地球環境
生物多様性条約第16回締約国会議等の結果概要
1 総論
- (1)生物多様性条約(CBD)第16回締約国会議(COP16)、カルタヘナ議定書第11回締約国会合(CP-MOP11)及び名古屋議定書第5回締約国会合(NP-MOP5)が、2024年10月21日(月曜日)から11月1日(金曜日)(翌2日朝)にかけて、コロンビアのカリで開催された。我が国からは、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省からなる代表団が出席し、ハイレベルセグメントには松澤環境省地球環境審議官が出席した。
- (2)2022年12月の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(GBF)の採択後初となる今次会合では、遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)の使用に係る利益配分に関する多国間メカニズムの大枠や、先住民及び地域社会の参画に関する補助機関の設置が決定された。他方、生物多様性保全のための資源動員、GBFモニタリング枠組・レビューメカニズム、条約事務局予算等の決定が採択されず、会合中断となった。
- (3)COP17はアルメニアのエレバンにおいて開催されることとなった。
2 各論
(1)生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)
ア GBFモニタリング枠組及びレビューメカニズム
COP15で採択された2020年以降の生物多様性保全に関する世界目標であるGBFの実施をモニタリングする枠組及びCOP17及び19で実施が予定されるグローバルレビューの仕組みが議論された。
イ 生物多様性保全のための資源動員
GBF実施に必要な資金を動員するためのガイダンスとして、資源動員戦略フェーズII(2025-2030)が議論された。生物多様性に特化した新基金をアフリカ諸国が求めたものの、具体的な設置には至らなかった。
ウ 遺伝資源のDSIの使用に係る利益配分に関する多国間メカニズム
COP15で設立が決定されたDSIの使用に係る利益配分に関する多国間メカニズムに関し、DSIから利益を得る業界のDSI使用者が、利益などの一部をグローバル基金(カリ基金)に拠出することを締約国が促すことや、それを生物多様性条約の目的のために使うこと等が決定された。拠出率や対象企業規模の目安はCOP17までの期間に更に検討される予定。
エ 先住民及び地域社会の参画に関するCBD第8条(j)に関する補助機関の設置等
先住民及び地域社会の生物多様性保全への参画を強化・確保するための常設補助機関の設置が決定された他、GBF実施のための新たな作業計画等が採択された。
オ その他
資金メカニズム、能力構築、科学技術協力、科学技術ニーズ、海洋、沿岸及び島嶼の生物多様性、侵略的外来種、生物多様性と健康、生物多様性と気候変動、関連条約との協力、条約及び議定書に基づくプロセスの有効性レビュー等の生物多様性に関する幅広い事項について議論された。
(2)カルタヘナ議定書第11回締約国会合(CP-MOP11)
バイオセーフティに関する情報交換センター(BCH:Biosafety Clearing-House)に関する運営・活動、リスク評価・リスク管理、遺伝子組換え生物(LMO)の検出と識別、社会経済上の配慮、名古屋・クアラルンプール補足議定書の責任と補償等に関して議論・決定された。
(3)名古屋議定書第5回締約国会合(NP-MOP5)
能力構築・開発及び普及啓発の支援措置(第21条・第22条)、アクセス及び利益配分に関する情報交換センター(ABS-CH)及び情報共有(第14条)等に関して議論・決定された。