第1節 国際社会で存在感を高める日本
近年、新興国の台頭などに伴い国際社会のパワーバランスは大きく変化し、自らに有利な国際秩序の形成や影響力の拡大を目指した国家間の競争が更に顕在化している。既存の秩序をめぐる不確実性が増大するとともに、保護主義や内向き志向が深刻化する中、2020年は新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)が世界的に拡大し、一国のみでは対応できない危機を前に、多国間主義の重要性が再確認されることとなった。このような状況の中、日本は、各国との連携を図りながら、自由・公正で透明性のあるルールに基づいた国際秩序を維持・発展させていくために、従来以上に大きな責任と役割を果たさなければならない。このような認識の下、日本は、以下のような様々な取組を通じ、法の支配を重視しながら、一貫性のある安定した外交を展開し、国際社会における存在感を高めてきた。
1 「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」
インド太平洋は、世界の人口の半分を擁する地域であり、世界の平和と繁栄の鍵を握る安全保障・経済の要衝である。日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」は、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を構築することにより、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくというビジョンであり、今や多くの国々がこの考えを共有している。例えば、2020年11月には、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)協力についての第23回日ASEAN首脳会議共同首脳声明」が採択され、AOIPと日本が推進するFOIPが本質的な原則を共有していること、AOIPに記載された4分野1などにおける協力を通じた日・ASEAN戦略的パートナーシップを強化することを確認した。
ポスト・コロナに向けて、このビジョンの意義、重要性はますます高まっている。引き続き、二国間や日米豪印を含む様々な多国間対話の機会を捉え、米国、オーストラリア、インド、ASEAN、更には欧州、中東、アフリカなどの国々とも連携・協力を進めていく。
1 海洋協力、連結性、持続可能な開発目標(SDGs)、経済の4分野