高村外務大臣

(日露外相会談・貿易経済日露政府間委員会共同議長間会合)

高村外務大臣のロシア訪問(結果概要)

平成20年4月15日

1.日露外相会談

 高村大臣は、14日午前11時40分より約2時間10分、ラヴロフ外務大臣との間で二国間問題について協議し、その後、約1時間10分、ワーキングランチにおいて国際情勢について意見交換を行った。

(1)総論(政治・外交日程を含む)

(イ)冒頭、高村大臣より、昨年、頻繁に行われたハイレベルの対話を通じて生じた勢いを維持しつつ、首脳間で一致しているところに従い、すべての分野で両国関係を高い次元に引き上げていきたい旨述べた。これに対し、ラヴロフ大臣より、両首脳は二国間関係を高い次元に引き上げることに一致しており、ロシア側としても二国間関係がこの首脳間の合意のとおりに発展していくようにしたい、G8サミットの際の日露首脳会談を生産的なものにするためによく準備していきたい、「日露行動計画」に明記されているとおりあらゆる分野で作業を進めていきたい旨述べた。

(ロ)高村大臣より、メドヴェージェフ次期大統領をG8サミットに招待するとの福田総理のメッセージを伝えた。また、同サミットの機会に日露首脳会談を行うことで一致した。

(ハ)その上で、両大臣は、今次外相会談のフォローアップと7月のG8サミットの際の首脳会談の準備を行うため、6月上旬に東京において佐々江外務審議官とボロダフキン外務次官との間で次官級協議を実施することについて合意した。

(ニ)また、両大臣は、G8サミットの前にも両首脳が会う機会があれば、個人的信頼関係を築く上で有益であるとの認識で一致した。

(2)国際場裡における緊密な連携

(イ)北海道洞爺湖サミットの成功に向けて日露が協力していくことで一致した。
 高村大臣より、本年7月の北海道洞爺湖サミットにおいて前向きな成果を生み出すべく、ロシアの協力を得ながら準備作業を続けていきたい旨述べたのに対し、ラヴロフ大臣より、G8議長国としての日本の役割を評価する、日本側の準備している議題を支持するとともにサミットの成功に向けて協力を約束する旨述べた。また、ラヴロフ大臣からは、ロシアがサンクトペテルブルク・サミットで取り上げたエネルギー安全保障に関する議論を深めたい、特に開発支援について議論することを支持する、気候変動、不拡散等についても有意義な決定がなされることを期待する旨の発言があった。

(ハ)また、高村大臣より、ロシアが2012年にウラジオストクで主催するAPEC首脳会議の成功のために日本側として協力していく考えを示した。

(3)平和条約締結問題

(イ)北方領土問題

 高村大臣より、前回の10月の外相会談で、単に交渉を続けるのではなく、実際に進展を得られるようにしなければならないと述べたのに対し、ラヴロフ大臣より、この問題を解決すべく努力することを確約する旨述べたことに言及した上で、先方の考え方につき説明を求めた。
 これに対し、ラヴロフ大臣より、平和条約締結問題については、首脳間の合意があるとおり、国境画定問題に関して双方に受入れ可能な解決策を積極的に模索する用意があり、ロシアの指導部がこの作業を続けていく意思を持っていることに疑いはない、昨年9月のシドニーにおける首脳会談でプーチン大統領が安倍総理(当時)に述べたとおり、双方にとり受入れ可能な解決を見出すために全力を尽くす旨述べた。
 その上で、両大臣は、領土問題を解決しなければならないこと、また、日露関係を高い次元に引き上げていくための努力を行うとともに、領土問題の最終的解決に向け、双方にとり受入れ可能な解決策を見出すべく更に真剣に交渉を続けていくことで一致した。

(ロ)平和条約締結のための環境整備

(i)平和条約締結交渉進展のための環境整備にも資するものとして、両大臣は、北方四島を含む日露の隣接地域における生態系の保全及び持続可能な利用に関する日露専門家会合を5月下旬に開催し、北海道洞爺湖サミットまでに協力の具体的方向性を示した政府間協力プログラムを作成する作業を開始することで一致した。

(ii)元島民による北方四島への自由訪問に関し、自由訪問の訪問団にこれまで同行できなかった元島民の子の配偶者、孫及び孫の配偶者、複数の医師、看護士が同行できるようにしてほしいとの元島民の強い要望を受けて、日露間で調整してきた結果、今回、本年夏の訪問から右が実現することとなった。これにより、高齢化し、単独での訪問が困難になっている元島民とともに孫等の御家族が同行することが可能になる。

(4)その他の実務案件

(イ)ロシア空軍機による領空侵犯

 2月に伊豆諸島上空で行われたロシア空軍機による領空侵犯について、当初、ロシア側は否定していたが、高村大臣よりイワノフ第一副首相に対して再調査を求めていたところ、今般、ロシア側より、調査の結果として、意図的に行ったものではないとの説明がなされた。外相会談においても、ラヴロフ大臣より同様の説明がなされた。高村大臣から、再発防止のために話し合うことは信頼醸成の観点からも非常に重要である旨述べ、両大臣は、4月中に再発防止について当局間の協議を実施することにつき一致した。

