国連外交
岸田外務大臣の第71回国連総会出席
- 岸田外務大臣は,9月18日(日曜日)から22日(木曜日)まで,第71回国連総会出席のためニューヨークを訪問した。
- 岸田大臣は,日米韓外相会合,国際シリア支援グループ(ISSG)閣僚級会合,G7外相会合,G4外相会合,安保理改革フレンズ・グループ・ハイレベル会合,包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合,国連平和構築基金(PBF)プレッジング会合,日カリコム外相会合の計8の多国間会合に出席し,このうち,日米韓外相会合,G7外相会合及びCTBTフレンズ外相会合の議長を務めた。
- また,岸田大臣は,8か国(韓国,豪州,エチオピア,サウジアラビア,パキスタン,インドネシア,英,露)と外相会談を実施し,各国との二国間関係等に関する意見交換に加え,地域情勢やグローバルな課題についても,日本の立場を説明し,国際場裏での協力についても議論した。
1 各分野の多国間会合
(1)日米韓外相会合(9月18日)
岸田大臣が議長を務めた日米韓外相会合において,三外相は,国連の場を含め,北朝鮮に対し圧力をかけるために緊密に連携していくことで一致し,北朝鮮に対する更なる制裁措置を含む安保理決議や各国独自の措置についても議論した。北朝鮮による拉致問題に関して,岸田大臣から,日本の主権及び国民の生命と安全に関わる最重要課題である旨述べ,理解と協力を求めたのに対し,ケリー長官及び尹長官から支持を得た。会合終了後,議論の成果をまとめた共同声明を発出した。
(2)国際シリア支援グループ(ISSG)閣僚級会合(9月20日)
岸田大臣は,国際シリア支援グループ会合(ISSG)会合に出席した。会合では,ケリー米国務長官やラヴロフ露外相,デ・ミストゥーラ国連特使等,ISSGメンバーの国・機関の代表者が集まり,米露及び国連からシリアの現状,敵対行為の停止に関する米露合意を巡る状況について説明があり,米露合意の遵守の必要性について確認された。
(3)G7外相会合(9月20日)
G7各国外相及びEU外務・安全保障上級代表の出席を得て,議長としてG7外相会合を開催した。アジア情勢(北朝鮮,東シナ海・南シナ海),テロ・暴力的過激主義対策及びシリア情勢につき率直な意見交換を行い,G7が継続的に連携を深めていくことの重要性を再確認した。会議後,「アジアにおける最近の情勢に関するG7外相声明」及び「テロ及び暴力的過激主義対策に関するG7外相声明」を発出した。
(4)G4外相会合(9月21日)
シュタインマイヤー独外相(議長),セーハ・ブラジル外相,アクバル・インド外務担当閣外大臣の参加を得て開催した今次会合では,安保理改革に関する近年の取組を振り返り,同改革の現状について認識を共有すると共に,今後の進め方について意見交換を行った。
また,G4外相は,安保理改革に関するフレンズ・グループの会合(下記1(5)参照)を歓迎するとともに,政府間交渉の枠組みの中で包括的な安保理改革に向けて引き続き取り組むことを約束した。
(5)安保理改革フレンズ・グループ・ハイレベル会合(9月21日)
G4の他,アフリカ,カリブ諸国,英仏,北欧といった安保理改革を推進する様々なグループからハイレベルが参加し,各国は安保理改革が喫緊の課題であるという認識を共有し,早期の有意義な安保理改革の実現に向け,同グループの枠組みで協力することが確認された。
(6)包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合(9月21日)
