世界貿易機関(WTO)

令和4年7月15日

 「貿易のための援助(Aid for Trade:AfT)」とは、途上国の貿易関連能力の向上を通じて経済発展と貧困削減を達成しようとするWTOの取組であり、我が国も途上国への支援やWTOでの議論に積極的に取り組んでいます。

我が国の取組

(写真1)第6回グローバル・レビュー会合で発表を行う宇山経済局審議官 第6回グローバル・レビュー会合で発表を行う宇山経済局審議官
  1. 我が国は2005年に「開発イニシアティブ(Development Initiative for Trade)」を発表以降、2006年~2008年の3年間に貿易関連分野において、100億ドルのODA供与、無税無枠措置の拡充等を行うとの目標を達成しました(ODA供与額はOECD/CRSデータに基づく。無税無枠措置はタリフラインベースで98.1%を達成。)。さらに、2009年7月の第2回AfTグローバル・レビューにおいては、2009年~2011年の3年間に120億ドルのODA供与等を行うことを目標とした「開発イニシアティブ2009」を発表し、我が国は目標額を上回るODA供与を実施しました。2015年(単年)も、約118億ドルのODA供与を実施しており、この分野において世界最大のドナー国です(ODA供与額はOECD/CRSデータに基づく。)。
  2. 我が国は自身のアジアの経験を基に、いかにして効果的にAfTを実施することができるかを検討しています。この一環として、我が国はアジア開発銀行(ADB)を通じて、アジア太平洋地域のいくつかの国の専門家を集め、地域専門家(RTG)会合を組織し、各国の知見を積極的に共有しました。RTGでの議論は、報告書にまとめられ(貿易のための援助(AfT)アジア・太平洋地域専門家(RTG)会合共同議長報告書の概要(PDF)別ウィンドウで開く)、2011年7月の第3回AfTグローバル・レビューで報告されました。
  3. 2013年3月に東京において開催された第6回RTG会合では、報告書第2版(Aid for Trade in Asia and Pacific, Driving Private Sector Participation in Global Value Chains)(PDF)別ウィンドウで開くの取りまとめを行い、同年7月の第4回AfTグローバル・レビューでは、バリューチェーンへの連結(Connecting to the Value Chains)」をテーマに、途上国がバリューチェーンに参画する上でAfTが果たす役割について主に議論されました。我が国は、グローバル・レビューの開催中にカンボジア及びアジア開発銀行と共催で「アジアの経験とアフリカとの対話」をテーマに、サイドイベントを開催し、同報告書に基づき報告を行うとともに、同年に開催されたTICAD Vの成果等を広く共有し、高い評価を得ました。
  4. 2015年6月30日から7月2日まで開催された第5回AfTグローバル・レビューは、「包摂的かつ持続可能な成長に向けた貿易コストの削減(Reducing Trade Costs for Inclusive, Sustainable Growth)」をテーマに、国際貿易における貿易コストの削減に向けた取組について、貿易円滑化の実施、地域統合に向けた取組、インフラ開発(連結性の向上)、南南協力の在り方等について、ポスト2015年開発目標における経済発展の視点等も踏まえながら議論が実施されました。
  5. 2017年7月11日から7月13日まで開催された第6回AfTグローバル・レビューは、第5回AfTグローバル・レビューで議論された貿易コストの削減についてさらに深める形で、デジタル連結性分野の貿易コストの分析から「持続可能な開発のための貿易、包摂性及び連結性の推進(Promoting Trade, Inclusiveness and Connectivity for Sustainable Development)」をテーマに、発展途上国、とりわけLDCへの貿易関連援助の各国の取組みが共有されるとともに、政策決定者、企業、女性、中小企業がデジタルディバイドを乗り越えるための戦略が議論されました。また、貿易のための援助が持続可能な開発目標(SDGs)の推進にどのように貢献できるかについても、特に女性の経済エンパワーメントに重点をおいて議論されました。我が国からは、AfT主要ドナー国として、アフリカ開発会議(TICAD)プロセスや対アフリカ支援、「質の高いインフラパートナーシップ」等を紹介しつつ、貿易のための援助はSDGsの全ての目標の達成に必要な原資になる等について述べました。我が国も国際的支援の枠組みの中での「貿易のための援助」の在り方、我が国の貢献策について、引き続き積極的に議論へ参加してまいります。
  6. 2019年7月3日から5日まで開催された第7回AfTグローバル・レビューは、「貿易のための援助を通じた包摂的、持続的な開発のための経済多様化及び強化(Supporting Economic Diversification and Empowerment for Inclusive, Sustainable Development through Aid for Trade)」をテーマに経済多様化、女性参画が主要議題として多くのセッションで扱われた他、後発開発途上国(LDC)卒業、貿易分野のキャパシティ・ビルディング、貿易円滑化、貿易のためのインフラ整備等も議論されました。また、経済多様化とともにデジタルコネクティビティの重要性が活発に議論され、デジタル化が経済多様化のために不可欠であるという認識が共有されました。我が国はAfT主要ドナー国として、アフリカ開発会議(TICAD)プロセスやABEイニシアチブ、官民連携のためのプログラム等アフリカで多く行っているプログラムを紹介した上で、インフラ整備、キャパシティ・ビルディング、主にLDCを中心とした途上国のWTO加盟支援等を通じた我が国の貿易のための援助全般について紹介しました。

AfT関連会合概要


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