3 地方自治体などとの連携
外務省は、内閣の最重要課題の一つである地方創生にも積極的に取り組み、地方との連携による総合的な外交力を強化するための施策を展開している。
日本国内では、外務大臣が各都道府県知事と共催し、各国の駐日外交団や商工会議所・観光関係者などを外務省の施設である飯倉公館に招き、レセプションの開催やブースでの展示を通じて地方の多様な魅力を内外に広く発信する「地方創生支援対外発信事業」を実施している。
2022年は、7月25日に福島県との共催により都内の八芳園5において「ふくしま復興レセプション 挑戦を続けるFukushima」を実施し、約140人の関係者が出席した。林外務大臣から、福島の食・観光などの多様な魅力や正しい情報を各国・地域において広く発信していただくことについて、参加者の理解と協力を改めて求めた。また、内堀雅雄福島県知事は、「Fukushimaの未来」と題したプレゼンテーションにおいて、福島県の最新の復興状況や復興に向けた挑戦について紹介した。その後、福島県は、観光、食、伝統工芸品などの広報に加え、地元のアーティストによる「サムライ演舞」や「フラダンス」のパフォーマンス披露などを通して多様な魅力と取組を広く発信した。本レセプションは、駐日外交団を始め、駐日商工会議所、企業関係者などの参加者と共催自治体との間の更なる交流の促進につながる機会となった。

また、林外務大臣及び武井俊輔外務副大臣は、地方の魅力を世界に発信する「地方を世界へ」プロジェクトを実施した。同プロジェクトは、外務大臣及び外務副大臣などが駐日外交団と共に日本の地方を訪れるものである。駐日外交団に地方の魅力を体験してもらい、地域の方々との対話を通じて地方への理解を深めてもらうことにより、参加外交団から自国民への発信を促しインバウンド需要を喚起すること及び外務大臣と地域の方々との対話を通じて(339ページ 第3節1(4)参照)地域の更なる活性化を図ることを目的としている。林外務大臣と武井外務副大臣は、11月に駐日外交団と共に長崎県を、また12月には宮城県及び山形県を訪問した。

このほか、外務省は地方自治体などとの共催で、各国の駐日外交団や商工会議所、関連企業などの関係者に対して各地域の地元産品、観光や産業、投資などの施策や魅力を発信する「地域の魅力発信セミナー」を実施している。10月14日に開催したセミナーには、山形県、岐阜県高山市、北海道札幌市及び青森県黒石市が参加し、プレゼンテーションを通じた地域の魅力の発信、参加者との交流会における各地域の特産品及び観光スポットの紹介、伝統文化の実演やブースの出展が行われた。セミナーは、東京にいながらにして地方の魅力を直接体験できる貴重な場であるとして参加者から好評を得るとともに、地方自治体と駐日外交団などの参加者との交流の促進にも資するものになった。

(10月14日、東京)
また、外務省と地方自治体との共催で、駐日外交団に各地方の魅力を現地で直接体験してもらうことを目的に「駐日外交団による地方視察ツアー」を実施している。4月19日に神奈川県横浜市へのツアーを実施し、参加した外交団は、横浜市と連携してSDGsの取組を進める事業者・団体の施設などの視察を通じて、横浜市の取組について理解を深めた。9月12日及び13日に実施した熊本県熊本市へのツアーでは、参加した外交団は、2016年の熊本地震からの復興に関連した施設などを視察し、熊本の魅力や復興への取組について認識を深めた。11月5日及び6日には新潟県へのツアーを実施し、参加した外交団は、「錦鯉発祥の地」である長岡市及び小千谷市における錦鯉(ごい)関連施設の視察、「世界錦鯉サミット」への参加などを通じて、新潟が誇る錦鯉、花火、食文化などの多様な魅力を堪能した。11月10日及び11日に実施した滋賀県へのツアーでは、参加した駐日外交団は、比叡(えい)山延暦寺、琵琶(びわ)湖、県立高等学校などの施設を視察し、滋賀県の歴史、自然、食、信楽(しがらき)焼などの魅力について理解を深めた。また、11月29日及び30日に実施した福島県へのツアーでは、参加した駐日外交団は、東日本大震災・原子力災害伝承館などを視察し、福島県の復興への歩みと現状、会津武士の伝統や食文化などの多様な魅力について認識を深めた。本ツアーの実施をきっかけに参加国との交流が始まった地方自治体や参加外交団とのつながりを活用して同地域への来訪者増加を目指す地方自治体も出てきている。


