1 朝鮮半島
(1)北朝鮮(拉致問題を含む。)
日本は、「対話と圧力」、「行動対行動」の方針の下、2002年9月の日朝平壌(ピョンヤン)宣言に基づき、拉致問題、核・ミサイル問題といった北朝鮮との諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算し、日朝国交正常化を図ることを基本方針として、米国、韓国、中国、ロシアを始めとする関係国と緊密に連携しながら、引き続き様々な努力を行っている。
北朝鮮の核・ミサイル能力の増強は、日本及び国際社会の平和と安定に対するこれまでにない、重大かつ差し迫った脅威となっている。日本としては、北朝鮮に政策を変えさせるため、米国及び韓国と緊密に協力し、中国やロシアを含む関係国と連携しながら、国連安保理決議の完全な履行等あらゆる手段を通じて、北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていく。拉致問題については、北朝鮮に対して2014年5月の日朝政府間協議での合意(ストックホルム合意の履行を求めつつ、北朝鮮に対する国際社会の圧力をテコとして、北朝鮮に拉致問題の早期解決を迫っていく。
ア 北朝鮮の核・ミサイル問題
北朝鮮による核・ミサイル開発は、累次の国連安保理決議の明白な違反であるとともに、国際的な軍縮・不拡散体制に対する重大な挑戦であり、断じて容認できない。日本を含む国際社会が繰り返し強く自制を求めてきたにもかかわらず、北朝鮮は核・ミサイル開発を継続している。2016年1月以降、3回の核実験を強行し、核兵器の小型化・弾頭化に至っている可能性が考えられる。また、40発もの弾道ミサイルを発射した。
北朝鮮は2017年2月から5月までに合計9回12発の弾道ミサイルを発射し、うち4発は日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。これを受けて、国連安保理は6月、決議第2356号を採択した。しかしながら、北朝鮮は、7月には、大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイルを2回連続で発射し、2回とも日本のEEZに着弾させた。北朝鮮による挑発行動等を受けて、日本政府は7月及び8月に更なる対北朝鮮措置を実施し、資産凍結措置の対象となる団体を追加指定した。また、国連安保理でも北朝鮮からの石炭輸入の全面禁止等の措置を含む決議第2371号が採択された。北朝鮮は8月29日及び9月15日にも、日本上空を通過する弾道ミサイルを2回連続で発射するとともに、9月には、2016年9月以来となる、過去最大出力と推定される規模の6回目の核実験を実施した。同月、国連安保理は、北朝鮮に対する石油分野における供給規制や北朝鮮籍労働者に対する新規労働許可の発給停止等の措置を含む決議第2375号を採択した。さらに、北朝鮮は、11月にもICBM級の弾道ミサイルを発射し、日本のEEZに着弾させ、前回発射からの75日間、核・ミサイル開発を継続してきたことを明らかにした。これに対し、日本は11月及び12月にも更なる対北朝鮮措置を実施したほか、12月には国連安保理において決議第2397号が採択された。
北朝鮮による核・ミサイル開発に対し、2017年に採択された四つの国連安保理決議のうち、12月に日本が議長を務める国連安保理において全会一致で採択された安保理決議第2397号は、北朝鮮に対する制裁措置を前例のないレベルにまで一層高め、北朝鮮の輸出による外貨収入を事実上枯渇させるための措置を含むものである。具体的には、石油分野における更なる供給規制、報告義務の新設による手続の厳格化、北朝鮮籍海外労働者の24か月以内の送還、海上輸送に係る一層厳格な措置等を規定している。
2017年7月から12月までの4回の更なる対北朝鮮措置の実施により、日本においては、合計で104団体・110個人が資産凍結等の措置の対象に指定されている。
北朝鮮が国際社会の抗議と警告を無視して挑発行動を続ける中、12月15日には、日本は議長国として北朝鮮に関する国連安保理閣僚級会合を主催した。河野外務大臣は、国連安保理決議の完全な履行が不可欠であり、圧力を最大限まで高め、北朝鮮に政策を変えさせる必要がある旨を訴えた。このように、北朝鮮に対する国際社会の圧力が確実に高まる一方、金正恩(キムジョンウン)国務委員長は2018年1月の「新年の辞」において、北朝鮮が「国家核武力完成という歴史的偉業」を成就させたと述べ、核・ミサイル開発を継続していく意図を表明した。2018年1月16日にカナダのバンクーバーで開催された北朝鮮に関する関係国外相会合では、北朝鮮が政策を変え、非核化のために決定的かつ不可逆的な行動を採るまで、圧力をかけ続けていくことが議長声明の中で確認された。