地球環境
生物多様性条約第16回締約国会議等(結果概要)
令和6年11月5日
令和7年3月4日更新


1 総論
- 生物多様性条約(CBD)第16回締約国会議(COP16)、カルタヘナ議定書第11回締約国会合(CP-MOP11)及び名古屋議定書第5回締約国会合(NP-MOP5)が、2024年10月21日(月曜日)から11月1日(金曜日)(翌2日朝)にかけて、コロンビアのカリで開催された。我が国からは、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省からなる代表団が出席し、ハイレベルセグメントには松澤環境省地球環境審議官が出席した。
- 2022年12月の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(GBF)の採択後初となる今次会合では、遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)の使用に係る利益配分に関する多国間メカニズムの大枠や、先住民及び地域社会の参画に関する補助機関の設置が決定された。他方、生物多様性保全のための資源動員、GBFモニタリング枠組・レビューメカニズム、条約事務局予算等の決定が採択されず、定足数不足により会合は中断となった。
- COP16の中断を受けて、2024年12月3日(火曜日)から6日(金曜日)にかけてCOP16再開会合第一部、CP-MOP11再開会合第一部及びNP-MOP5再開会合第一部がオンラインで開催され、サイレンスプロシージャーにより2025年-2026年の運営に必要な条約予算が採択された。
- その後、残りの決定を採択するため、COP16再開会合第二部、CP-MOP11再開会合第二部及びNP-MOP5再開会合第二部が、2025年2月25日(火曜日)から2月27日(木曜日)にかけて、イタリアのローマで開催され、我が国からは、外務省、農林水産省、環境省からなる代表団が出席した。同会合では、GBFモニタリング枠組・レビューメカニズム、生物多様性保全のための資源動員に関する決定を含む残された議題につき全ての決定が採択され、COP16は正式に閉幕した。
- COP17は2026年、アルメニアのエレバンにおいて開催される予定。
2 各論
(1)生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)
ア GBFモニタリング枠組及びレビューメカニズム
COP15で採択された2020年以降の生物多様性保全に関する世界目標であるGBFの実施をモニタリングする枠組及びCOP17及び19で実施が予定されるグローバルレビューの仕組みが議論された。
再開会合では、GBFの進捗を測るためのモニタリング枠組が決定された。同枠組には、ヘッドライン指標(28個)、選択回答式指標(63問)、構成要素指標(52個)及び補完指標(111個)が位置づけられており、このうちヘッドライン指標及び選択回答式指標については、2026年2月までに提出が求められている国別報告書で活用することとされている。
締約国による取組の評価と科学的なデータを活用し、4年毎にGBFの達成状況を評価するグローバルレビューに先立ち生物多様性地球規模報告書(グローバルレポート)をまとめることや、当該報告書作成のための科学技術諮問グループを設置すること等が決定された。
イ 生物多様性保全のための資源動員
生物多様性条約の実施に必要な資源動員について、GBF実施に必要な資金を動員するためのガイダンスとして、資源動員戦略フェーズII(2025-2030)が採択されるとともに、GBFの期限である2030年以降に向けた資源動員の枠組の運用のためのロードマップ等が再開会合で決定された。
ウ 遺伝資源のDSIの使用に係る利益配分に関する多国間メカニズム
カリで実施されたCOP16で、COP15で設立が決定されたDSIの使用に係る利益配分に関する多国間メカニズムに関し、DSIから利益を得る業界のDSI使用者が、利益などの一部をグローバル基金(カリ基金)に拠出することを締約国が促すことや、それを生物多様性条約の目的のために使うこと等が決定された。拠出率や対象企業規模等の詳細は、COP17までの間に更に検討される予定。
エ 先住民及び地域社会の参画に関するCBD第8条(j)に関する補助機関の設置等
カリで実施されたCOP16で、先住民及び地域社会の生物多様性保全への参画を強化・確保するための常設補助機関の設置が決定された他、GBF実施のための新たな作業計画等が決定された。
オ その他
カリで実施されたCOP16で、能力構築・科学技術協力、科学技術ニーズ、海洋・沿岸及び島嶼の生物多様性、侵略的外来種、生物多様性と健康、生物多様性と気候変動、条約及び議定書に基づくプロセスの有効性レビュー等の生物多様性に関する幅広い事項について議論された。
(2)カルタヘナ議定書第11回締約国会合(CP-MOP11)
カリで実施されたMOP11で、バイオセーフティに関する情報交換センター(BCH:Biosafety Clearing-House)に関する運営・活動、リスク評価・リスク管理、遺伝子組換え生物(LMO)の検出と識別、社会経済上の配慮、名古屋・クアラルンプール補足議定書の責任と補償等に関して議論された。
(3)名古屋議定書第5回締約国会合(NP-MOP5)
カリで実施されたMOP5で、能力構築・開発及び普及啓発の支援措置(第21条・第22条)、アクセス及び利益配分に関する情報交換センター(ABS-CH)及び情報共有(第14条)等に関して議論された。