地球環境
砂漠化対処条約
(深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処するための国際連合条約:United Nations Convention to Combat Desertification in Those Countries Experiencing Serious Drought and/or Desertification, Particularly in Africa(UNCCD))
令和4年12月23日
1 砂漠化対処条約とは
深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)や地域が砂漠化に対処するために行動計画を作成し及び実施すること、また、そのような取組みを先進締約国が支援すること等について規定した条約である。
2 条約の成立経緯及び締約国数
年月 | 経緯 |
---|---|
1992年6月 | 国連環境開発会議(UNCED)において、1994年6月までに砂漠化対処条約を作成するための「政府間交渉委員会」の設置につき基本的に合意。 |
1993年5月 | 国連の下、第1回条約交渉委員会開催(於:ナイロビ)。 |
1994年6月 | 第5回交渉委員会において条約を採択(於:パリ)。 |
1994年10月 | 署名式典(於:パリ)で我が国を含む86か国(ECを含む)が署名。 |
1996年12月 | 条約発効。 |
1998年9月 | 我が国が受諾書を国連事務総長に寄託(同12月発効) |
2007年9月 | 第8回締約国会議において条約実施の再活性化のための十年戦略計画(2008-2018)を採択。 |
2022年12月現在 | 締約国は196か国・地域+EU。 |
3 条文の概要
砂漠化対処条約は、前文、本文40か条、末文及び5つの附属書から成り、その概要は、次のとおりである。
(1)本文(抜粋)
- ア この条約は、砂漠化の影響を受ける地域における持続可能な開発の達成に寄与するため、深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和することを目的とする。(第2条1)
- イ 砂漠化の影響を受ける締約国は、砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和することに対して十分な資源を配分するとともに、その対処及び緩和のための努力において住民の参加を促進する。また、このような締約国は、この義務の履行に当たって行動計画を作成し、公表し及び実施する。(第5条及び第9条1)
- ウ 先進締約国は、開発途上締約国による砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和するための努力を積極的に支援し、相当の資金等を提供するとともに、「地球環境ファシリティー」(Global Environment Facility:GEF)からの資金供与等を促進する。先進締約国は、また、援助の提供に当たって開発途上締約国の行動計画に対する支援を優先させる。(第6条、第9条2及び第20条)
- エ 既存の資金供与の仕組みの効果及び効率性を高めることを目的として、資金調達を促進するための「地球機構」(Global Mechanism:GM)をこの条約により設立する。(第21条)
- オ 砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和することに関連する科学技術的及び技術的事項に関する情報及び助言を締約国会議に提供する締約国会議の補助機関として、科学技術委員会(CST)をこの条約により設置する。同委員会は、締約国会議の通常会合の際に開催され、学際的な性格を有し、及びすべての締約国による参加のために開放される。(第24条)
(2)附属書(概要)
アフリカ、アジア、ラテン・アメリカ及びカリブ、地中海北部並びに中・東欧について、地域毎の行動計画(国家行動計画、小地域行動計画、地域行動計画)に関する指針を規定している。
4 締約国会議(概要)
(1)第1回締約国会議(COP1:1997年9月29日~10月10日、イタリア、ローマ)
- ア 常設事務局をボンに設置することに合意
- イ 資金調達を促進するための地球機構(GM)の受入機関を国際農業開発基金(IFAD)とすることに合意
- ウ 科学技術委員会(CST)における専門家の登録制度の設立、研究の目録の作成、研究ネットワークの調査及び砂漠化に関する指標等の作成等
(2)第2回締約国会議(COP2:1998年11月30日~12月11日、セネガル、ダカール)
- ア 事務局の中期戦略の検討
- イ 条約の実施及び制度的な措置の検討
(3)第3回締約国会議(COP3:1999年11月15~26日、ブラジル、レシフェ)
- ア 中・東欧地域における附属書作成を採択
- イ 締約国会議と国際農業開発基金(IFAD)との間で地球機構(GM)に関する覚書を採択
- ウ COP4において、一定の目標期間と対象分野を明記した条約実施を推進する宣言を採択する等を定めたレシフェ・イニシアティブを採択
(4)第4回締約国会議(COP4:2000年12月11~22日、ドイツ、ボン)
- ア COP4にて採択されたレシフェ・イニシアティブに基づき、GEFや地球機構(GM)を通じた資金等の資源確保、他の環境条約との協力推進を定めたボン宣言を採択
- イ GMはGEFと連携し、各行動計画の作成支援を優先するとの決定を採択
- ウ 中・東欧地域における附属書を採択
(5)第5回締約国会議(COP5:2001年10月1日~12日、スイス、ジュネーブ)
