慰安婦問題 参考資料
日韓両外相共同記者発表(2015年12月)

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日韓間の慰安婦問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、日本政府として、以下を申し述べる。
(1)慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。
安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。
(2)日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。
(3)日本政府は上記を表明するとともに、上記(2)の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。
韓日間の日本軍慰安婦被害者問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、韓国政府として、以下を申し述べる。
(1)韓国政府は、日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取組を評価し、日本政府が上記1.(2)で表明した措置が着実に実施されるとの前提で、今回の発表により、日本政府と共に、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は、日本政府の実施する措置に協力する。
(2)韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する。
(3)韓国政府は、今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で、日本政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。
女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府報告審査
(2016年2月16日、ジュネーブ)
(質疑応答部分の杉山外務審議官発言概要)

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2016年2月16日、国連ジュネーブ本部において、女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府報告審査が行われたところ、質疑応答部分の杉山外務審議官の発言概要は以下のとおり。
(ブルン委員からの質問に応え、)
我が国は、日本国憲法第98条第2項に基づき、我が国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守することとしており、条約は国内法に優位するものと考えられている。
(ホフマイスター委員からの質問に応え、)
書面でも回答したとおり、日本政府は、日韓間で慰安婦問題が政治・外交問題化した1990年代初頭以降、慰安婦問題に関する本格的な事実調査を行ったが、日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を確認できるものはなかった。
「慰安婦が強制連行された」という見方が広く流布された原因は、1983年、故人になった吉田清治氏が、「私の戦争犯罪」という本の中で、吉田清治氏自らが、「日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩りをした」という虚偽の事実を捏造して発表したためである。この本の内容は、当時、大手の新聞社の一つである朝日新聞により、事実であるかのように大きく報道され、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも、大きな影響を与えた。しかし、当該書物の内容は、後に、複数の研究者により、完全に想像の産物であったことが既に証明されている。
その証拠に、朝日新聞自身も、2014年8月5日及び6日を含め、その後、9月にも、累次にわたり記事を掲載し、事実関係の誤りを認め、正式にこの点につき読者に謝罪している。
また、「20万人」という数字も、具体的裏付けがない数字である。朝日新聞は、2014年8月5日付けの記事で、「『女子挺身(ていしん)隊』とは戦時下の日本内地や旧植民地の朝鮮・台湾で、女性を労働力として動員するために組織された『女子勤労挺身隊』を指す。(中略)目的は労働力の利用であり、将兵の性の相手をさせられた慰安婦とは別だ。」とした上で、「20万人」との数字の基になったのは、通常の戦時労働に動員された女子挺身隊と、ここでいう慰安婦を誤って混同したことにあると自ら認めている。
なお、「性奴隷」といった表現は事実に反する。
日韓両政府間では、慰安婦問題の早期妥結に向けて真剣に協議を行ってきたところであるが、先ほど申し上げたとおり、昨年12月28日、ソウルにて日韓外相会談が開催され、日韓外相間で本件につき妥結に至り、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることが確認された。同日後刻、日韓首脳電話会談が行われ、両首脳はこの合意に至ったことを確認し、評価をした。
冒頭申し上げたとおり、このときの日韓合意を表す資料は、書面の回答に添付されているので、ここでその内容の詳細を繰り返して説明することはしない。
日本政府は、これまでも「アジア女性基金」等を通じて本問題に真剣に取り組んできた。今後、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算、10億円程度であるが、資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととなった。
現在、日韓両国政府はそれぞれ、合意内容を誠実に実行に移すべく取り組んでいるところであり、この点は現時点でも全く変わりはない。このような日韓両国政府の努力につき国際社会の御理解を頂けると、大変有り難く思う。ちなみに、潘基文(パンギムン)国連事務総長を含め、国際社会は、日韓両国が合意に達したことに歓迎の意を表明していると承知している。
もう1点だけ、最後に付け加える。ホフマイスター委員は他の国の例も挙げた。先の大戦に関わる賠償並びに財産及び請求権の問題について、御指摘の点も含め、日本政府は、米、英、仏等45か国との間で締結したサンフランシスコ平和条約、それだけではなく、その他の二国間の条約等、これは、日韓請求権・経済協力協定も含むし、日中の処理の仕方も含むが、こういったものによって、一々を細かく法律的に説明することはしないが、誠実に対応をしてきており、これらの条約等の当事国との間では、個人の請求権の問題を含めて、法的に解決済みというのが、日本政府の一貫した立場である。
にもかかわらず、日本政府は、アジア女性基金を構築し、我が国の予算からの拠出と一般からの募金によって、一定の活動をした。アジア女性基金の活動についての詳細は説明しないが、恐らくここにおられる皆様は、よく御存じのことと思う。
(ゾウ主査からの質問に応え、)
昨年の12月28日、岸田大臣とユン外交部長官の間で、(慰安婦問題が)最終的かつ不可逆的に解決されていることは、文書の回答の添付を見ていただければ明確であると思う。
日本政府がこの問題について、例えば歴史の否定をしているとか、この問題について何の措置もとっていないという御批判は、事実に反すると言わざるを得ない。
いわゆる強制ということは、我々が調査した中では裏付けられなかったと申し上げたが、この岸田大臣の合意の中には、慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷付けた問題であり、日本政府は責任を痛感している、全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する、そして、額は10億円程度ということであるが、日本の予算の措置により、財団を設立する等ある。中身については時間がないのでそれ以上は言わないが、ここでいう「当時の軍の関与の下に」というのは、慰安所は当時の軍当局の要請により設置されたものであること、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送について日本軍の関与があったこと、慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者がこれに当たったということは、従来から認めていることである。私が先ほど申し上げたことは、そのことと共に、例えば「20万人」という数字は完全な間違いであると、その新聞社が認めているということを明確にするために申し上げたわけである。
それから、「性奴隷」という表現も事実に反するということをもう一度繰り返しておきたい。書面の回答に添付した両外相の共同発表の文書の中にも、「性奴隷」という言葉は1か所も見つからないのも事実である。
したがって、非常に残念だが、ゾウ主査からの御指摘は、いずれの点においても、日本政府として受け入れられるものではないだけではなく、事実に反することを発言されたという風に残念ながら申し上げざるを得ないということを明確に発言をしておきたい。
(ゾウ主査から日韓合意に関する質問があったことに応え、)委員のお手元に届けてある合意、これは日韓間の合意であって、これを現在、日韓両国政府はそれぞれ誠実に実行に移すべく、取り組んでいるところであり、この点は全く変わっていない。このような日韓間の合意について、是非理解をしていただきたい。
米国グレンデール市慰安婦像訴訟
日本国政府の意見書提出(2017年2月)

