外交青書・白書
第2章 地域別に見た外交

7 地域協力・地域間協力

世界の成長センターであるインド太平洋地域において、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を実現することにより、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくことが重要である。こうした観点から、日本は、日米同盟を基軸としながら、オーストラリア、インド、ASEAN、欧州などの同志国とも連携し、日・ASEAN、日・メコン協力、ASEAN+3(日中韓)、東アジア首脳会議(EAS)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、アジア太平洋経済協力(APEC)などの多様な地域協力枠組みを通じ、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた取組を戦略的に推進してきている。特に、2019年にASEANが採択した「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」31は、FOIPと法の支配や自由、開放性など本質的な原則を共有しており、日本としては、ASEANの中心性と一体性を尊重しつつ、AOIPに対する国際社会の支持を一層広げ、AOIPの掲げる原則に資する具体的な日・ASEAN協力を実施し、「インド太平洋国家」としてインド太平洋地域全体の安定と繁栄に寄与する考えである。

(1)東南アジア諸国連合(ASEAN)情勢全般

広大なインド太平洋の中心に位置するASEANは、FOIP実現の要である。2015年11月のASEAN関連首脳会議では、「政治・安全保障」、「経済」及び「社会・文化」の三つの共同体によって構成されるASEAN共同体が同年内に設立されることが宣言され(ASEAN共同体設立に関するクアラルンプール宣言)、加えてASEAN共同体の2016年から2025年までの10年間の方向性を示す「ASEAN2025:Forging Ahead Together(共に前進する)」が採択された。2019年6月には、AOIPが採択された。

ASEANが地域協力の中心として重要な役割を担っている東アジア地域では、ASEAN+3(日中韓)、EAS、ARFなどASEANを中心に多層的な地域協力枠組みが機能しており、政治・安全保障・経済を含む広範な協力関係が構築されている。

経済面では、ASEANは、ASEAN自由貿易地域(AFTA)を締結し、また、日本、中国、韓国、インドなどとEPAやFTAを締結するなど、ASEANを中心とした自由貿易圏の広がりを見せている。2020年11月に日本やASEAN 10か国を含む15か国によって署名されたRCEP協定は、2022年1月1日に発効した。日本は、参加国と緊密に連携しながら、本協定の完全な履行の確保に取り組むと同時に、署名を見送ったインドの本協定への将来の復帰に向けて、引き続き主導的な役割を果たす考えである。

(2)南シナ海問題

南シナ海をめぐる問題は、地域の平和と安定に直結し、国際社会の正当な関心事項であり、資源やエネルギーの多くを海上輸送に依存し、南シナ海を利用するステークホルダー(利害関係者)である日本にとっても、重要な関心事項である。

中国は、係争地形の一層の軍事化(197ページ 第3章第1節3(4)参照)を進めるなど、法の支配や開放性に逆行した一方的な現状変更の試みや地域の緊張を高める行動を継続・強化している。中国はまた、比中仲裁判断32を受け入れないとの立場を変えておらず、国連海洋法条約(UNCLOS)と整合的でない海洋権益に関する主張を続けている。

中国によるこうした一方的な現状変更やその既成事実化の試み、地域の緊張を高める行動に対し、日本を含む国際社会は深刻な懸念を表明している。日本としても、力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対し、また、海における法の支配の三原則(234ページ 第3章第1節6(2)参照)を貫徹すべきとの立場から、南シナ海をめぐる問題の全ての当事者がUNCLOSを始めとする国際法に基づく紛争の平和的解決に向け努力することの重要性を一貫して強調している。また、中国による南シナ海における基線に関する主張がUNCLOSの関連規定に基づいていないこと、比中仲裁判断で領海や領空を有しない低潮高地と判断された海洋地形の周辺海空域も含め、航行と上空飛行の自由が守られることが重要であること、中国が主張する「歴史的権利」は国際法上の根拠が明らかではなく、比中仲裁判断では中国が主張する「九段線」に基づく「歴史的権利」がUNCLOSに反すると判示され、明確に否定されたことなども指摘してきている。比中仲裁判断から5年の節目に当たる2021年に続き、2022年7月にも外務大臣談話を発出し、国際法に従った紛争の平和的解決の原則や法の支配の重要性を始めとする日本の立場を改めて表明した。