さらに、外務省では地方自治体に対し、地域レベルの国際交流活動に密接に関係する最新の外交政策などに関する説明や意見交換の場を提供しており、その一環として、「地方連携フォーラム」を実施しているが、2022年は、新型コロナの影響により、本事業の実施は見送った。
海外での事業については、東日本大震災後の国際的な風評被害対策として、食品輸入規制の撤廃・緩和の働きかけと併せ、地方創生の一環として日本の地域の魅力発信、日本各地の産品の輸出促進、観光促進などを支援する総合的な広報事業である「地域の魅力海外発信支援事業」を実施している。2022年7月から2023年3月にかけて、中国及び香港においてオンライン形式での情報発信を含む形で実施した。SNSを活用して多くの人々に日本の観光・文化・食などの地域の魅力を体感してもらうことを目標に、期間中、中国においては、58の自治体が、在中国日本国大使館の微博(中国SNSウェイボー)アカウントで、日本各地の動画を配信した。また、在中国公館が主催・後援する日中国交正常化50周年イベントなどにインフルエンサーの派遣を行い、日本の地域の魅力を発信した。香港では、7月に実施された香港ブックフェアにおいて東北地方のPRを行った。

また、在外公館施設を活用して地方自治体が地方の魅力を発信することを通じて、地方産品の販路拡大、インバウンド促進などを目的とした「地方の魅力発信プロジェクト」を実施している。2月及び6月、在瀋陽(しんよう)総領事公邸において、オンライン形式で富山県、岩手県、北九州市、宮城県(2月のみ)、神奈川県(6月のみ)の伝統工芸品、食、観光地など地方の魅力のPRを行った。
加えて、例年天皇誕生日の時期に合わせて開催される「在外公館における天皇誕生日祝賀レセプション」で地方自治体の産品や催事などを紹介・発信する場を設けている。2022年は新型コロナの影響により開催取りやめや開催形式をオンライン形式に切り替えた公館が多くあった中でも、39の在外公館において延べ42の地方自治体による情報発信が実施された。
このほか、外務省では様々な取組を通じて日本と海外の間の姉妹都市交流や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のホストタウン交流を始めとする日本の地方自治体と海外との間の交流を支援してきた。具体的には、在外公館長や館員が海外の姉妹都市提携先を訪問して、国際交流・経済交流関係担当幹部などと意見交換を行うことや、在外公館長の赴任前や一時帰国の際に地方を訪問し、姉妹都市交流やホストタウン交流に関する意見交換や講演を行うことで、地方の国際化を後押ししている。また、日本の地方自治体と姉妹都市提携を希望している海外の都市などがある場合は、都道府県及び政令指定都市などに情報提供し、外務省ホームページの「グローカル外交ネット」6で広報するなどの側面支援を行っている。
地方連携の取組を紹介する広報媒体としては「グローカル外交ネット」のほか、毎月1回メールマガジン「グローカル通信」7を配信し、加えて「ツイッター」8による投稿を行っている。これら広報媒体においては外務省の地方連携事業にとどまらず、各地方自治体が進める姉妹都市交流やホストタウン交流、外国人の目から見た地方活性化、そのほか様々な国際交流に関するエピソードを紹介している。
また、各地の日本産酒類(日本酒、日本ワイン、焼酎・泡盛など)の海外普及促進の一環として、各在外公館における任国要人や外交団との会食での日本産酒類の提供、天皇誕生日祝賀レセプションなどの大規模な行事の際に日本酒で乾杯するなど日本産酒類の紹介・宣伝に積極的に取り組んでいる。またその際には、「伝統的酒造り」を2024年ユネスコ無形文化遺産登録に向け提案中であることも積極的にアピールしている。
さらに、開発途上国の急速な経済開発に伴いニーズが急増している水処理、廃棄物処理、都市交通、公害対策などについて、ODAを活用して日本の地方自治体の経験やノウハウ、また、これを支える各地域の中小企業の優れた技術や製品も活用した開発協力を進め、そうした開発途上国の開発ニーズと企業の製品・技術とのマッチングを進めるための支援を実施している。これらの取組は、地元企業の国際展開やグローバル人材育成にも寄与し、ひいては地域経済・日本経済全体の活性化にもつながっている。
5 飯倉公館が工事期間中であったため都内の八芳園で開催
6 外務省ホームページ「グローカル外交ネット」:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/local/page23_003047.html

7 地方連携推進室メールマガジン「グローカル通信」:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/lpc/page25_001870.html

8 地方連携推進室:Twitter:
https://twitter.com/localmofa
