ポーランド共和国
ポーランド共和国(Republic of Poland)
基礎データ


一般事情
1 面積
32.2万平方キロメートル(日本の約5分の4、日本から九州、四国を引いた程度)
2 人口
約3,801万人(2022年4月:ポーランド中央統計局)
3 首都
ワルシャワ(約179.4万人)
4 民族
ポーランド人(人口の約97%)
5 言語
ポーランド語
6 宗教
カトリック(人口の約88%)
7 国祭日
5月3日(憲法記念日)、11月11日(独立記念日)
8 略史
年月 | 略史 |
---|---|
966年 | ピアスト朝、キリスト教を受容 |
1386年 | ヤギェウォ朝の成立 |
1573年 | 選挙王制 |
1795年 | 第3次分割によりポーランド国家消滅 |
1918年11月 | 独立回復 |
1945年7月 | 国民統一政府の樹立 |
1989年9月 | 非社会主義政権の成立 |
1999年3月 | NATO加盟 |
2004年5月 | EU加盟 |
- 10世紀に建国。15~17世紀には東欧の大国。18世紀末には3度にわたり、ロシア、プロイセン、オーストリアの隣接三国に分割され、第一次大戦終了までの123年間世界地図から姿を消す。
- 第二次大戦ではソ連とドイツに分割占領された。大戦での犠牲者は、総人口の5分の1を数え、世界最高の比率。
- 大戦後は、ソ連圏に組み込まれたが、「連帯」運動(1980年代)など自由化運動が活発で、東欧諸国の民主化運動をリードした。1989年9月、旧ソ連圏で最初の非社会主義政権が発足した。
- 「欧州への回帰」を目標に、1999年3月にNATO加盟、2004年5月にはEU加盟を果たした。
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
アンジェイ・ドゥダ(Andrzej DUDA)大統領(2020年8月再任、任期5年)
3 議会
二院制(下院460議席、上院100議席、両院とも任期4年)
4 政府
- (1)首相名 マテウシュ・モラヴィエツキ(Mateusz MORAWIECKI)(2019年11月再任)
- (2)外相名 ズビグニェフ・ラウ(Zbigniew RAU)(2020年8月就任)
5 内政
- (1)1989年9月にマゾヴィエツキ首相の非社会主義政権が成立して以来、大統領及び議会の自由選挙が実施され、民主主義が定着。2007年10月に行われた総選挙までは、「連帯」の流れを汲む中道右派政党と旧共産党系の左派政党が交互に政権についた。
- (2)2007年10月に行われた総選挙(上下両院)では、与党であった「法と正義」(PiS、中道右派)と同じく「連帯」の流れを汲む最大野党「市民プラットフォーム」(PO)が勝利。POは、同党のトゥスク党首を首班とする農民党(PSL)との連立政権を発足させた。
- (3)2010年4月10日、カティンの森70周年追悼式典に出席のため、カティンに向かっていた政府専用機がロシアのスモレンスク近郊で墜落、カチンスキ大統領夫妻等乗員乗客96名全員が死亡した。新大統領選出のための選挙では、与党POのコモロフスキ下院議長が、死亡した前大統領の双子の兄であるヤロスワフ・カチンスキPiS党首を破って当選。
- (4)2011年10月に行われた総選挙では、POが再び勝利し、PO及びPSLによる連立政権が2期8年にわたり継続した。他方、2014年8月にトゥスク首相が次期欧州理事会議長に選出されたことを受けて、同年9月からはコパチ首相が連立政権を率いた。
- (5)2015年5月、任期満了に伴う大統領選挙が行われ、決選投票で最大野党PiSが擁立したアンジェイ・ドゥダ候補が51.55%の得票率で現職のコモロフスキ大統領を破り、8月6日に大統領に就任した。
- (6)2015年10月25日、総選挙が実施され、PiSが上下両院で単独過半数の議席を獲得した。11月16日、89年の民主化後初めてPiSによる一党単独政権が発足し、シドゥウォPiS副党首が首相に就任した。
- (7)2017年12月7日、シドゥウォ首相が辞任を表明し、同月11日、モラヴィエツキ副首相兼財務・開発大臣が首相に就任した。
