中華人民共和国

平成30年10月26日
安倍総理また日中双方関係者各位,プレス関係者各位とここでお会いできて大変嬉しく思います。今回の安倍総理の訪問について,日中関係を前向きに進めていこうという情熱溢れる報道に感謝します。

今年5月,自分(李総理,以下同じ。)は日本を訪問しました。双方は日中関係を再び正常な軌道に戻すことを推進し,プレス関係者の皆さんもそのために多大な努力を払ってこられました。そして,それから半年経たないうちに安倍総理が中国を正式訪問し,半年の間に両国首脳による相互訪問が実現しました。これは双方の人民が日中関係を改善させ,関係を再び正常な軌道に戻し,平和友好を実現し,その過程において互恵・ウィンウィンを果たし,共同発展を実現することへの願いを示すものです。また,現下の地域・国際社会において平和安定を維持し,手を携えてチャレンジに立ち向かうことへの期待を示すものです。中国の諺には,「百里の道を歩く者は,九十里まで行ってもまだ半分(中文:行百里者半九十。注:物事は成功に近づくほど困難になるため,最後までやり遂げることが重要である意。)というものがあります。また,いわゆる「高い山を作るにも,最後の一盛りがなければ完成しない(中文:為山九仭,功虧一簣。注:最後の一歩が足りず失敗に終わる意。)という言葉にもあるように,物事を進めるには,たゆまぬ努力が必要であり,積み上げてきた努力が最後に台無しになることを防がなければなりません。我々が日中関係を発展させていく上でも,根気よく前向きに進めていかなければならず,再び新たな紆余曲折が発生することを避けなければなりません。

自分から,日本の友人の皆さん,プレス関係者の皆さんに率直な思いを申し上げます。中国は日本と歩み寄り,両国関係が正常な軌道に戻り,安定的,持続的かつ健全に発展し,新たな進歩を実現できるよう推進したいと考えています。

先ほど安倍総理と会談を行い,双方が共に関心を有する問題,日中協力,国際や地域問題について幅広く突っ込んだ率直な意見交換を行い,幅広いコンセンサスを得ました。双方は長期的,安定的かつ健全な日中関係の擁護は,両国はもとより,地域及び世界にも有利であるとの認識で一致しました。双方は,日中間の4つの政治文書の諸原則を遵守し,歴史,台湾問題を適切に処理し,両国関係の政治的基盤を擁護することを共に確認しました。双方は共に,実際の行動をもって,互いにパートナーとなり,互いに脅威とならず,互いに相手の平和的発展を支持するとの政治的共通認識を体現し,建設的に意見の対立をコントロールし,両国関係を安定的かつ健全に発展させていくとの認識を示しました。

中国側は,日本側との良いインタラクションを更に強化し,「歴史を鑑とし未来に向かう」の精神で,協調・協力を基礎とした政策を講じていきたいと考えています。これは我々の政策の基調であり,我々の間の関係の改善は持続的かつ絶えることのないプロセスであります。

双方はハイレベルのリーダーシップ及び次の段階の重要なアジェンダについて,意思疎通を維持することで一致しました。中国側は,日本がG20大阪サミットを成功裏に開催することを支持し,来年の適時に行われる第8回日中韓サミットの際に,安倍総理の訪中を招待します。双方は,「日中ハイレベル政治対話」や日中ハイレベル経済対話等の重要な枠組みを引き続き活用していくことで合意しました。

双方は,経済・貿易分野についても突っ込んだ意見交換をしました。今回,我々は両国の間で結ばれた協定の署名式に立ち会いました。その中には,両国関係の各方面のことが含まれています。今回,日本からは1000人近くの企業家が訪中し,500件余りの合意に達しました。見積もりによれば,金額にして180億ドル余りに上ります。これは双方の協力の潜在性が巨大であり,展望が明るいことを示しています。

中国側は,日本を含む各国の企業家が中国で投資することを歓迎します。中国側は,市場化,国際化,法治化されたビジネス環境を整えていきます。

双方はまた,昨今の世界経済及び新たな産業革命の情勢の下,更に高いレベルでの協力を進め,特にイノベーション協力メカニズムを作り,科学技術イノベーションや省エネ・環境保護,高齢者ケア,医療等の協力を進め,厳格に知的財産を保護していくとの認識で一致しました。

双方はまた,多くの政府間の合意にも達しました。我々は引き続き「日中ハイレベル政治対話」を活用し,日中ハイレベル経済対話等の重要な枠組みを引き続き活用していくことで合意しました。我々はさらに,SAR協定等の実施の計画についても妥結し,日中双方通貨スワップについても合意に達し,日本において人民元クリアリング銀行が開設されます。現下の複雑な国際金融環境において,自分が繰り返し述べていますとおり,中国側は人民元レートを強制的に引き下げる意図はありません。中国は人民元レートの合理的かつバランスのとれたレベルでの基本的安定を維持し,中国の金融経済の安定を維持していきます。日本との通貨スワップ及び金融協力の強化は,双方が共に金融市場を安定させていく上で非常に有利であると言えます。

双方は,引き続き外交,マクロ経済,財政,ビジネス,文化,防衛等関係部門間の対話と接触を行っていくことで合意し,複数の相互間交流の合意に署名しました。双方はまた,防衛当局間の海空連絡メカニズムの下のホットラインを早期に開設し,メカニズムの下の対話の年内実現を目指すことで合意しました。

我々は,社会文化交流についても強化したいと考えており,日中ハイレベル社会文化交流協議メカニズムの立ち上げについて原則合意に達し,オリンピック協力に関する覚書,民間交流については社会文化交流,とりわけ青少年交流に関する覚書にも調印しました。
来年を日中青少年交流促進年に位置づけることをここに共に宣言します。これによって,両国の国民同士,とりわけ次世代の青少年の相互理解を促進したいです。現下の国際情勢には,不安定,不確定要素が増加しており,反グローバル化の動きが強まっています。双方は,本地域及び世界における重要な影響力を持つ国として,積極的に自由貿易を擁護していくべきとの認識を示しました。我々は,RCEP交渉を加速させ,日中韓FTAの交渉を推進したいと考えています。アジア地域経済の一体化を実現することにより,世界の自由貿易の発展及びFTAの基本的ルールの下のグローバル貿易の持続的かつ健全な発展に有利なものとなります。

最近,朝鮮半島の情勢は総じて対話の勢いが続いています。我々は,関係各方面が対話とインタラクションを維持していることに歓迎の意を表します。双方は,朝鮮核問題について意思疎通と協力を行うことで合意しました。中国側は,日朝が対話を通じて関係を改善し,双方間の懸案が適切に解決されることを支持します。

日中は互いに重要な隣国同士であり,平和・友好・協力は,双方が終始しっかりと把握すべき大きな方向性であります。日中は共にアジアの重要な国であり,地域の安定を擁護し,地域の発展を進めていくことは両国共通の責任であります。日中はいずれも世界の主要な経済体であり,共に実際の行動を通じて日中間の協力を推進し,同時に共に相互の優位性を発揮し,第三国の市場を開拓していくことは,世界経済の発展により多くの安定的な要素を注ぎ込み,自由貿易とルールに基づく多国間主義を擁護することに資するものです。

両国が大局に立脚し,ぶれない力(中文:定力)を維持すれば,両国関係は必ずや正常な軌道に戻った上で,持続的,安定的かつ健全に前進していくことができ,絶えず新たな進歩を獲得し,素晴らしい未来を築くことができると信じています。ありがとうございます。

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