外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

2 朝鮮半島

(1)北朝鮮(拉致問題含む。)

日本は、2002年9月の日朝平壌(ピョンヤン)宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を図ることを基本方針として、引き続き様々な取組を進めている。

米朝間では、2019年2月に、ハノイ(ベトナム)において第2回米朝首脳会談が開催され、6月に、板門店においてトランプ大統領と金正恩(キムジョンウン)国務委員長が面会し、10月に、米朝実務者協議がストックホルム(スウェーデン)において行われた。北朝鮮は、5月から11月にかけて、20発を超える頻繁な弾道ミサイル発射を繰り返し、2020年3月にも複数回の弾道ミサイルの発射を行った。このような中、朝鮮半島の非核化に向けて、引き続き、国際社会が一体となって米朝プロセスを後押ししていくことが重要である。日本としては、北朝鮮問題の解決に向けて、引き続き、米国や韓国と緊密に連携し、中国やロシアを始めとする国際社会と協力していく。

拉致問題については、北朝鮮に対して2014年5月の日朝政府間協議における合意(ストックホルム合意11)の履行を求めつつ、引き続き、米国を始めとする関係国と緊密に連携し、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現すべく、全力を尽くしていく。

ア 北朝鮮の核・ミサイル問題

北朝鮮は、累次の国連安保理決議に従った、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での廃棄を依然として行っていない。

金正恩国務委員長は2019年1月の「新年の辞」において、完全な非核化に向かうことが不変の立場と述べ、米国との対話の準備ができているとしつつも、米国が制裁と圧迫を続けるのであれば、新しい道を模索しなければならなくなると表明した。

4月12日の最高人民会議における施政演説において、金正恩国務委員長は、「制裁解除の問題のために米国との首脳会談に執着する必要はなく、今年末までは忍耐心を持って米国の勇断を待つ」と述べた。

5月4日、北朝鮮は、国連安保理決議に反して、短距離弾道ミサイルの発射を行い、その後、11月までに20発を超える頻繁な弾道ミサイル発射を繰り返した。また、12月には、東倉里(トンチャンリ)の衛星発射場において「重大な実験」を2度にわたって行ったと発表し、北朝鮮の「戦略的核戦争抑止力を一層強化することに適用される」と表明した。

12月28日から31日まで、朝鮮労働党中央委員会全員会議(総会)が開催された。出席した金正恩国務委員長は「情勢が良くなるのを座して待つのではなく、正面突破戦を展開すべき」としつつ、「世界は遠からず北朝鮮が保有することになる新しい戦略兵器を目撃することになるであろう」と述べたと報じられた。2020年1月には、2013年以降慣例となっていた金正恩国務委員長による「新年の辞」の発表は行われなかった。

北朝鮮は累次の短距離弾道ミサイルの発射や、10月の潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)発射など、ミサイルの発射を繰り返している。その目的がミサイル技術の向上にあることは明らかであり、こうした発射は、日本のみならず、国際社会に対する深刻な挑戦であり、全く受け入れられないものである。

北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射を受け、2019年8月、10月、12月及び2020年3月、英国・フランス・ドイツの要請により、国連安保理において非公式協議が開催された。また、12月には「不拡散/北朝鮮」を議題とする安保理会合(公開)が開催され、日本を始め多くの国が、北朝鮮による弾道ミサイル発射は安保理決議に違反するとして懸念を表明するとともに、北朝鮮に更なる挑発行動の自制を求め、米朝プロセスへの復帰を要求し、北朝鮮が非核化に向けた具体的な措置を取らない中では安保理決議に基づく制裁を維持すべきである旨発言した。

北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄に向け、国際社会が一致結束して、安保理決議を完全に履行することが重要である。日本は、海上保安庁によるしょう戒活動及び自衛隊による警戒監視活動の一環として、安保理決議違反が疑われる船舶の情報収集を行っている。安保理決議で禁止されている北朝鮮船舶との「瀬取り」(洋上での物資の積替え)を実施しているなど、違反が強く疑われる行動が確認された場合には、国連安保理北朝鮮制裁委員会などへの通報、関係国への関心表明、対外公表などの措置を採ってきている。2019年は「瀬取り」の実施が強く疑われる13回の行為を外務省ホームページなどで公表した。加えて、「瀬取り」を含む違法な海上活動に対して、米国に加え、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド及びフランスが在日米軍嘉手納(かでな)飛行場を拠点とし、航空機による警戒監視活動を行った。また、米国海軍の多数の艦艇、英国海軍フリゲート「モントローズ」、カナダ海軍フリゲート「オタワ」、「レジーナ」及び補給艦「アステリックス」、オーストラリア海軍フリゲート「メルボルン」及び「パラマッタ」並びにフランス海軍フリゲート「ヴァンデミエール」といった海軍艦艇が、東シナ海を含む日本周辺海域において、警戒監視活動を行った。さらに、安保理決議の完全な履行及び実効性の確保のため、日本、米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、英国及びフランスの間での情報共有及び調整が行われていることは、多国間の連携を一層深めるという観点から、意義あるものと考えている。