- (8)2019年10月13日に実施された総選挙では、与党PiSが下院で単独過半数の議席を維持したものの、上院では過半数を維持できず、上下院で「ねじれ」が生じた。同年11月19日、再任されたモラヴィエツキ首相を首班とする新内閣が発足した。
- (9)2020年7月に実施された大統領選挙では、決選投票の結果、野党候補であるチシャスコフスキ・ワルシャワ市長(PO所属)を僅差で破り、現職のドゥダ大統領が再選し、同年8月に再任された。
外交・国防
1 外交
- (1)1999年にNATO加盟、2004年にEU加盟を果たし、NATO及びEUとの協力強化を通じて国の安全と繁栄を確保していくとの姿勢。また、「連帯」運動の伝統から民主主義の推進に熱心。アジア諸国とは経済関係の強化に関心がある。
- (2)順調な経済、積極的な外交を背景としてEU内で重要なプレーヤーとなりつつあり、2014年8月のトゥスク元首相の欧州理事会議長選出(2019年11月退任)及び欧州議会最大会派である欧州人民党(EPP)党首就任(同12月1日)はEUにおけるポーランドの存在感を示す一例と言える。近隣諸国ともヴィシェグラード・グループ(ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、略称「V4」)等を通じて良好な関係を維持し、EU内における存在感を高めている。EUの施策の内、特にEUの東方近隣諸国政策にリーダーシップを発揮し、2009年に発足した東方諸国(ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ、ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン)のEUとの統合を推進する東方パートナーシップに積極的に取り組んできた。ウクライナ問題についても国境を接する隣国として積極的に関与している。ロシアとの関係では、2010年に同国で墜落したポーランド政府専用機の機体返還等の問題が残されている。また、ウクライナ危機を受け、EUの対露制裁、ロシアによるEU農産品の禁輸措置など対立局面が続いている他、ポーランド国内の旧ソ連の記念碑の取り扱いに関する問題等も生じている。現在のモラヴィエツキ政権は、欧州外交等における国益の実現、自国の安全保障の更なる強化、中・東欧諸国との協力強化等を重視している。
- (3)安全保障面ではNATO、EU及び米国とのパートナーシップを3本柱として位置付け、集団安全保障機構としてのNATOの役割を重視。2016年7月にはNATOワルシャワ首脳会合を主催し、同会合はNATO東方地域の強化等の成果を出した。また、米国との関係ではNATOの計画でもある欧州ミサイル防衛システムの構築を一貫して支持。2023年から米SM-3ミサイルを装備するイージス・アショアの運用が開始される予定(同配備に対しロシアは常に強い懸念を表明)であり、2016年5月に設置作業が開始された。また、2020年8月に米国との間で強化防衛協力合意(EDCA)が締結され、在ポーランド米軍1,000名の増派が明示されるとともに、米軍用インフラ施設の整備が進められている。自国の軍備の近代化も進めており、ミサイル等の兵器の新規購入を積極的に実行している。更に、2014年3月以降のウクライナ情勢を受け、NATO及びウクライナも含めた隣国との合同部隊の本部をポーランド国内に設置するとともに、東欧地域の様々な枠組みを活用し自国及び他国との協力を強化する等、多層的な安全保障態勢の整備を推進している。2022年2月のロシアによるウクライナ侵略を受けた米軍のポーランド増派により、約10,000人の米兵が駐留している。
- (4)ポーランドは、安全保障における国際協力にも積極的であり、NATO及びEUの枠組で、アフガニスタン、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナに人員を派遣、2019年11月から国連の枠組でレバノンに人員の派遣を行っている。2014年末にアフガニスタンISAF任務は終了し、2021年4月、NATOによる諮問・研修ミッション「確固たる支援任務(RSM)」の撤退決定に従い、ポーランド派遣部隊も撤退準備を進めている。現在、ポーランド軍は約2,000名の兵士を国外へ派遣している。
