国連外交

令和6年9月30日
未来サミットで演説する岸田総理大臣 (写真提供:内閣広報室)
FMCTフレンズ・ハイレベル立上げ会合に出席した岸田総理大臣 (写真提供:内閣広報室)
  • 岸田総理大臣は、9月21日(土曜日)から23日(月曜日)(現地時間)まで、第79回国連総会等出席のため、米国デラウェア州及びニューヨーク州を訪問しました。
  • 滞在中、岸田総理大臣は、未来サミットにおいて演説を行ったほか、FMCTフレンズ・ハイレベル立上げ会合や日米豪印首脳会合等に出席しました。また、各国首脳との会談などを行いました。

1 主要行事の結果概要

(1)未来サミット(9月22日(現地時間。以下同じ。))

 9月22日、岸田総理大臣は未来サミットに出席し、演説を行いました。概要は以下のとおりです。
 岸田総理大臣は、様々な価値観を有する国々が、現在と未来の世代のために行動するには、根本的な指針が必要であり、平和で自由で豊かな世界の未来に向けて、以下の5点が重要であると強調しました。

  1. 第一に、「法の支配」の貫徹です。岸田総理大臣は、力による一方的な現状変更の試みは世界のどこであれ許されないとして、「法の支配」に基づく自由で開かれた国際秩序こそが持続可能な開発を可能とし、繁栄をもたらすことができる旨述べました。
  2. 第二に、「人間の尊厳」の擁護です。岸田総理大臣は、「人間の尊厳」が、複合的危機に対処するための全ての国際協力の出発点である旨述べました。
  3. 第三に、人間の安全保障の理念の下での、「人への投資」です。岸田総理大臣は、女性や子ども・ユースのエンパワーメントは最重要の課題であるとして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)や、質の高い教育において、日本が世界をリードしてきた旨述べました。また、ジェンダー分野を牽引する次世代の育成プログラム立ち上げを発表しました。
  4. 第四に、核軍縮・不拡散です。岸田総理大臣は、核軍縮を巡る情勢が一層厳しさを増している中、「核兵器のない世界」に向けた現実的かつ実践的な取組を推進していく決意を述べました。
  5. 第五に、国連安全保障理事会改革です。岸田総理大臣は、大多数の国が常任・非常任双方の議席の拡大を支持している中、安保理改革に向けて具体的な行動を取るべきであると述べました。

 最後に、岸田総理大臣は、国際社会が責任を共有し、真の連帯を実現すべきとして、より良い未来を実現できるよう、多国間主義の強化を呼びかけ、国連に対する日本の揺らぎないコミットメントを表明しました。