- ア GEFの資金拠出に関する重点分野に砂漠化及び干ばつ対処を目的とした「土地劣化」の追加を早急に求める決定を採択
- イ 条約実施レビュー委員会(CRIC : Committee for the Review of the Implementation of the Convention)の設立
(6)第6回締約国会議(COP6:2003年8月25日~9月5日、キューバ、ハバナ)
- ア GEFの資金拠出に関する重点分野に「土地劣化」が追加されたことを受けて、GEFとの間に覚書を作成することを決定
- イ 2002年に開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)において、砂漠化対処条約が貧困撲滅の手段の一つとして認められたことを受け、本条約の枠組みを通じた資金メカニズムの活用、他の環境条約との連携強化、行動計画の策定を進める決定を採択
(7)第7回締約国会議(COP7:2005年10月17日~10月28日、ケニア、ナイロビ)
- ア 砂漠化対処条約事務局とGEFとの間の覚書を採択
- イ 今後10年間における砂漠化対処への取り組みの戦略などを検討する暫定政府間ワーキング・グループの設立を決定
(8)第8回締約国会議(COP8:2007年9月3日~9月15日、スペイン、マドリード)
- ア 条約実施の再活性化を目指した改革を目指した十年戦略計画(2008-2018)を採択
- イ 科学技術委員会(CST)を学術会議の形式で毎年開催に改めるなど、十年戦略計画に基づく条約の下の機関の改組
(9)第9回締約国会議(COP9:2009年9月21日~10月2日、アルゼンチン、ブエノスアイレス)
- ア 結果重視マネジメントによる2010~2011年の条約機関作業プログラムを採択
- イ 十年戦略計画に沿った条約実施レビュー委員会(CRIC)の常設補助機関化の決定及び報告書作成ガイドラインの仮採択
- ウ 人員派遣を含む、地域調整メカニズムの強化を決定
(10)第10回締約国会議(COP10:2011年10月10日~10月21日、韓国・昌原)
- ア 結果重視マネジメントによる2012~2013年の条約機関作業プログラムを採択
- イ 地球機構(GM)の取扱方針を決定
- ウ GEFとの連携強化の確認
(11)第11回締約国会議(COP11:2013年9月16日9月~27日、ナミビア・ウィントフック)
- ア 地球機構(GM)をドイツ・ボンの条約事務局に統合する形で移転し、ローマにはリエゾンオフィスを設置することを決定
- イ リオ+20フォローアップに関する政府間ワーキング・グループ及び科学・政策インターフェイス(SPI)設立を決定
(12)第12回締約国会議(COP12:2015年10月12~23日、トルコ・アンカラ)
- ア 土地の劣化の中立性(LDN:Land Degradation Neutrality)に関する定義を決定
- イ 条約対象区域の拡大に関する議論を実施
(13)第13回締約国会議(COP13:2017年9月6~16日、オルドス、中国内蒙古自治区)
- ア 2018~2030年新戦略枠組を採択
- イ ジェンダーに関する行動計画、干魃に関するイニシアチブ、砂嵐に対処するための政策アドボカシーを採択
- ウ 移民問題と本条約との関係について研究を行うことを決定
(14)第14回締約国会議(COP14:2019年9月2~13日、ニューデリー郊外、インド)
- ア 干ばつ、ジェンダー、砂嵐、DLDD(砂漠化、土地劣化、干ばつ)を、移民を促進する主たる原因として、これら4つのテーマ別政策枠組に対処するために36の決議を採択
- イ 土地保有(Land tenure)を条約の新たな主題分野として認めた
- ウ 条約の下、干ばつに対処する効果的な政策や実施方法について調査するため、予算の許す範囲内で政府間WGを設置することを決定
(15)第15回締約国会議(COP15:2022年5月9~20日、アビジャン、コートジボワール)
- ア 例外的に2022~2024年の3か年予算を策定し、ZNG(Zero Nominal Growth)で採択。
- イ 干ばつについて2022~2024年に政府間ワーキンググループ(IWG)を設置して、予算の許す範囲内で干ばつの管理、予防を支援すること等についてさらに議論していくことを決定
5 条約事務局
所在地 | :ドイツ、ボン(ジュネーブから1999年2月1日付で移転した。) |
人員 | :40名(2018年12月現在) |
事務局長 | :イブラヒム・ティヤゥ(モーリタニア出身) |
6 我が国の取組・貢献
(1)条約交渉
本条約の政府間交渉会議において、我が国代表がビューローメンバーや作業部会の議長を務める等、積極的に貢献した。
(2)条約発効
我が国は、1998年9月に受諾書を国連事務総長に寄託し、同年12月10日に我が国について条約発効した。
(3)砂漠化対処条約事務局への拠出金
2010年度:123万ユーロ
2011年度:124万ユーロ
2012年度:90万ユーロ
2013年度:95万ユーロ
2014年度:78万ユーロ
2015年度:82万ユーロ
2016年度:80万ユーロ
2017年度:82万ユーロ
2018年度:71万ユーロ
2019年度:71万ユーロ
2020年度:63万ユーロ
2021年度:63万ユーロ
2022年度:63万ユーロ
(4)政府開発援助、国際機関への拠出等
我が国は、従来から政府開発援助(ODA)等による様々な砂漠化対処関連プロジェクトを推進するとともに、UNDP、FAO、UNEP等への資金拠出等を通じて積極的な砂漠化対処支援策を講じてきている。