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平成21年3月
日本及びイスラム諸国約20ヶ国(アラブ、アジア、アフリカ、欧州等)の学術界を中心とした有識者70名以上
3月11日(水曜日)~3月12日(木曜日)
(1)「イスラム世界との文明間対話セミナー」は、2001年、河野外務大臣(当時)が湾岸諸国を訪問した際に提唱した「湾岸諸国との重層的関係に向けた新構想」(通称:河野イニシアティブ)の柱のひとつであり、2002年から2008年まで日本及び中東イスラム諸国において6回の会合が開催された。
(2)今次会合には、開会式にクウェート側からホレイティ・ワクフ・イスラム大臣、シェイカ・アムサール・クウェート・ボランティア協会創設者兼会長、我が国政府を代表して柴山昌彦外務大臣政務官が、また、イスラム側からバーレーンのオムラーン外務省二国間協力局長がスピーチを行った。また、個別セッションには、板垣雄三東京大学名誉教授を始めとする日本側有識者20名を含む70名以上が参加した。我が国からは青年交流参加者を含め、総勢史上最多の約30名が参加した(日本側参加者リスト別添)。
(3)本セミナーは従来、日本とイスラム世界の有識者が自由な個人の立場から意見交換を行うものであり、政策提言や合意文書作成を目的とするものではないとの共通認識に基づき開催されてきたが、今次会合ホスト国クウェートの意向により、前回に引き続き成果文書として有識者による提言の形式を取った最終コミュニケが発出された(要約下記参照)。
(4)会合では、統一テーマ「環境と文明の調和」の下、全員参加形式の4セッション( 1)「死生観と自然観」、2)「環境の保護」、3)「環境と文明の価値」、4)「創造的ネットワークを通じての共通の価値の構築」)では、日本及びイスラム世界側から各セッションにおいて基調講演と補足コメントが行われ、右に基づく議論が行われた。また、3つの中間セッション( 1)「ポスター・セッション」、2)「プレス・セッション」、3)「青年交流セッション」)が設けられ、それぞれ活発な議論、やり取りが行われた。閉会式においては、日本(板垣雄三東京大学名誉教授)及びバーレーン(オムラーン外務省二国間局長)から閉会挨拶を行い、最後にワクフ・イスラム省次官がコミュニケを読み上げ、次回の会合を日本がホストすることを歓迎し、閉会した。
(1)日本外交のプレゼンス:日本政府の代表として、文明間対話開会セッションにおいて、柴山外務大臣政務官が、環境問題における日本とイスラム世界の相互理解及び協力の重要性につきスピーチをし、右がテレビ中継され、広く報道されたこと、更に現地アラビア語紙アル・アワーン紙との単独インタビューに応じ、文明間対話の意義や日本の中東地域における役割を訴えたことは、日本の存在感を示す格好の機会となり、日本外交にとって大きな意味があった。
(2)活発な広報:柴山政務官のインタビューに加え、武藤在クウェート大使による事前ブリーフ、長沢・保坂両教授によるアラビア語インタビュー、座長格の板垣教授によるインタビュー、ワシントン・タクリール紙編集長やアル・ジャジーラ放送、朝日石合次長らが参加したプレス・セッションの開催等により、クウェート及び中東メディアの大きな関心を引くことができた。
(3)参加者所属国の国際的拡がり:バーレーンにおける第1回会合時は、参加者の所属国は13ヵ国であった。今回は、全体として約20ヵ国から70名以上が参加した。イスラム側参加者の所属国は前回のサウジ会合に続き、中東アラブ諸国、インド、インドネシア等一部アジア諸国に加え、米、英、ロシア、スイス、トルコ、セネガル等幅広い国からの参加が得られた。
(4)メイン・テーマ「環境」:今回のセミナーでは、「環境と文明の調和」をメイン・テーマとした。ホスト国クウェートは、湾岸諸国の中でも環境保全、環境対策に高い関心を払っている国であり、我が国との間でも、クウェート湾浄化プログラムの実施や、子どもの環境教育を公共教育に導入する等、とりわけ環境分野での協力が進んでいる。地球温暖化や気候変動への懸念が国際的に高まっている中、環境保護を重視するクウェートにおいて、「環境と文明の調和」をテーマに日本とイスラム諸国の有識者間で対話を実施することはまさに時宜を得たものであった。
(5)有識者間ネットワーク「知恵の架け橋」の立ち上げ:日本国内の大学・研究機関においては、イスラム世界の研究機関との情報共有、共同研究、学術交流へのニーズが高まっている。そこで今回、日本とイスラム世界との交流を進めようとしている先駆的モデル・ケースを紹介し、文明間対話ネットワーク構想「知恵の架け橋」を立ち上げ、日本のイスラム研究、イスラム諸国の日本研究のネットワークへの参加を呼びかけ、研究機関のネットワークの拡大を図ることを試みた。今回、本セッションの合間の中間セッションとして「ポスター・セッション」を設け、ネットワーク参加機関が広報素材を持ち寄り、各機関の活動についての解説、広報を行った。
(6)日本文化週間:セミナー開催にあわせ、8~12日までクウェートで日本文化週間が開催された。8日夜のオープニング・セレモニーでは、日本アニメ「ドラえもん:のび太の恐竜2000(アニメ文化大使)」及び「風の谷のナウシカ」が計4回上映され、約450名の来場者を得て大盛況であった。また、青年交流、日本図書のアラビア語訳の寄贈、セミナー会場における日本紹介ブースの設置は、日本文化を紹介する良い機会となった。
(7)青年交流セッション:前回のサウジ会合に引き続き、「青年交流セッション」が開催された。日本からは、6倍の応募の中から選抜された5名の学生にクウェート留学中の5名の学生を加えた計10名が参加し、クウェートからも10名の学生が参加して、率直で、活発な意見交換が実施された。また、双方の有識者からも、学生同士の意見交換にコメントがあった。対話を、限られた有識者だけでなく世代を超えて拡大していくためにも、本セッションは大変有意義であったと考えられる。
(8)組織化ワークショップと有識者からのメッセージ(コミュニケの発出):今回のセミナーにおいては、具体的な成果を打ち出すべきとのホスト国クウェートの強い意向もあり、前回のサウジ会合に引き続きコミュニケが発出された。クウェート側は、提言の内容ではなく、進捗をフォローアップすべきであると主張し、クウェート、バーレーン、日本の三者の関係者のチームにより次回会合開催までフォローアップを行っていくことが確認された。
【参考】最終声明と提言(要約)
本会合のトピックス
1)環境および万物(Universe)に対する日本とイスラム世界の見方の起源
2)世界が直面する環境の課題
3)解決策に対する見方
4)日本とイスラム世界の連携のための方策と手段:日本側は「知恵の架け橋構想」を提案し、イスラム側は、「地球に優しい仲間たちの対話(Earth mates Dialogue)構想」を提案した。双方の提案は、作業グループ間で議論され、双方が適切な方策と手段をもって構想の実現を目指すことが了解された。
(提言)