな反応を求めた。これに対し,習主席から,中国の法令に基づき適切に対処するとの説明があった。
(地域・国際情勢)
ク 両首脳は,日中両国の共通の目標である朝鮮半島の非核化に向けて,関連安保理決議の完全な履行の重要性を改めて確認した。安倍総理からは,拉致問題に関する日本の立場を改めて説明し,習主席からは,李総理同様,これを理解し,支持するとの反応があった。
ケ 現在の米中関係を念頭に,米国との関係についても率直な意見交換が行われた。安倍総理からは,米国との同盟関係を外交安全保障の基軸としつつ,アジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献するとの日本の立場について説明を行った。
コ この文脈で,習主席から,最近の米中経済関係について説明があり,これに対して安倍総理からは,WTOをはじめとする多角的自由貿易体制を一貫して重視する日本の立場を説明すると同時に,補助金や知的財産権を含む問題について中国側が更なる改善を図っていくことが重要である旨指摘した。
(夕食会)
サ 安倍総理夫妻は,習近平主席夫妻主催の夕食会に参加し,非常にくつろいだ雰囲気の中で,それぞれの国内事情やスポーツ交流等について話がはずんだ。
3 その他の行事
(1)日中平和条約締結40周年レセプション等(25日午後)

挨拶をする安倍総理大臣
(写真提供:内閣広報室)

挨拶をする安倍総理大臣
(写真提供:内閣広報室)
ア 安倍総理と李克強総理は,人民大会堂において,日中人民対外友好協会主催の日中平和友好条約締結40周年記念レセプションに出席した(安倍総理挨拶)。レセプションには日中双方の各界から約800人の関係者が参加した。
イ また,両首脳は,日中平和友好条約の締結に携わった関係者らと記念撮影を行ったほか,「日中経済協力写真展」を共に参観し,中国の改革開放に対する日本の対中ODAによる貢献を含め,経済分野における日中協力のこれまでの歩みを振り返った。
(2)署名式・共同記者発表(26日午前)

(写真提供:内閣広報室)

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ア 安倍総理と李克強総理は,首脳会談の直後に共同記者発表を行った。
イ 両首脳は,以下の12本の国際約束・覚書の署名に立ち会った(注)。
- (ア)日本国政府と中華人民共和国政府との間の海上における捜索及び救助についての協力に関する協定
- (イ)日本国政府と中華人民共和国政府との間の青少年交流の強化に関する覚書(PDF)
- (ウ)日本国外務省と中華人民共和国外交部との間の交流・協力の年間計画の作成に関する覚書(PDF)
- (エ)日本国外務省及び経済産業省と中華人民共和国国家発展改革委員会及び商務部との間の日中イノベーション協力対話の立ち上げに関する覚書(PDF)
- (オ)日本国経済産業省と中華人民共和国国家発展改革委員会との間の包括協力を深化させるための覚書
- (カ)日本国経済産業省と中華人民共和国工業信息化部との間の「日中産業大臣対話」設立に関する覚書
- (キ)日本国金融庁と中華人民共和国証券監督管理委員会との間の「日中証券市場協力」に関する覚書
- (ク)日本国における認定事業者制度及び中華人民共和国における企業信用管理制度の相互承認に関する日本国税関当局と中華人民共和国税関当局との間の取決め
- (ケ)日本国厚生労働省と中華人民共和国国家衛生健康委員会との間の高齢者介護の協力に関する行動計画「2018年―2022年」
- (コ)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と北京2022年オリンピック・パラリンピック冬季競技大会組織委員会との間の交流と協力に関する覚書
- (サ)日中通貨スワップ協定
- (シ)人民元クリアリング銀行設置に係る覚書
- (注)上記(サ)及び(シ)については,総理訪中に合わせ,事前に署名。
(3)第三国市場協力フォーラム(26日午後)

(写真提供:内閣広報室)

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安倍総理は,日中の財界トップを含め,約1,500名の参加を得て開催された「第1回日中第三国市場協力フォーラム」に出席し,挨拶を行った。同フォーラムに合わせ,両国の政府関係機関・企業・経済団体等の間で,インフラ,物流,IT,ヘルスケア,金融等に関する52件の協力覚書が署名・交換された。
(4)北京大学における学生との交流(26日午後)

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安倍総理は,北京大学を訪問し,同大学の日本語日本文化学科,経済学部,国際関係学部,ライフサイエンス学部等の学生約40人と交流した。質疑応答では,日中の戦略的互恵関係と今後の見通し,アベノミクスの成果と世界経済,イノベーションによる新たな成果と日中の協力,文化交流の歴史や来年の「日中青少年交流推進年」等についてやり取りが行われた。