- (5)2022年2月のロシアによるウクライナ侵略を受け、ポーランドは、近隣諸国最大規模のウクライナからの避難民を積極的に受け入れ、人道支援を提供し、社会生活をサポートしている。また、ウクライナに対して戦車、榴弾砲、砲弾、弾薬、対空ミサイル、軽迫撃砲、偵察用ドローン等17億米ドル相当の軍事支援を行っている。侵略直後、一早くロシア航空機のポーランド領空通過禁止措置や露系放送局の放送免許取消等の独自措置を実施。さらに、ロシアに対しては、エネルギー資源(石油、石炭、ガス)の禁輸、ロシアの銀行のSWIFTからの排除、ロシア関係者の資産没収といった厳しい制裁を課すよう主張している。
2 軍事力
- (1)予算 約230億ドル(対前年GDP比4%)(2023年:ポーランド国防省予算資料)
- (2)兵力 総兵力約16.4万人(2023年)
- (3)徴兵制は2009年末で廃止
経済
1 主要産業
食品・飲料、金属・金属品、自動車・自動車部品、コンピュータ・電子・電子機器、ゴム・プラスチック
2 GDP
約6,546億ユーロ(2022年、欧州委員会)
3 一人当たりGDP
約17,310ユーロ(2022年:欧州委員会)
4 経済成長率
4.9%(2022年:中央統計局)
5 物価上昇率(前年同月比)
+14.7%(2023年4月:ポーランド中央統計局)
6 失業率
5.5%(2023年2月:ポーランド中央統計局)
7 総貿易額
- (1)輸出 3,438億ユーロ(2022年:ポーランド中央統計局)
- (2)輸入 3,637億ユーロ(2022年:ポーランド中央統計局)
8 主要貿易品目
- (1)輸出 機械機器類、農産品・食料品、金属製品等
- (2)輸入 機械機器類、金属製品、化学製品等
9 主要貿易相手国
- (1)輸出 ドイツ、チェコ、フランス、英国(EUが約75.6%)
- (2)輸入 ドイツ、中国、イタリア、米国(EUが約51.3%)
10 通貨
ズロチ(ZŁ)
11 為替レート
1ZŁ=約30円(2023年1月現在)
12 経済概況
(1)堅調なマクロ経済
2004年のEU加盟以降、2020年までにGDPは2倍以上となり、2008年のリーマンショック直後もEU内で唯一プラス成長を維持した。
2011年に再び欧州が信用危機に見舞われた際、堅調な輸出や個人消費に牽引され5.0%の成長率を達成。2012年には欧州債務危機の影響による個人消費の落ち込みから1.6%の成長となったが、2013年第2四半期から順調に回復し、2019年には4.7%の成長を達成した(ポーランド中央統計局)。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、GDP成長率はマイナス2.7%に減速したが、他のEU諸国と比較すると影響は限定的で、輸出等では底堅さを維持した。
金融政策委員会は、2015年3月に政策金利を当時史上最低の1.5%に利下げして以降、同金利を維持していたが、新型コロナウイルス感染症の影響等を勘案し、2020年4月に0.5%に、また、同年5月には0.1%に再度引き下げるなど金融政策を緩和した。しかし、インフレ(2022年6月の対前年同月比消費者物価指数は+15.5%)が進んだことを踏まえ、2021年10月以降、政策金利を順次引き上げ、2022年10月には6.75%まで引き上げた。
(2)財政状況
2009年から政府の単年度財政が悪化し、財政赤字が対GDP比7.3%とEUの過剰財政赤字手続適用値(同3.0%)を大きく超えた。欧州委員会から是正勧告を受け、財政赤字削減に取り組んだ結果、2014年は同3.6%へと改善し、それ以降は3.0%以下を維持してきた。しかし、2020年は新型コロナウイルス感染症を受け、大規模な経済対策を打ち出す等した結果、財政赤字の対GDP比は7.0%に増加した。
(3)経済政策上の課題
