地球環境
生物多様性条約
(生物の多様性に関する条約:Convention on Biological Diversity(CBD))
令和6年11月5日
1 背景
- (1)人類は、地球生態系の一員として他の生物と共存しており、また、生物を食糧、医療、科学等に幅広く利用している。近年、野生生物の種の絶滅が過去にない速度で進行し、その原因となっている生物の生息環境の悪化及び生態系の破壊に対する懸念が深刻なものとなってきた。このような事情を背景に、希少種の取引規制や特定の地域の生物種の保護を目的とする既存の国際条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)等)を補完し、生物の多様性を包括的に保全し、生物資源の持続可能な利用を行うための国際的な枠組みを設ける必要性が国連等において議論されるようになった。
- (2)1987年の国連環境計画(UNEP)管理理事会の決定によって設立された専門家会合における検討、及び1990年11月以来7回にわたり開催された政府間条約交渉会議における交渉を経て、1992年5月22日、ナイロビ(ケニア)で開催された合意テキスト採択会議において本条約はコンセンサスにより採択された。
- (3)本条約は、1992年6月3日から14日までリオデジャネイロにおいて開催された国連環境開発会議(UNCED)における主要な成果として、国連環境計画(UNEP)とともに右会議中に署名のため開放され、6月13日、我が国はこれに署名した(署名開放期間内に168か国が署名を行った)。
- (4)1993年5月28日、我が国は寄託者である国連事務総長に受諾書を寄託することにより、本条約を締結した。
- (5)1993年12月29日、所定の要件を満たし、本条約は発効した。
- (6)2024年11月現在、194か国、欧州連合(EU)及びパレスチナが締結。(なお、米国は未締結。)
2 条約の目的
本条約は、
- (1)生物多様性の保全
- (2)生物多様性の構成要素の持続可能な利用
- (3)遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分
を目的とする(第1条参照)。
3 締約国会議
- (1)第1回締約国会議(COP1)は、1994年11月28日から12月9日まで、ナッソー(バハマ)において開催され、中期作業計画の策定や、科学上及び技術上の助言に関する補助機関の設置等が決定された。
- (2)第2回締約国会議(COP2)は、1995年11月6日から17日まで、ジャカルタ(インドネシア)において開催され、クリアリング・ハウス・メカニズム(第18条「情報の交換の仕組み」)の試行的作業の開始や、バイオセーフティ議定書の原案作成のための作業部会の設置等が決定された。
- (3)第3回締約国会議(COP3)は、1996年11月4日から15日まで、ブエノスアイレス(アルゼンチン)において開催された。[COP3結果概要]
- (4)第4回締約国会議(COP4)は、1998年5月4日から15日まで、ブラチスラバ(スロヴァキア)において開催された。[COP4結果概要]
- (5)第5回締約国会議(COP5)は、2000年5月15日から26日まで、ナイロビ(ケニア)において開催された。[COP5結果概要]
- (6)第6回締約国会議(COP6)は、2002年4月7日から19日まで、ハーグ(オランダ)にて開催された。[COP6結果概要]
- (7)第7回締約国会議(COP7)は、2004年2月9日から20日まで、クアラルンプール(マレーシア)において開催された。[COP7結果概要]
- (8)第8回締約国会議(COP8)は、2006年3月20日から31日まで、クリチバ(ブラジル)において開催された。[COP8結果概要]
- (9)第9回締約国会議(COP9)は2008年5月にボン(ドイツ)で開催された。[COP9結果概要]
- (10)第10回締約国会議(COP10)は2010年10月18日から29日にかけて愛知県名古屋市にて開催された。[COP10結果概要]
- (11)第11回締約国会議(COP11)は2012年10月にハイデラバード(インド)にて開催された。[COP11結果概要]
- (12)第12回締約国会議(COP12)は2014年10月に平昌(韓国)にて開催された。[COP12結果概要]
- (13)第13回締約国会議(COP13)は2016年12月にカンクン(メキシコ)にて開催された。[COP13結果概要]
- (14)第14回締約国会議(COP14)は2018年11月にシャルムエルシェイク(エジプト)にて開催された。[COP14結果概要]
- (15)第15回締約国会議(COP15)第一部は2021年10月にオンライン方式と昆明(中国)での対面方式を併用して開催された。[COP15第一部結果概要]
- (16)第15回締約国会議(COP15)第二部は2022年12月にオンライン方式とモントリオール(カナダ)での対面方式を併用して開催された。COP15第二部再開会合は2023年10月にナイロビ(ケニア)にて開催された。[COP15第二部結果概要]
- (17)第16回締約国会議(COP16)は2024年10月から11月にかけてカリ(コロンビア)にて開催された。[COP16結果概要]
4 我が国の取組み
- (1)各種作業部会(遺伝資源のアクセスと利益配分、保護地域他)等に積極的に参加し、貢献を行っている。また、我が国は本条約発効以来最大の拠出国の1つであり(拠出額は第2位(全体の10.71%))、同条約実施のために多大な財政的支援を行っている。
- (2)2010年10月に第10回締約国会議を愛知県名古屋市において開催した。(生物多様性条約第10回締約国会議の開催について(結果概要))
- (3)また、第10回締約国会議で採択された愛知目標達成に向けた課題に対応するため、生物多様性日本基金を通じて各国の取組を支援しているほか、締約国会議の運営にも積極的に貢献している。
5 条約の実施のための国内措置
