アジア

令和元年12月24日
(写真1)日中韓サミット記念撮影(写真提供:内閣広報室) 日中韓サミット記念撮影
(写真提供:内閣広報室)

 12月24日(火曜日)午前10時から11時15分(現地時間)まで,成都において第8回日中韓サミットが開催されたところ,概要以下のとおり(出席者:安倍晋三総理大臣,李克強中国国務院総理,文在寅韓国大統領)。なお,会議終了後,成果文書「次の10年に向けた3か国協力に関するビジョン」仮訳(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く)が発出された。

  • (写真2)日中韓共同記者発表の様子1(写真提供:内閣広報室)
    日中韓共同記者発表
    (写真提供:内閣広報室)
  • (写真3)日中韓共同記者発表の様子2(写真提供:内閣広報室)
    日中韓共同記者発表
    (写真提供:内閣広報室)

1 総論

 日中韓協力開始から20周年となるサミットであり,3首脳が,これまでの20年の3か国協力を総括するとともに,今後10年の日中韓協力の方向性について議論した。続いて,北朝鮮情勢をはじめとする地域・国際情勢について3首脳が意見交換を行った。

  • (写真4)日中韓サミットで発言する安倍総理大臣の様子1(写真提供:内閣広報室)
    日中韓サミットで発言する安倍総理大臣
    (写真提供:内閣広報室)
  • (写真5)日中韓サミットで発言する安倍総理大臣の様子2(写真提供:内閣広報室)
    日中韓サミットで発言する安倍総理大臣
    (写真提供:内閣広報室)

2 日中韓協力の現状評価と将来の方向性

 安倍総理から以下のとおり述べた。

(1)この20年間,3か国協力の原点である未来志向の実務協力が着実に進展。次の10年に向けて,3か国のみならず,地域及び国際社会の未来や次世代のために,これまでの対話と協力の積み重ねに立脚し,3か国が世界をリードする分野において具体的な協力を進めていくべき。

(2)特に,本年6月のG20大阪サミットでは,中韓からの参加も得て,貿易・投資,海洋プラスチックごみ,質の高いインフラ投資等の分野での合意を含む首脳宣言を採択した。これからは,3か国が一致してこれらの合意内容を実施し,アジアを含む世界に対して発信していきたい。日中韓の枠組みを活用しつつ,中韓と共にG20で培った考え方を広めていきたい。こうした認識の下,次の10年に向けて日中韓協力における柱とすべき3つの「E」を中心に議論したい。

ア 環境(Environmental Problem)

  • (ア)今や人の往来だけでなく,ごみまでも海を往来し,共通の課題となった。
     本年のG20大阪サミットで合意した「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」とその実現に向けた「実施枠組」は,その解決に向けた基盤である。
  • (イ)先月の3か国環境大臣会合で,この大阪で合意したビジョンと実施枠組のもとで,3か国で具体的な行動がスタートしたことを歓迎。海洋プラスチックごみ問題の協力に向けて,日中韓が世界をリードしていきたい。

イ 高齢社会(Elderly Society)

  • (ア)現在,世界で最も高齢化が進んだ我が国では,既存の制度の不断の見直しを続けてきた。
  • (イ)中国は高齢者の人口が最も多い国であり,韓国は日本と共に高齢化の速度が世界で最も速い国の一つ。共通の課題を抱える3か国が,活力ある健康的な高齢社会を迎えるために,協力して対応していく。
  • (ウ)さらに,3か国が協力して得られたベストプラクティスを国際社会と共有し,アジア地域を始めとした国際社会の発展と人々の幸福に寄与していきたい。

ウ 人的交流(Exchange)

  • (ア)人と人とのつながりは,3か国の相互理解の基盤となる。政府同士が困難に直面する時期であっても民間レベルでの人的交流は重要。3か国で引き続き人的交流を進めていきたい。
  • (イ)3か国の「2020年までに年間3千万人の人的往来」との目標が,前倒しされて2018年に達成されたことを歓迎。教育交流は将来にわたる友好関係の基盤であり,「キャンパス・アジア」は,3か国協力の成功例の一つ。
  • (ウ)また,3か国によるオリンピック・パラリンピックのリレーは,スポーツ,文化,観光といった様々な交流を生み出す大きなチャンス。2020年東京大会別ウィンドウで開くを成功させ,2018年の平昌(ピョンチャン)から受け継いだバトンを2022年の北京へと渡したい。

