国連外交
安倍総理大臣の第74回国連総会出席

(写真提供:内閣広報室)

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- 安倍総理大臣は,9月23日(月曜日)から26日(木曜日)(現地時間)まで,第74回国連総会出席のため7年連続でニューヨークを訪問。
- 滞在中,安倍総理は,一般討論演説において, G20,TICAD7,京都コングレス,東京オリンピック・パラリンピック競技大会など,今年,来年と我が国が主催する国際的なイベントに言及し,教育・女性分野の我が国の貢献,北朝鮮・中東情勢を含む地域情勢,マルチの枠組みを利用した格差への対処の重要性について述べた。
- また,安倍総理は, 米国,イラン及びヨルダンとの首脳会談,ミシェル次期欧州理事会議長(ベルギー首相)及びグテーレス国連事務総長との会談,並びにトゥスク欧州理事会議長との夕食会を実施した他,バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長及び2018年ノーベル平和賞受賞者のナディア・ムラド女史から表敬を受けた。また,国連ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ハイレベル会合及びSDGサミットに出席した他,エリス島名誉勲章を受章した。
1 主要行事の結果概要
(1)一般討論演説(9月24日(NY時間。以下同じ。))
安倍総理の国連総会における一般討論演説の概要は以下のとおり。
- 第74回国連総会における安倍総理大臣一般討論演説
(写真提供:内閣広報室)
- ア 国連創立75周年
- 天皇陛下の御即位,ラグビーワールドカップ2019,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会,万博。世界との強い絆を意識させ,人々の眼を未来へ向かせる。
- 安保理の変革を主眼とする構造改革の早期実現を目指す。
- 2022年安保理選挙に立候補。国連理念のさらなる実現に力を尽くす。
- 2020年4月,京都で,第14回国連犯罪防止刑事司法会議(通称「京都コングレス」)を開催予定。
- イ 教育・女性
- 教育を重んじるところに,世界への貢献の神髄を求めてきた。日本は「フォスター・パワー」たらんと望む。
- -国連アジア極東犯罪防止研修所の設立など,日本はこれまで法執行の専門家の育成を実施。
- -タンザニアやカンボジアにおいて,日本人が教育分野で尽力。
- 日本は先頭に立って,女児・女性に対する包摂的で質の高い教育を推進する。
- 今後3年,サブ・サハラ・アフリカ及びアジアを対象に,少なくとも900万人の子ども・若者に充実した教育を提供。
- ウ 北朝鮮
- トランプ米国大統領のアプローチを支持。
- 条件を付けずに,金正恩委員長と直接向き合う決意。拉致,核,ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し,不幸な過去を清算して,国交正常化を実現する。
- エ 中東情勢
- サウジアラビアの石油施設への攻撃は,卑劣極まる犯罪。
- ハメネイ・イラン最高指導者は,核を「持たず,作らず,使わない」ことをファトワー(注)としたと言明。イランに,自らの叡智に基づく行動を求める。(注)イスラム教の宗教令,宗教的見解。
- オ 格差への対処
- 日本は,マルチの枠組みとグローバリズムを,格差を減らすために用いる。
- TPP,日EU・EPAに続き,RCEPがまとまろうとしている。世界がつながり貧困削減へ。
- 近年主宰したG7,G20,TICADなど,マルチの枠組みには役割がある。「質の高いインフラ」や「自由で開かれたインド太平洋」は国際社会の辞書に加わった。今後アフリカについて語るべきは投資と成長。
(2)二国間会談等
ア バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長の表敬(9月23日)
安倍総理とバッハIOC会長は,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向け,引き続き連携していくことを確認した。
安倍総理から,バッハ会長に対してオリンピック休戦に関する国連総会決議について採択に向けた進捗状況を説明した。これに対し,バッハ会長から,日本と協力しつつ,できるだけ多くの共同提案国を得てコンセンサスにて採択されることを目指したい旨発言があった。
日本産食品の安全性については,バッハ会長から,IOCとしてもFAO/IAEAの共同部局の公式見解を参加国に伝達することをもって対応したい旨言及があった。
- バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長による表敬
(写真提供:内閣広報室) - バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長による表敬
(写真提供:内閣広報室)
イ 日ヨルダン首脳会談(9月23日)
