平成17年11月1日
日本政府代表団
砂漠化対処条約(UNCCD)第7回締約国会議(COP7)は10月17日から28日にかけて、約180の締約国と、国連諸機関、NGO等の参加を得て、ケニアのナイロビで開催された。我が国からは、宮村在ケニア大使を団長とし、外務省、環境省等が出席した。
今回の会議の主な成果は、2006~2007年の予算が決定されたこと、CSTのなかで、砂漠化・干ばつの早期警戒体制及び科学技術委員会の作業計画等に関する決定がなされたこと、UNCCDと世界環境ファシリティー(GEF)との間の覚書(MOU)が承認されたこと、砂漠化対処における戦略を検討する暫定政府間ワーキング・グループを設立する決議が採択されたこと等である。
なお、COPの会期期間中、2004年ノーベル平和賞受賞のワンガリマータイケニア環境副大臣から2回のステートメントを行い、日本の資源の有効利用の精神として「もったいない」の言葉の紹介と砂漠化問題の解決の手段として、各国は、財政面での不足を訴えるより、政策的意思が重要であり、多くの人々を巻き込んだ活動が必要であるとの発言があった。
平成17年10月17日(月曜日)から10月28日(金曜日)
ナイロビ(ケニア)
約180の締約国、国連諸機関、NGO等
我が国政府代表団として、在ケニア大使館宮村智特命全権大使を団長に、外務省、環境省、(独)緑資源機構の担当者及び東京大学大学院農学生命科学研究科武内和彦教授が出席した。
アフリカ諸国を中心とする主として開発途上国の首脳・閣僚レベルの参加を得て、24日(月曜日)から開催され、砂漠化対処を通じた貧困問題解決の重要性などを訴えるナイロビ宣言が採択された。
我が国からは、在ケニア大使館宮村智特命全権大使が25日、砂漠化対処におけるUNCCDと各国政府、関連国際機関、NGO等との協調の重要性を指摘するとともに、UNCCD事務局運営の効率性及び透明性の向上を求めるステートメントを行った。
本条約の下には補助機関として科学技術委員会(CST)及び条約実施レビュー委員会(CRIC)が設けられている。今回の締約国会合と平行して18日~21日の間第7回科学技術委員会が、18日、19日及び27日に第4回条約実施レビュー委員会(CRIC4)が会合した。これらの委員会での検討結果は締約国会議本会合に報告され、決議に反映された。
(1) 2006~2007年予算の決定
2004~2005年予算と比較して5%増の予算(17,901千米ドル〔事務局が所在するドイツが拠出予定の1,196千ドルを含む〕)を承認した。また、予想される2004~2005年予算の不足額を150万ドルを上限に余剰金から手当てすること、及びUNCCDの予算を次々会計年度(2008~2009年)からユーロ立てに移行させることが決定された。
(2)地球環境ファシリティー(GEF)との覚書
2002年に地球環境ファシリティー(GEF)の重点分野(フォーカル・エリア)に土地劣化が追加されたことを受け、UNCCDとGEFとの間の協力関係強化に関する覚書(MOU)が承認された。
(3)今後の課題を検討する暫定政府間ワーキング・グループの設立
国連合同監査団(JIU)によるUNCCDの活動に関する監査報告書を受け、今後10年間における砂漠化対処への取り組みの戦略などを検討する暫定政府間ワーキング・グループを設立し、2007年に開催されるUNCCD第8回締約国会議(COP8)にむけ作業計画を作成することが決定された。
(4)他の関連条約・機関との連携の強化について
砂漠化対処条約(UNCCD)と生物多様性条約(CBD)、気候変動枠組み条約(UNFCCC)などとの連携強化を呼びかける決議が採択された。
(5)砂漠化・干ばつの早期警戒体制(EWS)の開発促進
先進締約国、関連する国連機関等に対し、開発途上国によるEWSの開発について、技術面、財政面で支援することにより、その取組を促進することを決定した。
(6)科学技術委員会(CST)の作業計画及び基準・指標
CSTの作業計画及び基準・指標では、CST事務局に対し、基準と指標に関する作業が、今後2年間の計画期間のなかで、最も急を要すべき活動であること及びCSTの下に設けられた専門家グループに対し、基準及び指標に関する作業を優先事項として取り組み、最終レポートをCOP8に提出することを決定した。
(7)伝統的知識の活用
締約国に対し、他の機関と協力して伝統的知識のイニシアティブを発展させること及び砂漠化に対処するために伝統的知識と近代知識の統合を推進することを決定した。
(8)条約実施レビュー委員会(CRIC)
条約の実施状況を定期的にレビューする条約実施レビュー委員会第4回会合(CRIC4)は、アフリカにおける条約実施の強化について決定したほか、条約の実施状況に関する締約国からの情報提供・報告の手続きと書式の改善について暫定ワーキング・グループを設立し検討することなどを決定した。
(9)その他
このほか、今回の締約国会議は、第58回国連総会(2003年)が2006年を「砂漠と砂漠化に関する国際年」と決定したことを歓迎し各国に参加を呼びかける決議、持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)の結果を受け、ミレニアム開発目標達成におけるUNCCDの活用、国連持続可能な開発委員会(CSD)への参加を呼びかける決議などを採択した。
また、次回(第8回)UNCCD締約国会議(COP8)を2007年秋にスペインで開催すること、補助機関の一つである条約実施レビュー委員会の第5回会合(CRIC5)を2006年9月にアルゼンチンで、及び同第6回会合(CRIC6)をCOP8と合わせ2007年秋にスペインで開催することを決定した。
東京大学武内教授より、「北東アジアにおける砂漠化アセスメント及び早期警戒体制(EWS)構築のためのパイロットスタディ」(環境省地球環境研究総合推進費)の事例を、緑資源機構より、マリで実施している住民参加型のJICA技術協力事業をそれぞれ紹介し、我が国の砂漠化に対する科学的、技術的貢献を示すことができた。