平成22年10月30日
2010年10月18日(月曜日)~29日(金曜日)(於:名古屋国際会議場)
(ハイレベルセグメントは27日~29日に開催)
松本環境大臣がCOP10議長を務めた。また、我が国政府代表団として、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省等の担当者のほか、経済界、労働界、NGO関係者が参加した。また、オブザーバーとして、地元自治体、企業、NGO等が多数参加した。
COP議長国(日本政府)主催で、10月27日~29日にCOP10ハイレベルセグメント(閣僚級会合)を開催した。27日の開会式では、菅総理大臣より、生物多様性保全に関する途上国支援として「いのちの共生イニシアティブ」が表明された。各国各機関によるステートメントに加え、28日には地元自治体や経済界、NGO、ユース等多様な主体が参加したパネルディスカッションが行われ、29日の松本環境大臣による議長総括で締めくくられた。
意欲的な目標を求めるEUと、実現可能性を重んじる途上国との間で、最終的には非公式閣僚会合での意見も踏まえて、妥協が図られ、「2020年までに生態系が強靱で基礎的なサービスを提供できるよう、生物多様性の損失を止めるために、実効的かつ緊急の行動を起こす」との趣旨の文言となった。又、最後まで調整が続いた保護地域については陸域17%、海域10%となるなど、20の個別目標が合意された。中長期目標(「自然との共生」)については、「2050年までに、生態系サービスを維持し、健全な地球を維持し全ての人に必要な利益を提供しつつ、生物多様性が評価され、保全され、回復され、賢明に利用される。」ことが合意され「愛知目標」として採択された。
COP10までにABSに関する国際レジーム策定交渉を完了すべしとのCOP8決定に基づき、COP10開催中に非公式協議会合(ICG)において、ABS議定書案の検討が行われたが、派生物、遡及適用、病原体等いくつかの論点での資源提供国と利用国の意見対立が続いたことを踏まえて、最終日に我が国が議長国としての議長案を各締約国に提示し、同案が「名古屋議定書」として採択された。また、議定書の発効に向けた政府間委員会の設置やその作業計画が決定された。
COP9で決定された「資源動員戦略」のフォローアップのためのもので、焦点は、「戦略」の進捗状況をモニターするための指標(indicators)及び目標(targets)であった。途上国側は、具体的な金額目標(官民全てのかつ世界全体での資金フローについての目標)の明記を強く求めたが、先進国側は、しっかりとした指標無しにそのような目標を設定するという議論に応じられないとし交渉が非常に難航した。最終的に、途上国側は具体的目標の要求を取り下げ、指標についての議論に応じた。その上での交渉の末、「しっかりとした指標ができるなどの条件で、COP11の際に目標(targets)を採択する」「条約の三目的達成へ貢献するため,2020年までに途上国への毎年の国際的資金フローを増加させるという目標を発展させることを検討する。」旨の決定が採択された。
ブッシュミート(食用の野生鳥獣等)の適正な利用、アジスアベバ原則・ガイドラインの実施、SATOYAMAイニシアティブの推進などを含む決定が採択された。SATOYAMAイニシアティブについては、19日に発足した「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ」を同イニシアティブを推進するためのメカニズムと位置付け、各国・機関等の参加を呼びかけ51の国や機関等が創設に参加した。
バイオ燃料の生産及び使用は、食料やエネルギーの安全保障を含む社会経済的状況に影響を及ぼし得ることを認識し、その正の影響を促進し負の影響を最小化するため、バイオ燃料の生産に適した又は不適な土地を適切に見極めること、次世代バイオ燃料の生産に使用され得る合成生物学とバイオ燃料に関する情報提供を行うこと等が決定された。
生態的及び生物学的に重要な海域(EBSA)については、締約国やFAO等の関係機関等と協力し、資金が利用可能であることを条件に、一連の地域ワークショップを開催し、EBSA設定の基準の適用に関する理解の向上を図るとともに、その際に得られる科学的及び技術的情報並びに事例の集積を行うことをCBD事務局に対して求めること。また、海洋生物資源についても、生物多様性に配慮して持続的に利用するための適切な措置をとるよう各国に促すことなどが決定された。
森林の減少及び劣化に由来する排出の削減等(REDD+)の活動に関する生物多様性の保全措置や生物多様性への影響評価につき、生物多様性条約事務局が気候変動枠組条約での決定を予見しない形で助言や検討を行うこと、2012年の国連持続可能な開発会議(RIO+20)を見据えた他のリオ条約(気候変動枠組条約及び砂漠化対処条約)との共同活動の検討を行うことが決定された。
ビジネスと生物多様性について、締約国によるビジネスと生物多様性の連携活動の推進の招請、民間部門による具体的な参画の奨励、国レベル・地域レベルでのビジネスと生物多様性イニシアティブや国際的な連携をイニシアティブ間で図るためのグローバルプラットフォームの設置の奨励等が採択された。
また、2011年から2020年までを対象とする、地方自治体の生物多様性に関する行動計画を承認するとともに、締約国や他の政府機関に対し、同計画の実施を奨励した。
我が国は、CBDの運営予算の最大拠出国であり、義務的拠出金総額の約16%を負担している。世界経済危機の影響で締約国の中には国家財政が極めて厳しい国がある中、COP10で採択された新戦略計画及びABS議定書を確実に実施・履行していくために必要な追加的費用を重点的に予算配分した結果、2011年予算は11,769,300米ドル、2012年予算は12,989,700米ドル(2ヶ年合計24,759,000米ドル(前期比4.3%増))とすることがコンセンサスにより決定された。我が国の分担金額は、2ヶ年合計3,586,800米ドル。
最終日の29日(金曜日)に、2012年10月1~5日にカルタヘナ議定書第6回締約国会議を、8~19日に生物多様性条約第11回締約国会議をインドにおいて開催することが決定された。
農業の生物多様性において、特に、水田農業の重要性を認識するとともに、ラムサール条約の決議X.31「水田決議」を歓迎し、その実施を求めることなどが決定された。
また、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)について、第65回国連総会に対しその早期の設立を検討するよう奨励することなどが決定された。
また、我が国が提案している「国連生物多様性の10年」を国連総会で採択するよう勧告することが決定された。