(2)二国間会談等

日米首脳会談(9月21日)
 現地時間9月21日午前11時05分(日本時間22日午前0時05分)から約60分間、岸田総理大臣は、ジョセフ・バイデン米国大統領(The Honorable Joseph R. Biden, Jr., President of the United States of America)と、バイデン大統領の私邸において会談を行いました。
 両首脳は、本年4月の公式訪問の際の成果を含む日米関係のこれまでの進展を包括的に振り返るとともに、日米共通の課題について率直な意見交換を行いました。
 バイデン大統領からは、岸田総理大臣との特別な友情に対する謝意が述べられるとともに、日米関係の発展や国際社会が直面する課題への対応における岸田総理大臣のこれまでの貢献を称賛する旨の発言がありました。また、両首脳は中国、北朝鮮、ウクライナ、中東等の地域情勢についても深い議論を行いました。
 最後に、両首脳は、今後も日米両国が、自由で開かれた国際秩序の中核を担うグローバル・パートナーであり続けることを確認しました。
日豪首脳会談(9月21日)
 現地時間9月21日午後1時25分(日本時間9月22日午前2時25分)から約35分間、岸田総理大臣は、アンソニー・アルバニージー・オーストラリア連邦首相(The Hon. Anthony Albanese, MP, Prime Minister of the Commonwealth of Australia)と日豪首脳会談を行いました。
 岸田総理大臣から、新たな次元に引き上げられた日豪間の「特別な戦略的パートナーシップ」をこれからも維持・強化していきたい旨述べました。これに対して、アルバニージー首相から、これまで日豪間の協力を牽引してきた岸田総理大臣のリーダーシップに敬意が表されました。
 両首脳は、安全保障分野を含む二国間協力や、地域・国際情勢について率直な意見交換を行い、日豪の幅広い戦略認識の一致を改めて確認しました。特に、経済安全保障分野での協力強化を確認するとともに、若い世代の交流の重要性で一致しました。
日印首脳会談(9月21日)
 現地時間9月21日午後6時14分(日本時間22日午前7時14分)から約20分間、岸田総理大臣は、ナレンドラ・モディ・インド首相(H.E. Mr. Narendra Modi, Prime Minister of India)と日印首脳会談を実施しました。
 岸田総理大臣から、総理就任後初めての二国間訪問先としてインドを選んだことに触れ、モディ首相と共に挙げた様々な成果に言及しつつ、今後とも日印両国で協力してグローバルガバナンスに取り組んでいきたい旨述べました。これに対し、モディ首相から、岸田総理大臣の指導の下、日印関係が飛躍的に発展したことに感謝したい、日印両国は自然なパートナーであり、様々な分野で引き続き両国間で協力を進めていきたい旨述べました。
 両首脳は、首脳間年次相互訪問としてのモディ首相の訪日も念頭に、幅広い分野における具体的な取組について両国で引き続き連携していくことを確認しました。
ミシェル欧州理事会議長との会談(9月22日)
 現地時間9月22日午前10時30分(日本時間22日午後11時30分)から約20分間、岸田総理大臣は、シャルル・ミシェル欧州理事会議長と会談を行いました。
 岸田総理大臣から、ミシェル議長との間でこれまでになく強固な日EU関係を築くことができたと述べ、ミシェル議長から岸田総理大臣のG7の枠組みを通じたこれまでの貢献に謝意が示されました。ミシェル議長より、日本のウクライナ支援に高い評価が示され、両首脳は、引き続き、様々な分野で、日EU及びG7で緊密に連携していくことで一致しました。
日・パラオ首脳会談(9月22日)
 現地時間9月22日午前11時40分(日本時間9月23日午前0時30分)から約35分間、岸田総理大臣は、スランゲル・ウィップス・ジュニア・パラオ共和国大統領(H.E. Mr. Surangel S. WHIPPS, Jr., President of the Republic of Palau)と首脳会談を行いました。
 岸田総理大臣から、本年3度目となる会談での再会を喜ぶとともに、第10回太平洋・島サミット(PALM10)へのウィップス大統領の出席と貢献に謝意を述べました。また、本年の日・パラオ外交関係樹立30周年を共に祝福し、パラオとの「キズナ」と「トクベツ」な関係を一層強化したい旨述べました。これに対し、ウィップス大統領からは、両国が友情を深く共有していることに触れた上で、PALM10により太平洋島嶼国との「キズナ」が更に強固になった旨発言があり、日本の協力への謝意が表明されました。
日・モンゴル首脳会談(9月22日)
 現地時間9月22日午後3時40分(日本時間23日午前4時40分)から約40分間、岸田総理大臣は、オフナー・フレルスフ・モンゴル国大統領(H.E. Mr.Ukhnaa KHURELSUKH, President of Mongolia)と首脳会談を行いました。なお、冒頭、フレルスフ大統領から、能登半島における大雨災害についてお見舞いのメッセージがありました。