2018年には、中国とASEANの間で南シナ海行動規範(COC)33の交渉が開始された。日本としては、COCが実効的かつ実質的でUNCLOSに合致し、南シナ海を利用する全てのステークホルダーの正当な権利と利益を尊重するものとなるべきであり、そのような取組が現場の非軍事化、そして平和で開かれた南シナ海の実現につながることが重要であると主張してきている。

(3)日・ASEAN関係

FOIP実現の要であるASEANがより安定し繁栄することは、地域全体の安定と繁栄にとって極めて重要である。日本は、2013年の日・ASEAN友好協力40周年を記念する特別首脳会議で採択された「日・ASEAN友好協力に関するビジョン・ステートメント」を着実に実施しつつ、ASEAN共同体設立以降も「ASEAN共同体ビジョン2025」に基づくASEANの更なる統合努力を全面的に支援してきている。さらに2020年に採択した「AOIP協力についての第23回日・ASEAN首脳会議共同声明」を指針として、海洋協力、連結性、国連持続可能な開発目標(SDGs)、経済等というAOIPの優先協力分野に沿って具体的な協力を積み上げてきている。同声明は、AOIPに関してASEANが域外国との間で採択した初の共同声明であったが、それに続く形でASEANとほかの対話国との間で同様の共同声明が採択されている。そして、日本とASEANは、2023年に友好協力50周年を迎える。50周年に向けて、一般公募で集まった多数の応募作品の中から選ばれた公式ロゴマークとキャッチフレーズ「輝ける友情 輝ける機会(Golden Friendship, Golden Opportunities)」を2022年8月の日・ASEAN外相会議において共同で発表した。また、11月の日・ASEAN首脳会議では、多くの国々からの支持を受け、2023年の12月を目処(めど)に東京で特別首脳会議を開催することで一致した。この会議において、日・ASEAN関係の新たなビジョンを打ち出す考えである。

日本ASEAN友好協力50周年のロゴマーク キャッチフレーズは「輝ける友情 輝ける機会」
日本ASEAN友好協力50周年のロゴマーク
キャッチフレーズは「輝ける友情 輝ける機会」
第25回日・ASEAN首脳会議(11月12日、カンボジア・プノンペン 写真提供:内閣広報室)
第25回日・ASEAN首脳会議
(11月12日、カンボジア・プノンペン 写真提供:内閣広報室)

8月の日・ASEAN外相会議では林外務大臣から、さらに11月の日・ASEAN首脳会議では岸田総理大臣から、それぞれ日本がASEAN中心性・一体性を一貫して強く支持していることを改めて表明の上、AOIPに沿った具体的な協力を進めていることを紹介した。特に首脳会議に際してはAOIP協力に関する進展をまとめた報告書(プログレス・レポート)を公表し、2020年の共同声明以来、具体的な協力案件が計89件に上っていることを紹介した。新型コロナからの経済回復については、日本のASEAN包括的復興枠組への支援の一環として、総額2,950億円の財政支援円借款を供与していることを紹介し、これからも持続可能な成長を支援していく意向を表明した。さらに、日本の専門家の派遣を含め、ASEAN感染症対策センター34を引き続き支援していく意向を表明した。

岸田総理大臣はまた、2023年の日本ASEAN友好協力50周年に向け、(ア)海上交通安全などの海洋協力、(イ)質の高いインフラ投資などの連結性支援、(ウ)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を始めとした保健、気候変動対策、防災、(エ)サプライチェーン強靱(じん)化、デジタル技術、食料安全保障の強化といった幅広い経済分野での協力を強化していくと述べ、さらに日本の知見・経験を最大限いかして、「アジア・ゼロエミッション共同体構想」を実現していきたいと述べた。

これに対し、ASEAN各国からは、新型コロナからの回復の支援を始めとする上述のような各種取組や、ASEAN感染症対策センターの設立支援などについて、高い評価と謝意が表明された。さらに日本のAOIP協力についての高い評価とともに、引き続きの緊密な協力への強い期待が表明された。

また、岸田総理大臣は、地域・国際情勢についても、日本とASEANは多くの点で考えを共有しているとした上で、ミャンマー、ロシアによるウクライナ侵略、東シナ海・南シナ海、北朝鮮などについて取り上げ、日本の立場を明確に述べた。

