報道発表
第72回国連総会本会議における北朝鮮人権状況決議の採択
1 本20日(現地時間19日),ニューヨークで開催中の第72回国連総会本会議において,我が国及びEUが共同提出した北朝鮮人権状況決議が,同総会第3委員会でのコンセンサス採択(11月15日)に続き,コンセンサス採択されました(採択は13年連続13回目)。
2 本年の決議は,「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会」の最終報告書の内容を反映させた昨年の国連総会決議を基に,北朝鮮の組織的かつ広範で深刻な人権侵害を非難し,北朝鮮に対し,その終結を強く要求しています。また,北朝鮮による,北朝鮮内外における外国人に対する拷問,法的手続を経ない死刑,恣意的な拘留,拉致やその他の人権侵害の報告に深刻な懸念を強調しています。
3 さらに,北朝鮮が,人々の福祉に代えて,核兵器及び弾道ミサイルを追求していることを非難し,北朝鮮にいる人々の福祉及び固有の尊厳を尊重し,確保することの必要性を強調しています。昨年同様,国連安保理が,北朝鮮の事態の国際刑事裁判所(ICC)への付託の検討,人権侵害に対する制裁の更なる検討等を通じて,適切な行動をとることを促す内容となっています。
4 本年の決議が,コンセンサス採択されたことは,拉致問題を始めとする,北朝鮮の人権侵害についての国際社会の強い懸念の表れです。我が国は,北朝鮮に対し,この決議に示された国際社会の声を真摯に受け止め,拉致問題の早期解決を含む人権状況の改善や国際社会との協力に向けた具体的な行動をとるよう引き続き強く求めていく考えです。
[参考]
(1)採択結果
無投票で,コンセンサス採択された。投票要求は行われなかったが,北朝鮮の他6か国(ロシア,シリア,キューバ,イラン,中国,ベネズエラ)がコンセンサスからの離脱を表明した。共同提案国は,我が国,EU諸国,米国,カナダ,オーストラリア,ニュージーランド,韓国,トルコなど61か国。国連総会メンバーは国連全加盟国(193か国)。
(2)国連総会における北朝鮮人権状況決議(於:ニューヨーク)
ア 我が国とEUは,国連総会(第3委員会)に,北朝鮮の人権状況の改善等を求める決議を共同で提出してきている。国連総会において13年連続13回目の採択。
イ 本件決議は,本年11月15日(現地時間14日),国連総会第3委員会においてコンセンサス採択された決議と同内容。
(3)北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)
ア 概要
拉致問題を含む北朝鮮における人権侵害を調査するため,2013年3月の人権理事会における決議で設置を決定。マイケル・カービー氏(委員長,元オーストラリア連邦最高裁判所判事),マルズキ・ダルスマン氏(前北朝鮮人権状況特別報告者,元インドネシア検事総長)及びソーニャ・ビセルコ氏(北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に重点的に取り組む独立した専門家,セルビア・ヘルシンキ人権委員会(NGO)代表)の3名で構成。活動期間は1年。報告書を作成し,2014年3月の第25回人権理事会に提出した。
同調査委員会は,2013年に調査のため訪日。日本滞在中は,安倍晋三内閣総理大臣及び岸田文雄外務大臣(当時)を表敬したほか,公聴会による北朝鮮の人権状況についてのヒアリングを実施。また,我が国関係省庁からも,拉致問題を中心として,合同で同委員会に説明を行った。
イ 最終報告書
北朝鮮における深刻な人権侵害を,拉致問題を含む複数の分野にわたり,包括的に詳述。北朝鮮における人権侵害は「人道に対する犯罪」に相当し得るとし,北朝鮮に具体的な取組を勧告するとともに,国際社会や国連にも更なる行動を求めている。拉致問題についても,その事実を記載するとともに,拉致及び拉致被害者の置かれた状況を,現在も進行している人道に対する犯罪とし,北朝鮮に対し,拉致被害者に関する情報提供と被害者本人及びその子孫を帰国させるよう勧告。
(4)国連人権理事会における北朝鮮人権状況決議(於:ジュネーブ)
ア 我が国とEUは,毎年(2008年以来本年で10年連続)3月の国連人権理事会に北朝鮮人権状況特別報告者のマンデートを延長する決議を共同で提出してきている。
イ 本年3月の人権理事会においては,国連安保理が北朝鮮の事態の国際刑事裁判所(ICC)への付託や人権侵害に対する制裁の更なる検討等を通じ,適切な行動をとることを促し,北朝鮮による核・ミサイル開発への資源投入が,人権・人道状況に与える影響への深刻な懸念を表明する内容の昨年12月の国連総会決議を歓迎するとともに,ソウルにある現地事務所を含む国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の能力強化の決定を含む決議案を提出し,無投票で採択された。