2018年4月10日から11日にかけて、河野外務大臣が韓国を訪問し、南北・米朝首脳会談に向けた北朝鮮問題への対応を中心に、今後の方針を綿密にすり合わせた。また、3月の河野外務大臣の訪米に引き続き、4月17日及び18日には安倍総理大臣が訪米して日米首脳会談が行われ、両首脳は、具体的、かつ、相当突っ込んだ形で方針の綿密なすり合わせを行い、日米が完全に連携していくことを確認した。さらに、北朝鮮が完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で核兵器を始めとする全ての大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの計画を放棄する必要があることを確認した。
国際社会が北朝鮮による制裁回避に対応し、国連安保理決議の実効性を確保することが重要である。日本は、海上保安庁によるしょう戒活動及び自衛隊による警戒監視活動の一環として、国連安保理決議違反が疑われる船舶について情報収集を行っている。国連安保理決議で禁止されている北朝鮮船舶との「瀬取り」(洋上での物資の積替え)を実施していることが強く疑われることが確認された場合には、国連安保理北朝鮮制裁委員会への通報、関係国との情報共有、対外公表等の措置を採ってきている。2018年1月及び2月には、4件について外務省ホームページ等で事案を公表した。
イ 拉致問題
(ア)基本姿勢
現在、日本政府が認定している日本人拉致事案は、12件17人であり、そのうち12人がいまだ帰国していない。北朝鮮は、12人のうち、8人は死亡し、4人は入境を確認できないと主張しているが、そのような主張について納得のいく説明がなされていない以上、日本としては、安否不明の拉致被害者は全て生存しているとの前提で、問題解決に向けて取り組んでいる。北朝鮮による拉致は、日本の主権や国民の生命と安全に関わる重大な問題であると同時に、基本的人権の侵害という国際社会全体の普遍的問題である。日本は、拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ないとの基本認識の下、その解決を最重要課題と位置付け、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全の確保と即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しを北朝鮮側に対し強く要求している。
(イ)日本の取組
北朝鮮による2016年1月の核実験及び2月の「人工衛星」と称する弾道ミサイル発射を受け、同月に日本が独自の対北朝鮮措置の実施を発表したことに対し、北朝鮮は全ての日本人に関する包括的調査を全面中止し、特別調査委員会を解体する旨一方的に宣言した。日本は北朝鮮に対し厳重に抗議し、ストックホルム合意を破棄する考えはないこと、北朝鮮が同合意に基づき、一日も早く全ての拉致被害者を帰国させるべきことについて、強く要求した。また、2017年8月、フィリピンにおけるASEAN関連外相会議の機会において、河野外務大臣は李容浩(リヨンホ)北朝鮮外相と接触し、拉致問題、核・ミサイル開発等の安全保障に関する問題を取り上げ、日本側の基本的な考えを改めて伝えた。また、2018年2月9日に平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック競技大会の開会式の際の文在寅大統領主催レセプション会場にて、安倍総理大臣から金永南(キムヨンナム)北朝鮮最高人民会議常任委員長に対して、拉致問題、核・ミサイル問題を取り上げ、日本側の考えを伝えた。特に、全ての拉致被害者の帰国を含め、拉致問題の解決を強く申し入れた。
さらに、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するため、2017年7月、8月、11月及び12月に更なる対北朝鮮措置の実施を発表した。
(ウ)国際社会との連携
日本は、各国首脳・外相との会談、G7タオルミーナ・サミット(イタリア)、日米韓首脳会談及び外相会合、ASEAN関連首脳会議、国連安保理閣僚級会合を含む国際会議などの外交上のあらゆる機会を捉え、拉致問題を含む北朝鮮問題を提起し、諸外国からの理解と支持を得ている。日本としては、国際社会へ働きかけながら、北朝鮮による具体的な対応を引き続き求めていく。
国連の場においては、2017年3月の人権理事会及び同年12月の国連総会において、日本とEUが共同提出した北朝鮮人権状況決議が採択された(同決議の人権理事会における採択は10年連続10回目、国連総会における採択は13年連続13回目)。また、4年連続で開催された「北朝鮮の状況」に関する国連安保理会合では、拉致問題を始めとする北朝鮮の人権侵害について、各国が強い懸念を示し、北朝鮮に対して状況改善を求める明確なメッセージを発信した。さらに、全会一致で採択された国連安保理決議第2371号、第2375号及び第2397号は、拉致問題を始めとする北朝鮮の人権問題に対する国連安保理を含む国際社会の強い懸念を示した。