イ 拉致問題・日朝関係
(ア)拉致問題に関する基本姿勢

現在、日本政府が認定している日本人拉致事案は、12件17人であり、そのうち12人がいまだ帰国していない。北朝鮮は、12人のうち、8人は死亡し、4人は入境を確認できないと主張しているが、そのような主張について納得のいく説明がなされていない以上、日本としては、安否不明の拉致被害者は全て生存しているとの前提で、問題解決に向けて取り組んでいる。北朝鮮による拉致は、日本の主権や国民の生命と安全に関わる重大な問題であると同時に、基本的人権の侵害という国際社会全体の普遍的問題である。日本は、拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ないとの基本認識の下、その解決を最重要課題と位置付け、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全の確保と即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しを北朝鮮側に対し強く要求している。

(イ)日本の取組

北朝鮮による2016年1月の核実験及び2月の「人工衛星」と称する弾道ミサイル発射を受け、同月に日本が独自の対北朝鮮措置の実施を発表したことに対し、北朝鮮は全ての日本人に関する包括的調査を全面中止し、特別調査委員会を解体すると一方的に宣言した。日本は北朝鮮に対し厳重に抗議し、ストックホルム合意を破棄する考えはないこと、北朝鮮が同合意に基づき、一日も早く全ての拉致被害者を帰国させるべきことについて、強く要求した。

(ウ)日朝関係

2018年2月9日、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック競技大会開会式の際の文在寅(ムンジェイン)韓国大統領主催レセプション会場において、安倍総理大臣から金永南(キムヨンナム)北朝鮮最高人民会議常任委員長に対して、拉致問題、核・ミサイル問題を取り上げ、日本側の考えを伝えた。特に、全ての拉致被害者の帰国を含め、拉致問題の解決を強く申し入れた。また、9月、河野外務大臣は国連本部において、李容浩(リヨンホ)北朝鮮外相と会談を行った。

2019年5月、安倍総理大臣は、「条件をつけずに金正恩委員長と会って、率直に、虚心坦懐(たんかい)に話をしたい」と表明した。これに対し、同月訪日したトランプ米国大統領からは、「全面的に支持する。あらゆる支援を惜しまない」との力強い支持が表明された。

(エ)国際社会との連携

拉致問題の解決のためには、日本が主体的に北朝鮮側に対して強く働きかけることはもちろん、拉致問題解決の重要性について諸外国からの理解と支持を得ることが不可欠である。日本は、各国首脳・外相との会談、G7サミット日中韓サミット日米韓外相会合、ASEAN関連首脳会議、国連関係会合を含む国際会議などの外交上のあらゆる機会を捉え、拉致問題を提起している。

米国については、トランプ大統領が、安倍総理大臣からの要請を受け、2018年6月の米朝首脳会談において金正恩国務委員長に対して拉致問題を取り上げたほか、ポンペオ国務長官の訪朝などの機会に北朝鮮に対して拉致問題を提起している。また、2019年2月の第2回米朝首脳会談では、トランプ大統領から金正恩国務委員長に対して初日の最初に行った一対一の会談の場で拉致問題を提起し、拉致問題についての安倍総理大臣の考え方を明確に伝え、また、その後の少人数夕食会でも拉致問題を提起し、首脳間での真剣な議論が行われた。トランプ大統領は、2017年11月の訪日の際に続き、2019年5月の訪日の際にも拉致被害者の御家族と面会し、御家族の方々の思いのこもった訴えに熱心に耳を傾け、御家族の方々を励まし、勇気付けた。なお、米国議会においては、北朝鮮に拉致された可能性のある米国人に関する決議が2016年9月に下院本会議で可決・成立したほか、2018年11月には上院本会議でも決議が可決・成立している。

安倍総理大臣・トランプ大統領と拉致被害者御家族の面会(5月27日、東京 写真提供:内閣広報室)
安倍総理大臣・トランプ大統領と拉致被害者御家族の面会
(5月27日、東京 写真提供:内閣広報室)

中国についても、2019年6月の日中首脳会談において、習近平(しゅうきんぺい)中国国家主席から、同月の中朝首脳会談で日朝関係に関する日本の立場、安倍総理大臣の考えを金正恩国務委員長に伝えたとの発言があり、その上で、習近平国家主席から、拉致問題を含め、日朝関係改善への強い支持を得た。