安倍総理から,アブドッラー国王の治世20年に祝意を表した上で,両首脳は外交,防衛,経済などあらゆる分野での関係を強化し,日ヨルダンの戦略的パートナーシップをさらに深化させていくことを確認した。また,両首脳は,中東地域情勢について,幅広く意見交換を行い,地域及び国際社会の平和と安定に向け,両国がさらに協力を進めていくことで一致した。
- 日・ヨルダン首脳会談
(写真提供:内閣広報室)
ウ 日イラン首脳会談(9月24日)
安倍総理とローハニ大統領は,先般のサウジアラビアの石油施設に対する攻撃により,事態が深刻化していることを踏まえ,中東地域の緊張緩和及び情勢の安定化に向けて率直な意見交換を行った。
安倍総理から,イランには地域の平和と安定に向けて建設的な役割を果たしてほしい旨述べ,日本としても緊張緩和と情勢の安定化に向けて役割を果たしていく考えを伝えた。
また,安倍総理から核合意の維持や航行の安全確保を働きかけた。
- 日・イラン首脳会談
(写真提供:内閣広報室) - 日・イラン首脳会談
(写真提供:内閣広報室)
エ グテーレス国連事務総長との会談(9月24日)
安倍総理から,6月のG20大阪サミット及び8月のG7サミット及びTICAD7に続く再会を喜びつつ,「SDGサミットでの合意を踏まえ,日本としても国内外での実施に向け,全力で取り組んでいく。国連気候アクション・サミットの成功に祝意。我が国として,パリ協定の下で然るべき役割や責任を果たしていく。」と述べた。また両者は,明年,国連創立75周年を迎えることを踏まえ,安保理を含む国連改革が重要であることを確認した。
両者は,北朝鮮について意見交換し,安保理決議の完全な履行の重要性を確認した。安倍総理大臣から,拉致問題の早期解決に向け改めて理解と協力を求め, グテーレス国連事務総長の支持を得た。
中東情勢についても意見交換を行い,安倍総理大臣から,緊張緩和に向け外交努力を継続していく考えを伝えた。
- 事務総長との会談
(写真提供:内閣広報室) - 事務総長との会談
(写真提供:内閣広報室)
オ ナディア・ムラド女史による表敬(9月24日)
安倍総理から,ナディア・ムラド女史の勇気と活動を高く評価する旨述べつつ,我が国として,イラクの安定実現のため,ISILからの解放地の復興を積極的に支援していくこと,また,紛争下の性的暴力の防止と被害女性の支援にも引き続き取り組んでいくことを表明した。また,安倍総理から,イラク北部のシンジャール総合病院に新生児用医療機器の提供等の支援を行うことを予定している旨述べた。さらに,安倍総理は,中東地域にとどまらず,被害女性及びその子供たちを支援するナディア女史の活動にも敬意を払っている旨述べた。
これに対し,ナディア女史から,日本の支援に対する感謝の意が述べられた。
カ ミシェル次期欧州理事会議長(ベルギー首相)(9月25日)
安倍総理は,EUは,普遍的価値を共有する我が国の重要なパートナーであり,緊密に連携していきたいと述べた。これに対し,ミシェル次期欧州理事会議長(ベルギー首相)からは,協力を引き続き一層深化させていきたい旨の発言があった。
日EU関係について,安倍総理から,日EU・EPA(経済連携協定),日EU・SPA(戦略的パートナーシップ協定)に基づく協力は今回の「欧州連結性フォーラム」を始め着実に進展しており,共に広げていきたい旨述べた。これに対し,ミシェル次期議長からは,価値観を共有する日本と協力していきたい旨述べた。また,安倍総理から,日本産食品等の輸入規制の早期撤廃実現に向けた協力を要請した。
北朝鮮について,安倍総理から,大量破壊兵器及び弾道ミサイルのCVIDの実現のために,国連安全保障理事会決議の履行が重要であると述べ,また,日本人拉致問題の早期解決に向けた理解と協力を求めたところ,ミシェル次期議長から理解が示された。
日ベルギー関係に関し,両首脳は,皇室・王室間の絆が二国間の友好関係の基礎であることを確認し,幅広い分野で両国関係を発展させることで一致した。
- ミシェル次期欧州理事会議長(ベルギー王国首相)との会談
(写真提供:内閣広報室) - ミシェル次期欧州理事会議長(ベルギー王国首相)との会談
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キ 日米首脳会談(9月25日)
両首脳は,本年5月の「令和」初の国賓としてのトランプ大統領夫妻の訪日を始め,今年に入って既に5回目となる日米首脳会談の開催を通じ,日米同盟が史上かつてなく強固であるとの認識を再確認し,揺るぎない日米同盟を今後とも一層強化していくことで一致した。
両首脳は,日米貿易交渉について,日米貿易協定及び日米デジタル貿易協定が最終合意に達したことを確認し,日米共同声明を発出した。
- 日米共同声明署名式
(写真提供:内閣広報室) - 日米共同声明署名式
(写真提供:内閣広報室)
また,安倍総理からは,トランプ大統領に対し,トランプ政権発足後,これまで累計で257億ドルにのぼる日本の対米投資が発表され,雇用創出数は5万人を超え,日本が対米ナンバー1の投資国になったことなど日本企業による米国への投資を通じた米国の雇用への貢献を説明した。これに対し,トランプ大統領から高い評価が示された。