これに対し、ASEANの複数の国から、南シナ海における航行・上空飛行の自由の重要性、国連海洋法条約を始めとする国際法の尊重の重要性などについて発言があった。また、北朝鮮による弾道ミサイル発射による緊張に懸念が表明され、朝鮮半島の非核化及び安保理決議の遵守の重要性や、拉致問題の即時解決への支持が表明された。

(4)日・メコン首脳会議(参加国:カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム及び日本)

メコン地域(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ及びベトナム)は、インド太平洋の中核であり、力強い経済成長と将来性が見込まれる、日本の戦略的パートナーである。メコン地域の平和と繁栄は、ASEAN域内の格差是正や地域統合にも資するものであり、日本を含むアジア全体にとって極めて重要である。その観点から、2009年以降、日・メコン首脳会議を毎年開催してきた。2021年及び2022年は、新型コロナやミャンマー情勢などの事情により延期され、開催に至らなかったが、日本は引き続き、日・メコン協力を着実に実施し、地域へのコミットメントを堅持する考えである。今後も日本は、メコン地域諸国にとって信頼のおけるパートナーとして、同地域の繁栄及び発展に貢献していく。

(5)ASEAN+3(参加国:ASEAN 10か国+日本、中国、韓国)

ASEAN+3は、1997年のアジア通貨危機を契機として、ASEANに日中韓の3か国が加わる形で発足し、金融や食料安全保障などの分野を中心に発展してきた。現在では、金融、農業・食料、教育、文化、観光、保健、エネルギー、環境など24の協力分野が存在し、「ASEAN+3協力作業計画(2018-2022)」の下、各分野で更なる協力が進展した。

8月に開催されたASEAN+3外相会議では、新しい「ASEAN+3協力作業計画(2023-2027)」が採択され、林外務大臣から、ASEAN+3における日本の積極的な貢献の例として、新型コロナ対策支援、食料安全保障、地域金融協力、海洋協力の取組を紹介した上で、日本はASEANの一体性・中心性を支持し、AOIPに沿った協力を重視していると述べた。また、中国から台湾情勢に関する立場の主張があり、林外務大臣から、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待すると述べた。

第23回ASEAN+3(日中韓)外相会議(8月4日、カンボジア・プノンペン)
第23回ASEAN+3(日中韓)外相会議
(8月4日、カンボジア・プノンペン)

11月に開催された第25回ASEAN+3首脳会議では、ASEAN+3協力について、岸田総理大臣から、2023年からの新たな「ASEAN+3協力作業計画」に基づき、デジタル経済や強靭な農業といった新たな分野を含めた取組を着実に進める意向を表明した上で、ASEAN+3の枠組みでも、AOIPの四つの優先分野に沿って以下のような具体的協力を進めていくと述べた。その内容は、(ア)海洋協力について、船舶の通航を支援する管制官の育成、海洋プラスチックごみ対策の計画策定や海洋モニタリングの支援、(イ)連結性について、質の高いインフラ投資の促進、情報通信技術・法制度整備・人的交流の活発化といったソフト連結性の支援、(ウ)SDGsの達成に向けた、ASEAN+3緊急米備蓄やASEAN食料安全保障情報システム、ASEAN感染症対策センターの早期稼働、バランスの取れた脱炭素化、2030年に向けたASEANの気候変動戦略行動計画の策定への支援の実施、(エ)経済・金融について、イノベーションやスタートアップへの投資、サプライチェーンの強靭化、チェンマイ・イニシアティブ35の更なる機能強化や、金融デジタル化の影響や自然災害リスクに対する財務強靭性の向上に係るイニシアティブへの貢献、などとなっている。

地域・国際情勢に関しては、岸田総理大臣から、ウクライナ情勢、北朝鮮、ミャンマー情勢について、日本の立場を明確に述べた。また、拉致問題の即時解決に向けて、各国に引き続き理解と協力を求め、最後に、この地域において、力ではなく、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化していくため、ASEAN+3の下での協力を深化していくと述べた。

(6)東アジア首脳会議(EAS)(参加国:ASEAN 10か国+日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド、米国及びロシア)