また、韓国についても、2018年4月の南北首脳会談を始めとする累次の機会において、北朝鮮に対して拉致問題を提起しており、2019年12月の日韓首脳会談においても、文在寅韓国大統領から、拉致問題の重要性についての日本側の立場に理解を示した上で、韓国として北朝鮮に対し拉致問題を繰り返し取り上げているとの発言があった。また、同年12月の日中韓サミットにおいては、拉致問題の早期解決に向けて、安倍総理大臣から文在寅韓国大統領と李克強(りこくきょう)中国国務院総理の支援と協力を求め、日本の立場に理解を得たほか、同サミット成果文書において拉致問題が言及された。

さらに、ロシアについても、2018年9月の日露首脳会談において、安倍総理大臣から拉致問題の解決に向けてロシアの協力を呼びかけ、プーチン大統領の理解を得た。

日本は、今後とも、米国を始めとする関係国と緊密に連携、協力しつつ、拉致問題の早期解決に向けて全力を尽くしていく。

ウ 北朝鮮の対外関係など
(ア)米朝関係

2019年1月18日、ワシントンDC(米国)において、トランプ大統領とポンペオ国務長官は、金英哲(キムヨンチョル)朝鮮労働党副委員長との間で会談を行い、米国政府は2月末頃に第2回米朝首脳会談を行うことを発表した。

2月27日から28日、ハノイ(ベトナム)において、トランプ大統領と金正恩国務委員長との間で第2回米朝首脳会談が開催されたが、いかなる合意にも達することなく終了した。

4月12日、最高人民会議において、金正恩国務委員長は施政演説を行い、その中で「第3回米朝首脳会談をしようというなら、我が方としても、もう一度は行う用意がある」、「今年末までは忍耐心を持って米国の勇断を待つ」と言及した。

6月30日、板門店において、トランプ大統領と金正恩国務委員長は面会を行った。また、10月5日には、ストックホルム(スウェーデン)において、米朝実務者協議が行われた。

12月28日から31日まで朝鮮労働党中央委員会全員会議(総会)が開催された。金正恩国務委員長は演説の中で米朝関係について「米国が対北朝鮮敵視政策を最後まで追求するなら朝鮮半島の非核化は永遠にない」と述べたと報じられた。

米国は、2019年3月、6月、7月、8月、9月及び2020年1月、3月に北朝鮮への不法な支援などを理由に、北朝鮮に対する米国独自の措置に基づき、個人や団体、船舶を制裁対象として新たに指定した。制裁対象は北朝鮮の団体・個人のほか、ロシア及び中国を含む第三国の団体・個人を含んだものとなっている。

(イ)南北関係

3回の南北首脳会談が行われるなど南北関係が大幅に進展した2018年と比較し、2019年は、南北間の対話や協力事業に大きな進展はなかった。

2019年6月、韓国政府は、北朝鮮への人道支援は政治的な状況とは関係なく推進するとの立場から、国際機関に対する800万米ドルの拠出、韓国産コメ5万トンの供与などの人道・食糧支援を推進する意図を表明したものの、食糧支援に関しては実現していない。

また、10月に、韓国企業などが開発に参加した金剛山(クムガンサン)観光地区を視察した金正恩国務委員長は、同地区の韓国側施設を韓国側との合意の上で撤去するよう指示したと報じられた。その後、北朝鮮側は、韓国側に対し、韓国側施設の撤去を求めてきている。

さらに、11月には、韓国との境界線に近い昌麟島(チャンニンド)において、金正恩国務委員長が見守る中、北朝鮮軍による砲撃訓練が行われた。これについて韓国政府は、「歴史的な『板門店宣言12』履行のための軍事分野合意書」13違反である旨指摘し、同合意の遵守を求めた。

2020年1月7日、文在寅韓国大統領は「新年の辞」の中で、「過去一年間、南北協力で更に大きな進展を遂げられなかったことが非常に残念」と述べ、「私は繰り返し会い、絶えず対話を行う用意がある」と、南北間の対話を呼びかけた。

(ウ)中朝関係・露朝関係

2019年は、中朝国交樹立70周年の年であった。1月には金正恩国務委員長が訪中し、6月には習近平中国国家主席が就任後初めて訪朝したほか、中朝双方で国交樹立70周年の記念行事などが行われた。

