第3節 国民の支持を得て進める外交
1 国民への積極的な情報発信
(1)全般
外交政策を円滑に遂行するに当たっては、国民の理解と支持が必要不可欠であり、政策の具体的内容や政府の役割などについて、迅速で分かりやすい説明を行うことが重要である。このため、外務省は、各種メディア、講演会、刊行物などを活用し、機動的かつ効果的な情報発信に努めている。
(2)国内メディアを通じての情報発信
外務省は、日本の外交政策などに対する国民の理解と支持を得るために、新聞・テレビ・インターネットなどの各種メディアを通じた迅速かつ的確な情報発信に努めている。効果的な情報発信のため、外務大臣及び外務報道官の定例記者会見の場を設けているほか、必要に応じ、臨時の記者会見を行っている。外務大臣の記者会見は、英語の同時通訳も含めてインターネットメディアを含む多種のメディアに開放されており、記者会見の模様については、記録や動画を外務省ホームページに掲載している。総理大臣や外務大臣の外国訪問に際しては、目的や成果などを速やかに伝えるため、訪問地からインターネットを活用した情報発信も行っている。また、個別の国際問題に関して日本の立場を表明する外務大臣談話や外務報道官談話、日々の外交活動などについて情報を提供する外務省報道発表を随時発出している。さらに、外務大臣、外務副大臣などの各種メディアへの出演やインタビューなどを通じて国民に対し、外交政策を直接説明している。

外務大臣記者会見 | 117回 |
---|---|
外務報道官記者会見 | 32回 |
合計 | 149回 |
(2023年1月1日から12月31日)
外務大臣談話 | 21件 |
---|---|
外務報道官談話 | 28件 |
外務省報道発表 | 2,328件 |
合計 | 2,377件 |
(2023年1月1日から12月31日)
(3)インターネットを通じた国民に向けた情報発信
外務省ホームページ(日本語及び英語版)では総理大臣や外務大臣の外交活動に関する情報を迅速に発信し、領土・主権、歴史認識、安全保障を含む日本の外交政策や各国情勢に関する最新情報、基礎情報を提供している。
日本語ホームページでは、「世界一周何でもレポート」、「キッズ外務省」など、様々なコンテンツを幅広い層の国民に発信している。特に、「キッズ外務省」では、外務省の活動を分かりやすく説明する動画やクイズ、ニュースや新聞で取り上げられることの多い用語や国際問題について説明するQ&Aコーナーなどの子ども向けコンテンツを掲載している。5月には、「おしえて!G7広島サミット」と題し、G7広島サミットに関する子ども向けコンテンツを制作し、「キッズ外務省」に掲載した。
このほか、各種ソーシャルメディアを通じて様々な情報発信を行っている。2023年は、G7広島サミット及び関連会合、ウクライナ情勢、ガザ情勢、ALPS処理水などに関する情報発信を積極的に行った。

(4)国民との対話
外務省は、政務三役(外務大臣、外務副大臣、外務大臣政務官)や外務省職員が国民と直接対話を行う「国民と対話する広報」を推進している。
林外務大臣及び武井俊輔外務副大臣は、地方の魅力を世界に発信する「地方を世界へ」プロジェクトの一環として、2月に岡山、6月に秋田、8月に長野を拠点に活躍される方々と車座対話を実施し、日本の外交政策や各地方の魅力の発信について活発な意見交換を行った。
大学生などを対象とした外務省セミナー「学生と語る」を2月に外務省で実施し、吉川ゆうみ外務大臣政務官が開会挨拶を行い、G7広島サミットなどをテーマとして外務省員が各種講演を実施する中で多くの参加学生と対話を行った。加えて11月には、大阪大学で同セミナーを実施し、関西圏を中心に多くの学生の参加を得て、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)などをテーマとする外務省員による各種講演の中で活発な対話を実施した。5月には、G7広島サミットに関する公開授業を上智大学で開催し、大学生など約500人が参加した。参加者から幅広い質問が寄せられ、登壇者との間で活発な議論が行われた。また、8月に実施した「こども霞が関見学デー」では、外務省の仕事や世界の国々について理解を深めてもらえるよう、講演会、体験ブースなど様々なプログラムを実施した。


(8月2日 外務省)

外務省職員などを全国の自治体や国際交流団体、大学や高校に派遣する「国際情勢講演会」、「外交講座」、「高校講座」や「小中高生の外務省訪問」といった各種事業は、参加団体の希望などに応じ、オンライン形式と対面形式の双方で事業を行った。また、2023年は、日本の大学生のみならず、ASEAN出身の学生を対象として今後の日・ASEAN関係をテーマに「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」を開催し、同時に、オンラインでも配信を行った。これらの事業を通じて、外交政策や国際情勢についての理解促進や次世代の日本を担う人材育成に取り組んでいる。

また、オンライン形式による「ODA出前講座」を通じて、外務省職員が講師として多数の学校で日本のODA政策やその具体的取組を紹介している。加えて、外交専門誌『外交』の発行を通じて、日本を取り巻く国際情勢の現状、外交に関する各界各層の様々な議論を広く国民に紹介している。2023年は、G7広島サミットに関する論考のほか、ロシアによるウクライナ侵略やイスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突が地域や世界に与えた影響を多角的な視野で考察するなど、現在の国際情勢を俯瞰(ふかん)する多様な外交課題をテーマに取り上げ、内外の著名な有識者の論文などを数多く掲載した。

また、外務省の組織や、G7広島サミットなどの日本外交に対する更なる理解を得るため、幅広い読者を想定しつつ、各種パンフレットや動画を作成した。このほかにも、外務省ホームページの「御意見・御感想」コーナーを通じた広聴活動を行い、寄せられた意見は、外務省内で共有の上、政策立案などの参考としている。
(5)外交記録公開及び情報公開の促進
外務省は、外交に対する国民の理解と信頼を一層促進するため、外交記録の公開に積極的に取り組み、外交史料利用の利便性向上にも努めている。
外務省では、外交史料館において、戦前の資料4万冊を含む12万点超の歴史資料を所蔵しており、1976年から、自主的な取組として戦後の外交記録を公開している。2010年には、「外交記録公開に関する規則」を制定し、(ア)作成又は取得から30年以上経過した外交記録を原則公開し、(イ)外務副大臣又は外務大臣政務官が委員長を務め、外部有識者が参加する「外交記録公開推進委員会」を設置し、外交記録公開の推進力を高め、透明性の向上に努めている。それ以来、2023年末までに移管・公開の手続を完了した外交記録ファイル数は約3万8,000冊に及ぶ。
さらに、外務省は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」に基づいて、日本の安全や他国との信頼関係、対外交渉上の利益、個人情報の保護などに配慮しつつ、情報公開を行ってきている。2023年には826件の開示請求が寄せられ、12万1,057ページの文書を開示した。