米国においては、トランプ大統領が、2017年9月の国連総会の一般討論演説で、拉致被害者の横田めぐみさんに言及した。さらに、同大統領は、同年11月の訪日の際、安倍総理大臣及び加藤勝信拉致問題担当大臣の立会いの下、拉致被害者御家族と面会し、拉致問題の解決に向けて協力していく旨述べた。このほか、2018年1月、カナダ・バンクーバーで行われた北朝鮮に関する関係国外相会合でも拉致問題が取り上げられ、拉致問題に関する言及が議長声明に盛り込まれた。2018年4月17日及び18日の日米首脳会談では、安倍総理大臣からの要請を受け、両首脳は、米朝首脳会談で拉致問題を取り上げることに合意した。
日本は、今後とも、米国を始めとする関係国と緊密に連携、協力しつつ、拉致問題の早期解決に向けて全力を尽くしていく。
ウ 北朝鮮の対外関係等
(ア)米朝関係
米国は、2017年にトランプ政権発足以降、北朝鮮に対しては「全ての選択肢がテーブルの上にある」との方針の下、北朝鮮に対する圧力を強化してきている。2017年1月、4月、6月、8月、9月、10月及び11月、並びに2018年2月に人権侵害への関与や大量破壊兵器の拡散への関与等を理由に、北朝鮮に対する制裁措置が実施された。制裁対象には北朝鮮の団体・個人のほか、ロシア及び中国を含む第三国の団体・個人が含まれた。また、2017年11月には、米国は北朝鮮をテロ支援国家に再指定することを決定した。
また米国は、拡大抑止の提供を含め、日本及び韓国に対する防衛上のコミットメントの維持を表明しており、2017年9月には、韓国への高高度迎撃ミサイル(THAAD)発射台6基の配備工事を完了し、作戦運用を開始した。11月には3隻の米空母を日本海に派遣し、地域の平和と安定に対する強力なコミットメントを示した。
2018年3月6日、訪朝した韓国の特別使節団に対して、金正恩国務委員長がトランプ米国大統領と早く会いたいという熱意を示した。これを受けて、3月9日、トランプ米国大統領は5月末までに米朝首脳会談を行う意向を表明した。
(イ)南北関係
朴槿恵(パククネ)政権下においては、開城(ケソン)工業団地の全面中断を含め、韓国は北朝鮮に対する圧力を強め、南北間の対話や交流が活発化することはなかったが、2017年5月に発足した文在寅政権は南北関係の改善に意欲を見せた。具体的には、文在寅大統領は同年7月に「ベルリン構想」を発表し、①離散家族再会・墓参事業の再開、そのための南北赤十字会談開催、②平昌冬季オリンピック競技大会への北朝鮮の参加、③軍事境界線における敵対行為の相互停止及び④南北間の接触と対話の再開を提案したが、北朝鮮はすぐには応じなかった。このような中、韓国は、日米両国と連携し、8月には米韓合同軍事演習の実施、9月にはTHAAD6基の配備、11月及び12月には北朝鮮に対する独自制裁措置を実施する等、北朝鮮への圧力強化を継続している。
2018年1月1日の「新年の辞」で金正恩国務委員長が南北関係改善、平昌冬季オリンピック競技大会への代表団派遣に言及すると、1月9日には南北高官級協議が開催され①北朝鮮の平昌冬季オリンピック競技大会への参加、②軍事当局間協議の開催、③様々な分野での接触、交流、往来、交流の活性化等に合意した。
北朝鮮は、平昌冬季オリンピック競技大会の開会式に選手団と共に、金永南最高人民会議常任委員長、金与正(キムヨジョン)朝鮮労働党中央委員会第一副部長らを代表団として派遣した。2月10日、文在寅大統領と同代表団が会談し、金与正第一副部長は金正恩国務委員長の南北関係改善に向けた意欲を込めた親書を手交し、「文在寅大統領と早期に会う用意がある。都合の良い時期に北を訪問いただくことを要請する」との金正恩国務委員長の招請の意思を口頭で伝達した。これに対し、文大統領は「今後、条件を整えて成功させよう」という意向を明らかにした。また、文大統領は特に、「南北関係の発展のためにも、米朝間の早期の対話が必要である」と述べ、米国との対話に北朝鮮側がより積極的に臨むよう呼びかけた。
2018年3月6日、文在寅大統領の特別使節団が平壌を訪問し、金正恩国務委員長と会談を行った。同日、韓国大統領府は、双方が4月末に板門店で第三回南北首脳会談を開催することを明確にしたこと等を発表した。3月12日には、徐薫(ソフン)韓国国家情報委員長が訪日し、韓国の特別使節団と北朝鮮との間のやり取り等について詳細な説明があり、今後の対応方針について日韓間で綿密なすり合わせを行った。
3月29日に行われた南北高官級協議において、南北は4月27日に板門店の韓国側にある「平和の家」において南北首脳会談を開催することで合意した。
