外交青書・白書
第4章 国民と共にある外交

第1節 世界とのつながりを深める日本社会と日本人

1 日本の成長と外国人材の受入れ

(1)観光立国の復活と査証(ビザ)制度

日本政府は、2016年3月に「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、2020年の訪日外国人旅行者数4,000万人、更に2030年には6,000万人という目標を設定した。外務省は、上記ビジョンを基に毎年策定される「観光ビジョン実現プログラム」を踏まえ、インバウンド観光促進の観点から査証緩和措置を実施し、2019年の訪日外国人数は過去最高の3,188万人となった。

2020年以降、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大を受けた日本及び各国・地域の水際措置の影響により、訪日外国人数は大幅に減少したが、2023年には感染の世界的流行が落ち着きを見せ、各国・地域の水際措置緩和及び撤廃が進んだ。これにより、国際的な人の往来は、急速に回復し、2023年10月の訪日外国人旅行者数は2019年同月比の水準を上回った。

こうした中、持続可能な形での観光立国の復活に向けて、日本政府は3月に「観光立国推進基本計画(第4次)」を、5月に「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」を新たに策定し、2025年までに訪日外国人旅行者数3,200万人以上、訪日外国人旅行消費額5兆円及び国内旅行消費額20兆円の達成という目標を設定した。

査証緩和はインバウンドの回復に資するものであり、従来にも増してその重要性は高まっている。2023年1月以降、諸外国からの要望も踏まえて関係省庁と検討を重ねた結果、4月2日にカタール向けに旅券の事前登録制による査証免除、9月30日にブラジル向け査証免除を導入した。また、6月30日にモンゴル向け数次査証を緩和し、12月4日には新たなサウジアラビア向け数次査証を導入した。このほか、ウルグアイ、フィンランド及びラトビアとの間でワーキング・ホリデー制度を開始したほか、英国とは、ワーキング・ホリデーの人数枠を大幅に拡大することで一致した。2023年12月末時点で、日本は70の国・地域に対し一般旅券所持者に対する査証免除措置を実施している。

日本と各国との間の国民レベルの往来、交流及び相互理解の促進に資する査証緩和を進めると同時に、犯罪者や不法就労を目的とする者、又は、人身取引の被害者となり得る者などの入国を未然に防止する観点から、査証発給の審査厳格化も重要な課題である。外務省としては、日本が世界に誇る安心・安全な社会を維持しながら、訪日外国人旅行者数を増やし、また、質量両面で観光立国の復活に貢献していくことを目指し、二国間関係や外交上の意義などを総合的に考慮しつつ、今後も査証緩和を検討していく。

(2)外国人材の受入れ・共生をめぐる取組

日本国内で少子高齢化や人口減少が進行しつつある中、中小・小規模事業者を始めとする各事業者の深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく特定技能制度が2019年4月に創設された。外務省は、法務省、厚生労働省及び警察庁と共に同制度の制度関係機関として、送出国との情報連携の枠組みなどを定める協力覚書の作成や同覚書に基づく二国間協議に参画しているほか、主要送出国の現地語による広報を行っている。

さらに、新たな外国人材の受入れ及び日本で生活する外国人との共生社会の実現に向けた環境整備については、政府一体となって総合的な検討を行うため「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」が設置されており、6月に「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」(令和5年度一部変更)及び「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和5年度改訂)」が決定された。また、外務省では、国際移住機関(IOM)との共催で「外国人の受入れと社会統合のための国際フォーラム」を毎年開催しており、受入れに係る具体的課題や取組について国民参加型の議論の活性化に努めている。

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