外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

5 西部アフリカ地域

(1)ガーナ

アクフォ=アド政権は、「援助を越えたガーナ(Ghana beyond Aid)」構想を掲げ、財政健全化や産業多角化等に取り組んでいる。

2018年は、2月から4月にかけて、アジャコ・エネルギー相、アチャンポン・ガーナ日友好議員連盟会長、オフォリ=アタ財務相が訪日、4月に薗浦内閣総理大臣補佐官、9月に牧原厚生労働副大臣がガーナを訪問した。

また、10月のTICAD閣僚会合にはボチュウェイ外務・地域統合相が出席し、河野外務大臣との昼食会が実施された。

12月には、アクフォ=アド大統領が訪日し、安倍総理大臣との首脳会談等が実施され、両国関係を新たな高みへと引き上げることで一致した。また、同国の投資促進に向けて日本貿易振興機構(JETRO)・在京ガーナ大使館共催で投資フォーラムが開催された。

河野外務大臣によるアクフォ=アド・ガーナ大統領への表敬(12月11日、東京)
河野外務大臣によるアクフォ=アド・ガーナ大統領への表敬
(12月11日、東京)
COLUMN
ガーナのホストタウン「猪苗代町」
~野口英世生誕の地~
猪苗代町

2018年12月13日、ガーナのアクフォ=アド大統領が福島県の猪苗代町を訪れました。ガーナの大統領としては2002年以来16年ぶり三度目の訪問で、昼食や野口英世記念館の視察を含めても3時間あまりの滞在時間でしたが、地元翁島(おきなしま)小学校の児童の出迎えなど町を挙げての受入れ準備を進めました。

町役場では歓迎式典が行われ、前後町長からは記念品として地元の伝統工芸品である「中ノ沢こけし」をお贈りしました。このこけしは、目や鼻の大きさに特徴があり、地元では「たこ坊主」の愛称で親しまれてきたものです。

中ノ沢こけしの贈呈(写真提供:猪苗代町)
中ノ沢こけしの贈呈(写真提供:猪苗代町)

アクフォ=アド大統領からは、ガーナにある日本大使館前の道路に野口英世博士の名前を付けたことやガーナでの水稲生産や農産物加工に日本の技術を取り入れたいとの挨拶がありました。

猪苗代町は野口博士の生誕の地であり、黄熱病の研究の中で自らも病により亡くなった終焉(しゅうえん)の地がガーナです。野口博士の功績は今も両国で称(たた)えられ、これまでも様々な形で交流を続けてきました。

中でもガーナの高校生の日本研修を支援している「ガーナよさこい支援会」のご協力により、2007年からガーナの高校生の日本研修旅行の日程に猪苗代町への訪問を加えていただきました。今ではホームステイを交えて猪苗代高校の生徒との交流が盛んに行われるようになり、2018年度には町民運動会にも参加していただいております。

猪苗代高校生との交流(写真提供:猪苗代町)
猪苗代高校生との交流(写真提供:猪苗代町)

また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、猪苗代町がガーナのホストタウンにも登録され、事前トレーニングキャンプの開催地にも選定されました。

2018年12月にはガーナオリンピック委員会のメンサ委員長や駐日ガーナ大使館のクワシ公使などをお迎えして各種競技施設の視察とともに事前キャンプについての協定の締結式も行われました。

事前キャンプ協定締結式(写真提供:猪苗代町)
事前キャンプ協定締結式(写真提供:猪苗代町)

さらに野口英世博士のアフリカでの功績を称える賞も設けられています。内閣府が主催する野口英世アフリカ賞です。2008年に第1回、2013年に第2回の受賞式が横浜で行われ、医学研究分野と医療活動分野の2部門において英国の研究者などが受賞されました。2019年8月には第3回の授賞式が予定されており、アフリカを舞台にした優れた功績が表彰されるとともに博士の偉業が改めて顕彰されることとなります。

博士が実家の柱に刻んだ「志を得ざれば再び此の地を踏まず」は知られていますが、もう一つ博士が残した言葉に「目的・正直・忍耐」があり、町内小中学校の教育スローガンにもなっています。この子供たちが、やがてガーナとの交流の裾野を広げていくことを期待しています。

野口英世記念館にて(写真提供:猪苗代町)
野口英世記念館にて(写真提供:猪苗代町)

(2)コートジボワール

1月、アビジャンで開催された国際セミナーにおいて、西アフリカ地域の連結性を強化するため、日本の技術協力の下で作成された西アフリカ「成長の環」広域開発マスタープラン(基本計画)が発表され、コートジボワールを始めとする関係国により承認された。アビジャンは日・フランス協力のパイロット都市ともなっている。

2月には、クアク・コートジボワール経済インフラ相が訪日し、4月には、薗浦内閣総理大臣補佐官、8月には、牧原厚生労働副大臣がコートジボワールを訪問した。10月のTICAD閣僚会合にはカバ計画・開発相が出席し、佐藤外務副大臣と会談を行い、経済関係の更なる強化に向け取り組んでいくことが確認された。

(3)シエラレオネ

選挙を経て4月に発足したビオ新政権は、安定し、平和で開かれた多元的な民主主義を構築することに焦点を当て、雇用創出、質の高い教育等を優先分野として取り組んでいる。5月の大統領就任式には、日本から逢沢・日・AU友好議員連盟会長が総理大臣特使として出席し、ビオ大統領への表敬、カバ外務・国際協力相との会談を実施した。

また、8月には、牧原厚生労働副大臣及び牧島かれん衆議院議員がシエラレオネを訪問し、ジャロ副大統領に表敬等を行ったほか、10月のTICAD閣僚会合にはカバ外務・国際協力相が出席し外相会談が行われ、先方から日本の支援に対する感謝の意が表明された。