(3)我が国としては,この3つの「E」を中心に,3か国がウィン・ウィン・ウィンの関係を築けるよう,今後の日中韓協力を進めていきたい。

 以上を踏まえ,日中韓3か国の間で,海洋プラスチックごみを含む共通の課題への対処,健康で活力ある高齢化社会への対応,スポーツ・文化・教育を含む人的交流の強化,3か国とそれ以外の国々との協力の促進等について意見の一致をみた。

3 地域・国際情勢

(1)朝鮮半島情勢
 安倍総理から以下のとおり述べた。

ア 北朝鮮の完全な非核化の実現は日中韓の共通の目標。日中韓として安保理決議に従った,北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な,検証可能な、かつ不可逆的な廃棄の実現に向けて,引き続き米朝プロセスを最大限後押ししていくことが重要。

イ 安保理決議の完全な履行を確保することが不可欠。

ウ 北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射は,安保理決議違反。

エ 拉致,核,ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し,不幸な過去を清算して国交正常化を目指すとの我が国の方針に変わりはない。引き続きの協力を得たい。

 3首脳は,関連安保理決議の確実な履行,そして,米朝プロセスのモメンタムを維持し続けていくことが,引き続き日中韓3か国の共通の立場であることを確認した。また,拉致問題の早期解決に向けて,安倍総理から両首脳の支援と協力を求め,日本の立場に理解を得た。

(2)経済
 安倍総理から以下のとおり述べた。

ア 自由貿易・投資

  • (ア)本年のG20大阪サミットでは,自由,公正,無差別で透明性があり予測可能で安定した貿易及び投資環境という基本的原則に合意した。この原則の下,WTOを礎とする多角的貿易体制を強化し,自由で公正なルールに基づく,経済圏を世界へと広げ,公平な競争条件を確保していくべき。
  • (イ)こうした観点から,RCEPについては,先月4日共同首脳声明(PDF)別ウィンドウで開くに従い,16か国での早期署名を目指す考え。日中韓FTAについては,RCEPプラスとなる十分な付加価値を有する協定を実現するため,しっかりと交渉を進めたい。

イ 開発  日中韓を含むG20首脳は「質の高いインフラ投資に関するG20原則(PDF)別ウィンドウで開く」において,開放性,透明性,経済性,債務持続可能性といった要素の重要性を確認した。地域及び世界の持続可能な発展のため,アジアを代表する我々3か国がG20原則に沿った質の高いインフラ投資を着実に普及・実践していかなくてはならない。  また,3首脳は,日中韓3か国は世界経済においてGDPや貿易・投資の面で大きな割合を占めており,これまでも,また今後も重要な役割を担っていること,更なる世界経済の発展には自由で公正な貿易・投資が重要であるとの点について意見の一致を見た。また,RCEPについて現代的で,包括的な,質の高い,かつ互恵的な協定の実現に向け努力を続けることを確認した。また,RCEPプラスとなる十分な付加価値を有する日中韓FTAを追求することで一致した。

(3)「自由で開かれたインド太平洋」
 安倍総理から,以下のとおり述べた。

 日本は,法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」を実現していく。この観点から,ASEANの中心性と一体性を尊重しながら,ASEANが発表した「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP:エーオーアイピー)」とのシナジーを追求していく。中韓両国にも,ASEANの中心性と一体性を尊重しつつ,AOIPと連携していくことを期待したい。

(4)地球規模課題
 安倍総理から以下のとおり述べた。

 本年日本で開催したG20大阪サミットやTICAD7において,気候変動環境エネルギー防災,教育,保健等,地球規模課題への取組を議長として主導した。両国とも協力していきたい。
 これを受けて,3首脳は気候変動や環境問題に積極的に取り組んでいく必要性を共有した。


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