5 国際連合(国連)における取組
(1)日本と国連との関係
2020年に創設75周年を迎えた国連は、現在、世界のほぼ全ての国(2020年12月現在193か国)が加盟する国際機関であり、紛争解決や平和構築、テロ対策、軍縮・不拡散、貧困・開発、人権、難民問題、環境・気候変動、防災、感染症を含む多様な分野の諸課題に取り組んでいる。
国連には、加盟国が集まり交渉を行う世界最大のフォーラムとしての機能(普遍性)と、専門家集団が情報や知見を集約し、最適解を提言する機能(専門性)との両面がある。日本は、1956年に加盟して以来、普遍性と専門性の両面を活用し、国連の3本柱である平和と安全、開発、人権を始めとする様々な分野において、多国間協力を通じた政策目的の実現を図ってきた。国連安全保障理事会(国連安保理)の非常任理事国を加盟国中最多の11回務めるなどして、国際社会の平和と安全の維持のため主要な役割を果たしてきたのは、その重要な例である。こうした活動を支えるため、政府として国連への財政拠出を行いつつ、組織面(マネージメント)への関与を行ってきたほか、国連を舞台として活躍する日本人職員を支援し、重要なポストの獲得に努めている(273ページ 第5章第1節2(1)参照)。
創設から75年が経過した現在、国連を21世紀にふさわしい効率的かつ効果的なものとしていくことは喫緊の課題である。日本は国連安保理改革を始めとする国連改革に引き続き積極的に取り組んでいる。

(2)2020年の主要行事
9月、第75回国連総会ハイレベルウィークは、新型コロナの拡大を受け、初めて各国が事前録画した演説を総会議場で上映する形で開催され、菅総理大臣及び茂木外務大臣が参加した。
菅総理大臣は一般討論演説において、新型コロナによる未曽有の危機を、多国間主義の下で協力を深める契機とすべく国際社会に連帯を呼びかけ、感染症拡大は、人間の安全保障に対する危機であるとして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向け、国際的な取組を主導していくと述べた。また、新型コロナからの「よりよい復興」を遂げ、SDGsが達成された、しなやかで強靱な社会を実現するためには、「国連と多国間主義」、「国際の平和と安全」、「法の支配」の三つの事項が重要であり、日本として積極的に取り組んでいくことを強調した。また、北朝鮮による拉致問題の早期解決や核兵器のない世界の実現に向けて全力で取り組み、2021年の夏には、人類が疫病に打ち勝った証(あかし)として、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催するという決意を表明した。

(9月26日、写真提供:内閣広報室)
ハイレベルウィークの機会に合わせ、菅総理大臣とグテーレス国連事務総長との電話会談が実施された。会談では、新型コロナに関する取組について意見交換が行われ、グテーレス事務総長から、日本の貢献への評価が改めて示されるとともに、引き続き、平和構築、開発、気候変動を含む幅広い分野で連携していくことで一致した。また、北朝鮮に関し、菅総理大臣は、拉致問題の早期解決に向け、引き続きの理解と協力を求め、先方からは全面的な支持が示されるとともに、非核化を進めることの重要性が強調された。
茂木外務大臣は、国連創設75周年記念ハイレベル会合での演説において、国連における多国間主義の重要性や、ポスト・コロナを見据えた取組の必要性を強調するとともに、安保理改革を始めとする国連改革に関する日本の立場を発信した。なお、同会合では、創設75周年の節目に当たり、「国連創設75周年記念宣言」が採択された。
このほか、茂木外務大臣は、国連安保理改革に関するG4外相会合、第13回グローバル・ガバナンス・グループ(3G)閣僚級会合、「新型コロナウイルス時代とその後における持続可能な開発のための2030アジェンダのファイナンスに関するハイレベル会合」(いずれもオンライン会議)に出席し、また、包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ各国外相と共にビデオメッセージを発出するなど、各国の外相との間で相互の信頼関係の強化や、日本の政策や立場の国際社会への発信を行った。