(ロ)シベリア抑留

 ラヴロフ大臣より、1946年から48年までの間ユダヤ自治州のビロビジャンの収容所で死亡した日本人抑留者134名分の資料の提供があった。同資料については我が方専門家による精査が必要であるが、ラヴロフ大臣より同資料が提供されたことは、この問題に取り組むロシア側の真剣な姿勢と評価できる。

(ハ)非核化協力

 両大臣は、ロシア極東における退役原子力潜水艦が日露及び他国による協力によって2010年までにすべて解体される見通しとなったことを歓迎した上で、互恵の原則に基づき、日露非核化協力の次なる分野について検討していくことで一致した。
 ラヴロフ大臣は、日本側の支援に謝意を表するとともに、2010年以降の協力への期待を表明し、両大臣は、2010年までの事業に参加してきたオーストラリア、ニュージーランド、韓国等他の国とも連携して協力を続けていくことで一致した。

(ニ)実務分野における協力に関する協定

 両大臣は、原子力協定、刑事共助条約、査証簡素化協定、税関支援協定、青年交流協定の改正について、可能な限り早期に交渉が妥結できるよう、作業を加速していくことで一致した。

(5)国際情勢

(イ)六者会合

 ラヴロフ大臣より、解決すべき問題は残っているが、明るい兆しが出てきているのではないかと述べたのに対し、高村大臣より、北朝鮮が完全かつ正確な申告についての措置を完全に果たすことが今後の問題解決にとり極めて重要である旨述べた。

(ロ)ミサイル防衛

 ラヴロフ大臣より、4月11日に東京で行われた佐々江外務審議官とキスリャク外務次官との間の安保協議が生産的かつ建設的な話合いであったと評価。その上で、日本が計画しているミサイル防衛の目的及び意図はロシアにとって明白である、同計画はロシアの利益を害することを意図したものではないとの説明を受けている、過去に起きたような事案を防止するための措置が日本にとって必要であることは正しく理解できるところであり、日本に対して特段の要求や不満はない旨の発言があった。

(ハ)中央アジア

 ラヴロフ大臣より、日露間の戦略対話における中央アジアに関する話合いが建設的であった旨指摘した上で、この地域で日本と協力していく用意がある旨述べた。また、ラヴロフ大臣から「自由と繁栄の弧」の構想について言及があったのに対し、高村大臣より、我が国は、他国を支援するに当たり基本的人権や自由等を押し付けることはしていないが、これらの国がこれらの価値を尊重しつつ自立的に発展することが望ましいとの考えに立っている旨説明し、本件構想もこのような伝統的な日本の政策を踏まえたものである旨説明し、先方の理解を得た。

2.貿易経済日露政府間委員会議長間会合

 高村大臣は、14日午後3時45分より約45分間、フリステンコ産業エネルギー大臣との間で貿易経済日露政府間委員会共同議長間会合を行い、貿易経済分野における具体的協力について協議した。

(1)極東・東シベリア・イニシアティブのフォローアップ

 昨年6月のハイリゲンダム・サミットの際の日露首脳会談において、安倍総理(当時)より提案し、プーチン大統領より支持を受けた「ロシアの極東・東シベリア地域における日露間協力強化に関するイニシアティブ」のフォローアップのため、両大臣は、貿易経済日露政府間委員会の地域間交流分科会を次官級に格上げし、7月のG8サミットの際に予定される日露首脳会談の前に開催することで一致した。

(2)エネルギー

 両大臣は、資源エネルギー庁とガスプロム及びロスネフチとの間の協力が進展していることを歓迎するとともに、エネルギー分野における協力を上流、中流、下流でさらに深化させていくことで一致した。フリステンコ大臣は、ガスプロム及びロスネフチは東シベリアで重要なプロジェクトを実施しており、上記の協力のための枠組みが両国のエネルギー分野の課題を解決する上で良好な基盤となる旨指摘した上で、太平洋パイプライン・プロジェクトがロシアにとり最も優先的なプロジェクトである旨説明した。この関連で、このプロジェクトの第一段階において、コズミノ港のターミナルの建設が予定されているとの発言があった。

(3)運輸

 両大臣は、鉄道に関する政府間作業グループの立ち上げを歓迎するとともに、同グループの作業を加速することで一致した。同グループは昨年11月に東京で行われた鉄道分野における日露間協力に関する第2回会議において立ち上げにつき基本合意され、本年3月に最初の会合が行われ、シベリア鉄道を活用した物流ルートの活性化や、旅客輸送分野での協力について議論されている。
 また、両大臣は、4月25日に成田とサンクトペテルブルク間の直行便が就航することを歓迎した。

(4)気候変動

 両大臣は、気候変動に関する2013年以降の次期枠組み交渉において協力していくことで一致した。フリステンコ大臣より、京都議定書のメカニズムを国内法に導入する作業を完了し、外国のパートナーとの間で文書を作成するための準備作業が最終段階にあること、右が終わり次第、日露間の文書の作成に関する話合いに入ることができるとの説明があり、これを受けてできるだけ早期に右話合いに入ることで一致した。


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