第8回CTBTフレンズ会合には,約100か国(このうち約30か国が外相)が参加し,岸田大臣は,ビショップ豪外相とともに共同議長を務めた。潘基文国連事務総長,尹韓国外交部長官,シュタンマイヤー独外相,ディオン加外相,ゼルボCTBT機関事務局長らがステートメントを行った。多くの国がCTBTの早期発効及び検証体制整備の重要性を強調したほか,先日の北朝鮮による核実験を非難し,北朝鮮に対して,関連する安保理決議等を遵守し更なる核実験を行わないよう強く求める発言も多く見られた。
岸田大臣は,CTBT発効促進に向けた閣僚共同声明を採択し,その後,閉会の挨拶を行う中で,北朝鮮による5回目の核実験を最も強い言葉で非難し,更なる制裁措置を含む新たな安保理決議の採択に向け関係国と緊密に連携する旨述べ,発効要件国の批准に向けて更なる努力を要請した。また,現実的・実践的な核軍縮措置の議論を深めるべく長崎で核軍縮に関する国際会議を開催する旨述べた。
(7)国連平和構築基金(PBF)プレッジング会合(9月21日)
英国,スウェーデン等が共催国となって実施されたPBFに対する拠出のプレッジング会合において,我が国は,当面1,000万ドル規模の拠出を目指す旨表明するとともに,我が国の平和構築活動への貢献を強調した。
潘事務総長から,本件会合開催の努力に祝意が表されるとともに,国連平和構築活動の重要性及びこれまでの取組みの成果を強調し,各国のさらなる拠出を要請した。また,各国からは多くのコミットメントが表明され,今後3年間で合計約1億5千万米ドルの拠出表明がなされた。
(8)日・カリコム外相会合(9月21日)
岸田大臣は,ストレーカー・セントビンセント副首相兼外相とともに,第5回日・カリコム外相会合の共同議長を務めた。
会合において,岸田大臣から,カリコムと日本は,法の支配,民主主義といった基本的価値を共有し,長年,友好・協力関係を築いてきた,2014年に安倍総理が表明した「日本の対カリコム政策」の三本の柱に基づき,卒業国支援を含め,環境,防災,水産,エネルギー分野を含むカリコム諸国が抱える脆弱性の克服に資する協力等,日本は対カリコム支援を着実に実施,また,様々なレベルでの日・カリコム双方の交流は拡大しており,今後も関係を一層強化していきたい旨述べた。
カリコム諸国からは,日本の支援,特に卒業国支援他に感謝すると共に,引き続き,交流を拡大したい旨発言があった。
また,気候変動,海洋生物資源の持続可能な利用,国際防災協力,国連安保理改革やアジア情勢についても議論し,日本とカリコムは国際場裏でも引き続き協力を行っていく旨確認した。
2 二国間会談等
岸田大臣は,8か国(韓国,豪州,エチオピア,サウジアラビア,パキスタン,インドネシア,英,露)と外相会談を実施し,各国との二国間関係等に関する意見交換に加え,地域情勢やグローバルな課題についても,日本の立場を説明し,国際場裏での協力についても議論した。
(1)日韓外相会談(9月18日)
北朝鮮問題を中心に突っ込んだ意見交換を行い,北朝鮮に対する圧力を強化していくため,安保理を含む国際社会において引き続き協力していくことを確認した。北朝鮮問題に連携して対応していく上でも,未来志向で強固な日韓関係を築いていくことが重要との観点から,昨年末の合意のフォローアップを含む日韓関係についても簡潔に意見交換を行った。
(2)日豪外相会談(9月19日)
安全保障・防衛協力,経済等の分野で日豪の特別な戦略的パートナーシップを強化していくことを確認した。安全保障・防衛協力に関し,両大臣は,日豪両政府が日豪ACSAを見直すことで一致したことを歓迎すると共に,2+2の日本開催を調整することとした。また両大臣は,南シナ海情勢,東シナ海情勢,北朝鮮といった地域情勢についても意見交換を行い,緊密に連携していくことを確認した。
(3)日・エチオピア外相会談(9月19日)
初のアフリカ開催となったTICAD VIが成功であったとの認識で一致するとともに,経済・経済協力や国際場裡における協力に関して意見交換を行った。また,エチオピアが明年から国連安保理非常任理事国を務めることも踏まえつつ,安保理改革を含む国際場裡における協力等に関し意見交換を行った。