EASは、地域及び国際社会の重要な問題について首脳間で率直に対話を行い、首脳主導で政治・安全保障・経済上の具体的協力を進展させることを目的として、2005年に発足した地域のプレミア(主要な)・フォーラムである。また、EASには多くの民主主義国が参加しており、域内における民主主義や法の支配などの基本的価値や原則の共有や貿易・投資などに関する国際的な規範の強化に貢献することが期待されている。

8月に開催されたEAS参加国外相会議では、林外務大臣は、ロシアによるウクライナ侵略を厳しく非難したほか、中国の弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)を含む日本近海に着弾したことを強く非難し、台湾海峡の平和と安定の重要性を指摘した。また、拉致問題を含む北朝鮮情勢、東シナ海及び南シナ海情勢、香港情勢及び新疆ウイグル自治区の人権状況、ミャンマー情勢について日本の立場を明確に述べた。

11月に開催された第17回EASでは、地域協力について、岸田総理大臣から、日本はASEAN中心性・一体性を一貫して支持しており、AOIPの優先分野に沿った協力の実施を重視していることを改めて説明した。

第17回東アジア首脳会議(EAS)(11月13日、カンボジア・プノンペン 写真提供:内閣広報室)
第17回東アジア首脳会議(EAS)
(11月13日、カンボジア・プノンペン 写真提供:内閣広報室)

地域・国際情勢について、岸田総理大臣から、ロシアによるウクライナ侵略は、国際法に違反する行為であり、力による一方的な現状変更の試みは世界中のどこであっても決して認められないことや、ロシアの核兵器による威嚇は断じて受け入れられず、ましてや使用はあってはならないことを強調した。ほかの参加国からも、ロシアによるウクライナ侵略を非難する発言があった。

また、岸田総理大臣は、東シナ海では、中国による日本の主権を侵害する活動が継続・強化されており、南シナ海でも軍事化や威圧的な活動など、地域の緊張を高める行為が依然続いていると指摘した。2022年8月のEEZを含む日本近海への弾道ミサイル着弾に言及した上で、台湾海峡の平和と安定も、地域の安全保障に直結する重要な問題であると述べた。さらに、香港情勢及び新疆ウイグル自治区の人権状況について、深刻な懸念を表明した。加えて、地域における経済的威圧への強い反対を改めて表明した。ほかの参加国からも、南シナ海における航行・上空飛行の自由の重要性、国連海洋法条約を始めとする国際法に沿った紛争の平和的解決の重要性などについて発言があったほか、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する発言があった。また、香港情勢や新疆ウイグル自治区などの人権状況に対する懸念の表明や、経済的威圧についての言及もあった。

北朝鮮については、岸田総理大臣から、極めて高い頻度で弾道ミサイルを発射しており、これらは、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であり、到底看過できないと述べた上で、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄の実現に向けて、国際社会が一体となり、国連安保理決議を完全に履行することが不可欠であると指摘した。また、拉致問題の即時解決に向け、引き続きの理解と協力を求めた。ほかの参加国からも、北朝鮮による極めて高い頻度での弾道ミサイル発射への懸念が表明され、朝鮮半島の非核化及び国連安保理決議の完全な履行の重要性や拉致問題の早期解決の支持に言及があった。

ミャンマー情勢について、岸田総理大臣は、悪化するミャンマー情勢への深刻な憂慮を表明し、「5つのコンセンサス」の実施に向けたASEANの努力を最大限後押ししていくと述べた上で、引き続きの人道支援に向け、暴力の即時停止と安全で阻害されない人道アクセスを強く求めた。ほかの参加国からも、ミャンマー情勢への深刻な懸念が表明され、「5つのコンセンサス」の履行の重要性が強調された。

(7)日中韓協力

日中韓協力は、地理的な近接性と歴史的な深いつながりを有している日中韓3か国間の交流や相互理解を促進するという観点から引き続き重要である。また、世界経済で大きな役割を果たし、東アジア地域の繁栄を牽(けん)引する原動力である日中韓3か国が、協力して国際社会の様々な課題に取り組むことには大きな潜在性がある。

新型コロナの状況も注視しつつ、様々な分野で実務的な協力を継続・促進するため、8月に第13回日中韓文化大臣会合、12月に第23回日中韓三カ国環境大臣会合や第15回日中韓三国保健大臣会合などがオンライン形式で開催され、3か国の閣僚間で意見交換を実施し、それぞれ共同文書を発出した。また、10月には第15回日中韓文化コンテンツ産業フォーラムが韓国において対面形式で開催されるなど、実務家レベルの協議も実施された。