(ウ)中朝関係
2017年11月、宋濤(そうとう)中国共産党中央対外連絡部長が、習近平(しゅうきんぺい)総書記の特使として訪朝した。その後、2018年3月25日から28日にかけて、金正恩国務委員長が中国を訪問し、習近平国家主席との間で初めてとなる中朝首脳会談が行われた。
また、北朝鮮の対外貿易(南北交易を除く。)の約9割を中国が占めるなど、経済面では密接な関係を維持している。しかし、同時に、中国は累次の北朝鮮問題に関する国連安保理決議に賛成し、随時、商務部告示等を発出し、国連安保理決議履行のため、制裁の対象品目の輸出入の禁止や制限等、具体的な措置を進めてきている。
(エ)その他
2017年、朝鮮半島からと見られる漂流・漂着木造船等が計104件確認された(2016年は66件)。特に2017年11月には、秋田県由利本荘市、北海道松前小島でそれぞれ8人、10人の生存者が発見されたが、いずれの事案についても、北朝鮮側に生存者の引渡しを行う等、日本政府として、関係省庁の緊密な連携の下、関係法令に基づき適切に対応してきている。
エ 内政・経済
(ア)内政
北朝鮮では、金正恩国務委員長を中心とする権力基盤の強化が進められている。2016年5月には朝鮮労働党の第7回党大会が開催され、経済建設と核武力建設を並進させていく「並進路線」が恒久的な戦略的路線と位置付けられるとともに、「国家経済発展5か年戦略」(2016年から2020年まで)が発表された。また、党規約の改正により、党委員長の役職が新設されるとともに、金正恩党第一書記が党委員長に推戴され、金正恩委員長を中心とする新たな党体制が確立された。さらに、2016年6月には最高人民会議第13期第4回会議が開催され、国防委員会が国務委員会に改編され、金正恩国防委員会第一委員長が国務委員長に推戴された。
2017年10月には、朝鮮労働党中央委員会全員会議(総会)が開催され、経済建設と核武力建設の並進路線を堅持していくことが改めて確認された。
(イ)経済
北朝鮮にとって、経済の立て直しは極めて重要な課題とされている。2017年、北朝鮮が核・ミサイル開発を継続する中で、相次ぐ国連安保理決議により北朝鮮の輸出による外貨収入が事実上枯渇させられれば、北朝鮮の経済状況は一層厳しくなる見込みである。こうした中、金正恩国務委員長は、2018年1月の「新年の辞」で、「国家経済発展5か年戦略」の3年目を迎え、国際社会の制裁や封鎖による困難な生活の中で人民生活の改善・向上に取り組む姿勢を示した。
一方、2016年の経済成長率は3.9%(韓国銀行推計値)で、前年の1.1%のマイナス成長から改善した。鉱業、製造業、電気・ガス・水道業等の生産増が成長に寄与したとされる。
北朝鮮の対外貿易においては、引き続き中国が最大の貿易額を占める。2016年の北朝鮮の対外貿易額(南北交易を除く。)全体は、65億5,000万米ドル(大韓貿易投資振興公社推計値)であり、そのうち対中貿易の占める割合は9割を超えている。
オ その他の問題
北朝鮮からの脱北者は、滞在国当局の取締りや北朝鮮への強制送還等を逃れるため潜伏生活を送っている。日本政府としては、こうした脱北者の保護や支援について、北朝鮮人権侵害対処法の趣旨を踏まえ、人道上の配慮、関係者の安全、脱北者の滞在国との関係等を総合的に勘案しつつ対応している。なお、日本国内に受け入れた脱北者については、関係省庁間の緊密な連携の下、定着支援のための施策を推進している。
(2)韓国
ア 日韓関係
(ア)二国間関係一般
日韓両国の連携と協力はアジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠である。また、日本と韓国は北朝鮮問題への対処を始め、核軍縮や不拡散、平和構築、貧困等の地域や地球規模の様々な課題についても連携・協力してきた。今後も、政治、経済、文化などあらゆる分野において、様々なレベルで意思疎通を図り、相互の信頼の下、日韓関係を未来志向の新時代へと発展させていく。
北朝鮮による核・ミサイル能力の増強が、日本及び国際社会に対するこれまでにない、重大かつ差し迫った脅威となる中、北朝鮮問題に関する日韓、日韓米の連携が今までになく重要となっている。2017年9月3日の北朝鮮による核実験や度重なる弾道ミサイル発射を受けて、日韓両国は首脳・外相間で速やかに電話会談を実施し、日韓・日韓米の緊密な連携を確認した。
2017年5月に文在寅政権が誕生した後、7月にはドイツ・ハンブルクで、9月にはロシア・ウラジオストクで日韓首脳会談が行われた。また、12月19日から20日まで康京和(カンギョンファ)外交部長官が就任後初めて訪日し、河野外務大臣と日韓外相会談を実施した。
