外務大臣談話
第31回人権理事会における北朝鮮人権状況決議の採択(外務大臣談話)
1 本24日(現地時間23日),スイスのジュネーブで開催中の人権理事会において,我が国及びEUが共同提出した北朝鮮人権状況決議案が,無投票採択されたことを高く評価します。
2 本年の決議は,「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」報告書の内容を反映させた昨年の国連総会決議を含むこれまでの関連決議の内容を反映するとともに,今回の人権理事会に提出された,マルズキ・ダルスマン国連北朝鮮人権状況特別報告者の報告書の勧告も踏まえた,強い内容のものとなっています。
3 具体的には,昨年同様,北朝鮮の組織的,広範かつ深刻な人権侵害を最も強い表現で非難し,国際刑事裁判所(ICC)への北朝鮮の事態の付託の検討や制裁の範囲に関する検討等を通じて,安保理が適切な行動をとることを促す国連総会決議を歓迎するとともに,安保理が北朝鮮の人権状況等を議論したことを歓迎しつつ,安保理がこの議論に継続的かつ積極的に関与することへの期待を表明しています。
4 さらに,人権高等弁務官に対し,北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に重点的に取り組む独立した専門家を指名するとともに,当該専門家のグループに対し,北朝鮮における人道に対する犯罪の被害者のために,正義と真実を確保するための実用的な説明責任メカニズムを勧告することを求めています。
5 我が国は,今回の決議の採択が拉致問題の早期解決を含む北朝鮮の人権状況の改善につながることを強く期待するとともに,国際社会とも協力して,北朝鮮に対し具体的な行動をとるよう引き続き強く求めていく考えです。
(参考1)採択結果
無投票で採択された。投票要求は行われなかったが,人権理事国であるキューバ,ベネズエラ,中国,ロシア,エクアドルがコンセンサス採択からの離脱を表明したため,コンセンサス採択ではなく,無投票採択となった。
(参考2)人権理事会
2006年3月の国連総会で採択された決議に基づき,国連における人権問題への対処能力強化のため,国連総会の下部機関としてジュネーブに設置。理事国数は47か国から構成される(アジア13,アフリカ13,ラテンアメリカ8,東欧6,西欧7)。我が国は,本年は人権理事国ではなく,投票権を有さない。
(参考3)マルズキ・ダルスマン国連北朝鮮人権状況特別報告者
北朝鮮人権状況特別報告者とは,人権理事会の決議に基づいて任命され,北朝鮮の人権状況につき調査を行い,人権理事会及び国連総会に報告する任務を有する独立資格の個人。2010年8月にインドネシア出身のマルズキ・ダルスマン氏が任命された。
(参考4)第31回人権理事会に提出した,マルズキ・ダルスマン国連北朝鮮人権状況特別報告者の報告書(説明責任の問題に重点的に取組む独立した専門家グループに関する記述)(概要)
1 特別報告者は,人権理事会に対し,次の権限を有する独立した専門家によるグループを設置することを勧告する。
(1)説明責任に関する現行の国際法及び一般的な国家実行について確認する。
(2)北朝鮮「政府」による人道に対する犯罪に関する「国家」の説明責任を確保するための適切な方法を決定する。
(3)北朝鮮における人道に対する犯罪の被害者のために,真実と正義を確保するため,創造的かつ実用的な説明責任メカニズムを勧告する。(パラ49)
2 独立した専門家によるグループは,特別報告者を含む2人又は3人で構成され,2016年6月から6か月活動し,第33回人権理に中間報告書を提出し,第34回人権理に最終報告書を提出する。(パラ44)
(参考5)北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)概要
1 拉致問題を含む北朝鮮の人権状況全般に係る人権侵害を調査するため,2013年3月の人権理事会における決議で設置が決定。マイケル・カービー氏(委員長,元豪州連邦最高裁判所判事),マルズキ・ダルスマン氏(北朝鮮人権状況特別報告者,元インドネシア検事総長)及びソーニャ・ビセルコ氏(セルビア・ヘルシンキ人権委員会(NGO)代表)の3名で構成。活動期間は1年。報告書を作成し,2014年3月の第25回人権理事会に提出した。
同調査委員会は,2013年8月27日から9月1日まで,調査のため訪日。日本滞在中は,総理及び外務大臣を表敬した他,公聴会による北朝鮮の人権状況についてのヒアリングを実施。また,我が国関係省庁からも,拉致問題を中心として,合同で同委員会に説明を行った。
2 最終報告書
2014年2月17日公表(3月17日提出)。北朝鮮における深刻な人権侵害を,拉致問題を含む複数の分野にわたり,包括的に詳述。人権侵害を,「人道に対する犯罪」に該当するとし,北朝鮮に具体的な取組を勧告するとともに,国際社会や国連にもさらなる行動を求めている。拉致問題についても,その事実を記載するとともに,拉致及び拉致被害者の置かれた状況は,現在も進行している人道に対する犯罪とし,北朝鮮に対し,拉致被害者に関する情報提供と被害者本人及びその子孫を帰国させるよう勧告。
(参考6)国連人権理事会における北朝鮮人権状況決議(Resolution on the situation of human rights in the DPRK)(於:ジュネーブ)
1 我が国とEUは,毎年(2008年以来本年で9年連続)3月の国連人権理事会に北朝鮮人権状況特別報告者のマンデートを延長する決議を共同で提出してきている。
2 昨年3月の人権理事会においては,COIの勧告に基づき,国際刑事裁判所(ICC)への付託の検討や制裁の範囲に関する検討等を通じ,安保理が適切な行動をとることを慫慂する2014年12月の国連総会決議を歓迎する内容等を含む決議案を提出し,賛成27票,反対6票(ボリビア,中国,キューバ,ロシア,ベネズエラ,ベトナム),棄権14票(含:インド,インドネシア)で採択された。
(参考7)国連総会における北朝鮮人権状況決議(Resolution on the situation of human rights in the DPRK)(於:ニューヨーク)
1 我が国とEUは,国連総会(第3委員会)に,北朝鮮の人権状況の改善等を求める決議を共同で提出してきており,国連総会において11年連続11回採択。
2 2015年の国連総会本会議における投票結果(2015年12月17日(NY時間))
賛成119票,反対19票,棄権48票で11年連続の採択。共同提案国は,我が国,全EU加盟国,米,加,豪,NZ,韓国,トルコなど59か国(共同提出国は我が国及び全EU加盟国)。国連総会本会議メンバーは国連全加盟国(193か国)。