(4)日・サウジアラビア外相会談(9月19日)
先般のムハンマド・サウジアラビア副皇太子の訪日成果を踏まえ,幅広い分野で協力を具体化させていくことを確認し,両国間の人的交流活発化のため,相互に数次査証の発給に向け協力することで一致した。
また,北朝鮮問題を含む東アジア情勢及びISILやシリア等の中東地域情勢についても意見交換を行い,それぞれ相手国の地域情勢に関心を払っていくことが重要との見解で一致した。
(5)日・パキスタン外相会談(9月20日)
岸田大臣から,パキスタンによる更なるテロ対策の推進を働きかけつつ,具体的テロ対策を議論するための二国間協議の開催を提案した。アジズ首相顧問からは,右提案を歓迎し,テロ対策に対する更なる決意を表明した。
また,岸田大臣から,パキスタンの若い労働力と巨大市場に注目している旨述べつつ,「官民合同経済対話」(昨年11月)のフォローアップを行い,両国経済関係の活発化に繋げたい旨伝達するとともに,日本企業関係者やODA関係者の安全確保を要請した。アジズ首相顧問からは,パキスタンの経済が立ち直り,貿易や投資の機会が増えており, 官民の二国間の対話を強化し,両国間の貿易・投資を拡大することに期待が示された。
(6)日・インドネシア外相会談(9月20日)
二国間関係については,パティンバン港整備における日本企業の参画の確保,海上保安分野における能力構築支援の具体化,テロ対策協力の強化につき一致した。
また,両外相は,南シナ海・北朝鮮情勢等についても意見交換し,南シナ海問題については,国連海洋法条約を含む国際法に基づき,紛争の平和的解決に向け,相互に意思疎通を図りながら協力していくことを確認した。北朝鮮問題については,北朝鮮に対して安保理決議の履行を求めていくことにつき一致した。
(7)日英外相会談(9月20日)
7月に就任したジョンソン英外相との初めての外相会談を通じ,日英関係を一層強化するため緊密に協力していくことを確認した。特に,安全保障・防衛協力を一層推進していくことで合意し,次回日英「2+2」を来年早い時期に開催すべく調整を進めることで一致した。
英国のEU離脱については,岸田大臣から,日系企業の要望に配慮を求めたのに対し,ジョンソン大臣からは,日本のメッセージを高く評価した上で,岸田大臣の考え方に完全に同意する旨述べた。さらに,両外相は,北朝鮮や南シナ海等の地域情勢についても意見交換を行った。
(8)日露外相会談(9月21日)
12月に予定されるプーチン大統領の訪日に向けて,平和条約締結問題を含む政治分野や,経済分野などで,精力的に準備を進めていくことで一致し,その準備の一環として,国会情勢等も踏まえつつ,大統領訪日前の岸田大臣の訪露を調整していくこととなった。
また,11月を目途に,シュヴァロフ第一副首相の訪日を得て,貿易経済日露政府間委員会を東京で開催し,経済分野の準備も進めていくことを確認した。更に,外交当局間の対話を緊密化する観点から,日露戦略対話の日程を調整していくこととなった。
平和条約締結問題については,岸田大臣から,前進を図ることの必要性を強調し,この問題についても,大統領訪日に向けて準備を進めていくことを確認した。
この他に,北朝鮮問題については,新たな安保理決議の採択に向けた取組みをはじめ,国連の場を含めて,日露で連携していくことを確認した。
また,シリアについて,岸田大臣から,停戦と人道アクセスを実現するために関係国が努力すべきと述べるとともに,ロシアの建設的対応を呼びかけた。
3 その他(日系企業関係者との昼食会(9月20日))
岸田大臣は,ニューヨークで活躍する日系企業関係者と米国の政治経済情勢や日米経済関係等について意見交換を行った。