持続的な経済成長のためには、財政の健全化を維持しつつ、ビジネス環境の整備のほか、産業構造の改革、研究開発分野への投資や新たな産業の創出等が求められる。こうした課題を踏まえ、2016年に中長期の成長戦略(モラヴィエツキ・プラン)が発表された。2021年5月、与党PiSは政策党集会を開催し、新型コロナウイルス感染症後の経済成長政策として、新たな社会経済プログラムである「Polish Deal」を発表した。同政策の5つの優先課題として、(1)医療制度、(2)税制、(3)年金、(4)住宅、(5)投資を掲げ、これらの他にも家族・社会政策、農業、教育、環境、サイバー等の幅広い分野が含まれている。また、インフレ対策パッケージである「Anti-Inflation Shield」を発表した。同対策は燃料、エネルギー、食料などを対象とし、物品税の撤廃、付加価値税(VAT)の引き下げ、補助金の支給などが含まれている。
(4)エネルギー
ロシアへの高いエネルギー依存度(輸入に占める割合(2021年):原油約63%、天然ガス約63%)を下げることが課題。政府は、北欧、中東、米などからガス等を輸入し多様化を図ると共に、LNGターミナル建設・拡張やパイプライン網の構築等に取り組んでいる。
2021年に2040年までのエネルギー戦略を制定。電力の7割以上を石炭火力に依存するが、気候変動対策を踏まえ、2049年までに国内の炭鉱閉鎖を決定し、2040年代の石炭火力発電廃止に合意した。中期的には移行燃料としてガスの利用を拡大させると共に石炭を削減し、再生可能エネルギー(RES)及び原子力を導入する予定。
2040年の発電における石炭の割合を11~28%(CO2排出取引価格に応じて)、RESを39%、ガスを33%、原子力を16%(2033年に初号機を建設予定)と予測している。一方、ウクライナ侵略を受け同戦略の見直しを検討。エネルギー安全保障の強化を目的とし、2040年のRESの導入目標の引き上げ(39%→50%)、石炭火力発電所の近代化、寿命延長などが盛り込まれる見通しであり、2023年中頃に改訂される予定。
(5)EU基金
順調な経済成長を下支えしてきたのがEUの基金。ポーランドは2007~2013年の多年度財政枠組み(MFF)において673億ユーロ、2014~2020年に825億ユーロと、共に加盟国中最大の受給枠を確保した。2021-2027年のMFF及び欧州復興基金から総額約1,700億ユーロを獲得見込み。
経済協力
1 日本の援助実績(1989~2008年、2023年~)
(1)概略
日本は、1989年の民主化以降2008年まで、市場経済及び民主主義への円滑な移行に資するため、技術協力を中心に産業、経済、貿易振興等の諸政策の立案支援をはじめ、生産性向上、品質管理等の企業育成支援や、環境保全、技術革新等、多岐にわたる支援を実施(ポーランドのEU加盟等を踏まえ終了)。
また、日本は、2004年から3年間、ODAで設立・発展したポーランド日本情報工科大学によるウクライナのキーウ工科大学、リヴィウ工科大学に対する遠隔教育(遠隔教育センターはUNDPにより整備)を行うなど、ポーランドとの開発援助協力(三角協力)を実施した。
2022年2月に始まるロシアによるウクライナ侵略の長期化により、ポーランドを含む周辺国の負担や脆弱性が増加していることを受けて、負担や脆弱性を軽減し、ウクライナへの人道、復旧・復興支援を効果的に行う観点から、2023年2月、我が国はポーランドに、直接ODAを供与することを決定した。
(2)日本の対ポーランド経済協力実績
(実施年度1989~2008年)
- (ア)有償資金協力 213.92億円
- (イ)無償資金協力 40.36億円
- (ウ)技術協力 89.71億円
(実施年度2022年~)
- 無償資金協力 2.89億円
二国間関係
1 政治関係
両国関係は伝統的に良好。1919年3月に日本はポーランド共和国及び同国政府を承認し、国交を樹立(2019年は国交樹立100周年)。1920年8月に在京ポーランド公使館開設。1921年5月に在ポーランド日本公使館開設。戦後は1957年に国交を回復。2002年に天皇皇后両陛下、2003年に小泉総理がポーランドを訪問し、ポーランドからは2005年にベルカ首相、2008年にはカチンスキ大統領が訪日した。また、2012年にコモロフスカ大統領夫人が訪日し、東日本大震災被災地を訪問した。