こうした中、中国は引き続き、北朝鮮の対外貿易(南北交易を除く。)の約9割を占めるなど、中朝は経済面で密接な関係を維持している。

また、ロシアとの間では、4月、金正恩国務委員長が就任後初めてウラジオストク(ロシア)を訪問し、プーチン大統領との間で会談が行われた。

(エ)その他

2019年、北朝鮮からのものとみられる漂流・漂着木造船などが計158件確認されており(2018年は225件)、日本政府として、関連の動向について重大な関心を持って情報収集・分析に努めている。1月には、島根県隠岐の島、青森県深浦沖でそれぞれ4人、2人の生存者が発見されたが、いずれの事案についても、北朝鮮側に生存者の引渡しを行うなど、日本政府として、関係省庁の緊密な連携の下、関係法令に基づき適切に対応してきている。また、10月には、日本海の大和堆周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)において、水産庁漁業取締船と北朝鮮籍とみられる漁船の接触事案が発生した。引き続き、関係省庁の緊密な連携の下、適切に対応していく。

エ 内政・経済
(ア)内政

北朝鮮では、金正恩国務委員長を中心とする権力基盤の強化が進んでいる。2016年5月に開催された朝鮮労働党の第7回党大会における党規約の改正により、党委員長の役職が新設されるとともに、金正恩党第一書記が党委員長に推戴され、金正恩国務委員長を中心とする新たな党体制が確立された。さらに、2016年6月には最高人民会議第13期第4回会議が開催され、国防委員会が国務委員会に改編され、金正恩国防委員会第一委員長が国務委員長に推戴された。なお、2019年には北朝鮮憲法が2度改正され、国務委員長の役割がより明確に規定されることとなった。

2018年4月に行われた朝鮮労働党中央委員会全員会議(総会)では、2013年3月の朝鮮労働党中央委員会全員会議(総会)で提示された「並進路線」の勝利が宣言され、金正恩国務委員長が、経済建設に総力を集中することが党の戦略的路線であると述べた。2019年12月に4日間にわたり開催された朝鮮労働党中央委員会全員会議(総会)において、金正恩国務委員長が演説を行い、正面突破戦での基本戦線は経済戦線と主張し、人々に対して、自力更生を呼びかけた。

(イ)経済

2016年5月には労働党第7回党大会において、「国家経済発展5か年戦略」(2016年から2020年)が発表された。金正恩国務委員長は、2019年1月の「新年の辞」で、「国家経済発展5か年戦略」の4年目を迎え、同戦略の遂行に拍車をかけなければならないなどと述べた。

2018年の経済成長率は-4.1%(韓国銀行推計値)で、前年の-3.5%に続き、マイナス成長となった。北朝鮮の対外貿易においては、引き続き中国が最大の貿易額を占める。2018年の北朝鮮の対外貿易(南北交易を除く。)の総額は、約28億米ドル(大韓貿易投資振興公社推計値)であり、そのうち対中貿易の占める割合は9割以上となっている。

オ その他の問題

北朝鮮からの脱北者は、滞在国当局の取締りや北朝鮮への強制送還などを逃れるため潜伏生活を送っている。日本政府としては、こうした脱北者の保護や支援について、北朝鮮人権侵害対処法の趣旨を踏まえ、人道上の配慮、関係者の安全、脱北者の滞在国との関係などを総合的に勘案しつつ対応している。なお、日本国内に受け入れた脱北者については、関係省庁間の緊密な連携の下、定着支援のための施策を推進している。

(2)韓国

ア 日韓関係
(ア)二国間関係一般

韓国は、日本にとって重要な隣国であり、日韓両国は、1965年の国交正常化の際に締結された日韓基本条約日韓請求権・経済協力協定その他関連協定の基礎の上に、緊密な友好協力関係を築いてきた。しかしながら、2019年は、2018年に続き、旧朝鮮半島出身労働者問題に関し韓国が依然として国際法違反の状態を是正していないことを始め、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の終了通告(ただし、後に終了通告の効力を停止)、慰安婦問題に関する「和解・癒やし財団」の解散に向けた動き、韓国国会議員などによる竹島上陸や竹島における軍事訓練、竹島周辺海域における韓国海洋調査船の航行、東京電力福島第一原発の処理水に関する韓国側による非建設的な問題提起など、韓国側による否定的な動きは止まらず、日韓関係は厳しい状況が続いた。

このような中、12月には、1年3か月ぶりとなる日韓首脳会談を実施し、北朝鮮問題を始めとする安全保障に関する問題について、日韓、日韓米の連携の重要性を改めて確認したほか、安倍総理大臣から文在寅(ムンジェイン)大統領に対し、目下の日韓関係の最大の課題である旧朝鮮半島出身労働者問題について、韓国側の責任で解決策を示すよう直接求めた。その上で、両首脳は、問題解決に向けた外交当局間の協議を継続していくことで一致した。こうした考えの一環として、合計8回の日韓外相会談、累次の機会における日韓局長協議を始め、頻繁に外交当局間の協議を行った。

文在寅大統領との日韓首脳会談(12月24日、中国・成都 写真提供:内閣広報室)
文在寅大統領との日韓首脳会談
(12月24日、中国・成都 写真提供:内閣広報室)
日韓外相会談(11月23日、名古屋)
日韓外相会談(11月23日、名古屋)
(イ)旧朝鮮半島出身労働者問題