2018年2月9日、平昌オリンピック開会式に出席するため平昌を訪問した安倍総理大臣は、文在寅大統領と首脳会談を行った。安倍総理大臣から文在寅大統領に対し、日韓合意は最終的かつ不可逆的な解決を確認したものであり、国と国との約束は二国間関係の基盤であるとの日本の立場を明確かつ詳細に伝えるとともに、未来志向の日韓関係を作り上げていかなければならない、との認識を共有した。北朝鮮問題については、安倍総理大臣から文在寅大統領に対し、対話のための対話には意味がないことを、はっきりと伝えた。また、両首脳は、北朝鮮にその政策を変更させ、北朝鮮の側から対話を求めてくるよう、日韓米の緊密な連携の下、圧力を最大限まで高めていくことで一致した。
(イ)交流
日韓両国民の相互理解と交流の流れは着実に深化し、拡大してきている。2015年には日韓国交正常化から50周年を迎え、両国の間では多岐にわたる交流が活発に行われている。日本では「K-POP」や韓国ドラマなどが世代を問わず幅広く受け入れられ、また、韓国で日本の漫画・アニメや小説を始めとする日本文化が人気を集めている。
また、国交正常化当時には年間約1万人であった両国間の人の往来は、2017年にはこれまでで最多の約945万人に達した7。
日韓両国で毎年開催されている文化交流事業「日韓交流おまつり」は、2017年9月23日及び24日に東京で、9月24日にソウルでそれぞれ開催された。
また、日韓間の若者等の人的交流については、「対日理解促進交流プログラム」(JENESYS2017)を実施し、相互理解の促進、未来に向けた友好・協力関係の構築に努めた。
(ウ)竹島問題
日韓間には竹島の領有権をめぐる問題があるが、竹島は歴史的事実に照らしても国際法上も明らかに日本固有の領土である。韓国による竹島の占拠は不法占拠であり、国際法上何ら根拠がないまま行われていることは、これまで累次表明してきている。日本は、竹島問題に関し、様々な媒体で日本の立場を対外的に周知するとともに8、韓国国会議員等の竹島上陸、韓国による竹島やその周辺での軍事訓練や建造物の構築等については、韓国に対し、その都度強く抗議を行ってきている9。また、竹島問題の平和的手段による解決を図るため、1954年から現在に至るまで、3回にわたって、韓国政府に対し国際司法裁判所への付託等を提案してきているが、韓国政府はこの提案を全て拒否している。日本は、竹島問題に関し、国際法にのっとり、平和的に解決するため、今後も粘り強い外交努力を行っていく方針である10。
(エ)慰安婦問題
慰安婦問題は、1990年代以降、日韓間で大きな外交問題となってきたが、日本はこれに真摯に取り組んできた。日韓間の財産及び請求権の問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で法的に解決済みであるが、その上で、元慰安婦の方々の現実的な救済を図るとの観点から、1995年には「アジア女性基金」を設立し、韓国を含むアジア各国等の元慰安婦の方々に対し、医療・福祉支援事業及び「償い金」の支給を行うとともに、歴代総理大臣からの「おわびの手紙」を届けるなど最大限の努力をしてきた。さらに日韓両政府は、多大な外交努力の末に2015年12月28日に行われた日韓外相会談における合意によって、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決を確認した(「日韓両外相共同記者発表」28ページ参照)。しかし、2016年12月30日、韓国の市民団体により、在釜山総領事館に面する歩道に慰安婦像11が設置され、2017年1月6日、日本政府はこれに対する措置を発表した12。一方、文在寅政権発足後となる7月31日、韓国外交部は2015年末の慰安婦問題に関する日韓合意について検討する外交部長官直属の「慰安婦合意検討タスクフォース」を発足させ、12月27日、同タスクフォースによる「検討結果報告書」が発表された。これを受け、日本政府は、韓国政府が同報告書に基づいて既に実施に移されている合意を変更しようとするのであれば、日韓関係がマネージ不能になり、断じて受け入れられず、韓国政府が「最終的かつ不可逆的」な解決を確認した合意を引き続き着実に実施するよう強く求める旨の河野外務大臣談話を発出した(「『慰安婦合意検討タスクフォース』の検討結果発表についての外務大臣談話」28ページ参照)。2018年1月には、韓国政府が日韓合意についての立場を発表した13。日韓合意で、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決を確認したにもかかわらず、韓国側が日本側に対して更なる措置を求めるというようなことは、日本として全く受け入れられるものではなく、日本政府は、韓国が「最終的かつ不可逆的」な解決を確認した合意を着実に実施するよう、引き続き強く求めていく考えである。この観点から、2月9日の日韓首脳会談では、安倍総理大臣から、「日韓合意は、国と国との約束であり、政権が代わっても約束を守ることは、国際的かつ普遍的に認められた原則である。日本政府は既に約束を全て実施している。韓国側も、日韓合意で『最終的かつ不可逆的』な解決を確認した以上、合意の約束を全て実行してほしい」との趣旨を述べた。
