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第44回駐日外交団による地方視察ツアー(滋賀県)
滋賀県総合企画部国際課
令和4年11月10日及び11日、外務省と滋賀県は、駐日外交団を対象とした「滋賀県視察ツアー」を実施しました。13か国から合計15名の各国大使を含む外交官他が参加し、「比叡山延暦寺から信楽焼の街につながる歴史と琵琶湖の美しさを堪能する旅」」をテーマとして、滋賀県固有の歴史や琵琶湖などの自然、ものづくりの文化に係る関連施設を視察しました。本ツアーの実施により、参加者が滋賀県の魅力や歴史、自然、信楽焼等のものづくりの活気ある文化について理解を深め、各国と滋賀県の交流が今後とも継続していくことが期待されます。
1 芙蓉園本館
世界遺産である比叡山延暦寺や日吉大社の門前町として栄えた大津市坂本の重要伝統的建造物群保存地区にある芙蓉園本館にて、主催者である菱山聡外務省地方連携推進室長が挨拶を行い、駐日外交団による地方視察ツアーの意義等について説明した上で、本ツアーにより、駐日外交団による滋賀県の多様な魅力への理解が深まるとともに、参加各国と滋賀県の交流が拡大することを期待している旨述べました。芙蓉園本館は江戸時代に作られた庭園が保存されており、参加者は紅葉に彩られた美しい庭園を眺めながら、伝教大師最澄が中国から持ち帰り、日本で最初にこの地に伝わったとされる湯葉の料理を堪能しました。
2 比叡山坂本ケーブル
参加者一行は1927年に開業した比叡山坂本ケーブルに乗車し、比叡山のふもとの「ケーブル坂本駅」から「延暦寺駅」まで約11分の間、ケーブルの歴史や安全確保の取組などの説明を受けました。比叡山坂本ケーブルは、霊山である比叡山の山肌に観光の爪痕を残さないよう、また、車窓からふもとの日吉大社を見下ろさないよう、 配慮して建設工事が行われた結果、2つのトンネルと7つの橋が作られ、日本一長い線路となり、ふもとの大津市から見ても線路が一切見えないことなど、長く地元に愛される交通機関について理解を深めました。
3 比叡山延暦寺
788年に建立された天台宗総本山比叡山延暦寺は、1994年に世界文化遺産に登録されました。2016年から10年にわたる大改修中である国宝根本中堂では、お堂の中に入り、改修現場を視察しました。工事現場を屋根の高さまで登り、屋根を真横から見るなどの改修中でなければ経験できない貴重な体験をするともに、サワラの木と銅板を使用して屋根を葺く技法では銅板から溶け出した銅が木材の腐敗を抑えるといった説明を受け、国宝を守るためのさまざまな努力に対し、参加者の関心も高く、多くの質問が出ました。
4 琵琶湖クルーズ・大津港
大津港からは高速船「megumi」に乗船し、琵琶湖の南湖をクルーズしながら、滋賀県における琵琶湖の環境保全の取組について、県職員が説明を行いました。1977年に琵琶湖に淡水赤潮が大発生した際、県民が主体となって「せっけん運動」に取り組み、その後押しもあって2年後には滋賀県が条例を制定したことや、2021年に琵琶湖環境保全のための共有目標としてマザーレイクゴールズ(MLGs)を作成し、県民と行政が一体となって琵琶湖の環境を守るために取り組んでいることが紹介され、湖沼の環境汚染改善について活発な意見交換が行われました。
5 びわ湖大津プリンスホテル(滋賀県知事主催 歓迎レセプション)
