核軍縮・不拡散

平成28年2月8日

1 事業の概要

 日露非核化協力委員会を通じ、ロシア極東における退役原潜の解体事業に関する日本・ロシア間の協力を行うもの。6隻の解体をもって、「希望の星」事業は完了した(実施状況の詳細は、4参照)。

2 背景

(1)1990年代、ロシア極東地域(ウラジオストク近郊及びカムチャッカ)には、未処分のままの退役原潜が係留されており、そのまま放置すれば放射能汚染や核物質の盗難などが発生する危険性があった。これらの安全かつ迅速な解体は、核軍縮・不拡散の観点に加え、日本海の環境保護の観点からも緊急の課題であった。

(2)退役原潜の解体は、第一義的にはロシアの責任で実施すべきものであり、実際、ロシアも解体作業を実施している。

(3)本件事業は、2002年のカナナスキス・サミットでG8により合意された「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ(G8GP)」の一環としても位置づけられており、極東地域の退役原潜解体事業には、米が既に支援を行っているほか、豪、韓及びニュージーランドが我が国の事業に資金拠出を行い、また、加が支援を開始した。このようにロシア側の自助努力を促しつつ、同時に国際協力という観点から、我が国として支援を実施。

(4)プーチン大統領、ラヴロフ外相などロシア側の様々なレベルからも、我が国の協力に対する評価・謝意表明がなされている。

3 経緯

(1)2000年、ロシア政府との合意の下、極東における退役原潜の解体に関するプロジェクト・スタディを実施。

(2)2002年11月、新藤義孝外務大臣政務官(当時)がウラジオストクを訪問し、原潜解体事業についてロシア側関係者と協議。

(3)2003年1月、小泉総理の訪露時に採択された「日露行動計画」に、極東における原潜解体事業の着実な実施が盛り込まれ、同事業が「希望の星」と命名された。

4 事業の実施状況

(1)2003年2月、日露両国は、「希望の星」の最初の事業として、ヴィクターIII級退役多目的原潜304号の解体を決定。同年6月、川口外務大臣(当時)のウラジオストク訪問の際、同解体事業に関する実施取決めが署名された。同年12月、解体を行うための契約が締結され、これを受けて我が国の協力による解体作業が開始された。同原潜の解体作業(使用済核燃料の搬出(露側資金で実施)、艦体の切断(3分割)、艦首・艦尾の機材の撤去・断片化、原子炉区画の形成・移送等)は順調に進み、2004年12月、事業を完了した。我が国が拠出した事業費は約7億9,000万円である。

(2)2005年1月、町村外務大臣(当時)の訪露時に日露両国は、日露非核化協力委員会第24回総務会を開催し、「希望の星」の第2号となる協力として、5隻の退役原潜(ヴィクター I 級原潜1隻、ヴィクターIII級原潜3隻、チャーリー I 級原潜1隻)の解体に関する協力の実施を検討することを決定した。その後、日露両国は、同5隻の原潜解体事業の実施取決めについて協議を重ねた結果、同年8月、同実施取決め案に基本合意し、同年11月のプーチン大統領(当時)の訪日の際に署名した

 5隻の退役原潜解体事業の概要は以下のとおり。

退役原潜 解体事業の概要
ヴィクターⅠ級原潜
ヴィクターⅢ級原潜3隻
チャーリーⅠ級原潜

(3)2008年4月、日露外相会談において、ロシア極東における退役原潜が2010年までにすべて解体される見通しとなり、互恵の原則に基づき、日露非核化協力の次なる分野について検討すること等が確認された。(結果概要

(4)2010年3月、西村外務大臣政務官がウラジオストクを訪問し、我が国が協力してきたロシア極東退役原潜解体協力事業「希望の星」の完了行事に出席した。(結果概要

5 事後評価の実施

解体作業中のヴィクターⅢ級原子力潜水艦

 2014年,事後評価が完了し,事業の目的が達成されていることが確認された(結果概要(PDF)。日露非核化協力委員会技術事務局のウェブサイトにジャンプします)。

(参考1)「日露行動計画」関連部分抜粋

 「・・・・両国は、ロシア連邦における核兵器の廃棄に関する協力のために設置された日露委員会の枠内で決定されたプロジェクトの実現を加速するため、活動の調整メカニズムを強化する。両国は、ロシア連邦の極東地域の退役原子力潜水艦解体プロジェクトの着実な実施を確保する・・・・」

(参考2)「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」

 大量破壊兵器(核、生物、化学兵器)及び関連物質等の拡散防止を主たる目的とし、まずロシアを対象として、不拡散、軍縮、テロ対策及び環境を含む原子力安全に関するプロジェクトについて、G8を中心に協力して実施する構想。2002年6月、カナナスキス・サミットで発表された。G8は今後10年間にわたって、200億米ドルを上限に資金協力を行うことを努力目標として掲げ、わが国は当面2億ドル余の貢献を行うこととした。2003年6月のエヴィアン・サミットでは、これをフォローアップするための行動計画が採択された。

(参考3)エヴィアン・サミットで発表された「年次報告」関連部分抜粋

 「・・・・退役原子力潜水艦の解体は、サイダ湾及び極東ロシア地域のズヴェズダ造船所での新事業の実施並びに他の退役原子力潜水艦の解体事業の資金調達のための具体的で目に見える成果を得て新たな段階に達した・・・・」


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