(2015年12月28日、於:韓国・ソウル)
日韓間の慰安婦問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、日本政府として、以下を申し述べる。
①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。
安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。
②日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。
③日本政府は上記を表明するとともに、上記②の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。
韓日間の日本軍慰安婦被害者問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、韓国政府として、以下を申し述べる。
①韓国政府は、日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取組を評価し、日本政府が上記1.②で表明した措置が着実に実施されるとの前提で、今回の発表により、日本政府と共に、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は、日本政府の実施する措置に協力する。
②韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する。
③韓国政府は、今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で、日本政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。
2017年12月27日
①本27日、韓国外交部長官直属の「慰安婦合意検討タスクフォース」が、平成27年12月28日の慰安婦問題に関する日韓合意についての検討結果を記載した報告書を発表しました。同報告書は、合意に至るまでの韓国国内における交渉体制や合意の内容について批判するものであり、既に両国内で履行されている合意につき疑義を呈するような考え方が韓国政府に対して示されました。
②一昨年末の日韓合意は、民主的に選ばれた日韓両首脳の下で、外交当局間の局長協議を含め、あらゆるレベルで努力を行った末に、当時の岸田文雄外務大臣と尹炳世(ユンビョンセ)韓国外交部長官が、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決を確認し、共同記者発表において表明したものです。また、同日に行われた首脳電話会談でも「最終的かつ不可逆的」な解決を確認しており、この合意は両国首脳間の合意でもあります。この合意は、両政府間において正当な交渉過程を経てなされたものであり、合意に至る過程に問題があったとは考えられません。
③日韓合意は、両政府間の合意であるとともに、国際社会からも高く評価されたものです。今般の報告書には、韓国政府の日韓合意についての立場は含まれていませんが、日本政府としては、韓国政府が同報告書に基づいて、既に実施に移されている合意を変更しようとするのであれば、日韓関係がマネージ不能となり、断じて受け入れられません。日本政府としては、韓国政府が合意を「最終的かつ不可逆的」なものとして引き続き着実に実施するよう、韓国側に対し、強く求めます。
2018年1月9日
本日(9日)、韓国の康京和長官が、日韓合意に関する立場を発表したと承知しております。この日韓合意は国と国との約束であり、たとえ政権が代わったからといっても責任をもって実施されなければならないというのが国際的かつ普遍的な原則であります。合意の着実な履行は国際社会に対する両国の責務でもあると認識をしております。2015年のこの日韓合意で、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決を確認したにもかかわらず、韓国側が日本側に対して更なる措置を求めるというようなことは、我が国として全く受け入れることはできません。北朝鮮の脅威に対峙している中で、日韓両国が様々な分野で協力を進め、未来志向の関係を築く上で、この日韓合意は欠くべからざる基盤となっているはずです。我が国としては、韓国政府が合意を「最終的かつ不可逆的」なものとして着実に実施するよう、韓国側に対し、引き続き強く求めてまいりたいと思っております。
(オ)その他の問題
