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イスラム研究会について
(河野外務大臣挨拶)
平成12年12月
今日の国際社会においては、人種・民族・宗教といった帰属意識の相剋を乗り越えるために「文明間の対話」が非常に重要になってきています。冷戦後も多発する地域紛争も、その背景には貧困、格差などの経済発展の問題と同時に、民族や宗教の対立が指摘されることが多く、私たちが世界の平和、広い意味での紛争予防に貢献するためには、引き続き途上国支援に力を入れるとともに、民族や宗教の問題に理解を深めていくことが重要です。国連においても2001年を「文明間の対話年」とすることが決定され、多様な価値観に対する理解に基づいた対話の必要性が広く共有されています。
このような中、私は、世界人口の5分の1に当たる10億人を超える信徒を有し、中東のみならず、アジア地域でも伸張しつつあるイスラムについて十分に理解を深めておくことが日本外交を展開していく上でも重要と、常日頃より考えてきました。
そのような考え方から、イスラムへの理解を深め、イスラムに関する様々な分野での有識者の方々との意見交換を通じて、今後の日本外交に資する自由な議論を行うために、「イスラム研究会」を本年3月、自分の発案で設立しました。
本報告書は、そのような考えの下で、趣旨にご賛同頂いた有識者の先生方と共にこれまで計7回開催した外務省「イスラム研究会」のとりあえずの成果を取りまとめたものです。本報告書には、「イスラム研究会」の成果を今後の日本外交に活かすことを念頭に、これまでの研究会の議論を通じて導き出された今後の政策目標の試論を含めました。この試論は、外務省としての公式な立場を述べたものではありませんが、今後の日本外交を中長期的な視野から眺め、イスラムとの関係を進めていくために必要と思われることを自由な発想で取りまとめることを目的としたものです。
イスラムへの理解を深め、それを日本外交に資するものとするためには今後一層の調査・研究が必要と思います。また、本報告書を通じて示された問題意識や政策の試論等については、様々な考え方があると思われますので、今後とも同研究会メンバーの方々との意見交換はもちろん、各界各層での議論の活性化に期待したいと思います。
本報告書が、日本の官民各層におけるイスラム理解の深化に一石を投じ、今後の日本とイスラム世界との関係の強化に繋がることを強く希望いたします。
本研究会には、御多忙の中、板垣雄三東京大学名誉教授、後藤明東京大学教授、佐藤次高東京大学教授、山内昌之東京大学教授に、コアメンバーとしてご参加頂き、またその他にも、研究者や実務者といった多くの方々にご協力を頂いております。この場を借りて、ご協力に感謝します。