(8)アジア太平洋経済協力(APEC)(285ページ 第3章第3節3(3)参照)

APEC36は、アジア大洋州地域にある21の国・地域(エコノミー)で構成されており、各エコノミーの自主的な意思によって、地域経済統合と域内協力の推進を図っている。「世界の成長センター」と位置付けられるアジア太平洋地域の経済面における協力と信頼関係を強化していくことは、日本の一層の発展を目指す上で極めて重要である。

11月にバンコク(タイ)で4年ぶりに対面開催されたAPEC首脳会議では、首脳宣言に加え、新型コロナ後のAPEC地域の持続可能な成長に関する取組を記した文書「バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済に関するバンコク目標」が採択された。首脳会議に出席した岸田総理大臣は、新しい資本主義の実現を目指すことで、日本経済を新たな成長軌道に乗せ、アジア太平洋の包摂的で持続可能な成長に貢献していく決意を表明した。

(9)南アジア地域協力連合(SAARC)

SAARC37は、南アジア諸国民の福祉の増進、経済社会開発及び文化面での協力、協調などを目的として、1985年に正式発足した。2022年現在、加盟国はインドパキスタンバングラデシュスリランカネパールブータンモルディブアフガニスタンの8か国、オブザーバーは日本を含む9か国・機関で、首脳会議や閣僚理事会(外相会合)などを通じ、経済、社会、文化などの分野を中心に、比較的穏やかな地域協力の枠組みとして協力を行ってきている。日本は、SAARCとの間の青少年交流の一環として、2022年末までに3,615人を招へいしている。

(10)環インド洋連合(IORA)

IORA38は、環インド洋地域における経済面での協力推進を主な目的とした地域機構であり、日本は1999年から対話パートナー国として参加している。11月に開催された第22回IORA閣僚会合には武井外務副大臣が出席し、FOIPの実現に向けた取組の一環として、IORA加盟国に対する海上保安能力の強化や気候変動対策に関する日本のこれまでの支援を紹介し、透明で公正な開発金融の重要性などについて説明した。

■ アジア大洋州地域の主要な枠組み
アジア大洋州地域の主要な枠組み

31 AOIP:ASEAN Outlook on the Indo-Pacific
2019年6月、ASEAN首脳会議において採択された。インド太平洋地域におけるASEAN中心性の強化に加え、開放性、透明性、包摂性、ルールに基づく枠組み、グッドガバナンス、主権の尊重、不干渉、既存の協力枠組みとの補完性、平等、相互尊重、相互信頼、互恵、国連憲章及び国連海洋法条約その他の関連する国連条約を含む国際法の尊重といった原則を基礎として、海洋協力、連結性、SDGs及び経済等の分野での協力の推進を掲げている。

32 2013年1月、フィリピン政府は、南シナ海をめぐる同国と中国との間の紛争に関し、国連海洋法条約(UNCLOS:United Nations Convention on the Law of the Sea)に基づく仲裁手続を開始した。比中仲裁判断は、2016年7月12日に、同手続において組織された仲裁裁判所が示した最終的な判断のこと。日本は、同日に外務大臣談話を発出し、「国連海洋法条約の規定に基づき、仲裁判断は最終的であり紛争当事国を法的に拘束するので、当事国は今回の仲裁判断に従う必要があり、これによって、今後、南シナ海における紛争の平和的解決につながっていくことを強く期待する」との立場を表明してきている。

33 COC:Code of Conduct in the South China Sea

34 ASEAN感染症対策センター:the ASEAN Centre for Public Health Emergencies and Emerging Diseases (ACPHEED)

35 1997年から98年のアジア通貨危機を受けて、2000年5月の第2回ASEAN+3財務大臣会談(タイ・チェンマイ)で、東アジア域内における通貨危機の再発防止を目的として合意された枠組み。金融危機の地域的な連鎖と拡大を防ぐため、外貨支払に支障をきたした国に対し、通貨スワップ(交換)により短期の米ドル資金を現地通貨を対価として融通するもの

36 APEC:Asia-Pacific Economic Cooperation

37 SAARC:South Asian Association for Regional Cooperation

38 IORA:Indian Ocean Rim Association

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