(4)セネガル

安定した内政状況と西アフリカの玄関としての位置付けから、日本企業からの関心が高まっており、1月には、約20社の日本企業の参加を得て、日・セネガル官民インフラ会議がダカールで開催された。同会議には、牧野国土交通副大臣が出席し、ジャロ・インフラ・陸上運輸・交通整備相との間で「質の高いインフラ投資」の推進及び協力関係の継続に係る覚書に署名を行った。

また、8月には奥野総務副大臣が、11月には第5回アフリカの平和と安全に関するダカール国際フォーラム出席のため佐藤外務副大臣がセネガルを訪問した。

10月のTICAD閣僚会合にはカバ外務・在外セネガル人相が出席し、外相会談が行われ、日本企業の進出の後押しに向けて二国間投資協定の締結に向けて協力していくことを確認した。

(5)トーゴ

2015年に3期目となる再選を果たしたニャシンベ大統領の長期政権下にあるトーゴでは、2020年に大統領選挙を控え、再選禁止条項のない現行憲法に対し野党が反発、デモ隊と治安部隊が衝突し死傷者が出るなど治安情勢に影響を与えている。一方、トーゴは、2018年7月まで西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)議長国を務め、ギニアビサウの政治的緊張の改善に向け働きかけを行ったほか、同月末にECOWAS-ECCAS(中央アフリカ諸国経済共同体)合同首脳会合及びECOWAS首脳会合をロメで開催した。

8月には、牧原厚生労働副大臣がトーゴを訪問し、ニャシンベ大統領への表敬等を行った。

(6)ナイジェリア

ナイジェリアは経済的に高い潜在性を有し、進出に高い関心を有する日本企業も多い一方、北東部を中心にイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」によるテロ行為が問題となっている。

7月には、ブハリ大統領がECOWAS新議長に就任した。域内の平和と安定を主な焦点とし、ギニアビサウ議会選挙に対して選挙実施支援及びブロウECOWAS委員長の派遣を行ったほか、域内単一通貨導入や事務局の組織改革に向けた取組を推進した。

9月には秋元国土交通副大臣がナイジェリアを訪問し、アマエチ交通相との間で「質の高いインフラ投資」推進協力に係る覚書の署名が行われた。

(7)ブルキナファソ

2014年の政変以降、内政が流動化していたが、2015年のカボレ大統領の就任以降、政治情勢は比較的安定している。一方、隣国マリの情勢悪化の影響を受けて同国からのイスラム過激派の流入が問題となっており、2018年3月には、首都ワガドゥグでテログループによる国軍統合参謀本部への襲撃事件が発生する等、複数のテロ事案が発生している。

また、同国は台湾と外交関係を有するアフリカ2か国のうちの一つであったが、5月には、台湾と断交し中国との国交を回復した。

10月のTICAD閣僚会合には、アルファ・バリー外務・協力・在外ブルキナファソ人相が出席し、外相会談が行われた。11月には、公式実務訪問賓客としてカボレ大統領夫妻が訪日し、安倍総理大臣と首脳会談を行い、友好協力関係の強化を確認した。

日・ブルキナファソ首脳会談:儀じょう隊による栄誉礼及び儀じょう(11月19日、東京 写真提供:内閣広報室)
日・ブルキナファソ首脳会談:儀じょう隊による栄誉礼及び儀じょう
(11月19日、東京 写真提供:内閣広報室)

(8)ベナン

ベナンは、西アフリカの民主主義の模範とも言われており、1990年代以降、平和的に大統領の交代が行われている。実業家出身で汚職対策を政権の最重要課題とするタロン大統領は、2016年就任以降安定した政権運営を行っている。

また、アベノンシ外務・協力相は、6月及びTICAD閣僚会合が開催された10月に訪日した際に外相会談を行い、二国間関係や国際場裏での協力について議論した。

日・ベナン外相会談(10月7日、東京)
日・ベナン外相会談(10月7日、東京)

(9)マリ

独立以降、北部のトゥアレグ族勢力との対立に直面してきたマリでは、2015年にマリ政府と北部武装勢力との間で結ばれた和平・和解合意から3年が経過してなお、同合意の実施が引き続き課題となっている。

また、北部からのイスラム過激派の流入と中部以南及び周辺国へのテロの拡散が深刻な問題となっており、これに対応するため、フランスのバルカンヌ作戦及びG5サヘル諸国(マリ、モーリタニア、ブルキナファソ、ニジェール及びチャド)が中心となったG5サヘル合同部隊が展開されている。

日本は、マリの警察及び司法当局に対して治安維持機材を供与しているほか、国連機関と連携し、マリ平和維持学校の支援も実施している。

8月に行われた大統領選挙では、現職のケイタ大統領が野党候補を破り再選した。

10月のTICAD閣僚会合には、カミサ・カマラ外務・国際協力相が出席し、外相会談を行い、マリの治安対策や国際場裏における協力について議論した。

(10)リベリア

リベリアでは、2011年にノーベル平和賞を受賞したアフリカ初の民選女性大統領であるサーリーフ前大統領が2期大統領を務めた後、2017年12月の選挙の結果、日本のサッカーチームの総監督も務めた経験のある元プロサッカー選手のウェア氏が大統領に就任した。1月の大統領就任式には佐藤外務副大臣が総理大臣特使として出席し、ウェア大統領への表敬等が行われた。

10月のTICAD閣僚会合にはフィンドリー外相が出席し、外相会談が行われ、リベリア側から日本の対リベリア支援に対する謝意が表明された。

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