地球環境
生物多様性条約第13回締約国会議等の結果概要
1 総論
- (1)生物多様性条約(CBD)第13回締約国会議(COP13)並びにカルタヘナ議定書第8回締約国会合(MOP8)及び名古屋議定書第2回締約国会合(MOP2)が,2016年12月4日(日曜日)~17日(土曜日),メキシコ(カンクン)にて開催され,167の締約国・及び地域,関連機関,市民団体等から約3,100人以上が参加した。我が国政府からは,外務省,農林水産省,経済産業省,文部科学省及び環境省からなる代表団が出席した。
- (2)COP13に先行して12月2日(金曜日)~3日(土曜日)に開催された閣僚級会合(HLS:ハイレベルセグメント:閣僚50人を含む300人以上が参加)では,農林水産業及び観光業のテーマ別のラウンドテーブル等が行われ,「福利のための生物多様性の保全および持続可能な利用の主流化」に関するカンクン宣言が採択された。我が国からは,関芳弘環境副大臣等が出席した。
- (3)次回のCOP14(2018年)はエジプト(シャルムエルシェイク),COP15(2020年)は中国(北京),COP16(時期未定)はトルコ(イスタンブール)で開催することが決定された。
2 各論
(1)生物多様性条約(COP13)
ア 愛知目標(戦略計画2011-2020)の達成に向けた進捗状況
COP10で採択された愛知目標のうち,目標10(脆弱な生態系への悪影響の最小化)及び目標17(生物多様性国家戦略の策定・改定)については,2015年の目標年までには達成できなかったこと,目標14(生態系サービスの回復・保全)及び目標18(伝統的知識の尊重)については,国レベルでの進捗は限定的であることが確認された。また,国別の目標設定に当たってはSDGsを含む他の関連目標を考慮すること,愛知目標達成のために農林水産業及び観光業を含む様々なセクターにおける主流化に向け,ステークホルダーが更なる関与を行うことが求められた。
イ 資源動員及び資金メカニズム
国際資金フローに関する報告書の提出が少なく,資源動員目標の進捗状況の分析のための情報の不足が懸念されたところ,当該報告書の未提出国は,2017年7月1日までの提出が求められた。また,CBDの資金メカニズムである地球環境ファシリティ(GEF)の第7次増資期間(2018-2022)における優先分野の特定,同増資期間の総合ガイダンスの策定及び資金メカニズムに関する第5次効率性レビューの実施に関する決定が採択された。
ウ 2017年~2018年予算
今回から条約(CBD)及び2つの議定書(カルタヘナ議定書及び名古屋議定書)の予算が統合された結果,2017~2018年の総予算は37,155,800米ドル,各国の拠出金総額は32,984,600米ドルとなった(拠出金総額の内訳割合は,生物多様性条約(76%),カルタヘナ議定書(16%),名古屋議定書(8%))。
エ 合成生物学等
- (ア) アドホック技術専門家会合(AHTEG:Ad Hoc Technical Expert Group)を継続し,合成生物学から生じる生物等が条約の目的達成に与える影響を検討すること等が決定された。
- (イ) 遺伝資源に関する塩基配列情報の利用が条約の目的達成にどのような潜在的な影響を与えるかを検討するため,各国からの関連情報の提供,事実確認及び検討範囲特定のための調査の実施及びAHTEGの開催を求めるとともに,これらについては,COP14において検討することが決定された。
オ その他
生態学的または生物学的に重要な海域(EBSAs:Ecologically or Biologically Significant marine Areas),花粉媒介者,侵略的外来種,伝統的知識,能力開発等の生物多様性に関する幅広い事項について議論がなされた。
(2)カルタヘナ議定書(MOP8)
議定書の実施及び効果のレビュー,資金メカニズム及び資金源に関する課題,他の国際機関等との協力,リスク評価及びリスク管理,意図的でない国境を越える移動及び緊急措置,議定書の実施及び効果のレビュー,社会経済上の配慮等が議論・決定された。
(3)名古屋議定書(MOP2)
議定書の効果的な実施の促進,他の国際機関等との協力,遺伝資源へのアクセス及び利益配分(ABS:Access and Benefit-Sharing)に関する情報交換センターの運用,多数国間の利益配分の仕組みの必要性についての検討プロセス,COP14での議定書の最初の有効性評価の実施と評価項目等が議論・決定された。また,遺伝資源に関する塩基配列情報の利用が議定書の目的の達成にどのような潜在的な影響を与えるかについて,MOP3において検討することが決定された。