グローカル外交ネット

令和4年12月19日

福島県生活環境部国際課

1 はじめに

 令和4年11月29日及び30日、外務省と福島県は、駐日外交団を対象とした「福島復興視察ツアー」を実施し、10か国から15名の各国大使を含む外交官他が参加しました。「復興」をテーマとした今回のツアーでは、東日本大震災と原発事故から11年を超える月日が経過する中、これまで頂いてきた心温まる御支援や数々の応援に対して福島から駐日外交団への感謝の思いをお伝えするとともに、復興に向けて挑戦を続ける福島の現状や魅力を直接肌で感じられるよう、浜通り(太平洋沿い)及び会津地方(県内西部)を中心に視察を行いました。

2 Jヴィレッジ(外務省主催昼食会)

 今回のツアー1日目は、震災からの復興が進む浜通り地域を巡る行程とし、福島県復興のシンボルであるJヴィレッジの視察からスタートしました。
 日本サッカー界初のナショナルトレーニングセンターとして開設され、震災直後には、福島第一原子力発電所の事故収束に向けた対応拠点となりましたが、その後、2019年4月に全面営業を再開し、東京オリンピック2020大会の聖火リレーのスタート地点となるなど、Jヴィレッジのこれまでの歩みを紹介しました。
 ツアー実施日は、サッカーW杯カタール大会の開催期間中でしたが、グラウンドに移動した参加者一行は、次々とゴールネットへボールを蹴り込み、サッカーを楽しむ姿が見られました。
 施設見学後、外務省主催昼食会が催され、菱山外務省地方連携推進室長から、歓迎の挨拶において、本ツアーを通じて、福島県の復興への歩みと現状、福島県の食の安全や多様な魅力に対する駐日外交団の理解が深まるとともに、福島県と参加国との交流の拡大が一層図られることを期待している、本ツアーで体験した福島県の多様な魅力をSNS等を通じて本国にも発信していただきたい旨述べました。その後参加者は、福島牛や福島県産野菜を使用した料理を堪能しました。

3 東日本大震災・原子力災害伝承館

(写真1)集合写真 Jヴィレッジでの集合写真 
(写真2)展示物や映像を通しての視察 東日本大震災・原子力災害伝承館の視察

 続いて訪れた東日本大震災・原子力災害伝承館では、未曾有の複合災害となった当時の状況や県民の思いを展示物や映像を通して視察しました。館内を視察した駐日外交団は、原子力災害に伴う住民避難の経過や除染による環境回復の取組等に熱心に耳を傾け、理解を深めるとともに、福島イノベーション・コースト構想の取組を紹介するフロアでは、「空飛ぶ車」などの展示物について興味深く説明を聞き、意見交換が行われました。

4 震災遺構 浪江町立請戸小学校

 福島県内で初となる震災遺構として2021年10月に一般公開が開始された請戸小学校では、笠井淳一浪江町教育長が参加者をお出迎えし、歓迎の挨拶を行いました。
 津波で浸水した震災当時の姿がそのまま保存されている校舎を見学するとともに、児童・教員からは一人も津波による犠牲者を出さずに避難できたという説明に、参加者からは驚きと賞賛の声が上がりました。

5 福島水素エネルギー研究フィールド

(写真3)震災遺構 浪江町立請戸小学校の構内 震災遺構 浪江町立請戸小学校の視察
(写真4)福島水素エネルギー研究フィールド 福島水素エネルギー研究フィールドの視察

 再生可能エネルギーを利用した世界最大級の水素エネルギーシステムを備える福島水素エネルギー研究フィールドでは、太陽光発電の電力により水を電気分解し、水素を製造する水電解装置を始め、水素を貯蔵・供給する各設備を視察し、再生可能エネルギーの導入拡大と水素エネルギーの活用によるカーボンニュートラルを目指す取組に理解を深めました。

6 福島県主催交流会(於:土湯温泉 山水荘)

(写真5)集合写真 内堀雅雄知事との集合写真(福島県主催交流会)

 視察ツアー1日目の夜、1,400年以上の歴史を持つ土湯温泉の代表的な宿である山水荘を会場に、福島県主催の交流会が行われました。内堀雅雄知事が参加者をお出迎えした後、「FUKUSHIMAの未来」と題してプレゼンテーションを行いました。環境回復に向けた除染が進み、県内の空間放射線量は海外の主要都市とほぼ同水準となり、避難指示等区域の解除も着実に進んでいること、福島県産農産物の放射性物質検査により、安全に安心して食べられる体制を確保していること、世界の国・地域における福島県産食品に対する輸入規制の撤廃や、桃や米といった農産物の輸出拡大に取り組んできた結果、2021年には震災前を超えて過去最高の輸出量となったことなど、復興に向けて挑戦を続ける福島の状況等を紹介しました。 また、今回参加された駐日外交団を代表して、ンジェンゲ駐日カメルーン共和国特命全権大使が答礼挨拶を行いました。その後、国際宇宙ステーションに約1か月間滞在した酵母で造られた福島の日本酒「宇宙酒」で乾杯し、14年という長い年月をかけて開発した福島のトップブランド米「福、笑い」や福島県産の食材を使った料理、国内外からの高い評価を誇る福島の日本酒が振る舞われ、参加者は福島が誇る食の魅力を堪能しました。

