地球環境
生物多様性条約第14回締約国会議等の結果概要
1 総論
- (1)生物多様性条約(CBD)第14回締約国会議(COP14)並びにカルタヘナ議定書第9回締約国会合(CP-MOP9)及び名古屋議定書第3回締約国会合(NP-MOP3)が,2018年11月17日(土曜日)~29日(木曜日),エジプト(シャルムエルシェイク)にて開催され,73の決定が採択された。182の締約国・地域,関連機関,市民団体等から3,800人以上が参加し,我が国政府からは,外務省,文部科学省,農林水産省,経済産業省及び環境省からなる代表団が出席した。
- (2)COP14に先行して11月14日(水曜日)~15日(木曜日)に開催された閣僚級会合(HLS:ハイレベルセグメント)では,エネルギー分野,鉱業,インフラストラクチャー分野,製造・加工業及び健康分野における生物多様性の主流化をテーマにラウンドテーブル等が行われ,「人類及び地球のための生物多様性への投資」に関するシャルムエルシェイク宣言が採択された。閣僚53人を含む118の締約国・地域が参加し,我が国政府からは城内環境副大臣等が出席した。
- (3)次回のCOP15は中国(北京)において2020年の第4四半期に,COP16はトルコにおいて2022年の第4四半期に開催することが決定された。
2 各論
(1)生物多様性条約(COP14)
ア ポスト2020生物多様性枠組の検討プロセス
COP15において採択予定の,2020年以降の生物多様性に関する世界目標となる,ポスト2020生物多様性枠組を検討するプロセスとして,(ア)公開作業部会を設置し,COP15までに2回開催すること,(イ)可能な場合,地域別やテーマ別のワークショップを開催すること等が決定された。なお,(イ)に関し,アジア太平洋地域のワークショップは2019年1月28日~31日に愛知県名古屋市で開催予定である。また,関係するステークホルダーに対して検討プロセスへの参画の呼びかけ等を行うハイレベルパネルが設置されることになった。
イ 資源動員及び資金メカニズム
ポスト2020生物多様性枠組に資源動員に係る内容を含めることを確認するとともに,可能な場合,同内容の案作成に資する活動等を専門家パネルに委託することを決定した。
ウ 遺伝資源に関する塩基配列情報(DSI: Digital Sequence Information)
DSIの利用から生ずる利益の配分に関して締約国間に見解の相違があることに鑑み,この解決に向けて,DSIの概念やその対象範囲に関して,科学に基づいた研究を委託するとともに,専門家会合において検討すること等を決定した。また,ポスト2020生物多様性枠組の検討を行う公開作業部会において,専門家会合の成果を踏まえて,DSIの扱いについて検討することとなった。
エ 合成生物学
合成生物学が条約の下で扱われるべき新規事項に該当するか否かや,合成生物学における技術の発展に係る定期的なモニタリング・評価手法等に関し,専門家会合及び科学技術助言補助機関会合において検討することを決定した。
オ 海洋及び沿岸の生物多様性
締約国又は権限のある政府間組織による,生態学的又は生物学的に重要な海域(EBSA: Ecologically or Biologically Significant marine Area)の抽出及びレポジトリーへの掲載に係る手続を再整理するための検討は,COP15まで継続されることとなった。
カ 2019~2020年予算
2019~2020年の総予算は38,844,100米ドル,拠出金総額は2017~2018年度同様32,984,600米ドルとなった。また,各国の分担金額は,改訂される新国連分担率に準拠して算出されることとなった。総予算のうち,74%が条約,15%がカルタヘナ議定書,11%が名古屋議定書の運用に充てられる。なお,事務局のポスト数は78名のままとすることが決定された。
キ その他
愛知目標の進展に係る評価の更新,生物多様性の主流化,気候変動との関連性,伝統的知識,能力構築,関係条約等との協力等の生物多様性に関する幅広い事項について議論が行われた。
(2)カルタヘナ議定書(MOP9)
カルタヘナ議定書戦略計画2011-2020のフォローアップ,遺伝子組換え生物(LMO: Living Modified Organisms)のリスク評価及びリスク管理,社会経済上の配慮,名古屋・クアラルンプール補足議定書等に関して議論・決定された。
(3)名古屋議定書(MOP3)
名古屋議定書の有効性の評価及びレビュー,名古屋議定書の適用除外対象となる国際文書,地球規模の多数国間利益配分メカニズム,遺伝資源へのアクセス及び利益配分に関する情報交換センター等に関して議論・決定された。