地球環境
生物多様性条約第15回締約国会議第二部等の結果概要


国際協力局地球環境課
1 総論
- (1)生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)、カルタヘナ議定書第10回締約国会合(CP-MOP10)及び名古屋議定書第4回締約国会合(NP-MOP4)の第二部が、2022年12月7日(水曜日)~19日(月曜日)、カナダ・モントリオールで開催された。153の締約国・地域の他、関連機関、市民団体等から約16,000人が事前登録し、9,472名が参加、我が国政府からは、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び金融庁から成る代表団が出席した。
- (2)12月15日(木曜日)~17日(土曜日)に開催されたハイレベルセグメントには、126名の閣僚、77名の閣僚級の代表、及び60名の国際機関トップが参加、我が国政府からは西村環境大臣が出席した。ハイレベルセグメントでは、2050年までの長期目標「自然と共生する世界」に向けた各国の取組が発信され、我が国からは西村環境大臣から地球環境ファシリティ(GEF)への6.38億ドルの拠出及び生物多様性日本基金(JBF)への総額18億円規模の支援に加え、2023年から2025年にかけて生物多様性保全への支援として1170億円のプレッジを表明した。
- (3)会合では、愛知目標の下でのこれまでの生物多様性保全に向けた取組が評価されるとともに、2030年までの目標を定める「昆明・モントリオール生物多様性枠組(Kunming-Montreal Global biodiversity framework)」等が採択された。
- (4)2023年10月19日(木曜日)~20日(金曜日)に生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)、カルタヘナ議定書第10回締約国会合(CP-MOP10)及び名古屋議定書第4回締約国会合(NP-MOP4)の第二部再開会合が開催された。委員の選出等が行われ、COP15は閉会となった。次回のCOP16はトルコにおいて2024年の下半期に開催される予定であったが、2023年2月に発生した地震の影響で同国はホストを辞退することとなり、その後の調整の結果、同会議は2024年10月にコロンビア・カリにおいて開催されることとなった。なお、COP17は中・東欧において開催予定。
2 各論
(1)生物多様性条約締約国会議(COP15)
ア 「昆明・モントリオール生物多様性枠組」
2010年に採択された「愛知目標」の後継であり2020年以降の生物多様性に関する世界目標となる「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。同枠組では、生物多様性の観点から2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30目標」が主要な目標の一つとして定められたほか、ビジネスにおける生物多様性の主流化等の目標が採択された。主な内容は以下のとおり。
- (同枠組の主な内容)
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- 2050年ビジョン「自然と共生する世界」(愛知目標と共通内容)
- 2030年ミッション「生物多様性を保全し、持続可能に利用し、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を確保しつつ、必要な実施手段を提供することにより、生物多様性の損失を止め反転させ回復軌道に乗せるための緊急な行動をとる」
- 2050年ゴール(ゴールA、B、C、D)及び2030年ターゲット(ターゲット1~23)
(注)主なターゲットの概要
(ターゲット3)2030年までに陸と海のそれぞれ30%以上を保護・保全(30by30)
(ターゲット6)2030年までに侵略的外来種の導入率・定着率を半減
(ターゲット8)自然を活用した解決策等を通じた気候変動の生物多様性への影響の最小化
(ターゲット15)ビジネスによる影響評価・情報公開の促進 - 新枠組の進捗をモニタリング・評価する仕組みに関する記載
イ 途上国における生物多様性保全実施のための資源動員
今次会合では、「生物多様性枠組基金:Global Biodiversity Framework Fund(GBF Fund)」を2023年に設置するよう、地球環境ファシリティ(GEF)に求める決定が採択された。同基金は、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の途上国における実施を支援することを目的に、民間企業等を含むあらゆるソースからの拠出を得ることが想定されており、その詳細をGEFが2023年に決定することが求められている。
ウ 遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI: Digital Sequence Information)
今次会合では、遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)については、その利用に関する利益配分に関する多数国間メカニズムを設置し、他のオプションを含め公開作業部会を設置してCOP16に向けて検討する決定が採択された。
エ 2023~2024年の条約事務局予算
2023~2024年のCBD事務局の総予算は37,181,200米ドル、拠出金総額は2021~2022年度同様33,883,100米ドルとなった。各国の分担金額は、これまで通り、国連分担率に準拠して算出される。総予算のうち、72%がCBD、15%がカルタヘナ議定書、13%が名古屋議定書の運用に充てられる。なお、事務局職員のポスト数は78名から82名とすることが決定された。
オ その他
愛知目標の進展に係る評価、生物多様性の主流化、レビューメカニズムの導入、気候変動とのシナジーの強化、能力構築支援、関連条約との協力等の生物多様性に関する幅広い事項について議論が行われた。
(2)カルタヘナ議定書締約国会合(MOP10)
カルタヘナ議定書及び補足議定書に関する実施計画及び能力構築行動計議定書のモニタリング・報告、議定書の評価及び再検討(第35条)、バイオセーフティに関する情報交換センター(BCH:Biosafety Clearing-House)に関する運営・活動(第20条)、リスク評価・リスク管理(第15条・第16条)、名古屋・クアラルンプール補足議定書の責任と補償等に関して議論・決定された。
(3)名古屋議定書締約国会合(MOP4)
能力構築・開発の支援措置(第22条)及び遺伝資源及び関連する伝統的知識(TK)の重要性に関する普及啓発措置(第21条)、アクセス及び利益配分に関する情報交換センター(ABS-CH)及び情報共有(第14条)等に関して議論・決定された。