両首脳は「特別な戦略的パートナー」である両国の協力関係を政治・経済の両面でより一層強化・拡大していくことで一致しました。
 また、岸田総理大臣から、「日本とモンゴルの行動計画(2022年~2031年)」の方向性の下、今後も具体的な協力を着実に進めたい旨述べ、両首脳は、防衛装備品・技術移転協定の締結交渉が実質合意に至ったことを歓迎し、早期署名を目指すこと等で一致しました。
日加首脳会談(9月22日)
 現地時間9月22日午後4時55分(日本時間23日午前5時55分)から約25分間、岸田総理大臣は、ジャスティン・トルドー・カナダ首相(The Right Honourable Justin Trudeau,Prime Minister of Canada)と会談しました。
 両首脳は、岸田総理大臣在任中のお互いの友情に対して感謝を述べあった上で、岸田総理大臣から、広島訪問時にトルドー首相が私的に原爆資料館を訪問したことに対し大変心動かされた、「核兵器のない世界」に向け日加で協力していきたい旨述べました。岸田総理大臣は、カナダがインド太平洋地域への関与を強めていることは心強いと述べ、「自由で開かれたインド太平洋に資する日加アクションプラン」の着実な進展を評価しました。また、本年CPTPP議長国であるカナダと引き続きインド太平洋における自由で公正な経済秩序の維持・強化に向け連携したい旨述べました。
 また、両首脳は厳しい国際情勢に直面していることを確認した上で、岸田総理大臣から、来年G7議長国となるカナダがG7の強固な連携をリードすることを期待する旨述べました。
グテーレス国連事務総長との会談(9月22日)
 現地時間9月22日午後6時30分から約20分間(日本時間23日午前7時30分)、岸田総理大臣は、アントニオ・グテーレス国連事務総長(H.E. Mr. António Manuel de Oliveira Guterres, Secretary-General of the United Nations)と会談を行いました。
 岸田総理大臣から、(1)「核兵器のない世界」に向けた不断の取組、(2)人間の尊厳及び人間の安全保障の理念に基づき、平和で自由で豊かな世界の未来の実現に向け、国際社会が責任を共有し、多国間主義にコミットすべきこと、(3)安保理改革について、具体的成果につなげること、(4)邦人職員の増強への配慮について述べました。これに対し、グテーレス事務総長から、岸田総理大臣及び日本による国連との協力に対する謝意が述べられた上で、未来サミットの成果について説明があり、両者は、国連を中核とした多国間主義の重要性につき一致しました。
フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とのワーキング・ランチ(9月23日)
 現地時間9月23日午前11時45分(日本時間24日午前0時45分)から約60分間、岸田総理大臣は、ウァズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とワーキング・ランチを行いました。
 フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長より、岸田総理大臣は最高のカウンターパートであったとして、日本のウクライナ支援や日EU関係の大きな発展に対する貢献に謝意が示され、両首脳は、これを基礎として、引き続き日EU関係を強化していくことで一致しました。
日・ウクライナ首脳会談(9月23日)
 現地時間9月23日14時(日本時間24日3時)から約30分間、岸田総理大臣は、ヴォロディミール・ゼレンスキー・ウクライナ大統領(H.E. Mr. Volodymyr ZELENSKYY, President of Ukraine)と首脳会談を行いました。
 ゼレンスキー大統領より、岸田総理大臣の強いリーダーシップによるウクライナへの支援、昨年3月の岸田総理大臣のキーウ訪問による二国間関係の強化、広島サミットへの同大統領の参加等に対する謝意の表明がありました。
 これに対して、岸田総理大臣は、ロシアによる侵略が始まった2年半前、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」という強い危機感の下、この国際秩序の根幹を揺るがす暴挙に対して断固として立ち向かうことを決意した、日本は引き続き、ウクライナ支援を全力で進めていく旨述べました。
ストルテンベルグNATO事務総長との会談(9月23日)
 現地時間9月23日午後3時10分(日本時間24日午前4時10分)から約20分間、岸田総理大臣は、イェンス・ストルテンベルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長と会談を実施しました。
 岸田総理大臣の3年連続でのNATO首脳会談出席に象徴される近年の日NATO関係の発展を歓迎し、現下の安全保障環境が厳しさを増す中で、日本を含むIP4とNATOの協力が一層重要との認識を共有しました。さらに、日・NATO関係の更なる発展に向けて引き続き協力していくことで一致しました。

