3 北アフリカ地域情勢(リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、モーリタニア)
欧州・アフリカ・中東の結節点であるマグレブ地域は、歴史的、文化的、言語的共通性を有し、近年、その潜在性が注目されている。一方、イラクやシリアに渡った外国人戦闘員の帰還問題や欧州等への不法移民・難民問題もあり、政治体制及び治安情勢の安定が重要課題となっている。
リビアでは、カダフィ政権の崩壊の後、部族社会に根ざす対立と治安の悪化が依然として深刻であり、西(トリポリ)と東(トブルク)の政治勢力に加え、国連を中心とした仲介努力により実現した政治合意に基づく国民統一政府の三勢力が併存する状況が続いている。2018年5月には、フランスの主導により、シラージュ国民統一政府首相、ハフタル・リビア国軍総司令官、サーレハ代表議会議長、ミシュリ国家評議会議長の四者会談が実現、12月に選挙を行うことが決められたが、選挙は実現しなかった。さらに12月には、イタリア主導による首脳級国際会議が行われ、サラーメ国連事務総長特別代表(SRSG)が発表していた国民会議を年明けにも開催することの重要性が確認された。2019年2月には、憲法に関する国民投票の実施が予定されており、選挙プロセスの開始が期待される。リビアの治安情勢は不安定なままであり、2018年8月にはトリポリで民兵による武力衝突が発生し、市民にも死傷者が出た。リビア国内及び周辺地域の安定のためにも、リビア人による包括的な政治対話が進展し、正統性を持った統一政府の樹立が期待される。
2018年12月、河野外務大臣が日本の外務大臣による二国間訪問としてはモロッコを31年ぶり、チュニジアを15年ぶり、アルジェリアを8年ぶりに訪問した。これら3か国は、「アラブの春」を経て政治的な安定を維持し、また、地理的優位性や豊富な若年労働力などにより、高い潜在性を持つ地域であるが、同時に、地域格差や高い失業率などの経済的・社会的リスクを有している。河野外務大臣の訪問を通じ、各国共通の課題である経済・社会安定化や治安強化・テロ対策への協力を進めると同時に、ビジネス促進のための枠組み整備や政治対話の強化に取り組み、各国とのパートナーシップを更に高めていくことを確認した。

モーリタニアは、政情不安を抱えるマリとの長大な国境線を有しつつも、2012年以降テロ事件は発生しておらず、サヘル諸国の中では比較的安定を保っている。2017年1月には、ガンビアにおける平和的政権交代のための仲介を行い、地域の安定に貢献した。また、2018年7月に首都ヌクアショットでアフリカ連合(AU)総会を開催した。
同国は最も西に位置するアラブの国であるとともにサブサハラ・アフリカ地域に属している。