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1.カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像について、現地在留邦人等が原告となり、グレンデール市を相手取った訴訟が行われています。現在、連邦裁判所における裁判とカリフォルニア州裁判所における裁判の二つが同時進行していますが、前者については、2017年1月に連邦最高裁判所に上告がなされました。これを受け、同年2月22日、我が国政府は、同裁判所に対して意見書(アミカス・キュリエ・ブリーフ)を提出しました。
2.我が国政府は、これまでも様々な関係者に対し、慰安婦問題に関する我が国政府の基本的立場や取組について適切に説明し、正確な理解を求めてきています。今回の意見書提出も、その一環として行ったものです。
3.提出した意見書では、米国連邦政府が過去に示した立場や米国内の判例を引用しつつ、上告が認められるべきと考える理由を説明するとともに、慰安婦問題に関する我が国政府の基本的立場や取組について記載しています。
我が国政府の意見書(仮訳:一部抜粋)
(仮訳)
日本は、グレンデールの当該像の碑文が、日本政府が長期にわたって調査してきた歴史的文献を正確に描写していないと強く反対している。昨年、ジュネーブでの女子差別撤廃委員会において、日本の外務審議官は、1990年代に日本が実施した全面的な事実関係の調査結果について証言した。(「杉山晋輔外務審議官による国連女子差別撤廃委員会質疑応答での発言要旨」(2016年2月16日)参照。(20万人の女性を強制的に性奴隷にしたとする主張を裏付ける証拠の不存在を含む日本の調査結果について議論した。))
慰安婦を含む個人の請求権は、1965年の「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」で処理されている。この1965年協定は、慰安婦問題が政府間の外交問題として取り扱われるべきであることを強調している。実際、本問題に関する日韓の継続した外交が、米国政府の支持も得て、前述の2015年の合意にもつながった。日本政府は、2015年の合意を尊重し、非常に誠実に同合意を実施し続けている。
日本は、州やグレンデールなどの地方公共団体が、アメリカ合衆国がその外交政策の形成において発信すべき統一されたメッセージを損なうことのないよう、特に本件のような機微な問題について、外交関係に関わってこないことを最も重視している。
このほかの関連資料については外務省ホームページ参照
https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/rp/page25_001910.html