2013年6月、安倍総理が日本の首相としては10年ぶりにポーランドを訪問した。安倍総理は、日・ポーランド首脳会談に続き、ヴィシェグラード4諸国(ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー)と第1回「V4+日本」首脳会合を行った。
2015年2月、コモロフスキ大統領夫妻が訪日し、安倍総理と日・ポーランド首脳会談を実施し、共同記者発表において、「日本国とポーランド共和国との間の共同声明「自由、成長、連帯への戦略的パートナーシップ構築」(PDF)を発出した。安倍総理夫人が大統領夫人と懇談を行った。
2015年10月、高円宮妃殿下がポーランドをご旅行され、ドゥダ大統領夫妻と懇談された。
2017年5月、ヴァシチコフスキ外相が訪日し、岸田外務大臣と会談。両外相は「日・ポーランド戦略的パートナーシップに関する行動計画」に署名した。
2018年7月、河野外務大臣がポーランドを訪問し、チャプトヴィチ外相と会談を行った。
同年10月、第12回アジア欧州会合(ASEM)首脳会合に際し、ブリュッセルにて第2回「V4+日本」首脳会合が開催された。
2019年4月、安倍総理のスロバキア訪問に際し、日・ポーランド首脳会談及び第3回「V4+日本」首脳会合が行われた。安倍総理は、モラヴィエツキ首相との間で戦略的パートナーシップ関係の発展を歓迎し、引き続き連携していくことを確認した。
2019年6月27日~7月2日、秋篠宮皇嗣同妃両殿下が国交樹立100周年の機会にポーランドを御訪問し、ドゥダ大統領夫妻と懇談されたほか、周年記念行事に出席された。
2019年10月の即位礼正殿の儀には、コルンハウゼル=ドゥダ大統領夫人が出席した。
2020年1月、モラヴィエツキ首相が訪日し、日・ポーランド首脳会談を実施。戦略的パートナーとして政治・安全保障、経済、文化・人的交流など様々な分野でのさらなる関係深化について合意した。
2021年5月、茂木外務大臣がポーランドを訪問し、ドゥダ大統領表敬及びラウ外相との会談を実施した。また、第7回「V4+日本」外相会合を開催した。
2021年7月、東京オリンピック競技大会開会式に出席するため、ドゥダ大統領が訪日し、菅総理と首脳会談を実施した。両首脳は、両国の戦略的パートナーシップを一層深化させていくことで一致した。
2022年4月、ロシアによるウクライナ侵略を受け、総理特使として林外務大臣がポーランドを訪問し、ドゥダ大統領及びモラヴィエツキ首相を表敬訪問するとともに、ラウ外相との会談を実施した。両外相は、自由で開かれた国際秩序を守るため、戦略的パートナーとして、引き続き緊密に連携していくことで一致した。
2023年3月、岸田総理は日本の首相としては10年ぶりにポーランドを訪問し、ドゥダ大統領及びモラヴィエツキ首相とそれぞれ首脳会談を実施した。岸田総理からは、ポーランド訪問前に行った自身のウクライナ訪問にあたってのポーランドの協力に謝意を表明の上、ウクライナ情勢や二国間関係について意見交換を行った。同年4月、NATO外相会合に参加するためベルギーを訪問中の林外務大臣は、ラウ外相と会談を実施した。3月の岸田総理のポーランド訪問時の、ドゥダ大統領及びモラヴィエツキ首相の歓迎に感謝の意を表しつつ、ロシアによるウクライナ侵略への対応や、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて引き続き緊密に連携していくことで一致した。同年5月、ラウ外相が訪日し、林外務大臣との間で会談等を実施(6年ぶりの外相訪日)。二国間関係やウクライナ、インド太平洋の地域情勢について意見交換を実施した。また、岸田総理はラウ外相からの表敬を受けた。
2 経済関係
(1)日本の対ポーランド貿易(2022年:財務省貿易統計)
(ア)総貿易額 7,188億円
- 輸出 5,497億円
- 輸入 1,691億円
(イ)主要品目
- 輸出 自動車並びに自動車部品及び同関連製品、電気計測器
- 輸入 機械及び機械部品、自動車及び自動車部品
(2)進出日系企業数
358社(2021年10月現在:外務省海外在留邦人数調査統計)
3 文化関係
(1)概略