(3)多国間会合等

日米豪印首脳会合日米豪印首脳ワーキングディナー(9月21日)
 現地時間9月21日、午後4時(日本時間22日午前5時)から、岸田総理大臣は、バイデン米大統領の地元であるデラウェア州ウィルミントンにおいて、同大統領主催で開催された日米豪印首脳会合(午後4時(日本時間22日午前5時)から約2時間)及びワーキングディナー(午後7時35分頃(日本時間22日午前8時35分頃)から約70分間)にアルバニージー豪首相及びモディ印首相と共に出席しました。
 同首脳会合で、4か国の首脳は、インド太平洋地域の情勢について戦略的かつ率直な意見交換を行い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた確固たるコミットメントを改めて確認し、4か国で地域の課題解決に向けた幅広い分野での実践的協力を引き続き推進することで一致しました。また、今次会合の機会に日米豪印首脳共同声明「ウィルミントン宣言」が発出されました。
FMCTフレンズ・ハイレベル立上げ会合への出席(9月23日)
 現地時間9月23日午後4時(日本時間24日午前5時)から約50分間、岸田総理大臣は、「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)フレンズ・ハイレベル立上げ会合」を国連本部において主催しました。
 同会合には、核兵器国と非核兵器国の双方からなるフレンズ12カ国から閣僚・政府高官が参加し(ブリンケン米国務長官、ジョリー加外相、ウォン豪外相、マナロ・フィリピン外相、アブバカル・ナイジェリア国防相、コリンズ英閣外大臣、リントナー独外務省国務大臣、チリエリ伊外務副大臣等)、FMCTフレンズの立ち上げを確認するとともに、FMCTの早期交渉開始に向けた連携で一致しました。
 岸田総理大臣は冒頭挨拶で、FMCTフレンズ参加国が早期の交渉開始に向けて共に取り組むよう呼びかけるとともに、来年の広島・長崎への原爆投下から80年の機会を捉え、被爆の実相の理解促進に取り組む考えを示しました。
 また、フレンズ各国は、FMCTの早期交渉開始のためには政治的意思が必要と指摘しました。共同声明では、FMCTの早期交渉開始に向けた協力を確認し、透明性・信頼醸成措置を含む具体的な措置に取り組むよう求めました。

(4)その他

 日米豪印首脳会合サイドイベント「日米豪印がんムーンショット」出席(9月21日)
 現地時間9月21日、午後6時40分(日本時間22日午前7時40分)から、岸田総理大臣は、日米豪印首脳会合サイドイベント「日米豪印がんムーンショット」に出席しました。同イベントにおいて、日米豪印は子宮頸がんを含むがん対策に関する協力を打ち出しました。
 岸田総理大臣は、同イベントでのスピーチにおいて、新型コロナで停滞した保健課題への対応が益々重要になっている中、がん協力を含め地域の健康と安全に取り組むことは、まさに時宜を得たイニシアティブであると述べつつ、我が国のインド太平洋地域におけるがん対策の協力について紹介したほか、日米豪印の技術やネットワーク力を結集させて、がん対策の取組が一層効果を上げることができるよう、緊密に連携していくことを強調しました。

2 日程

9月21日(土曜日)

  • フィラデルフィア着
  • 日米首脳会談
  • 日豪首脳会談
  • 日米豪印首脳会合
  • 日印首脳会談
  • 日米豪印首脳ワーキングディナー
  • フィラデルフィア発
  • ニューヨーク着

9月22日(日曜日)

  • ミシェル欧州理事会議長との会談
  • 日・パラオ首脳会談
  • 日・モンゴル首脳会談
  • 日加首脳会談
  • 未来サミット出席
  • グテーレス国連事務総長との会談

9月23日(月曜日)

  • フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とのワーキング・ランチ
  • 日・ウクライナ首脳会談
  • ストルテンベルグNATO事務総長との会談
  • FMCTフレンズ・ハイレベル立上げ会合への出席
  • ニューヨーク発
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