1965年の日韓国交正常化の中核である日韓請求権・経済協力協定は、日本から韓国に対して、無償3億米ドル、有償2億米ドルの経済協力を約束する(第1条)とともに、「両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が(中略)完全かつ最終的に解決されたこと」、また、そのような請求権について「いかなる主張もすることができない」(第2条)ことを定めている。

しかしながら、韓国大法院(最高裁)は、2018年10月及び11月、日本企業に対し、第二次世界大戦中に当該企業で労働していた韓国人への慰謝料の支払を命じる判決を確定させた。これらの判決は、日韓請求権・経済協力協定第2条に明らかに反し、日本企業に対し不当な不利益を負わせるものであるばかりか、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって極めて遺憾であり、断じて受け入れられない14

日本政府としては、この問題を日韓請求権・経済協力協定上の紛争解決手続に従って解決すべく、2019年1月に同協定第3条1に基づく協議を要請したが、韓国政府はこれに応じなかった15。このため、5月に同協定第3条2に基づく仲裁付託を通告し、仲裁の手続を進めてきた。しかし、韓国政府は仲裁委員を任命する義務に加えて、締約国に代わって仲裁委員を指名する第三国を選定する義務についても、同協定に規定された期間内に履行しなかったことから、5月に付託した仲裁委員会は設置できなかった。

日本政府としては、韓国側に対し、引き続き国際法違反の状態の是正を強く求めていく考えであり、この問題の解決のため、日韓の外交当局間の意思疎通を継続していく方針である。

(ウ)慰安婦問題

慰安婦問題は、1990年代以降、日韓間で大きな外交問題となってきたが、日本はこれに真摯に取り組んできた。日韓間の財産及び請求権の問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で法的に解決済みであるが、その上で、元慰安婦の方々の現実的な救済を図るとの観点から、1995年、日本国民と日本政府が協力してアジア女性基金を設立し、韓国を含むアジア各国などの元慰安婦の方々に対し、医療・福祉支援事業及び「償い金」の支給を行うとともに、歴代総理大臣からの「おわびの手紙」を届けるなど、最大限の努力をしてきた。

さらに、日韓両国は、多大なる外交努力の末に、2015年12月の日韓外相会談における合意によって、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した16。また、日韓両首脳間においても、この合意を両首脳が責任を持って実施すること、また、今後、様々な問題に対し、この合意の精神に基づき対応することを確認した。この合意については、潘基文(パンギムン)国連事務総長(当時)を始め、米国政府を含む国際社会も歓迎している。この合意に基づき、2016年8月、日本政府は韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」に対し、10億円の支出を行った。この基金から、2019年12月末日までの間に、合意時点で御存命の方々47人のうち35人に対し、また、お亡くなりになっていた方々199人のうち64人の御遺族に対し、資金が支給されており、多くの元慰安婦の方々の評価を得ている。

しかしながら、2016年12月、韓国の市民団体により、在釜山(プサン)総領事館に面する歩道に慰安婦像17が設置された。その後、2017年5月に新たに文在寅政権が発足し、外交部長官直属の「慰安婦合意検討タスクフォース」による検討結果を受け、2018年1月9日には、康京和(カンギョンファ)外交部長官が、①日本に対し再協議は要求しない、②被害者の意思をしっかりと反映しなかった2015年の合意では真の問題解決とならないなどとする韓国政府の立場を発表した。2018年7月、韓国女性家族部は、日本政府の拠出金10億円を「全額充当」するため予備費を編成し、「両性平等基金」に拠出すると発表した。また、2018年11月には、女性家族部は、「和解・癒やし財団」の解散を推進すると発表し、その後解散の手続を進めている。韓国政府は、文在寅大統領を含め、「合意を破棄しない」、「日本側に再交渉を要求しない」ことを対外的に繰り返し明らかにしてきているものの、財団の解散に向けた動きは、日韓合意に照らして問題であり、日本として到底受け入れられるものではない。

このほか、2019年5月、元慰安婦などが2016年に日本政府に対して提起した韓国ソウル地方裁判所における訴訟について、日本政府は、国際法上の主権免除の原則から、日本政府が韓国の裁判権に服することは認められず、本件訴訟は却下されなければならないと韓国政府に伝達した。また、12月には、日韓合意が違憲だとする元慰安婦の訴えを韓国憲法裁判所が却下した。いずれにせよ、日本政府としては、引き続き、韓国側に日韓合意の着実な実施を強く求めていく方針に変わりはない(国際社会における慰安婦問題の取扱いについては25ページ及び304ページ 資料編慰安婦問題参考資料参照)。