さらに,両首脳は,拉致,核・ミサイルといった諸懸案を含む北朝鮮情勢についても意見交換を行い,引き続き日米,日米韓で緊密に連携していくことを確認した。
両首脳は,中東における緊張緩和と情勢の安定化に向け,引き続き日米両国で協力していくことで一致した。この関連で,両首脳は,先般のサウジアラビアの石油施設への攻撃を強く非難した。安倍総理からは,ホーシー派の能力に鑑みれば,本件攻撃がホーシー派によってなし得るものと考えることは困難であるが,本事案の評価については情報収集・分析を進めており,引き続き米国を含む関係国と連携していく旨述べた。
また,安倍総理からは,昨日,ローハニ大統領に対し,イランが情勢の沈静化に向けて自制し,イランとして建設的に影響力を行使するよう働きかけた旨述べるとともに,中東に平和と安定をもたらすため,米国と緊密に連携して対応したい旨述べた。
- 日米首脳会談
(写真提供:内閣広報室) - 日米首脳会談
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ク トゥスク欧州理事会議長との夕食会(9月25日)
安倍総理から,日EU・EPA(経済連携協定),日EU・SPA(戦略的パートナーシップ協定)を通じて最も緊密な日EU関係を構築できた,27日にブリュッセルで開催される「欧州連結性フォーラム」に出席し,日EUのリーダーシップを示したい旨述べた。これに対し,トゥスク議長から,安倍総理と共に日EU関係にとり歴史的な成果を上げることができた,安倍総理とは強固な信頼関係を構築できたことに感謝申し上げる旨の発言があった。
両首脳は,この機会に,英国のEU離脱や中東情勢を含む地域情勢等について意見交換を行った。
(3)多国間会合等
ア 国連ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ハイレベル会合(9月23日)
安倍総理から,本会合において,日本は国民皆保険制度を導入し,UHCを達成したことが,日本の社会経済発展,健康長寿の達成を支えてきたことを紹介し,G20大阪サミット及びアフリカ開発会議(TICAD7)において保健に加え,栄養,水・衛生等分野横断的取組の促進,保健財政の強化の重要性について議論したことを述べ,その重要性を強調した。
本会合では政治宣言が承認され,2030年までに全ての人々に基礎的医療を提供すること,医療費支払いによる貧困を根絶すること等の目標を再確認し,UHC達成に向けた政治レベルの強いコミットメントが示された。
- 国連ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ハイレベル会合
(写真提供:内閣広報室) - 国連ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ハイレベル会合
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イ エリス島名誉勲章(9月23日)
安倍晋三内閣総理大臣は,エリス島名誉協会から,エリス島名誉勲章「グローバル人道賞」を受賞した。
受賞に当たり,ナセル・カゼミニー・エリス島名誉協会会長から安倍総理に対して,祝意が述べられるとともに記念メダルが贈呈された。
安倍総理からは受賞の挨拶として,日本は世界の平和と繁栄のため,引き続き積極的に貢献していくとの決意を述べた。
ウ SDGサミット(9月24日)
2015年のSDGs採択後,初めて開催された「SDGサミット2019」では,安倍総理から,G20大阪サミットやTICAD7における成果を含む過去4年間のSDGs推進の実績を共有した上で,全閣僚が参加する「SDGs推進本部」の本部長として,「ジャパンSDGsアワード」や「SDGs未来都市」の取組をはじめ,オールジャパンでSDGsを推進してきたことを紹介し,12月までに日本のSDGs推進の中長期戦略である実施指針を改定し,進化した日本の「SDGsモデル」を示す旨述べた。
同サミットには,グテーレス国連事務総長,ムハンマド=バンデ国連総会議長,各国首脳,国際機関の長などが参加し,成果文書として,現状認識と今後のアクションの加速化等について記載された「SDGサミット政治宣言」が採択された。
- SDGサミット
(写真提供:内閣広報室) - SDGサミット
(写真提供:内閣広報室)
2 日程
9月23日(月曜日)
- ニューヨーク着
- バッハIOC会長の表敬
- UHCハイレベル会合
- エリス島名誉勲章
- 日ヨルダン首脳会談
9月24日(火曜日)
- 日イラン首脳会談
- SDGサミット
- グテーレス国連事務総長との会談
- ナディア・ムラド氏による表敬
- 一般討論演説
9月25日(水曜日)
- 日ベルギー首脳会談
- 日米首脳会談
- 内外記者会見
- トゥスク欧州理事会議長との夕食会
9月26日(木曜日)
- ニューヨーク発