2 カナダ
(1)カナダ情勢
トルドー政権は、2015年11月の政権発足から3年が経過し、支持率はやや低下したものの、引き続き安定した政権運営を行っている。
外交面では、カナダは、2018年のG7議長国として、6月のシャルルボワでの首脳会合を含む一連の会合の開催を始め、国際社会の諸課題への対応を主導した。北朝鮮問題に関しては、カナダは1月に米国と共に北朝鮮に関する関係国外相会合を共催し、国際社会が一致結束して北朝鮮への圧力を最大限まで高めていく等のメッセージを発出した。また、北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動のため哨戒(しょうかい)機及びフリゲート艦を派遣するなど、アジア太平洋地域への安全保障面での関与を強めている。二国間関係では、伝統的に最も緊密な同盟国である米国との間で、G7首脳会談後の対応をめぐって両国のハイレベルで批判し合うなど関係が一時悪化した。また、サウジアラビアとは人権問題をめぐり、中国とはファーウェイ社CFO(最高財務責任者)の拘束とその後に発生した中国におけるカナダ人の拘束をめぐり、それぞれ難しいかじ取りを迫られた。
経済面では、好調な経済情勢を背景に、インフラ銀行の創設を含む国内インフラへの投資拡大、中間層のための雇用と富の創出を基本に積極的な政策を進めている。対外的には、中産層の雇用創出を目的とした進歩的な貿易政策の推進を基本政策として、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の署名及び締結、NAFTAの再交渉を経た米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の署名、カナダ欧州自由貿易協定(CETA)の推進及び新興市場との経済関係強化に取り組んでいる。
(2)日・カナダ関係
日本とカナダは、アジア太平洋地域の重要なパートナーであると同時に、共にG7のメンバーとして、政治、経済、安全保障、人的交流等、幅広い分野で密接に協力している。日・カナダ修好90周年に当たる2018年は、頻繁なハイレベル会談の実施や、安保、経済両面での関係強化を通じて、両国関係が更に深まった1年となった。
首脳レベルでは、6月のG7シャルルボワ・サミットの際、安倍総理大臣がカナダを訪問し、トルドー首相と首脳会談を行った。また、11月にパプアニューギニアで開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会合の際にも首脳会談を行った。外相レベルでは、河野外務大臣が、1月にバンクーバーで開催された北朝鮮に関する関係国外相会合、4月にトロントで開催されたG7外相会合及び9月にモントリオールで開催された女性外相会合(G7の外相は性別を問わず招待されたもの)の機会に、計3回カナダを訪問した。また、フリーランド外相も3月に外務省賓客として訪日した。両外相は、8月にシンガポールで開催されたASEAN関連外相会合の際にも外相会談を行った。こうしたハイレベルでの頻繁な会談等を通じ、日本とカナダは北朝鮮問題を始めとする地域、国際社会の諸課題について認識をすり合わせ、緊密に連携している。

(11月18日、パプアニューギニア 写真提供:内閣広報室)

安全保障面では、4月に、河野外務大臣とフリーランド外相が、日・カナダ物品役務相互提供協定(ACSA)に署名した。また、北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動において、日本とカナダは緊密に連携して対応している。こうした安保面での協力の進展を背景に、11月のパプアニューギニアでの首脳会談においては、安保・防衛協力を含む両国間の戦略的関係を一層深めていくことで一致した。また、12月には次官級「2+2」対話を開催し、日・カナダ間で外交・安保面での協力が進展していることを歓迎しつつ、具体的な協力をこれまで以上に強化していくことを確認した。
経済面では、カナダは、3月に日本を含む他の10か国と共にTPP11協定に署名し、10月に締結した。同協定が12月30日に発効したことにより日・カナダ間の経済関係の更なる深化が期待される。また、6月に第28回となる日・カナダ次官級経済協議を東京で開催し、国際貿易情勢及び優先協力分野に関する議論を行った。
