平成20年3月23日(日曜日)21時30分頃
於:サウジアラビア・リヤド
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マダニ外務担当大臣、
御参加の有識者の方々、
御来賓の方々、
二聖モスクの守護者アブドッラー・サウジアラビア王国国王の寛容なる御招待により、本日ここに第6回イスラム世界との文明間対話セミナーが開催されますことに、心よりお祝いを申し述べます。
この変動の激しい現代にあって、こうした知的対話の場が6回の会合を重ねてきたこと自体、賞賛に値すべきことであり、対話の継続と発展に御尽力を重ねてこられた有識者の方々に深く敬意を表したく思います。
また、ここに数多く集われたイスラム諸国の中でも特に、本件対話の創成期に日本の呼び掛けに最初に応え第1回会合を主催して以来、本件対話の継続に常に協力してきたバーレーン王国には改めて深甚なる感謝の意を申し上げます。
「文明間の対話」が叫ばれて久しく、2001年に国連で採択された「文明間の対話グローバルアジェンダ」に基づくユネスコの種々の活動や、国連本部に事務局がおかれた「文明間の同盟」イニシアティブ、日本についても、本文明間対話のほか、日本・アラブ対話フォーラムを始め対話の機会はそれなりに増えたようにも思います。しかし「対話」によって我々が目的としていた「相互理解」、「相互の信頼」は充分に達成されたのでしょうか。残念ながら答えは「否」です。グローバル化が進展し、社会・経済構造が流動化していく中で、人々は自分たちと異なる価値観を有する他者への寛容性を失い、また相互の不信をあおるような行為も一部には見受けられます。しかし、そのような状況であるからこそ、我々は不断の努力をもって、その目的に近づこうとする営みを行い続けなくてはなりません。なぜならば、その営みの継続性こそが唯一我々の持ち得る希望であるからです。
今次会合における総合テーマ、「文化と宗教の尊重」はまさしく、イスラム教徒が精神的な拠り所とする民族の文化と「神(アッラー)」という絶対的存在への服従という信仰心への敬意と、西洋とは一括りにできない独特の多様性を有する日本の文化、歴史、社会事情等に対する理解なくして対話は成立しないという考えに基づき設定されたテーマであると理解しています。日本でも、在日イスラム教徒の数は増加しており、2002年の段階で既に20万人を突破しているとみられています。また、モスクの数も1935年に第一号として創設された神戸モスクを皮切りに、現在40近くに達しているとみられています。日本社会もイスラム教徒の増加により、給食でのハラールの使用や礼拝やスカーフの着用等、既に西洋社会で顕在化している課題にバランス感覚をもって対処していく必要に迫られています。このため、イスラムの「文化と宗教の尊重」は正に国民一般が身近に考えないといけないテーマになってきているのです。
今回のセミナーでは、サウジアラビア王国の提案による新たな試みとして、2つのワークショップ、即ち双方の学生の相互理解とパートナーシップの促進並びに本対話の組織化に関して議論の場が設けられたことを高く評価します。異文化の中に育った青年同士、更に世代を超えた青年と有識者の接触は、対話の持続性のみならず、有識者の議論自体に新たな視点をもたらし、創造的な閃きが生まれることになるかもしれない、と私は期待します。
本件セミナーが、「対話」を通じた双方の有識者の出会いと相互理解の場を提供してきたことは事実であり、これまでのセミナーの歩みは、まさにそういった出会いの積み重ねであったろうと思います。そうであればこそ、豊穣な対話の果実を広く社会に還元していくことが、社会をリードする有識者である皆様方の責務、ノブレス・オブリージュであるようにも思います。今回のセミナーの各セッションと「組織化」ワークショップにおける議論が、従来の土台のうえに、日本とイスラム世界双方のあらゆるレベルにおけるより一層の交流を促す良き機会となることを祈ります。
最後に、本日より3日間に亘るセミナーの成功を祈念し、私の挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。