7 會津藩校 日新館

 ツアー2日目は会津地方に舞台を移し、會津藩校日新館から視察を開始しました。誇りある会津藩士を育成するための様々な教育システムを視察するとともに、伝統的な日本の弓道を体験しました。参加者一行は、的を目掛けて真剣な表情で弓を構え、力強く放たれた矢が的付近に当たると、大きな歓声がわき起こりました。

8 スマートシティAiCT

(写真6) 會津藩校 日新館での弓道体験
(写真7)スマートシティAiCT セイコーエプソン株式会社による取組紹介 スマートシティAiCT セイコーエプソン株式会社による取組紹介

 続いて訪問したスマートシティAiCTは、東日本大震災からの復興事業として始まったスマートシティプロジェクトの一環として2019年4月に開所されました。会津若松市スマートシティ推進室より、市が進めるスマートシティ構想の概要や取組についてプレゼンテーションが行われました。
 その後、企業が入居するオフィス棟へ移動し、セイコーエプソン株式会社では広範囲プロジェクターを使用した遠隔交流技術、バンプ-ジャパン株式会社では電気自動車用ソーラースタンドの実証などの取組について紹介を受けました。
 限られた時間の中、参加者と各企業との間で質疑応答が盛んに行われました。

9 渋川問屋

 福島県国際課が主催したツアー2日目の昼食は、明治15年に海産物問屋を創業し、現在は会津の郷土料理店を営む渋川問屋で行いました。明治・大正時代の蔵座敷や木造家屋など、歴史ある建物を活かした雰囲気の中、伝統豊かなこづゆ、にしんの山椒漬け、棒たら煮などの料理について詳細な説明を受けたのち、会津ならではの食文化に触れた参加者は、会津の郷土料理に舌鼓を打ちました。

10 末廣酒造 嘉永蔵

(写真8)テーブルに並べられた料理 渋川問屋での会津郷土料理 
(写真9)集合写真 末廣酒造 嘉永蔵での集合写真

 福島県内には名だたる酒蔵が数多く存在する中、今回のツアーでは、2021酒造年度全国新酒鑑評会で金賞を受賞した末廣酒造の嘉永蔵を訪れました。
 登録有形文化財の認定を受けた歴史ある酒蔵で日本酒造りについて説明を受けた後には、お酒の試飲が行われ、福島が誇る日本酒の魅力を堪能しました。

11 鶴ヶ城(会津若松城)

(写真10)集合写真 鶴ヶ城での集合写真

 2日間に渡るツアーを締めくくる視察先として、歴史ある会津のシンボルである鶴ヶ城(会津若松城)を訪れました。残念ながらツアー当日は天守閣の改修工事期間中であったため、城内に入ることはできませんでしたが、城址公園から眺める壮大な鶴ヶ城の姿を見学しました。
 また、鶴ヶ城の案内人(会津若松市観光ビューロー)が会津武士の甲冑姿で登場したことに参加者一行は大変喜んでいた様子で、一緒に写真を撮影したいと順番の列を作る姿が見られました。賑やかな雰囲気で、鶴ヶ城の見学を楽しんでいる様子でした。

12 おわりに

 今回の視察ツアーを終えて、参加者からは、「福島は住んでも働いても訪れても安全な地域だという理解に変わった。」、「震災があった土地に留まらず、復興が進んでいる。」、「福島の食は安全だと再認識した」といった感想が寄せられました。
 福島県としては、風評の払拭と震災の記憶の風化防止に向けて、今後も、外務省を始め、様々な主体と連携しながら、本県の正確な情報を発信し続けていく予定です。 今回の駐日外交団の訪問を機に、福島県の復興への歩みと現状、多様な魅力に対する理解が深まるとともに、福島県と参加国との交流の拡大が図られていくことを期待しています。

プログラム・訪問先

11月29日(火曜日)
Jヴィレッジ(外務省主催昼食会)
東日本大震災・原子力災害伝承館
震災遺構・浪江町立請戸小学校
福島水素エネルギー研究フィールド
福島県主催交流会(於:土湯温泉 山水荘)
11月30日(水曜日)
會津藩校 日新館
スマートシティAiCT
渋川問屋(昼食)
末廣酒造 嘉永蔵
鶴ヶ城(会津若松城)
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