(エ)竹島問題

日韓間には竹島の領有権をめぐる問題があるが、竹島は歴史的事実に照らしても国際法上も明らかに日本固有の領土である。韓国は、警備隊を常駐させるなど、国際法上何ら根拠がないまま、竹島を不法占拠し続けてきている。日本は、竹島問題に関し、様々な媒体で日本の立場を対外的に周知するとともに18、韓国国会議員などの竹島上陸、韓国による竹島やその周辺での軍事訓練や海洋調査などについては、韓国に対し、その都度強く抗議を行ってきている19。特に2019年は8月に韓国国会議員が竹島に上陸したほか、竹島やその周辺での軍事訓練や海洋調査も行われ、これらにつき、日本政府として、日本の立場にかんがみ受け入れられないとして強く抗議を行った。

竹島問題の平和的手段による解決を図るため、1954年、1962年及び2012年に韓国政府に対し国際司法裁判所への付託などを提案してきているが、韓国政府はこの提案を全て拒否している。日本は、竹島問題に関し、国際法にのっとり、平和的に解決するため、今後も適切な外交努力を行っていく方針である。

(オ)日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)

日韓両国は、2016年11月、安全保障分野における日韓間の協力と連携を強化し、地域の平和と安定に寄与するため、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)を締結し、それ以降2017年及び2018年に自動的に延長されてきた。しかし、韓国政府は、2019年8月22日、日本による輸出管理の運用見直し(下記(カ)参照)と関連付け、GSOMIAの終了の決定を発表し、翌23日、終了通告がなされた。日本政府としては、22日、河野外務大臣が南官杓(ナムグァンピョ)駐日韓国大使を召致し、韓国政府の終了決定は、現下の地域の安全保障環境を完全に見誤った対応であり極めて遺憾であると伝えた。その後、11月22日、韓国政府は、8月23日の終了通告の効力を停止することを発表した。日本としては、韓国政府が現下の地域の安全保障環境を踏まえ、このような判断をしたものと受け止めている。

(カ)韓国向け輸出管理運用見直し

軍事転用の可能性のある貨物や技術の貿易を適切に管理するために必要なものとして、2019年7月1日、経済産業省は、①韓国に関する輸出管理上のカテゴリーの見直し(8月28日、韓国を「グループA」から除外する政令改正が施行)及び②フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目の個別輸出許可への切り替えを発表した。

これに対し、韓国側は、日本に対する輸出管理の厳格化(9月18日、日本を優遇対象国から外す輸出管理制度の見直しを施行)などの措置を実施したほか、日本の輸出管理の運用見直しと関連付けて、GSOMIAの終了決定を発表(8月22日)した。さらに、9月11日には、日本による3品目に係る見直し措置が世界貿易機関(WTO)協定に違反するとして、二国間協議を日本に要請した(10月及び11月にジュネーブ(スイス)で二国間協議を実施)。

このような中、11月22日、韓国政府はGSOMIAの終了通告の効力停止を発表し、二国間の輸出管理政策対話が正常に行われる間、WTO提訴手続を停止すると表明した。これを受け、12月16日、3年半ぶりとなる輸出管理政策対話(第7回)が実施され、今後も輸出管理当局間の対話を継続していくこととした。

(キ)交流

日韓間の往来者数は、2018年に初めて1,000万人を上回る約1,049万人を記録したが、2019年は、日本を訪問する韓国人数の大幅減少により、約885万人にとどまった。その一方で、日韓両政府は、累次の機会に、日韓関係が困難な状況にあっても、国民間の交流、経済交流や地方交流など様々なレベルの交流を継続していくべきであるとの点で一致している。

日本では「K-POP」や韓国ドラマなどが世代を問わず幅広く受け入れられており、近年では、韓国料理が広く浸透しているほか、韓国の化粧品も若い女性を中心として人気を集めている。また、日韓関係が厳しい状況にありながらも、日韓間の最大の草の根交流行事である「日韓交流おまつり」は、ソウル及び東京のいずれにおいても多くの観客でにぎわった。政府としても、「対日理解促進交流プログラム」(JENESYS2019)の実施を通じ、青少年を中心とした相互理解の促進、未来に向けた友好・協力関係の構築に引き続き努めている。

(ク)その他の問題

日本海は、国際的に確立した唯一の呼称であり、国連や米国を始めとする主要国政府も日本海の呼称を正式に使用している。韓国などが日本海の呼称に異議を唱え始めたのは1992年からである。また、それ以降、韓国などは国連地名標準化会議、国際水路機関(IHO)などの国際機関の場においても日本海の呼称に異議を唱えているが、この主張に根拠はなく、日本はその都度断固反論を行っている。

