2 地域機構
中南米地域にはアジア中南米協力フォーラム(FEALAC)1やラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)2のほか、以下のような地域枠組みが存在し、様々な課題について政策調整を行っている。2月にはFEALAC諸国の若手行政官26人と招へいの代わりにオンラインにて会合し、「持続可能な社会と環境のための科学技術の活用」をテーマに、聖火トーチなど東京2020大会に関連する日本の技術についても紹介しつつ、意見交換を行った。
(1)太平洋同盟
チリ、コロンビア、メキシコ及びペルーから成る太平洋同盟は、オーストラリア、カナダ及びニュージーランドとの間で包括的自由貿易協定の締結を目指しており、早期の妥結に向け交渉中である。シンガポールは、2021年7月に太平洋同盟との包括的自由貿易協定の交渉を終え、2022年1月にコロンビアで開催された太平洋同盟首脳会議にて署名を行った。上記4か国に加え、韓国及びエクアドルも交渉参加への関心を表明している。
日本は、太平洋同盟のオブザーバー国であり、基本的価値を共有するグループとして、連携を重視している。
(2)南米南部共同市場(メルコスール:MERCOSUR3)
メルコスールは、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイから成る関税同盟であり、1995年1月から域内関税は一部の品目を除き原則として撤廃されている。2019年には、EU、欧州自由貿易連合(EFTA)との自由貿易協定(FTA)については交渉妥結し、韓国、シンガポール、カナダなどとも交渉中である。なお、ベネズエラ4は加盟停止中、ボリビアは準加盟国5である。
(3)カリブ共同体(カリコム:CARICOM6)
カリコムは、カリブ地域の14か国による経済統合や外交政策の調整などを目的に設立され、国際場裡(り)で協調行動を取ることで存在感を示している。カリコム諸国は比較的所得水準が高い国が多い一方で、毎年のようにハリケーンによる甚大な被害を受けるなど、自然災害の脅威にさらされているほか、人口・経済規模の小ささから生じる小島嶼(しょ)国特有の脆(ぜい)弱性を抱えている。ハイチでは政情不安が続き、7月に大統領が暗殺されるとともに、8月には2,000人以上の死者を伴う大地震が発生し、国内の混乱が続いている。
日本は、対カリコム協力の3本柱(小島嶼国特有の脆弱性克服を含む持続的発展に向けた協力、交流と友好の絆(きずな)の拡大と深化、国際社会の諸課題の解決に向けた協力)に基づいた外交を展開しており、所得水準の高い国に対しても各国の開発ニーズや負担能力に応じて必要な協力を行っている。4月のセントビンセントでの火山噴火被害、8月のハイチ西部における大地震に対しては、緊急援助物資の供与に加えて緊急無償による協力を行った。
日本との関係では、3月に第19回日・カリコム事務レベル協議をオンライン開催した。7月には茂木外務大臣がジャマイカを訪問し、首相表敬、外相会談に加え、第7回日・カリコム外相会合を開催するなど、新型コロナ流行下においても日・カリコム関係を強化した。また、東京2020大会では、アンティグア・バーブーダ外相が訪日し、外相会談を実施したほか、カリコム諸国とホストタウンとのオンライン交流事業を実施するなど交流深化のための取組を行った。

1 FEALAC:Forum for East Asia-Latin America Cooperation
2 CELAC:Comunidad de Estados Latinoamericanos y Caribeños(Community of Latin American and Caribbean States)
3 MERCOSUR:Mercado Común del Sur (Southern Common Market)
4 2021年12月時点加盟資格停止中
5 2012年12月加盟議定書に署名し、ブラジルの議会承認待ち
6 CARICOM:Caribbean Community