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演説

田中外務大臣政務官演説

第二回イスラム世界との文明間対話セミナーに際する 田中外務大臣政務官挨拶


平成15年10月8日


本セミナーにご参加下さったイスラム世界の先生方
我が国の先生方
御来賓の皆様
御列席の皆様

昨年バーレーンにおいて第1回イスラム世界との文明間対話セミナーが開催されたのに続き、この度、東京におきまして中東・北アフリカ諸国、アジア諸国、それに我が国の学識、経験豊かな先生方に多数お集まりいただき、ここに第2回文明間対話セミナーを開催できますことを大変うれしく思います。90年代以降、コンピューター技術の日常生活への普及に代表されるように国際社会のグローバル化が益々進み、人、物、富、情報がそれまで以上に、より自由に国境を越えて行き交う時代になりました。しかし、国境の向こう側でそれぞれ固有の歴史を背負い、固有の自然と地理的環境の中で育まれた文化を有し、固有の価値観をもって生きる人々に対する私たちの認識と理解は、グルーバル化の速度ほどには深まっておりません。こうした事情を背景に、相互理解を深めるために昨年12月には駐日イスラム諸国大使団と我が 国与党イスラム議員連盟のイニシアティブで「相互依存世界における平和と対話の促進」というシンポジウムが開催され、国連大学とわが国外務省もこれに協力いたしました。また、先月にはエジプト、サウジアラビア、我が国の各界の有力者が一堂に会した日本・アラブ対話フォーラムが東京で開催されました。さらに、先月下旬には対中東文化交流・対話ミッションがサウジアラビア、イラン、シリア、エジプトを訪問いたしました。私は、異なる歴史的、文化的背景をもった人々が様々な形で相互理解に向けた息の長い努力を続けていくことが人間社会における摩擦と対立を最小限化するための智恵と精神を養っていく最良の手段であると確信しております。

国連文明間対話の年に編纂された「相違を越えて」という報告書はこう述べています。「私たち古い世代は多様性に対する恐怖心を次の世代に伝えてきたのか。もしそうであるならば、若い世代が私たちの過ちを知り、一歩前に足を踏み出す勇気を持つことが、私たちが学ばなかったことを学び、見なかったものを見、越えられなかった相違を乗り越えるために重要である」と。90年代にボスニア等での紛争を受けて、「紛争は相違の産物である」との見方が提起されました。確かに、相違を原因とする居心地の悪さが、異なる文化や宗教をもつ人々を抱える国々の中で広まっている傾向も見え、冷戦時代のイデオロギーを軸とした対立の時代から民族的、宗教的、文化的アイデンティティを軸とした対立の時代に移行しているようにもみえます。しかし、同時に私たちは、人類には文化や宗教や民族の異なる人々が平和的に共存してきた長い歴史があることも知っています。多様性をマイナスの要因としてではなく、社会に創造力と活力をもたらすプラスの要因としてみるべき資質が新しい世代には不可欠であると思います。

国際社会の様相は大きく変わりました。すべての国、すべての個人が国際社会の脅威への対応を求められ、自己防衛や責任転嫁の姿勢ではなく、正面から社会不安の原因を究明する姿勢が求められています。本日のセミナーは人間開発の側面から社会の安定や平和の問題を考え、異なる言語、文化、価値観を有する人々が相互に作用し合い、調和と相互発展を実現するためにどのように取り組むかを考える大変意義深いものです。イスラム世界と我が国の頭脳であり、教育、文化等の第一線で人間形成、世論形成に携わっておられる先生方が自由な個人として腹蔵なく意見を交わすことは、イスラム世界と我が国との相互理解を深め、多様性への包容力と寛容の精神を若い世代に引き継いでいく上で大変重要であると思います。

文明間対話は長く忍耐を要するプロセスですが、19世紀のフランスの政治家の言葉にありますように、「困難なことは直ぐに、不可能なことは若干の時間的余裕を」の精神で取り組んでまいりたいと思います。2日間に亘るセミナーの成功を祈念し、私の挨拶とさせていただきます。有難うございました。


政務官 / 平成15年 / 目次


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