また、盗難被害に遭い、現在も韓国にある文化財20については、早期に日本に返還されるよう、外交ルートを通じて韓国政府に対して要請を行っており、引き続き、速やかな返還を韓国政府に求めていく。

そのほか、在サハリン「韓国人」への対応21、在韓被爆者問題への対応22、在韓ハンセン病療養所入所者への対応23など多岐にわたる分野で、人道的観点から、日本は可能な限りの支援、施策を進めてきている。

イ 日韓経済関係

2019年の日韓間の貿易総額は、約8兆2,700億円であり、韓国にとって日本は第3位、日本にとって韓国は第3位の貿易相手国である。なお、韓国の対日貿易赤字は、前年比19%減の約1兆8,200億円(財務省貿易統計)となった。また、日本からの対韓直接投資額は約14億米ドル(前年比10%増)(韓国産業通商資源部統計)で、日本は韓国への第6位の投資国である。

また、日中韓自由貿易協定(FTA)及び東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉などに取り組み、進展に向け努力を続けている。

一方、7月の韓国向け輸出管理の運用見直し発表後、韓国では日本製品の不買運動や日本への渡航を控える動きが起こり、韓国国会及び地方議会で日本企業製品の調達などを制限する法案及び条例制定の動きがみられた。

また、韓国との間のWTO紛争解決手続に関し、韓国による日本製空気圧伝送用バルブに対するアンチ・ダンピング措置に係る案件につき、WTO上級委員会が日本の主要な主張を認める報告書を公表した(2019年9月)。また、韓国による日本製ステンレス棒鋼に対するアンチ・ダンピング措置に係る案件(2018年10月、WTO紛争処理小委員会(パネル)設置)、韓国による自国造船業に対する支援措置に係る案件(2018年12月、WTO協定に基づく二国間協議実施)など、WTOの紛争解決制度を通じて問題の解決を目指している案件がある(なお、韓国政府による日本産水産物などの輸入規制撤廃に係る案件については、236ページ 第3章第3節3(3)、日本の輸出管理の運用見直しに係る案件については、34ページ ア(カ)参照)。

ウ 韓国情勢
(ア)内政

2019年5月で文在寅政権発足3年目を迎え、3月と8月には内閣改造を行った。8月の内閣改造で、文在寅大統領は、自身の側近であり、大統領府において検察を担当する民情首席秘書官であった曺国(チョグク)氏を法務部長官に指名したが、指名直後から曺氏の家族や親戚などの不正疑惑が浮上した。9月9日、文大統領は、曺氏の法務部長官への任命を強行したが、国内の反発の更なる高まりを受け、10月14日、曺氏は法務部長官を辞任した。

12月には、国務総理の人事を行い、2020年1月14日、政権発足時から国務総理を務めてきた李洛淵(イナギョン)国務総理が退任し、前国会議長の丁世均(チョンセギュン)議員が国務総理に就任した。

韓国政府は、文大統領の大統領選挙時の公約であった検察改革に取り組み、韓国国会において、12月30日、高位公職者の不正を捜査する独立機関である高位公職者犯罪捜査処の設置法案、2020年1月13日、検察と警察の捜査権の調整を目的とする刑事訴訟法及び検察庁法の改正案が成立した。

(イ)外交

2019年、韓国外交は、引き続き北朝鮮問題を最優先課題として展開された。6月30日、韓国訪問中のトランプ米国大統領は板門店を訪れ、北朝鮮の金正恩国務委員長と面会した。また同面会に先立ち、トランプ大統領、金正恩国務委員長は、文在寅大統領を交えて立ち話を行った。(南北関係については、30ページ ウ(イ)参照)。

対米関係では、北朝鮮との対話の進展を受けて、3月に、米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」、「フォール・イーグル」及び「フリーダム・ガーディアン」の一連の演習が終結した。(このうち「キー・リゾルブ」及び「フリーダム・ガーディアン」については指揮所演習として実施)。また、米国政府は、トランプ政権が掲げる各国駐留の米軍駐留経費負担の増加要求方針に沿って、韓国政府と同経費負担について交渉を進め、2月には、2019年1年間の韓国側負担額を約1兆389億ウォン(約9億2,000万米ドル)とする第10次防衛費分担特別協定(SMA)に暫定的に合意した。以降、米韓両国は、2020年以降の負担額につき、交渉を実施した。

2019年、文在寅大統領は、ブルネイ(3月)、マレーシア(3月)、カンボジア(3月)、米国(4月)、トルクメニスタン(4月)、ウズベキスタン(4月)、カザフスタン(4月)、フィンランド(6月)、ノルウェー(6月)、スウェーデン(6月)、日本(6月、G20大阪サミット)、タイ(9月)、ミャンマー(9月)、ラオス(9月)、米国(9月、国連総会)、タイ(11月、ASEAN関連首脳会議)、中国(12月、日中韓サミット)を訪問した。

