グローカル外交ネット

令和3年4月13日

外務省地方連携推進室

1 「Juntos!! 中南米対日理解促進プログラム」を通じたオンライン交流

 Juntos!!はスペイン語(フントス)・ポルトガル語(ジュントス)において、いずれも「共に」を意味します。
 外務省では、中南米各国において様々な分野で日本との関係強化に貢献することが期待される方々を対象に、日本の中南米に対する外交政策や日本事情に対する理解の促進を通じて、日本と中南米の絆を強化することを目的とした「Juntos!!中南米対日理解促進交流プログラム」を実施してきています。「Juntos」は2014年8月に当時の安倍総理がブラジル・サンパウロで行った中南米政策スピーチの中で、日本の対中南米外交の指導理念として使われました。
 今回実施した交流プログラムの招へい対象は、カリブ共同体(CARICOM:カリコム)の若手外交官・行政官で、カリコム諸国のうち6か国が鹿児島県内の自治体のホストタウンに登録されていることから、同県ホストタウン登録自治体の関係者の参加も得て、オンラインによるホストタウン交流が行われました。

2 カリコム諸国と鹿児島県のホストタウン交流

(写真1)オンライン交流の様子 オンライン交流の様子

 鹿児島県では2021年3月現在、12の自治体がホストタウンに登録されていますが、このうち、大崎町(トリニダード・トバゴ)、徳之島町(セントビンセント及びグレナディーン諸島)、天城町(セントクリストファー・ネービス)、和泊町(ドミニカ国)、知名町(グレナダ)、与論町(アンティグア・バーブーダ)がカリコム諸国のホストタウンで、その数は県の登録数の半数を占めます。
 3月17日に行われたカリコム諸国及び鹿児島県のホストタウン交流は、冒頭、宇都副大臣が挨拶で述べたように、海岸の環境問題や自然災害被害など、共通の課題を抱える鹿児島とカリブが東京大会に向けてホストタウン事業をより盛り上げていく一つの大きな起点になりました。

(写真2)相手国関係者との交流の様子(2019年) 相手国関係者との交流の様子(2019年)
(写真3)与論島・百合ヶ浜にて(2019年) 与論島・百合ヶ浜にて(2019年)

 ここで実際に行われたオンライン交流の様子を少し紹介します。
 オンライン交流の前半では、カリコム諸国の若手外交官・行政官が、6つのホストタウンをバーチャルツアー形式で訪問し、現地の人々と交流する内容で進行しました。画面には上空から桜島を撮影した画像が映り、鹿児島空港に降り立つシーンから始まり「旅」の気分は盛り上がっていきます。最初の目的地は大崎町。6つのホストタウンのうちでは唯一、離島ではなく、また、相手国から事前合宿を受け入れるホストタウンです。最新の陸上競技施設「ジャパンアスリートトレーニングセンター大隅」を有する大崎町は、陸上選手の合宿の受け入れに向けて準備を進めており、青い海に立ち並ぶ椰子の木や12年連続資源リサイクル率日本一である点など町の魅力や特徴をPRしました。
 続いて一行は鹿児島空港に戻り、飛行機で徳之島空港に移動します。徳之島には3つのホストタウンがありますが、このうち徳之島町と天城町がカリコム諸国のホストタウンです。徳之島は長寿と高い出生率を誇り、トライアスロン大会開催などスポーツに対する積極性があることを伝えつつ、現地からは地域の伝統である徳之島の民謡民舞のパフォーマンスが中継されました。なお、徳之島町ではこれまで地元出身者によるパーカッション、三味線、民舞民謡と、カリコム地域で盛んなスティールパンの日本人プロ奏者による音楽交流会も開催しています。後述の和泊町・知名町・与論町とともにホストタウン相手国の関係者を招へいし、子供たちと交流を行うなど、ホストタウン間の連携強化も行ってきました。また、天城町ではこれまで、ホストタウン相手国の大使を招聘し、双方の伝統や文化の紹介や民謡民舞の披露、徳之島の伝統的な料理紹介などを行った町民との交流会や、地元高校生との交流授業を実施するなど、東京大会への機運の醸成を図りました。
 ここからは、和泊町、知名町のある沖永良部島(おきのえらぶじま)へと、海をフェリーで横断する旅が続きます。リムストーンケイブ(洞窟)、えらぶユリなどの花、地元特産のサトウキビやジャガイモなどが画面に映し出されます。和泊町と知名町は、与論町と連携し、2019年にそれぞれの相手国の関係者を招へいし、環境と暮らしをテーマにした環境会議の開催、音楽交流、学校訪問を通じた子供達との交流、奄美黒糖焼酎の試飲会など多彩な交流が行われました。

 最後の目的地は花と珊瑚に囲まれた美しい与論島にある与論町。島には60余りのビーチが点在し、コロナ禍前には年間で島人口の約14倍にあたる7万人の観光客が訪れていました。美しい星空を眺めるために、町民は夜の照明光の拡散抑制にも配慮しているそうです。与論島の美しいビーチを維持するために、時には観光客の参加も得て、海岸清掃ボランティアに従事するグループ「海謝美(うんじゃみ)」にオンライン交流のバトンが引き継がれます。「海謝美」は多様な年齢層で運営されていて、過去4~5年間で延べ約1万人の人々が海岸清掃活動に参加し、持続可能な環境、住民交流の促進に貢献しています。同団体とカリコム諸国の外交官・行政官との間で、与論島での海岸清掃活動に関するQ&Aが展開され、同団体の活動内容、メンバー構成、与論島の全ビーチ清掃にかかる時間、海洋ゴミの種類、由来などの質問に、カリコム諸国の参加者が答えを求めて真剣に考えている様子が垣間見られました。

3 結び 

 国際スポーツ大会における「ホストタウン」というと、ついつい事前合宿の受け入れ地、として捉えがちです。もちろん今回オンライン交流に参加した自治体の中では大崎町など最新の陸上競技施設を事前合宿会場として相手国の出場選手に提供し、大会のパフォーマンス向上に直接貢献しながら交流を深める自治体もあります。一方で、事前合宿を受け入れる施設を持たない自治体でも、また、たとえ、東京大会の競技会場からは遠く離れている離島であっても、国内のあらゆる地域の自治体が、住民一人一人と協力し、大会が始まる前から、音楽などの文化、食、自然・環境など様々な分野で、大会の出場選手に限らず、相手国・地域の幅広い層の国民との間で、お互いの顔や声がわかる草の根交流を行うことができる、これこそが東京大会のホストタウンの醍醐味であり、大会が終了しても、将来に交流の芽が脈々と受け継がれていくことを期待しています。

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