びわ湖大津プリンスホテルにて、滋賀の地酒での乾杯や、ビワマスなど滋賀ならではの食材を利用した滋味あふれる食事を楽しみました。滋賀県を代表して三日月大造知事が歓迎のプレゼンテーションを行った後、駐日外交団を代表してクロアチア共和国のフラスティッチ大使が挨拶を行い、美しい自然についての印象や、本ツアーが参加国と滋賀県との連携をさらに広げていくきっかけとなることへの期待を述べられました。またお土産として、琵琶湖産の淡水真珠を使ったアクセサリーが滋賀県知事から贈られました。
6 琵琶湖周辺のサイクリングツアー
オプショナルのプログラムとして朝のサイクリングツアーが実施されました。琵琶湖岸の景観を楽しみながらサイクリングする通称「ビワイチ」はナショナルサイクルルート第1号に認定されています。参加者は自転車で琵琶湖岸を走り、清々しい朝の琵琶湖の風景を楽しみました。
7 滋賀県立信楽高等学校視察
「日本六古窯」としてやきもので知られる信楽では滋賀県立信楽高等学校を訪問しました。信楽高等学校は、陶芸の基礎から応用までを学ぶ「セラミック系列」をおくなど、信楽ならではの地域の教育資源を生かした特色ある授業が行われています。また、「アート留学」として生徒の全国募集枠を設けています。今回参加者一行は同校陶芸部の生徒の皆さんと一緒にたぬきの置物づくりを体験しました。生徒の皆さんが参加者各国それぞれの文化やシンボルを取り入れたオリジナルのたぬきのデザインをあらかじめ考案し、参加者は生徒からアドバイスを受けながら粘土をこね、世界に一つだけのたぬきを作っていきました。生徒との交流を通じ、ものづくりの楽しさを体感するとともに、たぬきの焼き上がりまでに2か月かかると聞き、出来上がった作品を見るのが待ち遠しいという声が聞かれました。
8 一水庵
一水庵では店主の手作りによる陶器の皿で近江牛のすき焼きなどを堪能しました。店内のいたるところに置かれている店主が制作した美しいやきものや、室内に飾られた掛け軸や花に込めた店主の思いを聞きながら、参加者は陶と食のコラボレーションを満喫しました。
9 陶芸の森アーティスト・イン・レジデンス
滋賀県立陶芸の森は、やきものを素材に創造・研修・展示など多様な機能を持つ公園として、また、人・物・情報の交流をとおして地域産業の振興や新しい文化創造の場とするとともに、滋賀から世界へ情報を発信することを目的に造られました。訪れた一行は、信楽焼の歴史や特徴について説明を受け、園内を散策しながら、焼成するための伝統的な窯などを見学し、信楽焼についての理解を深めました。また、世界各国から陶芸作家を受入れ、作陶活動と交流の場を提供する取組「アーティスト・イン・レジデンス」について、実際にアーティストたちの制作現場に足を運び、熱心に質問するなど、世界から選ばれているこの取組に深く興味を持ったようでした。
10 かたぎ古香園
信楽の朝宮地区は茶の生産地として知られています。茶の歴史は、伝教大師最澄が中国から持ち帰った茶の種子を比叡山延暦寺のふもとと朝宮に蒔いたことが始まりと言われています。滋賀県では環境保全のために工夫を凝らした「環境こだわり農業」に取り組む生産者が多く、朝宮地区で茶を生産する「かたぎ古香園」では40年以上前から無農薬栽培に取り組んでおられます。参加者一行はオーガニック茶の畑を視察し、困難を伴う無農薬栽培に注がれる生産者の不断の努力に大きな関心を寄せていました。また、オーガニック茶の試飲や茶葉を焙じる体験など、自然の中で茶の魅力を楽しみました。
プログラム・訪問先
- 11月10日(木曜日)
- 芙蓉園本館
- 比叡山坂本ケーブル
- 比叡山延暦寺
- 琵琶湖クルーズ(大津港)
- びわ湖大津プリンスホテル
- 11月11日(金曜日)
- サイクリングツアー(琵琶湖周辺)
- 滋賀県立信楽高等学校
- 一水庵
- 陶芸の森アーティスト・イン・レジデンス
- かたぎ古香園