第7節 アフリカ
1 概観
アフリカは、54か国に12億人を超える人口を擁し、高い潜在性を持つ市場と豊富な天然資源により国際社会の関心を集めてきた。政治面でも国際社会への影響力は拡大しており、2018年には多くの国で民主的に政権交代が成し遂げられ、3月には44か国がアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)1設立協定に署名する等経済統合が進展した。また、G5サヘル(マリ、モーリタニア、ブルキナファソ、ニジェール及びチャド)による地域の安定化に向けた努力やエチオピア・エリトリア間の国交正常化を始めとするアフリカの角の安定化への動き、政府間開発機構(IGAD)等の仲介による南スーダンの新和平合意等、アフリカ自身による紛争解決の努力が進められている。
一方、政情不安や深刻な格差・貧困等従来の課題に加え、保健システムの脆弱(ぜいじゃく)性や暴力的過激主義の台頭、若者を中心とする雇用不足、一部の国での公的債務の増加に伴う財政状況及び投資環境の悪化が顕在化している。これらの課題の克服は国際社会全体の平和と安定にとっても重要である。
日本は1993年に、アフリカのオーナーシップ(主体性)の尊重と日本を含む国際社会とのパートナーシップの推進を基本理念としてアフリカ開発会議(TICAD)を発足させ、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行(WB)及びアフリカ連合委員会(AUC)と共に、アフリカの取組を後押ししてきた。
2016年8月にナイロビ(ケニア)で開催した6回目となるTICAD VIでは、安倍総理大臣から、2016年から2018年までの3年間で約1,000万人の人材育成を始め、官民総額300億米ドル規模の「アフリカの未来への投資」を発表した。
2018年10月に東京で開催されたTICAD閣僚会合では、河野外務大臣、佐藤外務副大臣、山田外務大臣政務官、辻外務大臣政務官等が出席し、TICADV及びTICAD VIで発表した取組の進捗状況を確認するとともに、債務持続可能性等の援助における国際スタンダードの確保や官民連携等について確認し、2019年8月に横浜で開催されるTICAD7に向けた議論を行った。

(10月6日、東京)

(10月7日、東京)

(10月6日、東京)
日本は、TICADも踏まえ平和と安定の分野でも取組を強化しており、国連南スーダンミッション(UNMISS)への司令部要員派遣を継続しているほか、アフリカ各国の国連平和維持活動(PKO)の能力強化等を行っている。また、8月に5人のアフリカ元首脳2を招待して、「アフリカ賢人会議」コアグループ会合を日本財団と共催し、日本側からは森元総理大臣及び笹川陽平日本財団会長が参加した。安倍総理大臣と河野外務大臣による挨拶に引き続き、平和と安定の確保に向けアフリカ自身が取り組むべき課題等に関し議論が行われ、制度構築等での日本の取組に期待が示された。
経済面では、日本企業のアフリカ進出への高い期待に応え、5月にヨハネスブルク(南アフリカ)で日・アフリカ官民経済フォーラムが開催され、世耕経済産業大臣、岡本外務大臣政務官及び高橋国土交通大臣政務官が出席し、日・アフリカ諸国の政府、民間企業、国際機関の間でビジネスの可能性や課題を議論し、計16の覚書が作成された。また、7月に堀井学外務大臣政務官を団長としてアフリカ貿易・投資促進合同ミッションをルワンダ及びザンビアに派遣した。加えて、10月のTICAD閣僚会合では、西村内閣官房副長官主催朝食会に日本企業やアフリカ8か国の閣僚を招待し、TICAD7に向け官民連携に関する意見交換を行った。さらに、8か国と投資協定の締結に向けた協議を実施している。
また、2018年初頭にはアフリカ連合(AU)日本政府代表部を設置するなど、AU及びアフリカ各国との協力の一層の強化を図るとともに、米国、英国、フランス、インド等の第三国とは、アフリカに関する政策協議等を通じ情報交換と政策協調に努めている。

2019年8月28日から30日まで、神奈川県横浜市において第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催されます。TICADは、日本と国際連合、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)が共催者となり、アフリカ諸国や関係国、市民社会等が一堂に会してアフリカの開発をテーマに話し合う国際会議です。
TICAD7に向けて、今後様々なイベントが横浜でも開催される予定であり、2019年の横浜市は、まさに「アフリカに一番近い都市」としてアフリカ一色となります。
横浜でのTICAD開催は、今年で3回目となります。TICAD7に向けて、横浜市は、市の今回の取組テーマである「アフリカと横浜、あふれる力でともに未来へ」の下、国際技術協力の拡大、ビジネス支援の強化や女性の活躍推進、次世代育成・市民交流の充実の三つの方向性に沿って取組を行っています。
国際技術協力では、急激な人口増加に伴う都市課題に関心が高まっていることを受け、水道や港湾などの分野で横浜市内にアフリカ各国からの視察を受け入れています。2018年11月には全アフリカ市町村長サミット(モロッコ)に参加し、3,000人を超える参加者に向け横浜の都市開発の経験を発表しました。また、環境省・国際協力機構(JICA)・アフリカ各国等と共同で設立した「アフリカのきれいな街プラットフォーム」を通じ、横浜市の廃棄物管理の経験や技術を紹介する研修等を実施しています。プラットフォームの第2回年次会合は、TICAD7と時期を合わせ、横浜で開催する予定です。

ビジネス支援では、アフリカのビジネス環境を紹介するセミナーの開催や、横浜市内の企業が「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)」の留学生をインターンとして受け入れることをサポートするなど、後押ししています。そうした企業の中には、アフリカへ新たに進出する事例や、ABEイニシアティブ留学生を社員として採用する事例も出てきています。
女性の活躍推進では、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が契機となり、JICAと協力して2014年から「日・アフリカビジネスウーマン交流プログラム」を実施し、アフリカ各国から女性企業家や政府関係者が横浜を訪れ、意見交換を行っています。2018年8月にJICAと共に開催した「新興女性企業家フォーラム」では、林文子市長が更なる女性活躍推進に向け行動を呼びかけました。

(8月23日 写真提供:横浜市)
次世代育成の取組では、若者のアフリカへの理解促進や交流を進めています。アフリカ各国の大使による学校訪問など、市立小中学校等74校でアフリカ33か国(2018年12月現在)と交流する「アフリカとの一校一国」を実施しています。2018年6月には、訪日中のベナン共和国の外務・協力相が笠間小学校を訪れ、給食の試食や清掃見学をするとともに、児童がベナンについて学んだ成果を発表し、フランス語でベナン国歌を歌う様子に、とても感激した様子でした。また、17大学、約70人の大学生・大学院生がテーマごとのグループワーク等を実施しながら、アフリカが抱える課題を議論するプロジェクト「アフリカ開発学生会議in横浜」も始動しました。

(6月20日 写真提供:横浜市)

(12月8日 写真提供:横浜市)
こうした横浜市の取組は、日本とアフリカの絆(きずな)をより一層深めるものであり、地方連携の好事例と言えます。日本政府としては、TICAD7がより実り多いものとなるよう、横浜市とも連携をしながらTICAD7を盛り立て、その成功に向けて取り組んでいく考えです。
1 3月にキガリで開催されたAUの臨時首脳会合で44か国が署名。残り22か国が批准すれば、AfCFTAは成立し、総計120億の人口とGDP2.5兆ドルという大規模FTAの一つとなり得る。2019年1月現在、49か国が署名
2 アフリカ側から、シサノ元モザンビーク大統領、ソグロ元ベナン大統領、ムカパ元タンザニア大統領、オバサンジョ元ナイジェリア大統領、ムベキ元南ア大統領が参加