11月、茂木外務大臣はボズクル第75回国連総会議長との間で電話会談を行い、人間の安全保障の議論を更に活性化させることや、安保理改革を含む国連改革推進のため協力することで一致した。また、茂木外務大臣から、拉致問題の早期解決に向けた理解と協力を求め、先方から支持を得た。
(3)国連安全保障理事会(国連安保理)、国連安保理改革
ア 国連安全保障理事会
国連安保理は、国連の中で、国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する機関であり、5か国の常任理事国と、国連加盟国により選出される10か国の非常任理事国(任期2年)から構成される。国連安保理決議に基づく国連平和維持活動(PKO)などの活動は多様さを増しており、大量破壊兵器の拡散やテロなどの新たな脅威への対処など、その役割は年々拡大している。
日本は、国連加盟国中最多となる11回目の安保理非常任理事国を務めるなど、地域情勢や平和構築などに関する国連安保理での議論に積極的に貢献している。2016年1月から2017年12月末までの任期中は、北朝鮮による3度の核実験(2016年1月、9月及び2017年9月)及び累次の弾道ミサイル発射を受けて採択された六つの国連安保理決議の作成に貢献するなど、北朝鮮の核・ミサイル問題などの解決に向けて尽力した。また、2019年12月に開催された「不拡散/北朝鮮」を議題とする国連安保理公開会合では、北朝鮮による弾道ミサイル発射は、国連安保理決議違反であり、日本のみならず国際社会全体にとって深刻な挑戦であること、国連安保理決議の完全な履行が重要であることを呼びかけるなど、国際の平和と安全の維持に関わる議論に力を尽くしてきた。日本は、これからも国際社会の平和と安全の維持に貢献し続けるため、日本の常任理事国入りを含む安保理改革が実現するまでの間、可能な限り頻繁に理事国となるべく、2022年に行われる安保理非常任理事国選挙に立候補している。
イ 国連安保理改革
国連発足後75年が経(た)ち、国際社会の構図の大きな変化に伴い、国連の機能が多様化した現在でも、国連安保理の構成は、基本的には変化していない。国際社会では、国連安保理改革を早期に実現し、その正統性、実効性、代表性及び透明性を向上させるべきとの認識が共有されている。特に、「国連創設75周年記念宣言」では、全世界の首脳が「安保理改革の議論に新しい命を吹き込む」ことを誓約した。
日本は、これまで軍縮・不拡散、平和維持・平和構築、人間の安全保障などの分野で国際社会に積極的に貢献してきており、国連を通じて世界の平和と安全の実現により一層積極的な役割を果たすことができるよう、常任・非常任議席双方の拡大を通じた国連安保理改革の早期実現と日本の常任理事国入りを目指し、各国への働きかけを行ってきている。
ウ 国連安保理改革をめぐる最近の動き
国連では、2009年から総会の下で国連安保理改革に関する政府間交渉が行われている。日本は1月、第74回国連総会政府間交渉の共同議長(アラブ首長国連邦及びポーランドの国連常駐代表)を日本に招へいし、安保理改革実現に向け連携を確認した。その後、同共同議長の下で2月及び3月に1度ずつ政府間交渉会合が実施されたが、それ以降は、新型コロナの感染拡大の影響で会合は開催されず、8月末、第74回会期の作業を第75回会期に引き継ぐ決定が国連総会でコンセンサスにより採択された。
ボズクル第75回国連総会議長は、ポーランドの国連常駐代表を第74回会期から引き続き政府間交渉共同議長として再任するとともに、カタールの国連常駐代表を新たな政府間交渉共同議長に任命した。
日本は、国連安保理改革の推進のために協力するグループであるG4(日本、インド、ドイツ及びブラジル)の一員としての取組も重視している。茂木外務大臣は、9月にオンラインで開催されたG4外相会合に出席した。G4の外相は同会合で、今会期の国連総会における政府間交渉の早期開始を求めるとともに、引き続き政府間交渉のプロセス改善及び文書に基づく具体的交渉の開始を目指すことを確認した。また、G4の外相は、国際社会が直面する課題に対応する安保理の能力を強化するため、国際の平和及び安全の維持に責任を負う能力と意思を有する国やアフリカの代表性向上が不可欠である点を強調し、安保理の早期改革に向けて他の有志国との緊密な連携を更に強化することで一致した。日本は引き続き、改革推進派諸国と緊密に連携し、国連安保理改革の実現に向けたプロセスに前向きに関与していく。

(4)国連の組織面(マネージメント)
ア マネージメント