- 両国民の互いの文化に対する高い関心を背景として、国内各地で武道や伝統文化、ポップカルチャーを中心とした文化交流や、日本語教育が活発。健康志向の高まりとともに、日本食も大きなブームとなっている。2013年にワルシャワで開始された総合日本文化交流事業「日本祭り」も毎年20,000人以上の参加者を得るまでに成長した。
- 1994年11月、ワイダ監督夫妻のイニシアティブと尽力により日本美術技術センター(現名称は「日本美術技術博物館」、通称Manggha館)がクラクフ市に設立、ポーランドのみならず中・東欧地域の一大日本文化発信拠点となっている。これまでに、天皇皇后両陛下(2002年)、高円宮妃殿下(2015年)、安倍総理夫人(2013、2014年)、秋篠宮皇嗣同妃両殿下(2019年)など、多くの要人も訪問している。創立20周年となる2014年には、「ポーランドの日本美術傑作展」をはじめ様々な記念行事が実施され、同年11月に開催された20周年式典にはコモロフスキ大統領夫妻、安倍総理夫人、ワレサ元大統領等が出席した。
- 2015年秋に開催された第17回ショパン国際ピアノ・コンクールに際しては、12名の日本人ピアニストが出場、高円宮妃殿下のご臨席も得て、両国の音楽交流が一層活発化した。2021年10月、新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期となった第18回同コンクールでは、14名の日本人ピアニストが出場、2位と4位に入賞し、話題となった。日本人の2位入賞は過去最高位で51年ぶりの快挙。
- 2022年5月、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と駐日ポーランド共和国大使館によって創設された、国際的に活躍が期待される日本の若手女性研究者を表彰する「羽ばたく女性研究者賞(マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞)」の第1回授賞式が駐日ポーランド共和国大使館にて開催。式典には高円宮妃殿下も御臨席された。
(2)日本語
国立4大学に在籍する約600名の日本学科学生に加え、約50の学校・機関で合計約5,000名が日本語を学習している。40年の伝統を誇る日本語弁論大会も毎回多数の参加者を得て実施されている。
(3)スポーツ
空手、柔道、相撲、合気道、剣道など日本の武道が盛んであり、国内各地に道場がある。特に、空手の競技人口は約46,000人超(2020年統計)で、競技人口別第5位の人気スポーツとなっている。また、相撲をきっかけとした地方自治体間(島根県隠岐の島町とクロトシン市)の交流が行われており、2016年6月に友好都市提携の調印式が行われた。
(4)文化無償協力・草の根文化無償協力
1991年から2004年まで、大学など学術機関や文化施設を中心にほぼ毎年機材供与の実績あり。2000年から2007年までは3件の草の根文化無償協力を実施。
4 在留邦人数
2,058名(2022年10月1日現在:外務省海外在留邦人数調査統計)
5 在日ポーランド人数
1,510人(2022年6月末現在:法務省在留外国人統計)
6 日本人訪問者数
14,753人(2022年ポーランド中央統計局)
7 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1990年 | 海部総理大臣、中山外務大臣 |
1992年 | 村山衆議院副議長(下院公式招待) |
1994年 | 高円宮同妃両殿下 |
1996年 | 塚原通商産業大臣 |
1997年 | 池田外務大臣、白川自治大臣 |
2000年 | 斎藤参議院議長(上院公式招待) |
2001年 | 丸谷外務大臣政務官 |
2002年 | 天皇皇后両陛下、松浪外務大臣政務官 |
2003年 | 小泉総理大臣、参議院公式議員団(上院公式招待) |
2004年 | 田中外務大臣政務官(「拡散に対する安全保障構想」(PSI)総会) |
2005年 | 衆議院日本ポーランド友好議員連盟代表団(下院公式招待) |
2007年 | 麻生外務大臣、高木経済産業大臣政務官 |
2008年 | 斎藤環境大臣、江渡防衛副大臣、小野寺外務副大臣、横路衆議院副議長、谷合経済産業大臣政務官、三ツ矢財務大臣政務官 |
2009年 | 石原都知事 |