- (1)我が国は、条約上の義務を履行するため、関係省庁より関係政府機関及び関係業界に対し、行政上又は政策上の措置を講じてきた。
- (2)国家戦略の策定
条約第6条「保全及び持続可能な利用のための一般的な措置」に規定されている生物多様性国家戦略については、その重要性に鑑み、生物多様性の保全と持続可能な利用の観点を含む既存の様々な基本方針、国家計画等に加えて、新たに策定することとし、1995年10月に地球環境保全に関する関係閣僚会議において、我が国の「生物多様性国家戦略」が決定された。
2002年3月には「生物多様性国家戦略」の点検作業をまとめ、包括的に見直した「新・生物多様性国家戦略」が地球環境保全に関する関係閣僚会議において決定された。
2007年11月には、「第3次生物多様性国家戦略」(PDF)が閣議決定された。
2008年6月には、「生物多様性基本法」が施行され、生物多様性国家戦略の策定が国の責務として規定された。同法では環境基本計画及び生物多様性国家戦略以外の国の計画は、生物多様性の保全と持続可能な利用に関して、国家戦略を基本とすることなどが規定され、これらの規定に法的効力を持たせるために、同法に基づく国家戦略を早期に策定する必要が生じた。その他の状況も踏まえ、2010年3月に、「生物多様性国家戦略2010」(PDF)、2012年9月に「生物多様性国家戦略 2012-2020」が閣議決定された。さらに、2023年3月には「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を踏まえた新たな計画とし、「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定された。
参考2:生物多様性条約:交渉の経緯(年表)
年 | 月 | 経緯 |
---|---|---|
1987年 | 6月 | 国際連合環境計画(UNEP)管理理事会が、生物の多様性の保全等について検討する専門家会合の設置を決定 |
1988年 | 11月 | 第1回専門家会合開催(UNEP主催)「ナイロビ(ケニア)」 |
1990年 | 2月 | 第2回専門家会合開催「ジュネーブ(スイス)」 |
1990年 | 7月 | 第3回専門家会合開催「ジュネーブ(スイス)」 |
1990年 | 11月 | 第1回交渉会合開催(UNEP主催)「ナイロビ(ケニア)」 |
1991年 | 2~3月 | 第2回交渉会合開催「ナイロビ(ケニア)」 |
1991年 | 6~7月 | 第3回交渉会合(第1回政府間交渉会議)開催「マドリード(スペイン)」 |
1991年 | 9~10月 | 第4回交渉会合(第2回政府間交渉会議)開催「ナイロビ(ケニア)」 |
1991年 | 11~12月 | 第5回交渉会合(第3回政府間交渉会議)開催「ジュネーブ(スイス)」 |
1992年 | 2月 | 第6回交渉会合(第4回政府間交渉会議)開催「ナイロビ(ケニア)」 |
1992年 | 5月 | 最終交渉会合開催「ナイロビ(ケニア)」 条約テキストを含むナイロビ・ファイナル・アクトを採択 |
1992年 | 6月 | 環境と開発に関する国連会議(UNCED)開催 「リオデジャネイロ(ブラジル)」 環境と開発に関するリオ宣言、アジェンダ21を採択 条約採択、署名開放。我が国署名 |
1993年 | 5月 | 我が国受諾 |
1993年 | 12月 | 「生物の多様性に関する条約」発効 |
1994年 | 11~12月 | 第1回締約国会議(COP1)開催「ナッソー(バハマ)」 |
1995年 | 11月 | 第2回締約国会議(COP2)開催「ジャカルタ(インドネシア)」 |
1996年 | 11月 | 第3回締約国会議(COP3)開催「ブエノスアイレス(アルゼンチン)」 COP3結果概要 |
1998年 | 5月 | 第4回締約国会議(COP4)開催「ブラチスラバ(スロヴァキア)」 COP4結果概要 |
1999年 | 2月 | バイオセーフティ第6回作業部会開催「カルタヘナ(コロンビア)」 生物多様性条約特別締約国会議開催「カルタヘナ(コロンビア)」 (バイオセーフティ議定書の採択予定が延期) |
1999年 | 9月 | バイオセーフティ議定書非公式協議開催「ウィーン(オーストリア)」 |
2000年 | 1月 | 生物多様性条約特別締約国会議再開会合開催「モントリール(カナダ)」 |
2000年 | 5月 | 第5回締約国会議(COP5)開催「ナイロビ(ケニア)」 COP5結果概要 |
2002年 | 4月 | 第6回締約国会議(COP6)開催「ハーグ(オランダ)」 COP6結果概要 |
2004年 | 2月 | 第7回締約国会議(COP7)開催「クアラルンプール(マレーシア)」 COP7結果概要 |
2006年 | 3月 | 第8回締約国会議(COP8)開催「クリチバ(ブラジル)」 COP8結果概要] |
2008年 | 5月 | 第9回締約国会議(COP9)開催「ボン(ドイツ)」 COP9結果概要 |
2010年 | 10月 | 第10回締約国会議(COP10)開催「名古屋(日本)」 |
2012年 | 10月 | 第11回締約国会議(COP11)開催「ハイデラバード(インド)] |
2014年 | 10月 | 第12回締約国会議(COP12)開催「平昌(韓国)」 |
2016年 | 12月 | 第13回締約国会議(COP13)開催「カンクン(メキシコ)」 |
2018年 | 12月 | 第14回締約国会議(COP14)開催「シャルムエルシェイク(エジプト)」 |
2021年 | 10月 | 第15回締約国会議(COP15)第一部開催「オンライン・昆明(中国)」 |
2022年 | 12月 | 第15回締約国会議(COP15)第二部開催「モントリオール(カナダ)」 |
2023年 | 10月 | 第15回締約国会議(COP15)第二部再開会合開催「ナイロビ(ケニア)」 |
2024年 | 10~11月 | 第16回締約国会議(COP15)開催「カリ(コロンビア)」 |