グテーレス国連事務総長は、平和への取組及び開発と共に国連のマネージメント改革を優先課題として位置付け、事務局機能の効率化・効果向上に取り組んでいる。2019年1月には新たな組織体制が発足し、2020年から単年度の通常予算(下記イ参照)が試験的に導入されるなど、国連の財政・予算・人的資源管理について効果向上を目指す取組が進められている。日本は、国連総会におけるマネージメント面に関する審議や国連事務局との対話を通じて、改革の目的を支持しつつ、こうした取組が具体的な成果を上げ、国連が一層効果的・効率的に任務を果たすよう求めてきている。
イ 予算
国連の予算は、一般的な活動経費である通常予算(1月から翌年12月までの2か年予算。2020年から2022年までは試験的に1月から同年12月までの1か年予算を導入)と、PKO活動に関するPKO予算(7月から翌年6月までの1か年予算)で構成されている。
このうち、通常予算については、2020年12月、国連総会において、2021年予算として約32億米ドルの予算が承認された。また、PKO予算については、2020年6月に2020年から2021年度の予算が承認され、予算総額は約65.8億米ドル(前年度最終予算比約2.6%減)となった。
国連の活動を支える予算は、各加盟国に支払が義務付けられている分担金と各加盟国が政策的な必要に応じて拠出する任意拠出金から構成されている。このうち、分担金は財政負担能力に応じて分担率を随時改訂しており、現在日本は、米国、中国に次ぐ8.564%の分担率(2019年-2021年)に基づき、2020年通常予算分担金として約2億3,857万米ドル、2020年PKO分担金として約5億6,078万米ドルを負担している。日本は、主要拠出国の立場から、国連が予算をより一層効率的かつ効果的に活用するよう働きかけを行ってきている。
また、このような国連の行財政を支える主な機関として、国連行財政問題諮問委員会(ACABQ)及び分担金委員会がある。これらの委員会は個人資格の委員から構成される総会付属の常設委員会であり、ACABQは国連の行財政問題全般について審査し、総会に勧告を行う一方、分担金委員会は、総会における通常予算分担率の決定に先立ち、全加盟国の分担率案を作成し総会に勧告する重要な役割を担っている。日本はこれらの委員会に継続的に委員を輩出している。


順位※ | 国名 | 2016-2018年 | 2019-2021年 | 増減ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | 米国 | 22.000 | 22.000 | ±0.000 |
2 | 中国 | 7.921 | 12.005 | +4.084 |
3 | 日本 | 9.680 | 8.564 | -1.116 |
4 | ドイツ | 6.389 | 6.090 | -0.299 |
5 | 英国 | 4.463 | 4.567 | 0.104 |
6 | フランス | 4.859 | 4.427 | -0.432 |
7 | イタリア | 3.748 | 3.307 | -0.441 |
8 | ブラジル | 3.823 | 2.948 | -0.875 |
9 | カナダ | 2.921 | 2.734 | -0.187 |
10 | ロシア | 3.088 | 2.405 | -0.683 |
※2019年から2021年の順位
順位※ | 国名 | 2018年 | 2019年 | 2020-2021年 |
---|---|---|---|---|
1 | 米国 | 28.4344 | 27.8912 | 27.8908 |
2 | 中国 | 10.2377 | 15.21971 | 5.2195 |
3 | 日本 | 9.6800 | 8.5640 | |
4 | ドイツ | 6.3890 | 6.0900 | |
5 | 英国 | 5.7683 | 5.7900 | 5.7899 |
6 | フランス | 6.2801 | 5.6125 | 5.6124 |
7 | イタリア | 3.7480 | 3.3070 | |
8 | ロシア | 3.9912 | 3.0490 | 3.0490 |
9 | カナダ | 2.9210 | 2.7340 | |
10 | 韓国 | 2.0390 | 2.2670 |
※2019年から2021年の順位