朝鮮半島出身の「旧民間人徴用工」をめぐる裁判14については、日韓間の財産・請求権の問題は、日韓請求権・経済協力協定により完全かつ最終的に解決済みであるとの日本の一貫した立場に基づき、今後とも適切に対応していく。また、現在、韓国で、市民団体等が日本の公館前に「労働者像」を設置しようとする動きがあるが、このような動きについては、韓国政府に対し適切な対応を採るよう引き続き求めていく。
「日本海」は、国際的に確立した唯一の呼称であり、国連や米国を始めとする主要国政府も「日本海」の呼称を正式に使用している。韓国等が「日本海」の呼称に異議を唱え始めたのは1992年からである。また、それ以降、韓国等は国連地名標準化会議、国際水路機関(IHO)等の国際機関の場においても「日本海」の呼称に異議を唱えているが、この主張に根拠はなく、日本はその都度断固反論を行っている。
また、盗難被害に遭い、現在も韓国にある文化財15については、早期に日本に返還されるよう、外交ルートを通じて韓国政府に対して要請を行っており、引き続き、速やかな返還を韓国政府に求めていく。
そのほか、朝鮮半島出身者の遺骨問題16、在サハリン「韓国人」支援17、在韓被爆者問題への対応18、在韓ハンセン病療養所入所者への対応19等多岐にわたる分野で、人道的観点から、日本は可能な限りの支援を進めてきている。
また、排他的経済水域(EEZ)境界画定交渉については、日韓間で協議を重ねている。
イ 日韓経済関係
日韓の経済関係は、緊密に推移している。2017年の日韓間の貿易総額は、約9兆1,300億円であり、韓国にとって日本は第3位、日本にとって韓国は第3位の貿易相手国である。なお、韓国の対日貿易赤字は、前年比約23%増の約2兆8,200億円(財務省貿易統計)となった。また、日本からの対韓直接投資額は約18億4,000万米ドル(前年比48%増)(韓国産業通商資源部統計)で、日本は韓国への第3位の投資国であった。
このように、日韓両国は相互に重要な貿易・投資相手国であり、製造業におけるサプライチェーンの一体化の進展とともに、日韓企業の第三国への共同進出など、両国間では新たな協力関係が進んできている。
こうした緊密な日韓経済関係を一層強固にし、また日韓両国が共にアジア地域の経済統合に主導的な役割を果たすためにも、日韓両国の経済連携が重要であるとの考えの下、日中韓自由貿易協定(FTA)及び東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉等に取り組み、進展に向け努力を続けている。
また、環境分野については、2017年6月に第19回日韓環境保護協力合同委員会を開催し、日韓間の環境協力、気候変動等のグローバルな環境問題に関する協力等について意見交換を行い、これらの分野で日韓両国が緊密に連携していくことを確認した。
韓国政府による日本産水産物等の輸入規制の問題に関しては、日本の要請により、2015年9月、世界貿易機関(WTO)に紛争解決小委員会が設置され、約2年半にわたる検討を経て、2018年2月に日本の主張を認める内容のパネル報告書が提出された。日本政府は、WTOにおける対応とともに、様々な機会を捉えて、韓国側に規制を早期に撤廃するよう求めている。
ウ 韓国情勢
(ア)内政
2016年12月、韓国国会において朴槿恵(パククネ)大統領に対する弾劾訴追案決議が可決され、朴槿恵大統領の権限が停止し、2017年3月10日、憲法裁判所は朴槿恵大統領の罷免を宣言した。朴槿恵大統領の権限停止の後、黄教安(ファンギョアン)国務総理が大統領権限を代行したが、2017年5月9日の大統領選挙で文在寅氏が当選し、第19代大統領となった。
(イ)外交
2017年7月19日、韓国大統領府(青瓦台(チョンワデ))は、大統領直属の諮問機関「国政企画諮問委員会」が今後の文在寅政権の政策として提示するために取りまとめた「文在寅政権国政運営5か年計画」を発表した。同計画の「外交」部分は、「周辺4か国との堂々とした協力外交を推進」するとし、「信頼と協力を土台とした韓米同盟、韓中間の信頼回復、未来志向の成熟した協力パートナー関係としての韓日関係、韓露間の戦略的協力などを図る。」としている。
文在寅大統領は就任後、米国・ワシントンDC(6月)、ドイツ(7月、G20ハンブルク・サミット)、ロシア・ウラジオストク(9月、東方経済フォーラム)、米国・ニューヨーク(9月、国連総会)、インドネシア(11月)、ベトナム・ダナン(11月、APEC首脳会議)、フィリピン・マニラ(11月、ASEAN関連首脳会議)及び中国(12月)を訪問した。
(ウ)経済
2017年、韓国のGDP成長率は3.1%と、前年の2.7%よりも増加した。総輸出額は、前年比15.8%増の約5,739億米ドルであり、総輸入額は、前年比17.7%増の約4,781億米ドルとなったため、貿易黒字は約957.7億米ドル(韓国産業通信資源部統計)となった。