(ウ)経済

2019年、韓国のGDP成長率は2.0%と、前年の2.7%よりも低下した。輸出は、半導体の不振などにより、2018年12月以降2019年12月まで前年同期比で連続して減少を続けるなど、総じて不調であり、総輸出額は、前年比10.4%減の約5,422億米ドルであり、総輸入額は、前年比6.0%減の約5,033億米ドルとなったため、貿易黒字は約389億米ドル(韓国産業通商資源部統計)となった。

2017年5月に発足した文在寅政権は、国内的な経済政策として、「人中心経済」を掲げ、「所得主導成長」及び「雇用中心経済」を強調しており、最低賃金を2018年からは7,530ウォン(前年比16.4%増)、2019年からは8,350ウォン(前年比10.9%増)と2年連続で大幅に引き上げてきたが、こうした急激な引上げが雇用減を招いているなどとの批判が高まり、2019年7月には2020年の最低賃金を8,590ウォン(前年比2.9%増)とすると発表した。また、2018年3月に勤労基準法が改正され、同年7月から週最大勤労時間が68時間から52時間に短縮された(勤労者5人から299人の企業には今後適用される予定であり、5人未満は対象外とされる)。なお、韓国では近年急速に少子高齢化が進んでおり、2018年に初めて合計特殊出生率が1人を下回る0.98人を記録し、少子化問題が深刻化している。

11 2014年5月にストックホルムで開催された日朝政府間協議において、北朝鮮側は、拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査の実施を約束した。

12 2018年4月28日に文在寅大統領と金正恩国務委員長との間の南北首脳会談で署名された「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言文」。金委員長による北朝鮮の非核化に向けた意思が文書上で確認された。

13 2018年9月の南北首脳会談の結果採択され、本合意書に基づき軍事境界線一帯における各種軍事演習の中止、軍事境界線上における飛行禁止区域の設定、非武装地帯内の監視哨戒所の一部撤収といった措置がとられた。

14 資料編:旧朝鮮半島出身労働者問題 参考資料 参照

15 同 参考資料 参照

16 資料編:慰安婦問題 参考資料 参照

17 分かりやすさの観点から、便宜上、「慰安婦像」との呼称を用いるが、この呼称は、これらの像に係る元慰安婦についての描写が正しいとの認識を示すものでは決してない。

18 2008年2月、外務省は「竹島 竹島問題を理解するための10のポイント」と題するパンフレットを作成。現在、日本語、英語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語、ロシア語、中国語及びイタリア語の11言語版が外務省ホームページで閲覧可能。また、2013年10月以降、外務省ホームページにおいて、竹島に関する動画やフライヤーを公開し、現在は上記11言語での閲覧が可能になっている。加えて、竹島問題を啓発するスマートフォンアプリをダウンロード配布するといった取組を行っている。外務省ホームページ掲載箇所はこちら:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/index.html

外務省ホームページ掲載箇所QRコード

19 2019年8月薛勳(ソルフン)「共に民主党」議員率いる韓国国会議員団6人が上陸。また、2019年8月及び12月韓国軍が竹島防御訓練を実施。日本は、これらの事案ごとに直ちに、竹島の領有権に関する日本の立場に照らし受け入れられず、極めて遺憾であることを韓国政府に伝え、厳重に抗議してきている。

20 2016年4月に韓国の浮石寺(プソクサ)が韓国政府に対し、長崎県対馬市で盗難され、いまだ日本側に返還されていない「観世音菩薩坐像」を、浮石寺に返還するよう求め、大田(テジョン)地方裁判所に訴訟を提起していたが、2017年1月26日、同裁判所は原告側(浮石寺)勝訴の第一審判決を出した。

21 第二次世界大戦終戦前、様々な経緯で旧南樺太(サハリン)に渡り、終戦後、ソ連による事実上の支配の下、韓国への引揚げの機会が与えられないまま、長期間にわたり、サハリンに残留することを余儀なくされた朝鮮半島出身者に対し、日本政府は、一時帰国支援、サハリン再訪問支援などを行ってきている。

22 第二次世界大戦時に広島又は長崎に在住して原爆に被爆した後、日本国外に居住している方々に対する支援の問題。これまで日本は、被爆者援護法に基づく手当や被爆者健康手帳などに関連する支援を行ってきている。

23 第二次世界大戦終戦前に日本が設置した日本国外のハンセン病療養所入所者が、「ハンセン病療養所などに対する補償金の支給などに関する法律」に基づく補償金の支払を求めていたが、2006年2月に法律が改正され、新たに国外療養所の元入所者も補償金の支給対象となった。

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