2011年 | 伴野外務副大臣、園田内閣府大臣政務官 |
2012年 | 浜田外務大臣政務官 |
2013年 | 安倍総理大臣、左藤防衛大臣政務官、石原環境大臣 |
2014年 | 松島経済産業副大臣、愛知財務副大臣、西村内閣府副大臣、安倍総理夫人 |
2015年 | 高木経済産業副大臣、城内外務副大臣、高円宮妃殿下 |
2017年 | 田野瀬文部科学大臣政務官、郡司参議院副議長 |
2018年 | 河野外務大臣、原田環境大臣、滝波経済産業大臣政務官 |
2019年 | 秋篠宮皇嗣同妃両殿下、衆議院日本ポーランド友好議員連盟代表団(下院公式招待) |
2021年 | 茂木外務大臣 |
2022年 | 林外務大臣(総理特使)、中谷総理補佐官、津島法務副大臣 |
2023年 | 岸田総理大臣、西村経済産業大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1990年 | コザキエヴィチ下院議長(即位の礼) |
1991年 | ビエレツキ首相(非公式訪問) |
1992年 | スクビシェフスキ外相(外賓) |
1994年 | ワレサ大統領(国賓)、オレクスィ下院議長(衆議院議長招待) |
1996年、1997年 | ストゥルージク上院議長(参議院議長招待) |
1998年 | クファシニエフスキ大統領(IOC賓客) |
1999年 | ブゼク首相(非公式訪問) |
2000年 | ゲレメク外相(外賓) |
2001年 | グジェシコヴィアック上院議長(参議院議長招待)、ジェリンスキ文化相 |
2004年 | クライベル科学相、ラチュコ財務相 |
2005年 | ベルカ首相、カリシュ内務行政相(国連防災会議)、グロニツキ財務相 |
2006年 | メレル外相(外務省賓客) |
2007年 | ウヤズドフスキ文化相、セヴェリンスキ科学・高等教育相 |
2008年 | カチンスキ大統領(公式実務訪問賓客)、シコルスキ外相(外務省賓客)、サヴィツキ農業・農村開発相、ノヴィツキ環境相 |
2009年 | サヴィツキ農業・農村開発相、グラド国有財産相、ノヴィツキ環境相 |
2010年 | ボルセヴィチ上院議長、クラシェフスキ環境相 |
2011年 | ズドロイェフスキ文化・国家遺産相 |
2012年 | コモロフスカ大統領夫人 |
2013年 | シェモニャク国防相、ズドロイェフスキ文化・国家遺産相、ピエホチンスキ副首相兼経済相 |
2015年 | コモロフスキ大統領(実務訪問賓客)、ヴァシャク・インフラ開発相(閣僚級招へい)、グラボフスキ環境相(国連防災世界会議)、下院ポーランド・日本友好議員連盟(衆議院公式招待) |
2017年 | ヴァシチコフスキ外相 |
2018年 | ジェジチャク外務副相 |
2019年 | バンカ・スポーツ・観光相、ドゥダ大統領夫人(即位礼出席) |
2020年 | モラヴィエツキ首相、グロツキ上院議長(参議院議長招待) |
2021年 | ドゥダ大統領(東京オリンピック競技大会開会式出席) |
2022年 | ブダ開発・技術相、コヴァルチク副首相兼農業・農村開発大臣(故安倍晋三国葬儀) |
2023年 | ラウ外相 |
8 二国間条約・取極
年月 | 略史 |
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1957年 | 国交回復に関する協定(同年発効) |
1978年 | 通商航海条約(1980年発効) |
1978年 | 科学技術協力協定(同年発効) |
1978年 | 文化、教育交流取極(同年発効) |
1980年 | 二重課税防止条約(1982年発効) |
1994年 | 航空協定(1996年発効) |
1994年 | 外交・公用旅券保有者の相互査証免除取極(1995年発効) |
1998年 | 一般旅券保持者の相互査証免除取極(1999年発効) |
2004年 | 運転免許試験の相互免除に関する二国間取極(同年発効) |
2015年 | 日・ポーランド・ワーキング・ホリデー協定(同年発効) |
9 外交使節
- (1)宮島昭夫 駐ポーランド日本国特命全権大使
- (2)パヴェウ・ミレフスキ 駐日ポーランド共和国特命全権大使