2017年5月に発足した文在寅政権は、国内的な経済政策としては、「人中心経済」を掲げ、「所得主導成長」及び「雇用中心経済」を強調している。同年10月には「雇用政策5年ロードマップ」を発表した。また、原発を含むエネルギー政策に関しては、同年10月、建設を一時中断していた原子力発電所(新古里(シンゴリ)5・6号機)の建設再開を決定する一方、新規原発建設計画の白紙化を明らかにした。
7 2017年の渡航者数 訪日韓国人数:714万200人(日本政府観光局(JNTO))、訪韓邦人数:231万1,447人(韓国観光公社(KTO))
8 2008年2月、外務省は「竹島 竹島問題を理解するための10のポイント」と題するパンフレットを作成。現在、日本語、英語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語、ロシア語、中国語及びイタリア語の11言語版が外務省ホームページで閲覧可能。また、2013年10月以降、外務省ホームページにおいて、竹島に関する動画やフライヤーを公開し、現在は上記11言語での閲覧が可能になっている。加えて、竹島問題を啓発するスマートフォンアプリをダウンロード配布するといった取組を行っている。
9 2016年7月の文在寅「共に民主党」前代表、8月の羅卿(ナギョン)ウォンセヌリ党議員率いる韓国国会議員団計10人の上陸に続き、2017年1月25日には、韓国の金寛容(キムグァンヨン)慶尚北道知事が上陸。日本は、これらの事案ごとに直ちに、竹島の領有権に関する日本の立場に照らし受け入れられず、極めて遺憾であることを韓国政府に伝え、厳重に抗議してきている。
10 日本は、竹島問題に関し、これまで3回(1954年9月、1962年3月及び2012年8月)、国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案した。
11 在韓国日本国大使館前や在釜山総領事館前にある像について、分かりやすさの観点から、便宜上、「慰安婦像」との呼称を用いるが、この呼称は、これらの像に係る元慰安婦についての描写が正しいとの認識を示すものでは決してない。
12 具体的には、日本政府は、当面の措置として①在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ、②長嶺駐韓国大使及び森本在釜山総領事の一時帰国、③日韓通貨スワップ取極の協議の中断及び④日韓ハイレベル経済協議の延期措置を採ることを決定した。
13 2018年1月9日、康京和(カンギョンファ)外交部長官は、日韓合意についての韓国政府の立場を発表する中で、「日本に対し再協議は要求しない」と述べつつ、「日本が自ら国際的な観点から普遍的な基準により、真実をありのまま認め、被害者の名誉・尊厳の回復と心の傷の癒やしのための努力を続けることを期待する」、「被害者が求めるのは自発的かつ誠意あるお詫びである」等発言した。
14 第二次世界大戦中、日本統治下の朝鮮半島において、新日鉄住金株式会社及び三菱重工株式会社の前身企業に「強制徴用」されたとされる韓国人が、それぞれの企業に損害賠償と未払賃金の支払を請求した件に関し、2013年7月10日に韓国ソウル高等裁判所が新日鉄住金に対して、同月30日に韓国釜山高等裁判所が三菱重工業に対して、それぞれ原告側の訴えを認め、損害賠償などの支払を命じた。
15 2016年4月に韓国の浮石寺(プソクサ)が韓国政府に対し、長崎県対馬市で盗難され、いまだ日本側に返還されていない「観世音菩薩坐像」を、浮石寺に返還するよう求め、大田(テジョン)地方裁判所に訴訟を提起していたが、2017年1月26日、同裁判所は原告側(浮石寺)勝訴の第一審判決を出した。
16 第二次世界大戦終戦後、日本に残された朝鮮半島出身者の遺骨返還問題。韓国政府から返還要請があった遺骨について、可能なものから順次返還を進めている。
17 第二次世界大戦終戦前、様々な経緯で旧南樺太(サハリン)に渡り、終戦後、ソ連による事実上の支配の下、韓国への引揚げの機会が与えられないまま、長期間にわたり、サハリンに残留することを余儀なくされた朝鮮半島出身者に対し、日本政府は、一時帰国支援、サハリン再訪問支援を行ってきている。
18 第二次世界大戦時に広島又は長崎に在住して原爆に被爆した後、日本国外に居住している方々に対する支援の問題。これまで日本は、被爆者援護法に基づく手当や被爆者健康手帳などに関連する支援を行ってきている。
19 第二次世界大戦終戦前に日本が設置した日本国外のハンセン病療養所入所者が、「ハンセン病療養所などに対する補償金の支給などに関する法律」に基づく補償金の支払を求めていたが、2006年2月に法律が改正され、新たに国外療養所の元入所者も補償金の支給対象となった。